さて、今回は先代の博麗の巫女は終了し、いつものほのぼの日常記になってると思うんで、お待たせいたしました!それと、いつもありがとうございます!
ちなみに、タイトルは、東方幽人救労で、『ゆじんぐろう』と読みます。勝手に当てさせて頂きました(笑)
───白玉楼───
─side 魂魄妖夢─
いきなりですが…1つ白状させていただきます。かと言ってももう今更感がありますし、最早いつもの事だから…と言っても流される事が多いと思います。それは自身も自覚していることですが、やはり黙ってても仕方がないと思いまして、白状させて頂く次第でございます。
私の主が大食女である故に、とうとう白玉楼が財政難に陥ってしまいました。
「どうなさるんですか?幽々子様…。今の調子じゃ明日の朝食どころか、本日の昼、夜と何も出せない状態ですけれど…」
まぁ、こんなことを目の前の主(犯人)に言ったところで、この財政難が回復を見込めるとは思っていないけど、私にとってもまずいし、何より食事が出来ない幽々子様が一番どうにかしないとならないと思ってるでしょう。この足りない頭で考えてくださると良いんですが、幽々子様が考えることって、良い結果に終わった試しがないんですね…。でも今は藁でも綿でも掴みたい状態ですし、こんな時なら良い考えをお持ちかもしれません。
「そうね…これは白玉楼史上最悪の出来事だわ…。…でも今はそんなことより、お腹空いたわ妖夢ちゃん!」
はああぁぁぁぁ!!?この状況下でお腹空いたなんてよく言えましたね!!…いや、予想してたのはしてたんですけど、まさかこうも予測に忠実な発言が為されるとは、この世界長く生きてれば色んな事がありますねぇ。
「お腹空いてる場合じゃないですよ幽々子様!今や一刻を争う事態に陥ってるんですよ!?当然、この先の食料も節約しようと思った矢先に幽々子様が一晩で盗み食いするから急に財政難が起こったんじゃないですか!」
「そう…ね…。これは、私が自身で引き起こした失態ね。こうなったら、私自身が財政難救済に一肌脱ぐわ!」
おぉ…幽々子様が珍しく本気だ…こんな本気でみなぎってる幽々子様を見るのも春雪異変以来ですかね…。やはりここぞと言うときは主の責任を感じてるんですね。…でも。
「財政難救済って、一体どうなさるおつもりですか?」
「私…バイトするわ!」
「…………」
今…目の前のおっぱいお化け何つった?バイトする?幽々子様が?
「いやいやいやいや!バイトなら私が致しますので幽々子様はダイエットに励んで…!」
「妖夢ちゃん、あなたの思いはとても嬉しいわ。それはきちんと伝わったから…でもこれは私が起こした不祥事なの。自分で汚した珠は、自分で磨くわ!」
きちんと伝わったって全く伝わっとらんやないか!!まぁ、こんなにやる気だったら止めるのも悪いし、全く期待は持てないけど幽々子様のやる気に賭けてバイトに頼ってみますかねぇ。とは言え、やはり不安な点はあるから私の方でも金は工面させて頂きましょう。
…ということで、白玉楼は幽々子の怪物並の暴食のせいで滅亡の危機に瀕するほどの財政難に陥ってしまったので、主と密かに庭師がバイトで金を工面する事になった。ただ、妖夢はまだしも幽々子を本気で雇ってくれるような店は殆ど無いのが現実、余程のところでしか雇ってもらえません。これはそんな幽々子と、妖夢のバイトでの出来事を語った物語である。
☆西行寺幽々子のバイト編☆
───人里───
バイトする!って言ってやる気出したところを妖夢ちゃんに粋がっちゃったけど、一体どんなバイトが良いのかしら?まぁ、人里にも一杯店が並んでるんだし、片っ端から当たってみましょうか!
一軒目、甘味処屋
まずはここね。ここの団子と餡蜜が美味しいのよねぇ…あぁ思い出しただけで食べたくなっちゃった…けど我慢して、雇ってもらえるよう頑張らなきゃ!面接なんてしたことないけど…。
「ごめんくださーい」
「はいはーい、いらっしゃいませ。あぁ幽々子さん、毎度です」
「お疲れさまです、旦那さん。折り入ってお願いがあるのだけど、良いかしら?」
「常連客の頼みだ。出来る限りは協力しますよ」
「ありがとう。お願いってのはね、私をここで雇って貰えないかしら?」
「え…?あぁ…そう…ねぇ…(どうしよう…人が足りてないワケでもないし、この人に悪いけど足手まといだし…。丁重にお断りしたいんだが…)」
「ニコニコ♪」
「(自分でニコニコ言ってしまうくらい眩しい笑顔でこっち見てる…。こ…断りづらい…)」
「それで?甘味処屋さん、お返事は?」
「え?あぁその…あれだ!いくら常連さんでも、お客さんを働かすワケにはいかねぇよ。やっぱり、ウチとしてはお客さんはお客さんだからね」
「そ…そうねぇ、やっぱり…お客さんを働かせられないかぁ…」
うーん…一筋縄では行かないとは思ってたけど…。こうなったら辺鄙な所でも顔見知りの所で働かせてもらおうかしら?そうしたら事情を理解して働かせてくれるかも…。
よし!そうと決まれば早速あの店へ!
二軒目、香霖堂
なにか困れば香霖堂、厄介事でも香霖堂ってね。雇ってくれって言ったときものすごく怪しまれたけど、事情を話したら納得してくれて良かったわ…。ただ扱いはバイトと同じにするんだって。…バイトって誰?誰か雇ってたっけ?…まいっか。とりあえず、1日10000円で報酬があるみたいだから頑張らないとね!
「それじゃあ、最初の仕事は…っと。そうだ、裏にある倉庫に色々物品があるんだけど、来週から店頭へ並べようと思ってる品なんだ。1つ1つ箱に入ってると思うから、それを出して店内へ持ってこれるように準備してくれるかい?出来たら報告に来て、運ぶのは手伝うから」
店主も無理強いするような感じではないし、自分で言うのもアレだけど私みたいな温室育ちでも程よく頑張れそうだわ。…お腹空いた。
───場所は変わり、香霖堂裏───
えぇっと…。この倉庫かしらね。うわぁ中結構ホコリ舞ってるわね。とりあえずこれ全部かしら?まぁ片っ端から開けていきましょう。何が入ってるか分からないけど。
まずはこの片手で持てるような大きさの箱から開けていきまして…っと。ん?何これ?何か座って考えてる感じを描いた彫刻の置物…趣味悪いわね(幽々子様は芸術ほど疎い物はありません)。ささ次々~。今度はちょっと大きいわね…何が入ってるのかしら?
─数十分後…─
「……ZZZZ」
「…クビだな」
三軒目、夜雀庵
もう霖之助ったら、ちょっと居眠りしてただけでクビだなんて!失礼しちゃうわね!
いつまでも過去を引っ張っちゃダメね。前を向かないとダメよ私!と言うことで、妖夢ちゃんの料理を見てるからもしかしたら作れるかも!って思ったのと単に食事が好きだから最近店を建てたみすちーの夜雀庵で雇わせてもらったわ。じゅるり…。
「幽々子さん…お願いですから、食材と調理中の料理と、私!は絶対に食べないでくださいよ?」
「えーじゃあ何を食えばって言うの!?」
「つまみ食いする気満々だったんですか!?」
「冗談よ~(釘刺されちゃったか…)あははは…」
「もう…。まぁ、今は昼時でお客さんいませんから、今のうちに食材の下準備をするんで、分担するよりは二人で同じ事をして1つの工程を短くする方が効率も良いでしょう。ただし絶対に食べないでくださいね?」
絶対に食べないでって何回言われた?私ってそんなに信用無いのかしら…地味にへこむわね…。でも、何にせよ言われたことは守らないとクビにされてしまうわ。くれぐれも自制心を持って…ね。
─数分後…─
うぅ…お腹空いてきちゃった…。下準備してる目の前の食材を目にすると胃の中の物が何かに吸い取られていく気分だわ…ツラいわねぇ…。
でも、言いつけは守らないと…つまみ食いはダメ!絶対!食材はダメ!
『ぐ…ぐううぅぅぅ~』
「ゆ…幽々子さん?今…不穏な音が聞こえた気が…」
「え!?あぁ…き、気のせいじゃないかしら~あははは…」
うぅぅお腹ずいたよ…。何が腹に入れたい…何でも良いからぁ…焼き鳥ぃ…鶏肉ぅ…鳥ぃ…ん?鳥?鳥…雀…夜雀…。
「ふぅ…こんなものかな?幽々子さんはどんな感じ…(何だろう…物凄い形相でこっち見てる…そして何故か右手にフォーク…嫌な予感しかしない…)」
「鶏肉ぅ!!(錯乱)」
「め…目が正気じゃない!!た…た…助けてぇ!!」
───人里───
結局、夜雀庵もクビになっちゃった…。やっぱり飲食店で働くのは生殺しだわ。今度からは食べ物が目に入らないような仕事にするべきね。…でも、これ以上どこがあるのかしらねぇ…バイトって言うのも、楽に行かないものねぇ…。
今のところ収穫ナシ…かぁ。妖夢ちゃんは上手くやってるかしら?
続く