Girls und Panzer -裏切り戦線- 作:ROGOSS
週末更新のお時間です。
残り話数も少なくなってまいりました。
皆様の、温かい声援を背に最後まで駆け抜けたいと思います。
『Hey! 援軍に来たわよ』
無線から聞こえてくる声にノンナは思わず顔をしかめる。
かの国はいつもそうだ。都合が悪くなると、平気で仲間を裏切り、陥れる。そして、何食わぬ顔で強者のもとへとすり寄り、手柄を掠め取っていく。
そんな国の国風を受け継いでいる学校だ。どうせ、これを機にサンダース学園の絆を確かめ、未来へと続く一致団結の力を強固なものしよう、などという腹積もりだろう。それが無性にイラつかせる。腹が立つ。本気で戦いに参加していなかったのか? いったい、今更どこまでを演技だったと弁明するつもりなのか?
「虫唾が走る。ええ、そうね。これは怒りであって……嫌悪だ。だからこそ、私の行動は常に正当化している。燃やし尽くさなければ……」
「ノンナ様?」
もはや何が善で悪かわからなくなっているノンナの狂信者がギラギラとした目つきでノンナに話しかける。彼女もまた、かつてはカチューシャを慕う同志であったことは言うまでもない。しかし、気が付いた時には、ノンナに毒され、ノンナが正義であると疑わぬようになっていた。
「ゴミは燃やし尽くさなければなりません。そう、そしてゴミはこの聖戦にいてはならぬ存在。照準合わせ」
ノンナの号令で全プラウダ隊の砲塔がサンダース隊を捉える。
命乞いをしようとも、亡命しようとももう遅い。そんな言い訳は、地獄で言っていればいいさ。もっとも、地獄で言い訳を聞いてくれるような心の広い神など存在するわけがない。
「
ソ連戦車から砲弾が斉射される。
無防備に横っ腹を晒していたサンダース隊の戦車が爆炎を上げ、動きを止めていった。大破までいかずとも、今の一斉射で半数近くの米国戦車がどこかしらを損傷したのは疑いようのない事実だった。
無線からはケイの必死の抗議が続いていたが、耳に入れる気などさらさらない。ゴミがどれだけ叫ぼうとも、人間にはわかるはずのない言語なのだ。ならば、そんな言語の解読に集中するなど無意味。
『あなた……カチューシャじゃないわね。道理で話が通じないわけよ……。いいわ、ノンナ。あなたが私たちを襲うというならば、覚悟しなさい。赤なんて、物量の前では何もできないじゃない』
通信が一方的に切られる。
構うものか。仲良しこよしなど、したいと思ったことも思いたいとも思わない。ここで討つ。裏切り者の部隊と愚かな蜂起軍に引導を渡す。それこそが、カチューシャが望んでいることである、そうすることで私は私の中のカチューシャを納得させることができる。
「第二射……」
「ノンナ様!」
「なっ……!」
いったいどこにこれだけの戦力を隠していたのだろうか?
岩陰からゾロゾロと現れるM4シャーマンを目の前にして、ノンナの笑みが引き
「面白いじゃない。我々の魂の鉄槌をもって制裁の時とするまでっ!」
〇 〇 〇
「みぽりん……」
「ええ、わかっていました。そのためにわざわざ、サンダース学園を後方支援として待機させていたのですから」
「今更戻るところがあるわけがありませんのに」
「西住殿の予想通り、サンダースとプラウダが仲間割れを起こしているみたいでありますな」
「ふふ、優花里さん。彼女たちは最初から、仲間などではありませんよ」
妖艶な笑みを浮かべるみほに優花里は身震いをする。その笑みに引き付けられ、どこか行ってはいけない世界へまで昇天しそうだったことは、自分だけの秘密だ。
「では、そろそろ……継続さんに仕事をしてもらいましょうか。アンチョビさんたちには、今なら逃げることができると教えてあげてください」
「わかったよ」
「でもまさか、みほさんがあんな過激なことをするとは思いませんでしたよ。継続高校に擂鉢山で待機をしている知波単学園へと発砲させるなんて」
「今、知波単学園は僅かながら義がどちらにあるかで揺らいでいるはず。その隙をつき、戦場を混沌とさせたならば……私たちにまだ勝機はあります」
あんこうチームの誰もがまだ諦めてなどいなかった。
ほかの人ならば、間違いなく負け戦だとして逃げ回る準備をしていただろう。だがしかし、彼女たちはあの大洗女子学園を優勝に導いた女神たちなのだ。神は負けない。どれだけ劣勢に立たされようとも、最後には必ず勝つ。
古今東西、これほど変わることのない条理があるだろうか? 否、断じて否。そんなものは存在してはいけない。この世の理から外れでもしない限り。
「戦車前進。私たちも、前線へと向かいましょう」