Girls und Panzer -裏切り戦線-   作:ROGOSS

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ほかの小説も含め、なかなか更新する時間が取れませんね。
昨日はwowowでTVで初めてガルパン映画が放映されたようですね。


街道の怪物

 蜂起軍の使者が去っていき、きっちり一時間後。

 連合軍は行動を開始した。奇襲をせずに、わざわざ時間を守るようなところはカチューシャなりの意地なのだろう。

 開戦の信号弾と共に連合軍の面々が聞いたのは、爆走するクルセイダー部隊のエンジン音だった。

 いつから控えていたのか、両海岸の岩陰から現れたクルセイダーは油断していた連合軍の背後をとると、攻撃を開始した。

 咄嗟の出来事に対応する間もないまま、連合軍は撃破されていった。

 カチューシャはこれ以上の被害を避けるため、部隊を2つに分断。

 片方の指揮をカチューシャが執り、もう片方をエリカがとるということに決まった。

 エリカの部隊は逃走するクルセイダーの追撃にあたり、カチューシャの部隊は、蜂起軍の根城となっている旧元山基地へと向かっていた。

 何事もないまま元山へと進軍していくカチューシャたちを彼女たちは複雑な気持ちで眺めていた。

 好きか嫌いかで言えば、決して嫌いではなかった。

 辛い仕打ちを受けることも度々あったが、それよりもあのちびっ子隊長が指揮を執ってくれるならば安心できるという信頼が勝っていた。

 あの日までは。

 結果的に大洗女子学園を撃ってしまったことはいい。

 それがカチューシャから何の隠し事もなく、正式に言われた命令だったならば、今のような黒い感情を抱くこともなかっただろう。だが、信頼していた彼女は一切の口を閉ざし、たいして親しくもない人物から事の真相を聞いた時の気持ちを誰が理解できるだろうか?

 信頼していたからこそ、汚れ役を引き受けようとも真実を語ってほしかった。

 たったそれだけの願い。それすら叶えられなかったがゆえに、私たちは蜂起軍として旧秩序を正そうとしている。

 

「装填完了したべ」

「もう少しで攻撃命令も出るべな」

「あの隊長を撃つべか……」

「仕方ないべ。もう、うちらは退くことのできない場所まで来たべ」

「……だべな」

 

○●○●○

 

「……初日とまったく同じ。ここまで一切の攻撃もない」

「はい。ですが、うるさいサンダースが今回はいません。我々プラウダだけでここを突破してみせましょう」

「……そうね」

「どうしたのですか? 声に元気がありませんよ。どこか調子が悪いのですか、カチューシャ」

「そんなことないわよ! もう、通信切るわね」

 

 ノンナに対する恐怖心は変わらない。

 もともとから、どこか人とは違う忠誠心を誓われていると思っていたが、硫黄島(ここ)に来てからそれは、あらぬ方向にエスカレートしているようにしか思えなかった。

 ほかのプラウダ生もどこかノンナを避けている節があるほどだ。もっとも、おおっぴらにそんなことをしてしまえば、何かしらの理由をつけノンナからの粛清を受ける危険性があるため、必死に隠しているようだが……。

 なぜ、彼女がこうなってしまったのか皆目見当がつかない。

 いったい何が彼女(ノンナ)を化け物へと変えてしまったのか……。

 

「全周警戒。昨日は奇襲を受けた場所よ。しっかり、注意して」

了解(ポニョ)!』

 

 さすがに同じ場所で奇襲をしかけてくることはないだろう……。

 消えた奇襲部隊については、何となくだがカチューシャの中で検討をつけていた。

 硫黄島がかつて上陸してくるアメリカ軍に対抗するために、島中につながる地下道を掘っていたという情報はすぐに見つけることができた。

 それでも、火山活動で出来たこの島で密閉された地下空間に閉じこもるというのは命の危険にかかわることだ。

 硫黄の流出、脆い地盤、決して快適とは言えない地下空間。

 勝つためにならば、彼女たちはここまでやるというのか?

 

『奇襲っ! 昨日と同じ場所です! 3号車迎撃に向かいます!』

「同じ場所から?」

 

 カチューシャの予想を外れ、蜂起軍は奇襲を仕掛けてきた。

 しかも、昨日とは大きく違い、対抗しているのは2両のヤークトパンターだけだ。

 

『カチューシャ様! どうしますか!」

「……いいわ、迎撃よ!」

 

 カチューシャの号令の待っていたかのように数台のT-34-85が飛び出していく。

 2両に対して5両での攻撃。

 これだけあれば、万が一にでも逆襲に遭うことはないだろう。

 そこにプラウダの慢心が生まれた。その慢心のせいで、空から徐々に近づいてくる飛来音にまったく気づくことがなかった。

 その存在に気が付いたとき、爆風に巻き込まれ大破までともいかないものの2両のT-34-85が行動不能となっていた。

 

『どこからっ!』

『カチューシャ様! 斜面を!』

 

 山の斜面に一台、その怪物は鎮座していた。

 カチューシャも頼っていたその車両は、砲身から煙をあげており、今の砲撃の張本人であることを物語っていた。

 

「カーべーたん……」

 

 リトアニア方面の戦いでは、僅かな台数でドイツ戦車を40両も撃破した怪物は、機動性が乏しいものの、固定砲台として扱うには十分すぎる破壊力を持っている。また、37mm対戦車榴弾を48発も弾き返した防御力も大きな障害となるだろう。

 進行方向に道は一本。

 KV-2という怪物を抜けなくては、カチューシャたちはこれ以上の進行を諦めるしかない。

 

「いいわよ、やるわよ。全車、攻撃準備。目標、KV-2!」


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