Girls und Panzer -裏切り戦線-   作:ROGOSS

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皆さんは、ガルパンのキャラだと誰が好きですか?
私はアニメ版でしたら、麻子でしたね。
劇場版こみでしたらローズヒップでしょうか。


彼方からの挑戦状

「君たちの行動によって、継続高校の次年度からの大会出場権が剥奪されるかもしれないというのに……! その態度は何なのですか?!」

 

「継続高校……知らない名前だね」

 

「とぼけるのはやめたまえ。君が継続高校の隊長のミカと言うことはわかっているのだよ」

 

「私に名前なんかないさ。みんながミカと呼んでいるだけで」

 

「き、君は!」

 

 一連の騒動の後、継続高校の面々はWTFCの隊長室に集められていた。どこから情報を聞いたのか、我が物顔で事情聴取をしたい、などと言うメガネがやってきたのも丁度同じ頃だった。

 だが、今のメガネに事情聴取を始めた時の余裕はない。ノラリクラリと質問をかわし、常人には理解できない発言を繰り返すミカに業を煮やしていた。

 そしてとうとう、声を荒げようとした瞬間、メガネの隣にいた天音が口を挟んだ。

 

「メガネさんよ。あんたが何をしたいか何てのはわからない。だけどな、時間切れだ。帰りな」

 

「な、なにを! この私にそのような事を!」

 

「黙りな! たかが一国の小役人ごときが! こっちは国際機関だ! お前の首などいくらでも圧力をかけて飛ばせるぞ。それとも何か……」

 

 天音はメガネに耳元で囁く。内容を聞き取ることは叶わなかったが、それを聞いた瞬間メガネの顔がみるみる青ざめていくのを見るに、余程都合の悪いことを言われたのだろう。

 

「い、今は失敬する。だが、これで終わったと思うな」

 

「来るなら、アポぐらいとってから来い」

 

 青筋を立てつつも青ざめる、という混沌(カオス)な表情を浮かべたまま、メガネは乱暴に扉を閉め部屋を出ていく。廊下からは、壁を蹴り飛ばしたのだろうか鈍い音が聞こえてきた。

 

「さて、じゃあ今度は私の番だ」

 

「何も話すことはないさ」

 

「それを決めるのは私だ」

 

 無言の睨み合いが続く。ミッコはうつらうつら船を漕ぎ一人だけ呑気にしているが、アキと副隊長はそわそわとしている。

 

「度胸は認めるさ。さすがは私の後輩」

 

「おや? 何の先輩なんですかね? わかりませんね」

 

「ちょっと、ミカ。とぼけてばかりじゃ話が進まないじゃない」

 

「そんなことはないさ。あの人は私を理解しているし、理解できていないのなら話す価値もない」

 

「ひねくれてるんだから……言うことがあるくせに……」

 

 アキのボヤキを笑顔で受け流すミカ。手元にカンテレがあったならば、確実に何かしらの音色を響かせていただろう。

 天音はニッと笑うと笑い声を上げ始めた。

 

「いやいや、さすがだよ! 私は別に今回のことを問い詰めようとは思っていないさ。だって……」

 

 そこで言葉を切る天音。

 各人は次にどのような言葉が来るのかを怯えながら、目を輝かしながら待ち続けた。

 

「君達はたまたま、飛行機から落ちた。そしたら、早とちりをした私の隊員が迫ってきたものだから、思わず交戦してしまったんだろ? それは仕方ないね」

 

「ちょ、隊長! 何を言っているんですか! あれは明らかなテロ行為です! この国の法律で裁かれてもおかしくありません!」

 

「あのなぁ、そんなことをしてみろよ? WTFCの面子は完全に潰れるぞ」

 

「で、ですが……」

 

「ここで大切なことは何だ?」

 

 唐突に投げかけられた質問に、副隊長はクエスチョンマークを浮かべた。

 この場でやらなければならないこと、大切なこととは? それは一連の騒動をしっかりと裁くことではないのか? あれはただの事故で済ませる事案ではない。

 副隊長がショート寸前なことに気が付くと、天音はわざとらしく大きくため息をつく。

 

「まったく、これだからお前は結婚できないんだよ」

 

「大きなお世話です」

 

「良いか? 今するべきことはな。こいつらのメッセージを聞くことだろ?」

 

「メッセージ?」

 

「そうだろ? 可愛い後輩よ」

 

 ミカは静かに笑みを浮かべる。

 そう。先鋒を任された彼女達には、WTFCの戦力を漸減させること以外にもメッセージを伝えるという重大な役割があった。

 日本支部隊長の出身校が継続高校であることから、この作戦はミカ達に任されたといっても過言ではない。

 

「私の口から言えることはただ一つ」

 

「それはなんだ?」

 

「我々は島で待つ。正々堂々と正面から受けて立とう、止めて見せろ。だ、そうだ」

 

「くくく……そうかそうか! そう言っていたか! はははは! 面白いじゃないか! WTFCに喧嘩を売って? 挙句の果てには、挑戦状まで叩き付けるのか! 良いだろう、WTFCは一週間後、硫黄島へ全面攻撃を仕掛ける! 心しておくがいい、とでも伝えておいてくれ」

 

「わかった。行くよ、アキ、ミッコ」

 

「い、行かせていいんですか?!」

 

「当たり前だろ? 島に戻らにゃ、伝言は伝えられない」

 

 放心状態の副隊長の横を青いジャージを着た少女たちは通り過ぎる。アキは最後に深々と頭を下げたが、他の者は特に気にすることなく部屋を後にした。

 何を考えているんだ。この人の心がいつになく読めない。

 

 

「なぁ、副隊長よ」

 

「何ですか?」

 

「西住みほの望んでいることって何だ?」

 

「望んでいること?」

 

 副隊長は初めて天音へ視線を向けた。

 そこにはいつものお茶らけた姿はどこにもない。真剣に、未来(さき)を見据えて采配を振るう猛将の姿がそこにはあった。

 

「あいつらは吐き出せないんだろう。復讐結構、恨むも結構。だけどな、その気持ちがこれ以上間違ったほうに行かないように、吐き出させてやらにゃいけないだろ。言っている意味がわかるか?」

 

「全然わかりませんよ。本当、天音リンって人はどこまでも適当で自分勝手なんですから」

 

「それ褒めてるの?」

 

「馬鹿じゃないですか?」

 

 副隊長は最大限の侮蔑の視線を向けると、仕返しとばかりに大きくため息をついた。

 もちろん、心のどこかではわかっているし信じていた。10年以上一緒にいて彼女が間違えたことがないということを。その選択が常に正しいということを。

 それでも今だけは、何も察していない無能な部下を演じていたかった。




副隊長「そう、あなたも大変ね。貧乏だしね」

アキ「そうなんですよ。ですからお願いがあるんですけど」

副隊長「食料も布団もわたさない。あと、ポケットの中にあるレーションを今すぐ出せ」

アキ「ちっ……勘の良いアマは嫌いだよ」

次回、硫黄島上陸編(の予定)

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