Girls und Panzer -裏切り戦線-   作:ROGOSS

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卿ら。やはり、こんなダークなガルパンを望んでいたのか?!(勘違い)


気に食わない

 広大な富士演習場。

 陸上自衛隊の演習はもちろんのこと、様々なイベントや戦車道の試合も行われるその地に隣接するように、WTFC日本支部専用の滑走路と施設がある。

 多くの隊員が訓練に励んでいる中、隊長の天音リンと副隊長は隊長室で来客をもてなしていた。

 

「なるほどね。で、だ。私達にどうして欲しいって言うんだ?」

 

 高圧的であり、男勝りな話し方をするのが何を隠そうWTFC日本支部隊長の天音である。日本戦車道五大流派の天音流の家元であり、若干28歳にして一国のWTFC責任者を務める天才。

 しかし、目の前にいる少女に動じた様子はまったく見られない。赤髪をツインテールにし、大洗女子学園の制服を自分の誇りのように着こなす彼女は、重ねて天音へのお願いを口にした。

 

「天音さん。お願いします、西住ちゃんを救ってあげてください」

 

「だから言ってるだろ。救うも何も、立派な武装蜂起してるんだ。角谷が黙っててもこっちから動くさ」

 

「そうじゃないんです! 西住ちゃんは……今、周りが見えていないはずです……彼女は、こんなことをするような人じゃない。ですから……」

 

「……それは生徒会長としての意見か?」

 

「違います。戦友としての意見です」

 

 キッパリと言い放った角谷へ、天音は鋭い目線を向ける。角谷も逃げることなくその視線を真っ向から受け止めた。重い沈黙が流れる。副隊長だけが、これから先に何が起きるのかと気が気でない様子だった。

 やがて、天音はフッと唇を緩めるとわかった、と小さく答えた。

 

「その話に関してだが、実はさっき文科省の役人から電話がかかってきてな。こっちが聞きもしていないのに、私は関係ないだとか、勝手にやったことだとかペラペラ話して言ったよ。言えば言うほど怪しいっていうのにな」

 

「でしたら、私の話を」

 

「あぁ、頭の中には留めておくさ。だがな、WTFCは常に中立でなければならない。本当はお前と会っていることさえアウトだ。だから、全ての意見を反映することは無理だ。ここで会ったことも公にはしない」

 

 その言葉を合図に、副隊長が部屋の扉を開いた。

 それは、ここから早く出ていけという証明に他ならない。角谷も意図を感じ取り、頭を深く下げると部屋を出ていった。

 その背中が見えなくなるのを確認すると、副隊長は扉を閉める。

 

「まったく、面倒な案件だ」

 

「ですが、隊長の好みではないのですか? 荒事はズッと好きでしたでしょう?」

 

 副隊長と天音は高校時代からの付き合いがあった。ゆえに、彼女がその態度通り情熱家でありながらも激情家なわけではなく、緻密な計算をする狡猾さもあることを副隊長は知っていた。

 その狡猾さと言えども、礼と義を重んじる姿から部下からの信頼はあつい。

 

「私はね、この案件が根本から気に入らないんだよ。そもそも、どうして武道で学校の廃校を決めなきゃいけない。スポーツでもゲームでもない武道だ。言葉の重みが違うことを理解しているのか」

 

「やめてくださいよ、そういう過激な発言は。また週刊誌にあげられますよ? 武道でもスポーツでもゲームでも、ルールを守って楽しくやるって点では同じですよ? まぁ、隊長の気持ちがわからないこともないですけど……」

 

「おうおう、やれるものならやってみろってんだよ。週刊文冬(ぶんとう)だっけか? 色々と探り入れるような電話しやがって……直接会いに来いってんだよ」

 

「会いに来ても、詳細を話してはいけませんよ?」

 

 そう言いながら、副隊長は緑茶を天音へと差し出す。

 気が利くじゃん、とでも言いたげな笑みを浮かべる天音に副隊長は俯きながら悪魔的笑みをする。

 彼女が猫舌だということを知っていて、あえて激熱の緑茶を淹れていた。過激な発言を繰り返す上官への嫌がらせに他ならない。

 しかし、勘の良い天音はまったく緑茶に口をつけようとしない。それどころか、湯呑を遠くへおいやると地図を引っ張り出した。

 

「なるほど、復讐の島とはよく言ったもんだ」

 

「硫黄島……。数年前までは、海上自衛隊の基地がありましたが近くに学園艦の補給基地が出来たため、そちらに移動したようですね。それにより、硫黄島基地は放棄されたとか……」

 

「放棄されたと言ったって施設も滑走路もまだまだ使えるんだろ? おまけに、島である限り外からの侵入者は一目瞭然、妨害も入りずらい。よく考えたもんじゃないか」

 

「そこは褒めるべき場所では無い気がしますが……噂によると私達の後輩も蜂起に関わっているそうですよ」

 

「へぇ……とにかくやること為すこと全てが突拍子もないからな。空から降ってきたりしたら、笑えるな」

 

「ですから、真面目に聞いてくださいよ」

 

「へいへい。……競技用の戦車を使ってるんだろ? だったら、破壊しなくても白旗さえ上げさせれば動かなくなる。鎮圧って言ってもそう難しくないだろ」

 

「そうでしょうか……」

 

 真剣に考えているのかふざけているのか……。

 掴みどころのない隊長に呆れながらも、副隊長は作戦会議に付き合い続けた。

 

●○●○●

 

「ん……?」

 

「どうした?」

 

「レーダーに機影あり。うーん、まずいな。富士演習場の真上を通過するぞ」

 

「警告するか?」

 

 管制官は頷くとチャンネルを切り替える。

 それが悪夢への一歩目とも知らずに……。

 

「こちらWTFC管制塔。所属不明機に告ぐ、直ちに航路を変えよ」

 

『……』

 

「繰り返す。直ちに航路を変えよ」

 

『……』

 

「応答せよ! 繰り返す! 応答せよ!」

 

「どうした!」

 

「まずい! 何の反応もない!」

 

「ハイジャックか? トラブルか?!」

 

「わからん!」

 

 その時、管制塔にいた彼らは目にすることとなった。

 黒いC-5Mスーパーギャラクシーがその巨体が近づきつきながらも急激に高度を下げ、同じく真っ黒に塗られた戦車を一台エアボーンしたことを……。




どうして裏切りの島なのか?
諸説ありますし、政治的問題とも含む可能性があるので詳細については省かせていただきます。

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