Girls und Panzer -裏切り戦線-   作:ROGOSS

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私「あぁシリアス、君はなぜシリアスなのだい?」

友1「それが人間だからさ( ー`дー´)キリッ」

友2「お前ら一回〇ね」






Interview with アンチョビ

 私がその記事を見つけたのは、没ネタが入っている段ボールの中だった。

 かつて戦車道を受講していた私がその記事の題名を見た時、稲妻に撃たれたかのような衝撃が体中に走ったのを今でも覚えている。

 かくして私は、デスクの許可を取り取材を始めた。

 あの時、あの島で。いったい何が起きたのかを。そして……どのような結末を迎えたのかを。

 

『調べても構わんが、それが記事になる可能性は極めて低いぞ。それでもいいのか?』

 

 デスクの言葉の意味は理解できなかったが、何か重要な意味を含んでいるように思えてならなかった。

 

「引き返せない、か……」

 

 静かに呟き、都内某所にあるイタリアンレストランに足を踏み入れる。

 このレストランのオーナーシェフと会う約束をしているのだ。

 ディナー限定の店ということもあり、昼間の店内に人の気配はあまり感じられなかった。

 

 

「ごめんください」

 

「はーい」

 

 陽気な声の後に出てきたのは、ツインテールの笑顔が印象的な女性だった。写真の頃とは違い、黒いマントも鞭も身に着けてはいない。

 

「すみません。週刊文冬(ぶんとう)芳野(よしの)と言うものです。失礼ですが、安斎さんですか?」

 

「あぁ、記者さんか。どうぞどうぞこちらへ」

 

 そうして私は、窓際のテーブルへと案内された。

 緑と白と赤を基調にした店内にほのかに漂う食べ物の匂い。そこにいるだけで幸せになれるような良い店だと私は感じた。

 

「あんまり時間ないからさー。なるべく早く終わらせてくれるか?」

 

「もちろんです。あまりお時間は頂けませんしね。では、さっそく……」

 

 ノートパソコンを広げ、ボイスレコーダーのスイッチを入れる。

 あらかじめ質問内容は決まっており、予定としては1時間もかからないで取材は終わる予定だった。

 

「単刀直入にお聞かせください。大洗女子学園クーデター事件は本当にあったのですか?」

 

「クーデターね……あったと言えばあったけど。あれは、あくまでも戦車道の試合だったよ。だからクーデターなんて物騒なものじゃないと思うけどな」

 

「では何故記録がどこにもないのです? 戦車道の試合だったとしても、クーデターだとしてもまったく無いというのはおかしくありませんか? 防衛省、文部科学省、戦車道連盟。どこにもないんです。それについては、どうお考えですか?」

 

「わからないな……そういう難しいことは、偉い人が決めることだろ? カルパッチョならわかるかもしれないけど」

 

 カルパッチョ……安斎さんの後輩の人だな……。

 一人納得しながら、私は質問を続ける。

 安斎は、嫌がる素振りを見せず他愛無いことから全て丁寧に答えていた。しかし、私がある質問をすると突然その表情が険しくなったのを私は見逃さなかった。

 

「では、安斎さんはどうして島へ行かれたのですか?」

 

「実はな、ここだけの話。最初は戦車道の大きい大会が開かれると思っていたんだよ。黒森峰に聖グロリアーナ、サンダースとプラウダ。継続に知波単。そして大洗女子。当時の戦車道の有名どころが一つに島の集合しているなんて試合くらいしか考えられなかったんだ。この機を逃したら、稼ぎ時はない。この大会期間中に稼ぎまくってP40を修理しよう! そう意気込んでいたものだよ……」

 

 安斎はどこか遠くを眺めながら静かに語り始めた。

 要約するに、彼女達「アンツィオ」の面々は、屋台出店のために島へ向かったが、その後のゴタゴタに巻き込まれ、戦闘に参加することになったらしい。

 

「では、真実を知った時のお気持ちは?」

 

「うーん、不思議と怒りはなかったよ。みほが怒るのも当然だったし。だけど……上手くは言えないが、あの島ではとにかくたくさんの感情が渦巻いていたんだ。怒り、悲しみ、恨み、憎しみ、喜び……誰もが自分を信じ切れなかった、他人を信じ切れなかったんだ」

 

「信じ切れなかった……」

 

「そういうこと。巻き込まれた形だったとしても、私たちも参加してしまった以上、最後まで逃げることは許されなかったし、逃げようとも誰も言わなかった」

 

 

 ペパロニは最後まで気づかなかったらしいのだけどね……。

 もう一人の後輩の名前を出しながらも、安斎は当時のことを覚えている限り詳細に語った。

 没となった記事からは読み取れなかったような新しい事実もあり、有益な時間になったと私は安斎に感謝しながらレストランを後にした。

 

「せっかくだし、一皿くらい何か食べて行けばよかったかな……」

 

 手帳を開きながら嘆くも、次の予定の時間が差し迫っていた。近場のコンビニによる時間さえ無い。

 

「今度ゆっくりと行こう。ありがとうございました」

 

 見ているともわからない安斎に、私はもう一度深々と頭を下げ礼を述べた。

 取材は始まったばかりである。

 当時の関係者がどのような思いでいたのか、それを突き止めるまで私は足を止めないこと強く誓った。

 

 

 

 

 




今回は少し短めの投稿となってしまいました……。
なにやら、Diesを知っている方もいらっしゃるようでして……大変嬉しいことですね。
次回は通常通りの、黒くてドロドロしたやつです←

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