されど、彼女は我が道を   作:kotono

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嬉々として、平塚静はその部屋に連れていく

   『高校生活を振り返って』

      二年F組 比企谷八幡

 青春とは嘘であり、悪である。

~~~《省略》

 

 

《省略》~~砕け散れ。

 

 

 

 

「なぁ、比企谷。私が授業でだした課題はなんだったかな?」

 

 応接ブース兼、普段は喫煙席として利用されている職員室の一角にて、ハキハキと抑揚よく、俺の作文を朗読してくださりやがって、国語教師の貫禄を見せつけた平塚静教諭は、紫煙を立ち上らせながら問いかけた。額には青筋が浮いている。

 

「............『高校生活を振り返って』というテーマの作文でした」

 

 そう。『高校生活を振り返って』

 今回の課題は、要は一年間の反省と今後の抱負を書き連えば良かったのだろうが、生憎とこちとら去年もボッチ、今年もボッチ、来年もボッチの孤高の虎。

 変化の無い日常を未来まで繋げた作文を書いて何の意味があるというのか。

 

 

 なんて考えで、少し題を捻って捻出した高校生リア充どもへのアンチテーゼ文は、どうやら目の前の女教師の機嫌を損ねてしまったらしい。

 

「そうだな。それではこの舐めた作文は何だ?テロリストなのか?それともバカなのか?一応、言い訳くらい聞いてやる。言ってみろ」

 

 ギロリ。そんな擬音がするような目付きで睨まれる。なまじ美人なだけあって、こういう表情の威圧感は半端じゃない。

 

「ひゃいっ、俺はちゃんと高校生活を振り返ってましゅよ?近頃の高校生はらいたいこんな感じじゃないれしゅか!だいたい合ってますよ!」

 

 当然、噛む。それはもうビビりまくって噛みまくってしまいましたよ。ええ。

 

 

「普通こういうときは自分の生活を省みるものだろうが......」

 

 呆れながら平塚先生が言う。だが、これは予測済み。

「だったら、そう前置きしておいてください。これは先生の出題ミスだあってですね」

「小僧、屁理屈を言うな」

 

 俺の岩壁な反論は屁理屈での一言で完封された。

 

「小僧って......。いや確かに先生からみれば.....」

 

 風が吹いた。

 目の前の女教師の拳が俺の頬を掠めている。

 

「次は当てるぞ」

 目がマジだ......

 

「......すいませんでした。書き直します」

 

「よろしい。できれば、もっと早くにそう言ってもらいたいがな。............君は部活はやってなかったよな?」

「はい」

 

「友人、恋人はいないよな?」

「...........はい」

 

 いない前提の聞き方をされた。泣きそう。

 

「そうかそうか、やはりいないか。私の見立ては正しかったようだな」

 声を弾ませる平塚先生。

 八幡、ホンとに泣いていい?

 

「よし、レポートは書き直して後日提出。急ぐものでもないから、一週間ほど待ってやろう」

「うっす」

 

「それとは別に君には奉仕活動を命じる。女性に年齢の話はするなと教わらなかったのか?罪には罰が必要だ。」

「え、ちょ、ちょっと?奉仕活動って?」

「まぁいいから、ついてきたまえ」

「は、はぁ......?」

 

 

 

 

 

 ということで、平塚先生の後ろをついてたどり着いたのは特別棟。そこにひっそりとある一室。空き教室?

 この部屋の掃除とかやらされるのか?

 

 

「邪魔するぞ」

 

 先生は無遠慮に扉を開けて中に入っていく

 

 おや?空き教室じゃない?

 

「平塚先生。入るときはノックを、とお願いしていたはずですが」

「ノックをしても君は返事をしら試しがないじゃないか」

「それは先生が......」

 中で、平塚先生が部屋の住人と話している。女子生徒だ。

 入口に突っ立って眺める。俺は彼女をしっている。いや、俺じゃなくとも、二年の大半や三年のある程度は知っているか。それほどに雪ノ下雪乃は有名だ。

 普通科より偏差値が2、3高い国際教養科の中でも特に優秀な才女。定期テスト、実力テスト毎回1位に加え、容姿端麗、武道の心得もあるという。これぞまさしく高嶺の花な生徒だ。

 

 その彼女が俺に冷めた瞳を向けた。

 

「それで、そこのぬぼーってした人は?」

 

 毒舌で切ってくる雪ノ下。初対面で躊躇無い物言いに呆然としてしまった。

 その間に、平塚先生は話を進める。

 

「彼は入部希望者だ。ほら、自己紹介したまえ」

「え?あ、あぁハイ。二年F組、比企谷八幡です。......入部希望?」

 

 何を仰ってるんだろうか、この教師は?

 

「君にはペナルティとしてここでの部活動を命じる。異論反論抗議口答えは一切認めない」

 

 怒濤の勢いで捲し立てた平塚先生は、こちらに発言を認めず、雪ノ下に向き直る。

 

「というわけで、だ。雪ノ下、見ればわかるだろうが、彼は中々に性根が腐っている。ヒトとの付き合いかたを学ばせてやってくれ」

 

「お断りします。そこの男の下卑た目には身の危険を感じます」

 

 そう言って身を寄せる仕草をする雪ノ下。偏見も甚だしい。もはや名誉毀損だろ、コレ。

 

「安心していい、その男は刑事罰に問われるようなことはけしてしない。彼の小悪党ぶりは信頼できるよ」

 小悪党って、おい......

「小悪党......なるほど」

 納得しちゃったよ。

「いいでしょう。その男の更正、承ります」

 

「............」ハァ.....

 

 ため息が漏れる。この血の通っていなさそうな冷血女と部活だと?頭が痛くなる。

 どうやら悩みの種がまた1つ増えたようだ。

 

 

 ただでさえ、最近は昼休みも小さな侵略者の対処に困っているってのに......

 

 

 


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