……(´・ω・`)
「どうだった?」
中庭でカウヒー茶を飲んでいたリョータが立ち上がり、グンゾウに聞いてくる。グンゾウは何も言わずに頭を横に振った。
リョータが飲んでいたカウヒー茶から湯気が立ち上っている。温かいものを飲んでいた。最近は
「ちっ! 意地っ張りが! いいじゃねーか、1ゴールド
リョータは
「まあ、それだけではないんだろ。人の気持ちはなかなか変えられないさ」
「くそっ! すぐ
――別に諦めたなんて一言も言ってないけどな……。
「ごめんね。あたしのせいで……」
ヨシノが済まなそうな顔で下を向いた。
「ヨシノ、全然違うぜ。カズヒコが頑固なだけだ。俺等がいなくて、オークなんかとやれんのかよ!」
――カズヒコからすれば俺等にそういう風に思われたくないってところもあるんだろうしな……。
まずはリーダー同士で話し合いをしてもらったが、カズヒコの意志は固く、リョータの説得には応じなかった。
次にグンゾウもカズヒコを説得に行ったが、成果を上げることが出来なかった。
少し前、宿舎にて。
「今回の
カズヒコは口調は優しかったが、曲がらない強い意志を感じさせる声だった。胸を張り、背筋を伸ばした姿勢も自信を感じさせる。
「あのカジコ
そして、イシュ・ドグランとはオルタナがオークの一団に攻められ、城門を突破されるというイシュ・ドグラン事件を起こしたオークの
チーム・レンジとは戦士レンジ率いる
「おまけに義勇兵全体で既に150人を超える受諾があったようです。オーク200匹に対して正規兵700人+義勇兵150人ですよ。4対1の戦いで1ゴールド。上手くいけば、剣を交えることなく終わります。こんな
――そんな甘い話、あるわけがない。
グンゾウはカズヒコの見通しの甘さに少し呆れた。
最近、グンゾウは暇さえあればルミアリス神殿にある図書館で兵法書を読み漁っていた。数は少ないが、古典と呼ばれる名作が多く所蔵されているため、学習効果は高い。
――戦争は数だけの勝負じゃない、
そう思っていてもグンゾウは強く言えない。
「そうか。カズヒコは今回はいい
「ええ、そうです。だから、例えリョータ達がいなくても参加したいと思ってます」
「参加したい……のかぁ」
カズヒコの発言からは
「ふふふ」
カズヒコが急に笑い出す。グンゾウは訳が分からず頭を捻った。
「どうした?」
「あ、いや、全然違うなって思って」
グンゾウはますます分からず、顔の皺が濃くなった。
「リョータは来るなり、『おい、カズヒコ。ヨシノが生理だから、今回の
――やっぱり
「本当に…………面白いだろ?」
「ええ。まあ、気持ちは分かります。ただ、俺にも思うところがあるので、今回は単独でもやれる計算があるんです。リョータやヨシノ、またグンゾウさんに頼り切りではありません」
「そうか……」
――リョータやヨシノに頼ってないと見せたいところもあるんだろうな……。それでも、俺はカズヒコ達に死んで欲しくない。
グンゾウは
「じゃあ、せめて、俺の戦術論を聞いてくれないか?」
「もちろん。グンゾウさんの戦術は聞いておきたいですよ。教えてください」
「最初に、俺が守っている大原則を3つ……」
グンゾウはカズヒコに思いが伝わるように、懇切丁寧に戦術を説明し始めた。
アキが普段着の上に神官衣を羽織り、腰に
今日も長い髪の毛を片側にまとめ、細い肩から胸にかけて垂らしていた。大きくとった
――ほんと、好み。
「あの……、リョータかグンゾウさん? ブリちゃんが『
アキがリョータとグンゾウに管理人経由のブリトニーの伝言を伝えてくる。宿舎の管理人は元義勇兵がやっていて、義勇兵団事務所と繋がっている。
それを聞いて、リョータとグンゾウは顔を見合わせた。目が合った後に、両方とも顔を
「オッサン行けや」
「俺、昨日も会ってるんだぜ。今日会ったら、猛毒が致死量を超えちゃうよ。あと、俺は“オッ”って名前じゃねーけど」
リョータはグンゾウの言葉を完全に無視して、話し始める。
「アキ、代わりに行ってきてくれや」
「わ、わたし? いいけど、ちょっと……」
――んん?
「お前、“ちょっと”が多過ぎだろ? 生理なら、生理と女らしく言えよ」
「ちがっ!……」
アキは否定しかけて、恥ずかしさに顔を赤らめ、下を向いてしまった。
「こらっ! 馬鹿リョータ! アキちゃんになんてこと言うの?!」
ヨシノの平手がリョータの肩を叩く。
「アキちゃんは違うし! アキちゃんは生理じゃないから! 生理なんかならないから!」
――出た。ヨシノの天然殺し。これ、攻撃力高いな。俺まで恥ずかしい。
「ヨシノ、お前、嘘が下手すぎてバレバレなんだよ」
リョータが呆れた顔をする。
「え? ほんとー?」
ヨシノは一瞬きょとんとしたが、直ぐに訂正をした。
「……あ、いや、嘘じゃないし!」
アキは居たたまれない。グンゾウはこの状況に
「アキ、一緒に行ってくれる? 俺、ブリトニーとふたりっきりになるのは、嫌なんで」
それを聞くと、この場を離れたかったアキはすぐに返事をする。
「は、はいっ! はいっ! 行きましょう。行って下さい」
――んー、リョータの意図しない素晴らしい
「おろろ」
グンゾウは驚ろかされる。アキがグンゾウの腕を掴み、つかつかと宿舎の外に小走りでグンゾウを引っ張っていった。
義勇兵団事務所までの道中をアキとふたりっきりで歩いていた。先程までの恥ずかしさを晴らすように、アキは紅潮した顔をぱたぱたと手で仰ぎながら、口を尖らせて深呼吸をしている。
「ふー……、暑いなー」
「じゃあ、事務所に寄る前に少し北区の市場でお茶してからにしない?」
「あっ! いいですね。甘い物でも食べないと、元気出ないですもんね」
「たまには
「ほんとですか? やったー」
アキの顔が笑顔になった。
同時に、一陣の涼風がグンゾウとアキを撫でていく。アキから漂う女性特有の甘い香りが風に運ばれて、グンゾウの嗅覚を刺激した。嗅神経から伝わった心地よい信号によって、グンゾウの脳内に大量の
――
――
グンゾウのことを睨み付ける青い瞳。その回りには
――
「どこ見てんのよー!」
ブリトニーが
「はっ! はい。なんでしょうか?」
グンゾウは背筋がしゃきっと伸び、直立不動の姿勢になる。釣られて、一緒にきたアキも直立不動の姿勢になる。ここは義勇兵団事務所。
「あらやだ、冗談よ、グンちゃーん。筋肉馬鹿は来ないのね。まあ、いいわ。別に誰に伝えてもいいから」
――だったら、リョータと俺を指名すんなよ……。
「あんた達はさー。何でも、今回の
ブリトニーは何だかよく分からない金属と革でできた装備を
「選択は
グンゾウは胸を張って堂々と答えた。この件に関して何も後ろ暗い気持ちはない。
質問したわりに、ブリトニーはグンゾウを
「ふーん。まあ、やっぱり女って大変よねー」
そうブリトニーに言われたアキが、恥ずかしそうに顔を赤らめて、下を向いた。
――どこまで情報が漏れているのやら。
「まあ、いいわ。オルタナに残る義勇兵も必要だしね。他でもない、あんた達に誰でもできちゃう安全な
「は? 何を?」
ブリトニーは奇妙な装備を棚に片付けながら、話を続ける。
「グラハム・ラセントラ将軍率いる赤蛇隊がリバーサイド鉄骨要塞、レン・ウォーター准将率いる青蛇隊がデッドヘッド監視砦を攻めている間、オルタナの防備は手薄になるわ。その間、オルタナを防衛する役目を担っているのがイアン・ラッティー准将なの」
グンゾウはよく分からない人物の名前が複数飛び出てきたので混乱していたが、ブリトニーは気にせず続ける。
「そこで、オルタナの防衛にも義勇兵団の力を借りようと、辺境軍から要請があったわ。つまり、
グンゾウはブリトニーがお得意の両掌を上に上げた、お手上げの姿勢をしてから、首を
「さあ? 報酬次第かな? その夜警のお手伝いってのはいくらなんだい? 俺等はとびきり優秀な新人義勇兵だからな。お高いぜ」
ブリトニーは口をへの字にして、同じくお手上げの姿勢をしてから口を開いた。
「ゴブリン退治くらいしか実績無いのに、大した自信ね。でも、喜んで。破格の報酬よ」
「ほう」
グンゾウは期待して、ブリトニーの次の
アキも興味津々で耳を傾けていた。腕には道中に喫茶したお店で買った、ヨシノへのお土産を抱えている。
「なんと………………」
ブリトニーは長くて黒い睫毛をバサバサ鳴らしながら、目を閉じる。次の言葉までの
――
グンゾウの心に苛立ちが芽生え始める。
すると、ブリトニーは突然目をバチっと開く。そして、右手の人差し指を立てて、グンゾウの方に勢い良く突き出す。グンゾウとアキは驚いてびくっとなる。アキはヨシノへのお土産を落としそうになって、慌てて空中で
「
ブリトニーはこの上なく気味悪い笑顔でそう言った。
「んだよ。夜勤やって、1シルバーかよ。そんなんやる価値あるかー?」
グンゾウは宿舎に帰ると
「まあ、いいじゃないか。深夜3時くらいから朝までの短い時間だし。オルタナの街の平和を守るっていう崇高な目的もある。カズヒコ達を見送ってからすぐに天望楼に行けば十分間に合うから」
「あたし、夜のオルタナ楽しみー。過去に死んだ女義勇兵の幽霊とか出るかもー? 長い黒髪を垂らしてさー。怖いー! ふふふ。生理中は眠くなるから、昼から寝とこっと。ところで、これ
ヨシノは
――
「ヨシノ……」
アキも苦笑している。
「キシシシ、夜警はいいが、カズヒコ達が
突然ハイドが妙なことを言い出した。
「なんやねん、突然。何か根拠でもあるかいな?」
シムラが疑わしそうにハイドに
「シッシッシ、僕には確実に引き留められる策がある。キシシ」
「まじかよ。オタクっ! 言ってみろ」
リョータが膝を叩いてから、ハイドを指差す。
「キシッ! 当日まで黙っておく。今から準備する。シシシシシシシシ」
そう言うと、ハイドは「シシシシ」言いながら出掛けてしまった。皆、不思議そうな顔でハイドを見送った。
――相変わらず、
それから、グンゾウ達はカズヒコ達を説得することができないまま、時間だけが過ぎていった。気が付けば
そろそろ戦闘シーンが恋しくなりますね(`・ω・´)
早く話を進めたくなって文章が乱れているのが気になります。
次はもう少し期間を空けて投稿します。
本当は理解して欲しいけど、伝わらない時、皆さんはどうしますか?