実況パワフルプロ野球‎⁦‪-Once Again,Chase The Dream You Gave Up-   作:kyon99

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第23話 きらめき高校 VS 山の宮高校

 恋恋高校が出場停止処分が下り早くも三日が経過した。

 頑張地方の甲子園予選大会は、何事も無かったかの様に進んで行った。

 早川あおいの件で、三回戦に戦う相手であり不戦勝で勝ち上がったきらめき高校は第四試合目を迎え、この試合で頑張地方は準決勝試合となる。

 対するのは、太郎丸龍聖と名島一成が率いる山の宮高校だ。

 山の宮高校野球部は五十年と言う長い歴史の中で、四回戦まで勝ち進んだ事など一度も無く、毎年古豪パワフル高校やそこそこ実力のある高校に負けてしまい、中では赤とんぼ高校やバス停前高校などの弱小校に続く弱いチームだ、と言う者もいた程に、山の宮高校の強さは知られていた。

 だが、今年は既に三回戦を終え、今大会最多である、トータル二十打点の記録を収めている。

 更には、エースナンバーを背負う二年の太郎丸龍聖は三試合無失点記録を樹立させ、奪三振数はあかつき大附属の猪狩守の持つ三十を抜いて、堂々の三十五奪三振を記録した事で注目を集めている。

 長年、高校野球を観戦した者は「今年の夏を制するのは山の宮高校かもしれない」と熱く語るほど、今大会のダークホースとして期待が高まっていた。

 四回戦と言うこともあり、地方球場の観客席はほぼ満員で埋め尽くされている為、ザワザワと試合前の各高校のウォーミングアップする選手を見ながら、今か今かと始まるのを待っていた。

 先攻であるきらめき高校のシートノックが終わり、ベンチに戻り山の宮高校のシートノックが始まった。

 気温三十四度を超える真夏日。

 タオルで汗を拭い、スポーツドリンクを軽く口に含んだ高柳春海は、静かに山の宮高校のシートノックを見つめる。

「春海。今日はヤケに落ち着いてるのね」

 隣に、姉でありチームのマネージャーである高柳千波が、公式試合用の帽子を深く被り、チームのスコアブックを抱えながらベンチに腰を掛ける。

 その表情は、どこか寂しそうだ。

「その・・・・・・球太くん達とは、戦えなくて残念だったど、今は山の宮との戦いに集中しないと、ね」

「勿論、そのつもりだよ。確かに球太と戦えなかったのは悔しいし、それ以上に球太の方が悔しいに決まってる。それに、もう戦えないと言うわけでもないしね。今は、館野先輩や目良先輩と勝ち進みたいと言う気持ちでいっぱいさ」

「そう。それなら良いんだけど・・・・・・。あれ? そう言えば浩輔くんは? ベンチに姿が見えないけど?」

 千波は、ぐるりと辺りを見渡した。きらめき高校のベンチに目良浩輔が居ないことを確認した途端、呆れたような溜息が溢れる。

「千波。浩輔なら隣の更衣室にいるぞ」

 司令塔の館野彰正が、苦笑いをしながらベンチの出入り口に向かって指を指していた。

「ありがとう、舘野くん! 私、浩輔くんを呼んでくる!!」

 千波は、立ち上がり急ぎ足でベンチの出入り口のドアを開けて姿を消し、気になった春海も後を追いかけようと腰を上げた時だ。

 春海は館野に止められてしまった。

「ちょっと、館野先輩? どうしたんですか? いつもなら姉さんと一緒に追いかけるじゃないですか?」

「いつもなら・・・・・・な、だけど今日は止めとけ、春海」

「えっ? どうしてですか!?」

「いいから。まあ、俺も本来なら追いかけなければ行けないんだけどな。これにはチョイと事情があるんだ」

「事情?」

 春海は首を傾げた。

 どんな事情があるのだろうか、と。

 だけど、館野の表情で春海はなんと無く悟ったのだろう。無言でコクリと頷き、二人はドアの向こうを静かに見つめていた。

 

 

 

 目良浩輔と館野彰正は幼馴染だった。出会ったのは小学四生の時、互いに地域でスポーツクラブが少ないということで、自治体が発足してた新たなる少年野球が結成し、そこに入団した時に知り合った。小学校は同じであった二人だが、此処で初めて顔を知ることになる。

 明るくチャラけ練習は適当に熟す目良、真面目で練習は小まめに丁寧に熟す館野のお互いの最初の印象は「暗くて詰まらない奴」と「五月蝿くてだらしの無い奴」と、好印象では決して無かった。しかし、二人が仲良くなるのには時間が掛からなかった。共通である好きなスポーツが野球であり、プロ野球の球団、そこに居る選手が偶然にも同じだった二人は直ぐに意気投合して見せたのだ。

 そして、そのまま二人は中学校に進学し、野球部に入部する。中体連ではチームとして輝かしい成績は残せなかったものの、今まで以上に野球というスポーツを知り、今まで以上に野球を好きなった二人は三年時に互いの進路と向き合った。

「なあ、彰正。お前、女の子のパンツの色は何色が良い? 俺はピンクが良いぜ、なんかさエロくね? って言うか、今日のラッキーカラーがピンクなんだけどな!」

 机に顔を置き、目の前にある教科書には目もくれず、中学三年の目良浩輔は質問をした。

「・・・・・・アホか? くだらん」

 と、いつも通りの返答を返す館野は、高校入試の対策本である参考書から目を逸らさずに即答で返した。

「チェ! つまんねえの・・・・・・。彰正。それより俺たち、もう三年だぜ? 今日、先公に『お前は良い加減進路決めろ』って言われたけどさ、どうすっかな」

「それで? どこにしたんだ?」

「あん? どこってなんだよ」

「進学校だよ」

「んな事、俺が知る訳ねェだろ? 今までロクに授業を受けて来なかったんだぜ?」

「はは、それはそうだな。なんせ、中学三年間は屋上でサボってばかりで、部活の時だけやたら活発になるのがお前だもんな」

「へっ!! 五月蝿ェよ! それで? 彰正、お前は何処に進学すんのかもう決めてあんのか?」

「ああ。俺は、官僚高校が第一希望だな」

「官僚高校?」

「ああ、あそこは勉強のやり甲斐がある。それに大学に進学すれば就職も豊富だからな。って言うか、お前な、官僚大学ってのは結構有名な学校だぞ?」

「あ、そう。で? そこは、野球部はあんのか?」

「ああ、もちろんだ。部活動も盛んで、文武両道を掲げてるだけあるからな」

「そこには、俺でも行けんのか?」

「・・・・・・浩輔の学力なら、当然無理だな」

「そうかよ。・・・・・・って事は、これから俺は、お前と一緒に野球がやれ無くなるって事か!?」

 突然、目良は声を張り上げた。突然の出来事で、館野はうっかり参考書を床に落としてしまった。

「わ、悪い・・・・・・彰正」

「浩輔?」

「俺は、お前と高校でも一緒に野球がやりたかった。同じ高校で甲子園を目指してさ、同じプロに一緒にドラフトがかかるのよ! 当然、俺が一位でお前が二位な! そしてよ、俺は高校三年の時、俺が惚れた女を甲子園の舞台に連れて行ってやんだよ」

 目良は笑いながら言った。その表情、知り合ってから分かっている。嘘では無い。それ以上に館野が驚いた事があった。目良がこうして自分から夢を語った事など聞いた事が無かったのだから・・・・・・。そして、一緒に高校でも野球がやりたいと言う事を、野球で知り合って無二の親友となった目の前にいる目良の言葉を聞き、館野はそれに感銘を受けたのだろう。

「おい、浩輔。お前が一位ってのは決してありえないぜ?」

「あん?」

「どうせなら俺が一位、お前は二位指名だ」

「彰正・・・・・・?」

「俺とお前の仲は腐れ縁だ。仕方がない、お前と同じ学校に行ってやるよ。同じ高校にさ。ま、あまりにも偏差値が低い所だけはやめてくれよな?」

「うぉぉぉぉーーーっ!! マジか!? 彰正!!」

「や、止めろ! 浩輔、急に抱きついて来るんじゃあねえ!」

 こうして、館野の勉強の指導により、その年の冬に見事、合格し、翌年の春に二人は、きらめき高校に入学が決まり、野球部に入部した。

 

 そして、高校一年のある日の事。春の清々しい暖かな風を目良浩輔は、屋上で一人寝っ転がりながら授業をサボっていた。良い風だ、なんて幸せそうな寝顔で優雅な一時を過ごしていたのだが・・・・・・。

「起きなさい!!」

「・・・・・・」

「起きないってば!!!」

「・・・・・・」

「起きろォーー!!!」

「――ッ!?」

 目に差し込む太陽の光は突然に遮られ、耳元に大きな声が飛び込んで来た女性の声は耳元から脳へ、脳から全身へ響き渡る声に目良は驚いてゆっくりと閉じていた瞳を開けると、そこには空の色や雲の形では無く、別なものが見えていた。

「ピンク・・・・・・?」

「は? えッ・・・・・・ちょっ、ちょっと!」

 春風に吹かれ、女性――当たり前ではあるがきらめき高校の在学生の女子生徒のスカートが捲り上がって、履いていたパンツが丸見えになっていたのだ。はためかせるスカートをギュッと手で押さえ付け、ギラッと鋭くて怖い瞳で睨みつけていた。

「ちょっと、目良浩輔くん! い、今の・・・・・・もしかして見た!?」

「ん? ああ! 勿論な! 色鮮やかなピンク色のパンツがバッチリ! だけど、残念だったな。今日のラッキーカラーは黒とピンクだ――グブッ!!」

 バチン! 目良の左頬に痛烈な平手ビンタが炸裂し、目をパチクリさせていた。

「さ、最低っ!!」

「あん? 最低っ!! じゃあねェだろ? 折角、こんな天気だからサボって寝てたって言うのになんなんだお前は? って、なんで俺の名前知ってんだ?」

「はぁ〜〜。やっぱり・・・・・・副委員長の彰正くんに言われていたからある程度は覚悟出来ていたけれども・・・・・・これ程とはね」

「・・・・・・?」

「私は!! あなたと同じクラスメイトの委員長で同じ野球部のマネージャーの高柳千波よ!」

「高柳千波? そんな奴いたか?」

「そうだ! なら、思い出させてあげようかしら? もう一発いっとく?」

「嘘嘘嘘ッ!! 冗談だぜ! お、お前はクラスの中でも美人だった奴だ! 間違いねェ!!」

「美人かどうかは知らないけど・・・・・・。浩輔くんのおかげで委員長である私は、先生に怒られて、オマケに部長にも怒られているんだよ?」

「それは・・・・・・悪かった」

「分かれば宜しい! それに授業中の態度は悪いけど、部活動の浩輔くんはカッコイイと思うよ!」

「千波・・・・・・」

「ん? どうかした?」

「もしかして、お前、俺の事口説いてるのか?」

「はぁ??」

「カッコイイと思うんならよ? どうだ? 千波、俺と付き合わねえか?」

「ど、どうしてそうなるの?」

「お前、結構可愛いしな? どうだ?」

「・・・・・・バカな人ね、お断りします」

 ニコリと笑う千波。春の風に黒い艶やかな髪が靡くと共に、背景には無数の桜の花が青空へと流れていく。目良は、目を丸くした――黒とピンクだ。聞こえない声で呟く。

 その他に、何かを言おうとしたが、言葉が出なかった。飲み込まれたのだ、その景色と目の前にいる千波の笑顔に、ただただ呆然と立ち尽くしていた。

 これが、目良浩輔と高柳千波の初めての出会いでもあった。

 

 

 千波が出て行った後のドアを見つめ、手短く館野が出会いを語っていた。

「初めて聞きました・・・・・・。それが姉さんと目良先輩の出会いなんですか・・・・・・。なんか想像は出来てましたけども・・・・・・」

「今となれば懐かしい様でそうでもないんだがな。日常茶飯事だからってのもあるけどな」

「そうですね。それで、さっきはなんで止めたんですか?」

「俺たちは、三年になった。高校球児として聖域である甲子園の土を踏むチャンスは、もう今年しか残されていない。浩輔も俺もいつ負けるか、覚悟はしている」

「・・・・・・・・・」

 春海は、無言だった。

 それ以上に何処か寂しさを感じていたからだろう。

 先輩が語る言葉をしっかりと聴いてる。

「春海。浩輔は、千波のヤツに本当は惚れてんだ。女子生徒にやたら声を掛けるどうしようもないチャラいヤツだけど、本当はただ、好きな女を千波の気を引きたいからやってるんだ」

「・・・・・・」

「だから、今日の試合前に『告白』したいんだと、全部伝えてスッキリして勝って決勝に千波を連れて行く、このきらめき高校を甲子園に連れて行くのを目指すんだとさ。これが俺がお前を止めた理由だ」

「そうですか・・・・・・」

 春海は、少し苦笑いをした。

 

 

 そして、きらめき高校側のダグアウトの前にある更衣室には、目良浩輔は部員がバックを置いてあるベンチに一人、寝っ転がっていた。

 試合が始まるまで十五分あり、チームメイトが士気を高めている中であるのにも関わらず、彼はそこにいた。

 ――まだ、ここに来て五分も経ってないって事は、全く寝付けて居ねェからか。チッ、俺らしくねェ・・・・・・この俺がまさかの緊張してるって訳かよ。

 顔を帽子で深く被り、狭い視界から覗かせて捉えた時計の針を見ると、目良は小さな溜息を漏らす。

「浩輔くん! 起きて! 起きなさい!」

「おう、起きてるぜ。千波」

 そこに、千波が駆けつける。

 コツコツと学校指定であるローファーの踵と床が交わる音を立てながら目の前で足を止めながら、少し強めに言葉を強調させて言う。

「何してるの、こんな所で! もうすぐ試合なんだよ? 試合前くらいしっかりしてよ! ほら、起きて起きて」

 手を引っ張られ、目良は体を起き上がらせながら、千波の手を強く握りしめた。

 二人しか居ない空間の中、妙なドキドキ感が漂う。

「こ、浩輔くん?」

「あのさ・・・・・・千波。少し側に居てくれねえかな?」

「え・・・?」

「少しでいい」

「ちょっと・・・・・・どうしちゃったの? なんか、いつもの浩輔くんらしく無いわよ?」

「らしくねェ・・・・・・、そうかもな。ああ、そうだ。らしくねェンだよ、今日の俺は・・・・・・千波、お前に一つ聞きたい事があるんだわ」

「き、聞きたい事?」

 強く握りしめる手、暖かい体温が二人に流れる。不思議と千波は「もしかして告白?」と心の中で言葉を吐いた。ドクンドクンと高鳴る胸の音は聞こえないだろうか? 顔は赤くはなっていないだろうか? と、少し気にしながら真っ直ぐ見つめてくる目良の瞳を避け、瞬発的に目を閉じて、目良の言葉を待つ。

「なあ・・・・・・千波」

「は、はい!!」

「お前、今日のパンツ何色だ?」

「浩輔くんが良いなら喜ん・・・・・・えっ?」

「あん?」

「ね、ねえ・・・・・・? 浩輔くん? い、今、何て言ったか教えてくれない?」

「だからよォ? 千波のパンツの色、今日は何色だって聞いてんだよ!!」

「へ? ちょっ・・・・・・え? な、なんで?」

「今日のラッキーカラーは白と青なんだ。千波も確か白と青の水玉パンツ持ってたろ? 今日それを履いてたら僥倖! ラッキーだと思ってよ!」

 ニカッと笑う、浩輔。

 呆れてものも言えない千波。

「本当・・・・・・浩輔くんって最低っ!!」

「うぎっ!!」

 二人しか居ない空間に、一つのビンタの音と鈍い音がこだました。まず、千波の平手ビンタが右頬を捉え、顔面に右ストレートの鉄拳制裁をお見舞いしたのだ!

「さて! もう整列の時間なんだから、そこに居ないで早くベンチに戻って来てよね!」

 プイッと顔を背け、千波は、更衣室から足早と出て行く。その顔は、少し嬉しいようで切ない感じにも見て取れた。そして、目良はよろけながらその後を追って行った。

「いちちち・・・・・・。クソ、手加減ってやつを知らなすぎだろ! 彰正! 冷すやつくれ!」

 ダグアウトに辿り着き、ベンチに腰を掛けた目良は、殴られた場所を手で押さえいた。

「浩輔。お前、何で殴られてんだよ? また、千波に何か余計な事言ったな? 告白したんじゃないのか?」

「あん? 告白だ? 俺はただ、千波にパンツの色を聞いたんだよ」

「あのな・・・・・・、普通聞く事か?」

「馬鹿言えや! 他に今日のラッキーカラー何て分かるアイテムなんぞ、持ち合わせちゃいねェンだぞ!」

「それは、姉さんも怒りますね。カンカンですよ?」

「お前、今日で全部伝えるんじゃ無かったのかよ? どうすんだ?」

 館野は、クーラーボックスから冷却シートを渡しながら尋ねる。長年付き合ってきた親友はここまで馬鹿だったとは、と改めて実感する。

「・・・・・・」

「千波の事は好きじゃねえのか?」

「アホか彰正。あいつの事は・・・・・・勿論、好きだ。だけど、ここで言ったら、そこで終わりだと思っちまったんだ。安心しちまって今日の試合例え負けちまっても、何処か安心しちまう。昔、お前に言ったろ? 夢があるってよ? やっぱ好きな女を甲子園に連れて喜ばせてやりたい。今までマネージャーとして支えてくれた千波なら尚更のことだ。後さ、他にも考えてたんだ。真面目でつまんねェ親友に、頼りになる後輩を持ってさ、お前らと最高の景色を見てえんだ。」

「浩輔」「目良先輩・・・・・・」

「さぁ、行こうぜ! お前ッ!! 俺たちで山の宮をぶっ飛ばす!」

 

 

 

「いよいよ、か」

 山の宮高校ベンチ。黙々と試合に備えてウォーミングアップを終え、身体を温めていた。

 右手にグローブを着け、ボールの縫い目を何度も何度も指先でなぞりながら、太郎丸龍聖は呟いた。

「龍聖。どうかしたのか?」

 そこに相棒である名島一成が声を掛ける。

「いや、別に何も無いさ。ただ後二つ勝てば甲子園に行けるって思うだけで、ワクワクが止まらねえだけだ」

「でも相手は、きらめき高校は侮れないぞ。先発投手は、ここまで投げ抜いて来てる大島さんだ。小柄な体格ながらテンポよく投げる左腕には要注意だ。オマケにキャッチャーは館野さんがマスクを被る。あの人は常に冷静沈着だ」

「なるほど、ね」

「後、気をつけたいのは三年でありチームの打撃の総要、目良浩輔さんだだろう。ミートはBクラスでパワーはAクラスもある強打者で広角打法の持ち主で何より左投手に強い」

「それは燃えるぜ!」

「同じく二年の高柳春海もだ。打率はほぼ四割近いアベレージヒッター、具志堅兄弟と強肩が光る」

「相変わらず相手のデータは頭の中にあるって訳だ。流石だぜ」

「逆に言えば、データを集めなければならないほどの強さを持つチームだ。今日のコンディションはどうだ? 龍聖」

「ああ、バッチリだ。何より強打者揃いのチームとなりゃ自然と闘志が湧き上がるぜ」

「ふっ、なら安心だな。行くか、龍聖」

「ああ! きらめき高校をねじ伏せてやる!」

 

 

 こうして頑張地方の準決勝戦であるきらめき高校対山の宮高校の試合が幕を開けると同じ時刻。恋恋高校の小波球太は、三十四度を超える暑さの中、一人で商店街にいた。


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