IS インフィニット・ストラトス 〜太陽の翼〜   作:フゥ太

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残業厳しい

あと、なんだかパソコンが反抗期だ。
完成間近で二回もフリーズして原稿吹っ飛ぶとか、コイツは私に何か不満があるでしょうか、皆さん?


すみません、関係のない愚痴でしたw

では、本編言ってみよう!


※4月14日改稿。前後編に分けました。


WHITE TWIN DRIVE IGNITION SECOND(前編)

 

 

 

 

 その一方を聞いたとき、奈良橋の心臓はかつてないほど跳ね上がり、そして次の瞬間背筋が凍りついた。

 

『鵜飼総合病院にオーガコアが出現した』

 

 情報規制のために対オーガコア部隊以外の生徒には知らされてはいないが、職員には基本全員知らせることで万一の不測の事態にも対処できるよう理事長からの達しがあったのだが、奈良橋はその言葉を聞くと、すぐさま職員室を飛び出し、自家用車に乗り込むと、校内であることも忘れてアクセルを全開にして車を走らせたのだった。

 

「………雪ッ!」

 

 腎不全を患った今年五歳になる愛娘、『奈良橋 雪』が入院しているのが鵜飼総合病院であり、そのために普段は理知的で規則を重んじる奈良橋が我を忘れるほどに取り乱しているのだ。

 

『おとーさん!!』

 

 普段側にいれない自分に文句を言わず、病気のために不自由な生活を送り、友達もできない環境でもまっすぐに自分を「お父さん」と慕ってくれる娘の元に奈良橋は車を急がせる。

 途中、高速に入ろうとする奈良橋だったが、すでに各公共機関には情報が伝達されているのか、入り口である料金所では通行止めの立て札と、車が列を成して職員に文句を言っている姿であった。そして奈良橋はそんな列に脇見も触れず、そして静止する職員達を完全に無視して料金所を潜り、高速に乗り上げる。

 

「………!?」

 

 そして立ち込める煙と、かすかな爆発音に思いっきり表情を険しくした奈良橋はアクセルを更に踏み込みギアをあげて、車を急がせたのだった………。

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 白と黒、烈火と迅雷、燃える不死鳥と稲光る狼………。

 その光景を周囲で見ていた若きIS操縦者達は、自分たちの目の前で繰り広げられる戦いに言葉を失くしてしまう。

 

「はああああああっ!!」

 

 プラズマ火球を両手に持ったヴォルケーノから連続発射し、弾幕を張る陽太………プラズマ(火球)の破壊力もさることながら、その連射速度によって秒間数十発の早撃ち(クイックドロウ)によって作られた炎の壁は、並みのISは愚か、例えオーガコアであろうとも簡単に進入すらできない功壁となる筈だった。

 

「!!」

 

 だがあろうことか、目の前のジークはその弾幕の中を掠るとすらせずに突っ切ってくるのだ。連射と連射の間に作られている、ゼロコンマ数秒の間隔を、まるで見えているかのように間隙を抜って潜り、あまりにあっさりと陽太の間合い(エリア)に進入したジークは、彼の目の前に躍り出ると自身の手に握られているアサルトライフルの銃口を陽太にかざした。

 

「チッ!」

 

 予想以上に簡単に自分の攻撃を見切ったジークに面食らいながらも、動揺せずに陽太の左のヴォルケーノはアサルトライフルの銃口を横に逸らしながら、右のヴォルケーノがジークに向けられた………ハズだった。

 

「!?」

 

 ―――目の前にいたはずのジークが忽然と姿を消す―――

 

「くたばれ」

 

 陽太の反応を上回るスピードで彼の背後に立ったジークが、彼の後ろの首元めがけてライフルを発射しようとする。ここを銃撃されれば、如何にISのシールドエネルギーに守られていようとも、衝撃によって意識が根こそぎ刈られることは間違いない。そして失神してしまえば、もはやそれは天才だろうとズブの素人だろうと関係なしに、ただの死体に変えられるのに一秒も必要ないだろう。

 憎き相手との決着としてはあまりにあっさりしている………ジークとしてはその程度の感想を思い浮かべ、引き金を………引く事はできずに、今度はジークが驚愕する。

 

 ―――自分の正面にある左のヴォルケーノの銃口―――

 

 ジークが体を捻らせるのと、陽太がプラズマ火球を放ったのはほぼ同時のタイミング、いやジークの方がギリギリ速かった。左頬のマスクに対して微かに炎が掠らせながらも何とか攻撃を回避したジークは、自分の動きに反応が遅れながらも、その後に最小で最速最短の動きで反撃までしてきた陽太に、正直な賞賛を心の中で贈る。

 

「(悪くねえぞ!! 火鳥陽太!!)」

 

 そんなジークの賞賛が聞こえるはずもなかった陽太は、体を反転させながら回し蹴りをジークの側頭部に放つ。それをバックステップで避けたジークの後を、今度は陽太が追いかける。

 余分な銃撃はせず、左右にフェイントを込めたステップで間合いを詰め、至近距離の格闘攻撃で仕留めようと考えた陽太だったが、ジークはそんな彼をあざ笑うかのように、地面を爆発させて地面を滑るように横方向に飛び去ってしまう。

 

「クッ!」

 

 詰めた間合いを一瞬で倍以上に空けられ、目論見が崩れされた苛立ちか、当たる事を微かにしか期待していない銃撃でジークを狙うが、その尽くが掠らせることもできずに空を切るのみ。しかもジークも負けじと撃ち返してくる。

 陽太も負けじと横移動でジークと高速機動戦闘を展開するが、ジークの鋭い銃撃は陽太の進行方向があらかじめわかっているかのように、正確に狙ってくる。ギリギリの体勢で回避し続ける陽太だったが、それも限界にきたのか、両手のヴォルケーノで銃弾を弾きながら徐々に防戦を強いられる。

 

「(速い上に、こっちの動きが見切られてる!?)」

 

 急所にめがけて飛んでくる銃弾が段々と正確さを増す中、陽太の集中力が一瞬だけ切れた。否、切れたというよりも、反撃する余力を全て防御に回そうと意識を切り替えた瞬きにも満たない時間で、陽太の視界から『消失』するジーク………この驚愕の『現象』に、陽太は今度こそ度肝を抜かれた。

 

「ふざけr」

 

 自分から手品のごとく消え去るなんぞふざけたことを、という台詞を言い掛けた陽太であったが、前方から高速で迫ってくる『物体』に気がつき、言葉を話す余裕すら奪われ、ほぼ条件反射でヴォルケーノの銃身を盾にして背後にいる人物からの攻撃を受け止める。

 

「!?」

「………」

 

 陽太の背後を一瞬で回り込んだジークが、彼の咽元をガンブレードで斬り裂こうとしたのを寸での所で銃身を割り込ませて防いだ陽太だったが、ヴォルケーノから伝わってくる尋常ならざる力と殺気にジリジリと押され始める。

 

「チッ!?」

「舐めてンノか?」

「!?」

 

 更にガンブレードに力が込められる力と殺意、そして苛立った言葉に、陽太も半ば怒鳴りながら聞き返した。

 

「何の話だボケッ!? この間の腹キックをまだ根に持ってんのか?」

「………お前程度に、マリアは」

「!? マリア・フジオカか!?」

 

 予想外の人物の名が出てきたのに驚いた陽太だったが、ジークはその問いかけに答えることはせず、ガンブレードを急に引くと、一瞬の間をつくこともせずに陽太の背中を蹴り飛ばす。

 

「グッ!?」

 

 肺を突き抜ける衝撃に口から嫌な物が出そうになるのを気合で抑えながら、地表を滑るように反転しつつ体勢を立て直したが、そんな陽太に間髪入れずにジークは突撃を仕掛けてくる。ここは相手の気勢を削ぐのと態勢を整える意味を込め、ジークから距離を離そうとする陽太は、背中のウイングを開き、加速体勢に入った。

 

「(瞬時加速(イグニッション・ブースト)!!)」

 

 地表スレスレを超速で移動しようとした陽太だったが、目の前のジークも背中のスラスターを点火し、同時に加速する。

 

「………瞬時加速(イグニッション・ブースト)」

 

 目にも止まらぬスピードの機動力で加速していた陽太だったが、しかし、ジークの動きは陽太に留まらず、それを見ていた全員、アレキサンドラ・リキュールすらも驚かせる物だった。

 

「!?」

 

 陽太が「目にも止まらぬスピード」で移動し続けるのに対し、ジークの加速はISのハイパーセンサーにすら移動中の姿を映さぬほどの「目にも映らないスピード」であった。具体的にいうのなら、瞬時加速使用中の陽太に地面を引き裂きながら圧倒的な速度で追いつき、一瞬で肉薄する。

 

「!!」

 

 『瞬時加速は他方向には移動できない』というセオリーをぶち破る陽太が、そこから更に上昇してジークの突撃を回避するが、そんな陽太すら鼻で笑い飛ばすように、ジークは陽太の背後に迫っていた建物の壁を一気に駆け上がると、上昇中の陽太に一気に追いつき、壁を蹴って、いつの間にか呼び出していた刃渡り2m以上ある野太刀型の実体剣で陽太に斬りかかる。陽太も反射的に取り出したフレイムソードを伸ばしながら背後を取ったジークに向けて斬撃を放ち合う。

 

 ―――空中で甲高い音を上げながら激突する刃と刃―――

 

 一瞬の鍔迫り合いの後、ジークが陽太の腹部を蹴り飛ばし、陽太は地面に向かって落下してしまうが、地面に激突する寸前、片手で地面に着地し、反動で倒立前転して起き上がって見せるが、陽太が顔を上げた瞬間、すでに吐息が聞こえるほどの近距離に迫ったジークが、冷たい言葉を陽太に言い放った。

 

「(コイツッ!! 俺をぶっ飛ばしといてあっさり追い抜いただとッ!?)」

「おまえ………トロいな」

「ブホッ!」

 

 バックステップで距離を離す………間すらなく、ジークに陽太は顎をまともに蹴り上げられ、地面を転がりながら吹き飛ばされてしまう。

 

「あら? 貴女の話だと、うちのジークと陽太君は互角じゃなかったのかしら?」

 

 二人のその様子を車の中から出し物感覚で観戦していたスコールは、自分の部下の優勢を内心喜ばしく思いながらも、あえて嫌味っぽく隣に座ってコーラをストローで吸っているアレキサンドラ・リキュールに問いかける。

 

「互角なのは総合的に見た二人のスペックの話さ。当然、各個人に得手不得手は存在する………だが、こと二人はその実は近しい戦闘スタイルをしているんだよ」

 

 地面に横たわる陽太を見て、リキュールはスコールにポテトを差し出しながら話を続けた。

 

「陽太君の得意な戦闘スタイルは、クラック&スタンピード。つまり、中・近距離で高い攻撃力を連打することで相手に圧力(プレッシャー)をかけて行動そのものを抑制させるスタイルなんだが………これにはひとつ弱点がある」

 

 スコールがポテトを取り終えたのを確認して、残りを一口で平らげたリキュールは、今度はジークを見ながら話を続ける。

 

「陽太君のIS、ブレイズブレードは実にいいISだ。流石、束が作っただけの事はある。だが『高機動型汎用機』、亡国………いや、全IS中最速の行動スピードを持つ『速度特化機』のジーク君が持つIS『ディザスター』にスピード勝負を挑もうとも、決して勝つことはできない。ましてや、すでに八割以上までアクセルを上げている陽太君に対して、ジーク君はまだ半分程度も出してはいない」

 

 リキュールは冷笑と凍った視線で陽太の姿を見ながら、言い放った。

 

「君は今まで自分よりも速い相手と戦ったことはあるまい。君の戦闘スタイルの弱点………それは、『自分よりも速い相手には自慢の攻撃力でプレッシャーを与えることはできない』ことだ。自分よりも上手の敵を想定していないようでは、まだまだ未熟だよ、陽太君?」

 

 

 圧倒的な強さで陽太を追い詰めておきながら、特に驕った様子もなく氷のような冷たい殺気を放つジークは、ゆっくりと地面に蹲る陽太に近寄る。その様子を見ていたシャルは、窮地に追い込まれた彼の身を案じ、いても立ってもいられずに両手にアサルトライフルとショットガンを持つと、陽太の援護をしようと二人の戦いに飛び込もうとする。

 

「どこへ行く!?」

 

 だがそれを隊の副隊長であり、陽太から指揮権を預かっているラウラが腕をつかんで止められてしまうのだった。

 

「放してッ!? このままじゃヨウタが!!」

「陽太は私達に一般人の救助と、彼らの身の安全を守れと言っているのだ! お前の方こそ状況が見えていないのか!?」

 

 炎の中で取り残された人、オーガコアに襲われながら、それを寸でのところで一夏や鈴達、フリューゲル達によって守られている人、未だ誰かの助けの手を求めている者達は大勢いるのだ。だがそのことを言われても、シャルの中の感情は納得できずにいた。

 

「ラウラだって、あの黒いISが尋常じゃないぐらいに強いことはわかるでしょう!? きっとマリアさんよりも強いんだよ? そんなとんでもない相手を一人で………」

「なら大丈夫だ」

 

 そしてシャルも気がつく。ラウラの手が震えている………本当はシャル同様に助けに入りたいという気持ちを持っているのだ。だが、個人的な感情で動いては今は危険だ………特に、あの黒いIS(ジーク)の戦闘能力は尋常ではない。きっとあの矛先がシャルや自分達に向けられれば、瞬く間に蹂躙されてしまうだろう。だからこそ、その危険な相手を率先して引き受けた陽太に、自分が勝手な判断で役割を放棄しては申し開きができない。

 

「我等の隊長は………負けない!」

「!?」

 

 その言葉に今度こそシャルは自分の身勝手さを反省する。

 

「(そうだ………私はヨウタの足手纏いになりにきたんじゃないんだ!!)」

 

見誤ってはならない、陽太の身を案じることと自分の役割を果たすこと。今、この二つは矛盾はしない………そしてシャルロットはこの場に陽太と共に戦うために来ている。決して彼の足を引っ張って余計に逆境に貶めることではない。

 

「ありがとうラウラ、私、もう大丈夫だから」

「………すまない」

 

 ゆっくりと手を下げさせるシャルに謝るラウラに、シャルは内心自分の方こそ謝るべきだと思いながら苦笑してしまう。

 そしてシャルはいまだに地面に蹲っている陽太に向かって、大声で叫んだ。

 

「ヨウタァァァッ!!」

「!?」

 

 その言葉に陽太が、そして彼に迫っていたジークが反応する。

 

「……………」

 

 泣きそうな、辛そうな、そんな感情を無理やり押し殺した、唇を噛み締めなていたシャルだったが、彼女は言葉を紡いで見せた。

 

「負けないで!!」

 

 決して大きくない、でも澄んだ声に、陽太は返事をすることなく、ただ静かに蹲った状態で右手を上げると、親指を上に向けて立てサムズアップで返答してみせる。『わかってる、任せとけ!』と言わんばかりに………。

 

「ヨウタッ!!」

 

 その様子にシャルは先ほどとは違う、本当に嬉しそうに微笑むと、踵を返してオーガコアと仲間達の戦いに参戦しようとラウラに呼びかける。

 

「行こう、ラウラ!!」

「!?………ああ」

 

 ラウラもまた、陽太の返事とシャルの笑顔に安堵したのか、これで心置きなく戦えると、背中のハイブリッドバスターキャノンを展開する。

 

「マニュアルA-07………いくぞ、シャル」

「うん」

 

 そして、ラウラはシャルがダッシュするのと同時に空中に飛翔する機動兵器(スズメバチ)に向かって、牽制の砲撃を放つ。

 

 ラウラの圧倒的な攻撃が多数の機動兵器を巻き込み、ちょうど複数の機動兵器たちを二つの集団に分けたのだった。そこにすかさず両手に銃器を携えたシャルが更なる牽制の銃撃を仕掛け、二つの集団を半分ずつに分断する。

 

「一夏! 鈴! セシリア!!」

 

 シャルの呼びかけに、仲間達がすかさず反応して機動兵器たちに飛び込んだ。

 

「おう!」

「任せて!!」

「お安い御用でして!!」

 

 セシリアの三連バルカンが敵の一陣を薙ぎ払い、左右から挟み込む形で飛び込んだ一夏と鈴の剣撃が交差し、空中で敵機をバラバラにしてみせる。流れるようなコンビネーションと目配りもなく成功させた信頼関係………それを見ていた敵側のフォルゴーレから思わず賞賛の言葉が漏れる。

 

「すごい……」

 

 ついこの間遭遇した時は、それほど脅威に思わなかったセシリアとラウラのISが劇的に能力を向上させているだけではない。動きそのものに、味方を信頼して役目を託し、自分の役割をこなそうという気概が乗せられているのだと、彼女の目には映ったのだ。

 

 そしてそのことは、何よりもこの男に伝わっていた。

 

「………ハッ」

「!?」

 

 ゆっくりと立ち上がる陽太に警戒し、刀とライフルを構えるジークであったが、なぜか目の前の陽太から伝わってくる気配の変化に若干の戸惑いを覚える。

 

「(コイツ………さっきまでとは闘気がまるで違う)」

「ハッ………ハハッ………世話ないな、まったくよ」

 

 笑っている………全身装甲なために、今どんな表情をしているかまでは見ることはできないが、目の前の敵が自分を見ながら笑っていることを感じ取ったジークの表情が、逆に険しくなる。

 

「………何がそんなに可笑しイ?」

「可笑しいだろ?………まさかこの程度で俺に勝った気になってるバカが目の間にいたらよ」

 

 小馬鹿にするような言葉に一気に血圧が上がったのか、ジークは荒々しく銃口を陽太に向けて即座に発砲する。が、その銃弾は陽太に掠ることもせず、彼は素早いステップで回避し、コマのように回転しながら逆に銃口をジークに向けようとする。

 だがこの展開はある程度ジークの予想の範疇内のため、彼にはいささかの動揺も与えることはできず、今度こそ反撃で致命傷を撃ち込もうと、攻撃の終わりを冷静に迎え撃ちにかかった。

 

「(てめぇの癖はその高い能力から、相手に上回られると熱くなって意地になりやがる)」

 

 生来高すぎる能力を持つために、負けを認められない陽太は、自分を速度で上回るジーク相手に、あくまでもスピード勝負を挑んでくるハズ………ジークのその予測は、数週間前までの彼相手ならば正解であったと言えるだろう。

 

「(ここで、あいつはフェイントをかけて俺の背後を取りに…)」

「………認めてやる」

 

 だが、今の陽太には、『信頼する仲間』が、『仲間に認められた隊長』という誇りがあるのだ。

 反転しながら銃口を向ける………ことなくいきなりジーク目掛けてヴォルケーノそのものを放り投げたのだ。

 

「!?」

 

 これにはジークも驚き、慌ててハンドガンを回避するが、一瞬だけ陽太から目を離してしまう。そして陽太はその隙を見逃すような男ではなかった。

 ジークが見せた一瞬の隙を突き、フレイムソードでジークに斬りかかる。反応が遅れ、今までのように攻撃を回避できなかったジークは刀で受け止めるが、陽太はそのままウイングのスラスターを全開にして力勝負でジークを押し始める。慌ててジークはライフルの零距離掃射で陽太を引き剥がそうとするが、銃口の先端を陽太は左手で押さえつけ、右腕一本、剣と刀の鍔迫り合いに持ち込んだのだった。

 

「!!」

「!?」

 

 ジークも背中のスラスターを全開にして対抗しようとするが、ジリジリと後退し始め、徐々に余裕がなくなり始める。そしてその様子を見ていた陽太はある確信を得た。

 

「認めてやる、速さはテメェーが上だ………だが力(パワー)は俺の方が上だな。違うっていうならもっと力込めろよ貧弱!?」

「チッ! 餓鬼がぁっ!!」

 

 陽太の挑発に激高して、出力を限界以上に引き上げようとするジークだったが、その瞬間、徐々に自分を押していた陽太が瞬時にスラスターをカットし、その場でバク転しながら自分の足をジークの太ももに引っ掛けると、一回転しながらジークを地面に叩きつけたのだった。

 

「ガハッ!!」

 

 予想外の反撃に、受身が取れきれず、背中から伝わった衝撃がジークの肺を突きぬけ意識を混濁させる。

 

「………マリア・フジオカのことは今はいい。あとでフルボッコにした後にしっかり聞かせて貰う」

 

 すかさずその場を飛びのき、放り投げたヴォルケーノを回収して構える陽太に、完封できるものと踏んでいた陽太に思わぬ反撃を食らった動揺と、見下していた相手にダメージを受けたという屈辱に、怒りに震えながら立ち上がった。

 

 そして陽太は、怒りに震えるジークに、あえて言い放った。

 

「黒いのよ。あんまりIS学園(俺達)を舐めてくれるなよ? IS学園には、俺がいる。シャルがいる。ラウラやセシリアや鈴いる。あと箒も………そんでな」

 

 陽太がいったん言葉を切った瞬間、陽太の背後で白い粒子の爆発が巻き起こり、ジークを驚愕させた。

 

「そんで………IS学園(ウチ)には、訳判らん、何すんのか予測不能の、織斑一夏(大バカ)がいるんだよ!!」

 

 

 

 

 





長すぎたのでちょいと前後に改稿させていただきます!

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