「…………」
「………鈴お姉ちゃん、どうしたの?」」
寮の脇に置かれているベンチの上で、三角座りしながら両手で顔を覆う鈴の隣に座るたんぽぽが問いかけた。果汁100%のピーチジュースを両手に持って彼女はそれを半分ほど飲み干すと、彼女はそれを鈴に差し出しながら問いかけてきた。
「お姉ちゃん、のどかわいた?」
幼女の優しい声に、ようやく顔を上げると鈴は短くこう告げる。
「アンタが全部飲みなさr」
「わかった」
かぶせ気味に返事をして全部ほんとに飲み干すたんぽぽの様子に鈴は冷めた表情でこう考える。
「(陽太の似なくていい部分が似てきてない、この子?)」
「(セシリアの教育も悪影響だけど、アイツも人のこと言えないからねシャル)」
友人に対して今晩辺り相談しないといけないという使命感はとりあえず覚えた鈴は、一度だけため息をつくとやがて立ち上がり、空を見上げる。
「(……………隕石落ちて、世界滅びないかな?)」
己が黒歴史ごと木っ端微塵になることを世界に要求する程に気分がブルーな鈴であったが、隣にいるたんぽぽは無論何一つ気が付くことなく、笑顔で提案する。
「おそときたから、鈴お姉ちゃんっ、いっしょにあそぶっ!」
「ええぇ~~~」
自爆したのは自分だが、要因を作ったのはたんぽぽであろうにと逆恨みの念も多少あるものの、大人の自覚を持つ鈴としてはそれを表に出さず、とりあえず適当に付き合ってあげることにした。
「で、何して遊ぶの?」
「ぷr「絶対無し」」
「ええぇ~~~………じゃあ、しかたないからおにごっこにしてあげる」
「(微妙に上から目線になったな、今)」
大人を微妙に舐めた発言するなこの娘。と、ますます義父譲りのあかん口調になり始めた幼女の養育方法の改善案を考えながら、鈴は自分が鬼をやるからたんぽぽは逃げるように言い渡す。
「私が鬼してあげるわ(速攻で捕まえて終わりにして、適当に誰かに預けよう)」
「あいっ!」
大きく手を挙げて返事をするたんぽぽ相手に油断したのか、鈴は後ろを向いて数を数えだす。が、たんぽぽが寮内にいる「相棒」に手を振っている姿を見ておらず、それが油断となってしまった。
「いくわよ………1.2.3.4.5.6.789.10」
まともに付き合ったセシリアとは違い、一般家庭に育った彼女は年下の相手なども当然のように何度も行ってきた。それに彼女自身今は会えないが親戚に年の近い女の子もいる。幼い自分はよく一緒に遊んだ中であるためか、こういった場合の対処手段も当然心得ている。
この手の幼女にはとっとと自分から興味を失せてもらって他の人間に懐いてもらおう。冷たいようだがやはり自分はこの子が苦手だから遠ざけるんだと思った鈴は、一応の体裁を整えた上で適当に数を数え終えて背後から逃げ惑う幼女をキャッチして終了。簡単なお仕事でした。で済ませようと振り返る。
「!?」
―――ポチにしがみついてすでに豆粒と化したたんぽぽの背中―――
「アンタ、犬とか卑怯でしょうがぁっ!」
中国代表候補生の全力ダッシュをもってしても、セントバーナードの全力ダッシュには当然追いつけず、どこかの英国代表候補生よりかは若干善戦したものの、やはり途中で同じように見失ってしまうのであった。
☆
「………」
タクシーを少し離れた場所で下した楽員は、街路樹が植えられている道を一人ゆっくりと歩き続けていた。いや、本当はすぐに駆け出したいのだが、体力的問題と、何よりも背を一度向けてしまった実の娘に対しての気まずさが歩く速度を遅らせてしまっていたのだ。
「(会って………どう話すべきか)」
まずは第一声は何というべきか? 『久しぶり?』『元気だったか?』『母さんとは連絡を取っているのか?』………いろいろと思い浮かぶのだが、その全てがむなしい響きしか伝わってこない。
背を向けてしまって以来、娘の鈴のことは風の便りと、テレビでの報道と雑誌関係でしか把握できず詳細が掴めずにいたのだが、偶然入った連絡によって、彼女は再び日本の地に戻っていること。IS学園に通っていること。しかも同時に国連所属の精鋭部隊に編入していることなどを教えられ、いてもたってもいられずにこの地に舞い戻ってきた。
だが、もうすぐというところで急に足が竦んでくる。胸も苦しい。会いたいのに会いたくない。
わかっている、これは恐怖だ。逃げ続けていた自分が、勇気を振り絞ってここまで来たというのに、変えられない臆病者がいつまでも自分の中に居座り続けているのだ。
―――胸を抑える中年男性を見つめる、草木から顔を出しているたんぽぽ―――
帰るべきなのか? それとも先に電話で連絡を入れるべきか?
―――同じように首を出しながら頬っぺたを嘗め回してくるポチにちょっと待てをしながら―――
「おじさぁぁぁぁぁっんんっっ!!」
「ひいぃっ!?」
茂みから首だけ出してこちらを見つめていた幼女の存在に気が付くき、そして思いっきり声をかけてくるのであった。これには楽員も驚愕して腰を抜かしてしまう。
「こんにちわっ! おじさん、どうしたの?」
「えっ? あ、いや」
珍しいものを見つけたかのような、煌めく瞳でたんぽぽは一気に捲し立てる。
「みちのまんなかにすわっちゃメッって、シャルロットママはいつもいってるよ! ヨウタパパはよくねころがるから、たんぽぽがポチのうえからとびおりておなかのうえにたつの。そしたら『うげぇ』ってなって、一夏お兄ちゃんが『あんまりやるとしんじゃうからやめなさい』っていってるよ」
アグレッシブさと無遠慮さが同居したエピソードだが、その時、楽員は気になるワードがあったことに気が付く。
「一夏? ひょっとして織斑一夏か?」
「おりむら………一夏お兄ちゃんは一夏お兄ちゃんだよ?」
今一つ要領の得ていないたんぽぽであるが、一夏という名前自体は珍しいためか、もしくは有名な男子操縦者ということでか、おそらくこの目の前の幼女が口にしているのが自分がよく知る一夏だと思い、もう少し詳しく話を聞いてみることにする。
「すまない……少し聞いてもいいかい?」
「ハイッ! たんぽぽはたんぽぽですっ!」
「そ、そうか……じゃあ、たんぽぽちゃん。君は『凰 鈴音』という子を知っているか? 外見は中学生ぐらいにも見えるが、その一夏君と同い年なんだが?」
「鈴お姉ちゃん?」
彼女の名に反応し、たんぽぽは咄嗟に両手で自分の髪をもってツインテールを再現してみる。
「こんなかんじで、おっぱいちっちゃい?」
「そうっ! 『その鈴』お姉ちゃんだっ!」
本人がいれば激オコしそうな失礼な認識である。しかし実の父親と幼女は特にツッコミを入れあうこともなく会話を続ける。
「おじさん、鈴お姉ちゃんのパパ?」
「ああ、そうだ。おじさんはその鈴お姉ちゃんに会いに来たんだ」
この間に続き、二人目の来訪者に対し、たんぽぽは事前に『もし、今度同じように会いに来た人がいたらまずはパパかママか織斑先生に知らせなさい』と言われていたことを特に思い出すことなく、草木から全身を抜け出して案内を始める。途中、ポチがそのことに気が付いて必死に止めようと彼女の服を引っ張ってみるが、ポチを引きずりながらもたんぽぽは前進し始めるのであった。
「おじさん、みぎのほうにみえるのがたてものですっ!」
「ああ、そうか」
『このぐらいの鈴もこんな感じでなんでも説明したがっていたな』とほわほわとした気持ちになりながらも、そんな幼かった鈴もやがて大きくなり、自分に反発してしまうようになってしまったことに今更ながら暗い気持ちの影が彼の心中に過った。
いや、反発させることなく娘から背を向けたのは自分であり、今日はその謝罪に来たというのに、さっそくまた背を向けたくなってきてしまったことに、情けなさで胸が一杯になる。
自分は本当にダメな父親だ。
「おじさん?」
急に暗い顔になった楽員に、たんぽぽは怪訝な表情で問いかけた。
「どうしたの? おなかいたい? たんぽぽ、さすってあげよるよ?」
「いや、大丈夫だ」
幼心で心配そうに見つめられるほど自分は暗い顔をしていたのだろうかと楽員が無理やりの笑顔を作るが、たんぽぽは心配そうな表情を崩すことなく、もう一つ問いかける。
「おじさん、どうして鈴お姉ちゃんにあいにきたの?」
「ん?…………それは」
この質問にどう答えるべきか迷う中、幼子はこの間の出来事を思い出して伝えるのであった。
「あのね、セシリアお姉ちゃんっていって、たんぽぽのお姉ちゃんなんだけどね、セシリアお姉ちゃんのおばあちゃんがあいにきたの。セシリアお姉ちゃんがさびしいじゃないのかなって、しんぱいしてたんだよ」
「……………」
「おじさんも、鈴お姉ちゃんがさびしいなの、しんぱいしてたの?」
「………ああ、そうだな」
振り向くことなく去っていく中、確かに背後の鈴が泣いていたことを楽員は知っていたのだ。
「俺は……謝りたかったんだと思う」
「あやまるの? なにかわるいことしたの、おじさん?」
「ああ。寂しい思いをさせてしまったこと。傷つけてしまったこと」
自分がいなくなった後、あの娘はどうやって生きていくというのか?
自分が傷つけてしまったことも、その後に別れた妻と大喧嘩し、彼女の元を飛び出してしまったことも聞いている。
もっと自分がきちんと向き合っていれば起こらなかったことだというのに。
「あの娘………鈴が一人ぼっちじゃないのかと心配してたんだが、どうやら一夏君がいてくれているみたいだし」
「うんっ! 一夏お兄ちゃんのこと、鈴お姉ちゃん、大好きなんだよっ!」
幼い子供がこうやってはっきりと言ってくれているあたり、ひょっとするとひょっとするのかと思って、ようやく明るい表情が見え始める。
「そうか。あの二人、ひょっとしたらと思っていたんだが………」
先の長くないのなら、いっそのこと信用できる人物とくっついてくれた方が安心できるというもの。
「うん。でもね、箒お姉ちゃんも一夏お兄ちゃんのことすきなの。だからね、陽太パパがね、こう言ってた!」
―――「いっそのこと日替わりで二人が使用する『共有財産』にしちゃえば良くね? このままじゃアイツが恋愛感情を理解するのに10年、婚姻関係に発展するのに更に10年、肉体関係は更にその先………人生短いんだから、竿〇妹ぐらいは目を瞑ろうぜ」―――
「ってっ!」
安心した次の瞬間に落とされた爆弾発言に脳の処理が追い付かず、真っ白になってしまう楽員と、彼の手を繋ぎながら『「きょうゆうざいさん」ってなに? 「さお〇〇〇」ってなに?』と難しい単語の意味を問いかけるたんぽぽ。やっぱりお前が一番教育によくないわ陽太
そんなこんなで茫然自失としていた楽員であったが、気が付けばいつの間に職員用の通用門に辿り着いており、たんぽぽは彼の手を離すと、自分が鈴を呼んでくると走り出そうとする。
「おじさん、ちょっとまってて! 鈴お姉ちゃんはたんぽぽがよんでくるっ!」
「あ、ちょっと待ってっ!?」
心の準備が何もできずにいるのにいきなり対面は………。
すっかり怖気づいてしまった楽員であったが、その時、もの凄い土煙を上げながらこちらに走ってくる人影に気が付き、よく目を凝らしてその人物を見てみる。
「あ、鈴お姉ちゃん!」
二人に向かって走ってくる鈴が、何故か見て取れるほどに怒り心頭であり、何か言わないととあたふたしている実の父親の目の前5mほどに差し掛かった時に、怒鳴り声をあげながら華麗に跳躍し空を舞うのであった。
「小さな子供を誘拐すんなっ! このド変態がぁっ!?」
汗だくになりながら探し回っていた鈴の目には、幼い子の後ろ姿と『見たこともない』中年の姿が映った時、最初は保護してくれたのかと思って近寄ってみたのだが、どうにも話の流れがおかしいことに気が付く。
『………よんでくるッ!』
『ちょっと待って!?』
何か呼ばれてはまずいことでもあるのだろうか? いや、そもそも逃げ出そうとしているたんぽぽの手を掴み、必死に学園外に連れ出そうとしているのではないのか? 顔色も悪いし、なんだか挙動不審だし、何よりこういう自分の子を狙って行われる性犯罪というものは万国共通であり、女性として許しがたい行為である。
考えることコンマ一秒。これは黒だと判定した鈴は、勢いを落とすことなく大地を蹴り、幼女を救うために実父犯人目掛け渾身の飛び蹴りを食らわすのであった。
「死ねぇっ!」
女尊男卑な主義では毛頭ないが、小さな子供相手に発情する変態に掛ける情けはないというポリシーの元繰り出された一撃が、見事に実父犯人の顎を捉え、大地にひれ伏させる。
「りぃっ!?」
どこかで聞いたことのあるような声をした犯人がゆっくり地面に崩れ落ちる姿を見ながら、ファイティングポーズを取る鈴であったが、驚いた表情を浮かべたたんぽぽが急に泣き出しながら目の前の実父犯人を揺さぶりだす。
「おじさぁーーーーーんっ! 鈴お姉ちゃんのおじさぁーーーーんっ!」
「?」
「うわぁあぁあーーーんっ! 鈴お姉ちゃんのおじさんがシンじゃったぁあああーーー!」
白目を向いて失神する中年が死んだと泣き出すたんぽぽの声を聴いて、鈴はだんだんと冷や汗が滲み出る。
誰が誰のおじさんだって?
「…………」
恐る恐る覗き込み、最初は別人じゃないのかと疑いながら見ていた鈴であったが、だいぶん痩せ細ってしまっているが紛れもない自分の父親であることに気が付き、彼女も慌てだす。
「えっ? えええっ!? ええええええぇえぇぇぇーーー!! なんで父さんがここにいるのよ!?」
「おじさあぁぁーんっ! 鈴お姉ちゃんのおじさーんっ!」
完全に意識を飛ばした楽員の周りを慌てるだけの二人を尻目に、いつの間にか駆け出していたポチが千冬を連れてくるまでの間、二人はグルグルと周囲を駆け回るだけであったという………。
☆
駆け付けた千冬の指示のもと、失神してしまった楽員は保健室に運ばれ、心配そうにたんぽぽが隣で彼を見つめている中、加害者の鈴は保健室の前の廊下に正座で座らされ、仁王立ちする千冬によって静かな雷を落とされていた。
「まさか代表候補生ともあろう者が、確認もせずに一般人に飛び蹴りをかましたというのか?」
「えっと………それは」
「実の父親だから見逃してもらえると思ったら大きな勘違いだ。民事不介入の警察でも、これはラインを超えた暴行容疑扱いされるぞ」
千冬からの冷たい宣告に青褪めた鈴が半泣きで彼女の足に縋りつく。
「そこをなんとかぁっ!? 幼児誘拐の犯人だと思ったんですっ! 最近流行ってるヤツっ!?」
「だからと言っていきなり飛び蹴りもあるまい………まあ、しかしだ」
こういう時いつもやらかす陽太は割と雑な扱いをしても文句を言う程度で済ませる対応をする分、ノリで暴力をふるってしまったのは流れなのか? そう考えると陽太への対応も少々変えていく必要があるのかもしれない。
そんなことを腕組みをして考えていた千冬は、しゃっくりあげながら泣き続けていた鈴にこう告げる。
「一応、私のほうにはとある筋から今日来日されると連絡は来ていたのだが………お前は知らなかったのか? 実の親父さんだというのに」
「えっ?」
「美虎(メイフー)から昨日メッセージは来ていたぞ」
何の後ろ盾もない鈴を代表候補生として拾い上げ、ここまで強く叩き上げてくれた彼女の恩師ともいえる、中華連邦陸軍第一兵器開発局のチーフアドバイザーにして、かつては『無冠の女王』『大陸の虎』と恐れられた、元国家代表の『烈 美虎(リー・メイフー)』が千冬にだけどうして自分の親が来日することを告げていたのだろうか? 疑問を過る鈴であったが、それはすぐさま解決する。
―――タイミング良くLINEの着信音がなる鈴のスマホ―――
「?」
すぐさま取って中身を確認した鈴は目にする。
―――ヒッグ! あ、間違えて昨日千冬に送っちゃったけど、アンタの父さん、アンタに会いに日本に行くんだってさ
飲みすぎて報告遅れちゃった。ゴメンね♡
だけど怒っちゃやーよ
あと、お父さん、だいぶん印象変わってるから人違いだとか思っちゃだめよ。傷ついちゃうから
出来たら笑顔で最初の時みたいにぶりっ子しながら出迎えてあげなさい
私が夢で見た魔法少女っぽい格好とポーズで出迎えてあげなさい
親愛なる鳳鈴音の師匠より―――
「夢で見た割には具体的に挑発してくれてんじゃないわよ、あんのっクソ飲んだくれが………」
中国語で書かれた内容を読んで怒髪天を突いてスマホをバキバキに握りつぶしている鈴音の態度に、内容が読めないけどなんとなく中身を察した千冬であった。
「悪酔いした酔いどれ虎の戯言だ。気にするな」
「アルコールで脳みそ浸かってるんじゃないですか、あの馬鹿虎女!?」
今も酔っぱらいながらスマホを操作していたイメージが二人の頭の中で同時に湧き上がるが、とりあえずもう酔い虎は外に置いといて、当面の問題に立ちかえる。
「ふむ………しかし、お前の親父さん、ずいぶんと印象が変わったな。前はあれだけ恰幅がよくて、少し太り気味だったはずなのに」
「うん………どしたんだろ、一体?」
楽員の顔を知っている千冬と、彼女に育てられた鈴でさえ、一瞬誰か分からないほどの激変ぶりであった。とても健康的にダイエットで痩せたような変わり方ではなく、病的なもので骨と皮だけに近い身体になってしまったかのようである。
「とりあえずカールが診断してくれている。あと、たんぽぽにも謝っておけ」
「え? ど、どうして………?」
「知り合いが突然飛び蹴りかまされて目の前で失神したんだ。いくらあの娘でもショックはあろう」
今も眠る楽員のそばで彼の手を掴みながら『ちゅーしゃはメッ! ぜったいメッ!?』とカールを困らせている幼女を思い出し、まだ相手をしていないといけないのかと思いげんなりとなってしまう。
「シャルと一夏達、まだ帰ってこないんですか?」
「ん? 一夏と箒なら先ほど帰ってきていたが………お、噂をすれば」
箒と二人でこちらに来た一夏は、鈴と千冬を見つけると血相を変えて駆け寄ってくる。
「鈴ッ!! 千冬姉ッ!?」
「一夏?」
「慌ててどうした?」
何かあったのかと思い問いかけた所、一夏が自分のスマホを見せながら真剣に聞いてきた。
「これって、どういうことだよ!?」
おじさんさつじんじけんはっせい
はんにんは
鈴お姉ちゃん
by たんぽぽ
「鈴、なんでこんなことしたんだ?」
「素直に信じるな、バカ一夏ッ!! 」
たんぽぽからのLINEを見て血相を変えて真剣に問いかけてくる一夏のバカさ加減にキレた鈴であったが、そんな彼女を箒が冷静にフォローする。
「一夏、流石に思い込みすぎだ。たんぽぽが過剰に内容を盛ってしまっているだけだろう」
「えっ?」
「そう決まってるでしょう、まったく……」
腕を組みながらぶつぶつを文句を言う鈴に、友人としての言葉を箒が投げかける。
「大方、痴漢か何かと勘違いして、頭蓋骨と顎を砕く蹴りを打ち込んだだけだろう」
「アンタ等はどいつもこいつも私を危険人物みたいに思ってるんじゃないわよっ!?」
友人達の内心を知った鈴がちょっぴり人間不信になりかける中、保健室から出てきたカールは腕にまとわりついたたんぽぽに苦労しながらも手当と検査が終わったことを千冬達に告げるのであった。
「特に外傷はないが一撃で意識を刈り取ったみたいで、見事な脳震盪ぶりだよ。玄人の技かと思ったぐらいだ」
「カール先生までぇっ!?」
「鈴お姉ちゃん!? たんぽぽ、おちゅうしゃさせないようにおじさんまもったよ!」
「アンタはちょっと黙ってなさい! しかもLINEで一夏にまで変なこと言いやがってっ!?」
ギャーギャー騒ぐ鈴とたんぽぽをしり目に、カールから手渡されたカルテを見て、千冬の顔色が一変する。
「これは?」
「私も専門じゃないから断言は避けさせてもらう。一番いいのはご本人の口から直接答えてもらうことなのだが………」
激やせした原因が『これ』だというのであれば納得すると共に、脈絡もない来日の理由にもなる。そしておそらくそのことを鈴が知らされていないためにただ戸惑っているだけの様子なのだろう。
「一夏、箒。しばらくたんぽぽを頼む」
「あっ、うん」
ひょいっと、たんぽぽをカールから預かった一夏は、腕の中で『おじさんの、はじめては、たんぽぽがまもる』と注射の脅威に晒されていると思い込んで何とか守ってあげようとしている幼女をなだめるために、養父役の少年が発見したある方法を取る。
「たんぽぽ、ピーチ味だぞ」
「んっ!?」
箒がピーチ味の棒付き飴をたんぽぽの口の中に放り込むと、最初の数秒間だけフゴフゴと騒いでいたのもつかの間、やがてほっぺたを両手で持って飴の味を堪能しだす。
「あむあむあむあむあむあむ~………おいち♪」
たんぽぽが騒いだなら、とりあえず口に食べ物を突っ込め(長持ちする飴が最適)が本当のことなんだなと実感する二人を尻目に、カールに連れられて保健室に入る。
カーテン越しに父親がまだ眠っていることを確認した鈴であったが、カールはそんな彼女に問いかけてきた。
「凰君、少し質問はいいかな?」
「はい?」
「答えづらいなら言わなくても別にいいんだが………君がお父さんと別の場所で暮らすようになって数年間、一度も面会やその後の動向などを聞かれたことはないのかな?」
「…………ええ。一度も聞いたことも会ったこともありません」
プライベートなことゆえに表情が硬いままの返事をしてしまう鈴に対して、カールは顎に手をやり何かを考えこむと、やがて鈴に謝罪する。
「済まない。おかしなことを聞いてしまったね」
「何かあったんですか?」
「いや、なんでもない。個人的に気になったことがあっただけなんだ」
「気になることって、一体……!?」
何なんだろうか、と聞こうとする鈴であったが、その時、意識を失っていたはずの楽員が小さなうめき声をあげてゆっくりと瞳を開く。
「ううぅ………」
「!?」
「気が付かれましたか? 意識を取り戻されたようですね」
そして瞳を開き、焦点が定まらない様子であたりを見回しながら、ゆっくりと鈴とカールのほうに振り返えったのだった。
「こ、ここは?」
「IS学園の保健室です。意識を失った貴方をここで介抱させていただきました………私は保険医のカール・テュクスです」
白衣と自己紹介によって目の前の男性の言葉を事実なのだと捉えた楽員は、隣でチラチラとこちらを見つめている鈴に飛び蹴りを食らったことは夢ではなかったのだと確信し、頭を下げるのであった。
「娘のやらかしたことで教員の皆様にご迷惑をおかけしまして………」
「………ちょっと待ちなさいよ。何よそれ?」
第一声が自分への言葉ではなく、まるで保護者として当然という形での謝罪であったことに、理屈よりも感情で彼を直視できていなかった鈴が容易に血を頭に上らせてしまう。
「そもそもアンタが連絡も私に寄越さずに学園に押しかけてきたのが悪いんじゃないっ!」
「………」
「それに今までどこにいたのよ? 私と母さんほっといて、自分はどこかで楽しく暮らしてたんじゃないの? それとも新しい女でも……」
「コホンッ」
言葉を続けて楽員を避難しようとする鈴を制止するために、わざと大きく咳き込んだカールの意図を察し、彼女もそこで言葉を止める。
沈黙が流れる保健室であったが、このままではいけないと思ったのか、カールはあることを問うために鈴に少しだけ席を外すように懇願するのであった。
「申し訳ない凰君。少しだけ席を外してはくれないか? 医者として少しこの人に言っておかねばならないことがあるんだ」
「………なんですか、それ?」
「フッ………君への悪口ではない。これは本当のことだ」
煙に巻くような言い方に満足しないものの、父の顔を直視するのも今は苦痛であるためか、黙って保健室から鈴が出て行ってしまう。
彼女の後姿を見送りながら、カールは肩を落として落胆する楽員に対して、カルテを見ながら真剣な表情で問いかけた。
「失礼。私も専門ではありませんし、すでに病院にかかられていると思いまして………お身体のことです」
「!?」
「ステージは………おいくつですか?」
直球な物言いであったが、楽員は驚きはしたものの特に気分を害することなく、自分の右肩を左手で掴みながら苦笑して告げる。
「先月、医者からステージ『4』だと告げられました」
「差し出がましいことを聞いてしまいましたね。身元証明のために手持ちのカバンを開けさせてもらいました時に、その手の薬が何個か見受けられましたので」
自分の身体のことがあって、『もしも』のことが起こる前に娘に会いに来た。
楽員の気持ちを一瞬で察したカールは、先ほど出て行った扉を見ながら彼に質問を投げかける。
「ですがそのような状態で飛行機に乗って、さらに長期間の移動などをされましては………」
「俺の我儘ですよ。そう、あの子にあんな顔をさせてしまっているのも………なら病室に来いなどと告げる勇気が持てず、こうやって医者を無理やり言いくるめて会いに来たのですが………どうにも尻込みしてしまって」
いざ実際に娘と言葉を交わそうとすればこの様である。鈴の言う通り、相談もなしに一方的に妻と離婚した身で、今度は何食わぬ顔で娘のためにやってきた。などとはいうのはあまりに自分勝手が過ぎると思い、このまま帰国しようと思い始めた楽員と、そんな彼の心境を素早く察したカールは、ここは少し強引にでもキッカケは作るべきだと判断し、鈴音を呼びに保健室の戸を開く。
「い・い・か・げ・ん、放しなさいっ!?」
「ヤッ!!」
何とか振り払おうとする鈴と、そんな彼女の足に必死にしがみつくたんぽぽの姿が目の前で展開されているとは、さすがの彼も少々予想外だったようで、ズレたメガネのままに千冬に無言で問いかけた。
「鈴音が保健室から出てきてそのままどこかへ行こうとした瞬間から、たんぽぽがああなったんだが………心当たりはやはり中の人なのか?」
千冬の察しが良かったのが幸いし、カールは探す手間をかけずに済んだようだ。そして二人の言い争う声を聴いた楽員が起き上がって様子を見に来たので、ちょうど良いと思いカールは楽員と鈴の、改めての話し合いを提案する。
「せっかく日本に来たのですから、もう少し娘さんとお話をされたらどうですか? 幸い今日は休日ですし、緊急の要件もありませんし」
「ちょ、私は、話なんてないのよ!?」
でも鈴はそうはいかないと踵を返して逃げ出そうと、たんぽぽの無理やり引っぺがすとそのまま走って逃走しようとする。
「鈴っ!?」
一夏の制止の声も聞かずに脱兎のごとく走り出した瞬間、引っぺがされた幼女が誰よりも素早く反応し、彼女を取り押さえるために思い切りの良い行動に打って出た。
「ポチッ!」
「!?」
たんぽぽがその場から跳躍しつつ鈴のツインテールの先を掴み、ポチが彼女の服の裾を噛んで押さえつけ、鈴はポチの重量を加算したたんぽぽによって首を後方にへし折られる勢いで引っ張られることになる。
―――何かが砕けたかのような低音が響く―――
「ぐぇっ!?」
あまり乙女としてふさわしくない声を上げ、首を抑えながら悶絶する鈴のツインテールを握りしめ、たんぽぽは鈴に真顔で叫び続ける。
「いっちゃメッ! おじさんは鈴お姉ちゃんとおはなしするのぉっ!!」
「た、たんぽぽ、ちょっと手加減してあげてくれ」
そばで見ていた一夏にしてみれば冷や汗ものの行動である。いくら鈴を止めるためとはいえ一切の容赦がないあたり、薄らぼんやりと怒った時のシャルの姿が重なって見えてくる。
「おーじーさーん、とぉーーーぉっ!!」
「わかったわかった。食堂で二人で話し合いをしてもらおう。楽員さんもよろしいですね?」
見兼ねたのは千冬も同様で、むしろ鈴の足に再びしがみ付いて『話し合うまで梃子でも離れん』と言わんばかりのたんぽぽを納得させるため、そして複雑な事情が絡み合っている凰親子の仲を取り持つため、多少強引にでも話を進めたほうが良いと判断したのだ。
「は、ハイ」
あっけに取られながら返事をする楽員と、未だ痛みから復帰できない鈴が何とか涙目で振り返るが、千冬は「あえて」鈴の返事を待たずに烙印を食堂へと案内するのであった。
☆
「…………」
「…………」
人払いをされた食堂で、アイスコーヒーを出された二人はテーブルを挟んで沈黙し続ける。鈴としては済んだ話である以上、顔など見たくもないところであるが、入り口でこちらを覗いてくる千冬と一夏、そしてたんぽぽの視線が逃げ出すことを許してくれていない。涙を流して親子の再会を感動でもすればよいのかと一瞬想像してみるが、自分に背を向けたあの日の父の背中が記憶の中にある限り、鈴の心にそんな温かい感情が芽生えることはないのだ。
「リ、鈴音(リンファ)」
久しぶりに呼ばれた中国語の発音に一瞬目元が緩みそうになるが、無表情を取り繕って冷たく、跳ね除けるように返事をする。
「何よ? 優しく名を呼べば、捨てた娘も笑顔で返事をしてくれるって信じてそうな『誰か』さん?」
「!!」
「鈴ッ!?」
あまりの言い様に言われた楽員より聞き耳を立てていた一夏の方がキレてしまう。だが、そんな彼の様子にもイライラしているのか、火が付いたように鈴の言葉は止まることがない。
「それで? 私に今更何の用? ひょっとして、お金の打診? IS操縦者なら預金もタンマリ持っているとか考えた訳?」
「ふざけるな、俺は娘にそんなことを頼みに来たわけじゃない」
「じゃあ何の用よっ!」
「それは………」
「はっきり言えないくせに、何しに来た訳!? やっぱりやましいことがあるんじゃないの!?」
「違う………ただ」
―――これが最後になるかもしれない。だから娘の顔を一目見たかった―――
はっきりそう告げようとするが、やはり踏ん切りがつけ切らず言葉が詰まり、それがさらに鈴をイラつかせ、彼女はテーブルを叩いて立ち上がると、さっさと食堂から出ていこうとする。
「やっぱり、アンタと話をするのが間違いなのよ」
「………」
「何にも言ってくれないんだ。やっぱり………」
完全に冷え切った声のまま食堂の出入り口を潜ろうとする鈴に、たまりかねた一夏が肩に手をかけて止めようとするが、その手を無言で鈴自身が弾いて睨みつけてくる。
付き合いの長い一夏すらも過去に数度だけ見たことがあるだけの『マジギレ』した鈴の表情に気圧され、彼女に何も言えずに道を譲れしまうのだが、そんな鈴にたんぽぽが詰め寄ろうとする。
「だめぇっ! おじさんと・」
「だまれっ!」
生まれて初めて腹の底からの怒鳴り声をぶつけられ、数秒間何が起こったのかわからなかったたんぽぽであったが、やがて瞳に涙を貯めながらしゃっくりを上げだしてしまう。
涙腺が決壊寸前となっているたんぽぽの姿に罪悪感を感じたのか、それとも自分自身がもっとうまく父親と対話するための言葉を持たないことへの劣等感か、足早に鈴はこの場から立ち去っていく。
「……だめぇ………おじさんと………おはなし」
そんな鈴の去っていった方を見ながら、怒鳴られながらも鈴の実父と話を望む幼女をそっと抱きしめたのは、表情を若干悲しいものにしながらも微笑んでいた千冬であった。
「お前は間違っていない。お前は何も悪くないぞ」
「でも………鈴お姉ちゃん、おっきいこえでおこった」
千冬のスカートに顔をうずめ、彼女の両足に抱き着いて顔をうずめるたんぽぽの頭を優しく撫で、落ち着いた声色で諭し続ける。
「怒ったのはきっと鈴も楽員さんの話を聞こうとしていたからだ。そして楽員さんが言葉を続けられなかったのは、きっと鈴だからこそ伝えづらいことがあったからだろう」
「…………そうなの?」
「ああ。家族だから伝えづらいものはあるんだ。どうしてもな」
かつて自分の古傷と命の危険性を一夏に伝えることが中々できず、陽太に口止めしたこともあった。無論それは弟を心配をかけたくないという配慮のつもりではあったが、本当のところはなぜそんな事態になってしまったのかを一夏に面と向かって説明する勇気が、あの時の自分にはなかった。
誰かを傷つけることを恐れるあまり、より深く傷つけてしまう場合もあることを失念し、彼を追い込みかけた一因でもあっただけに、千冬は深く反省しながらたんぽぽにこう告げるのであった。
「すまない。大人になると色々いややこしくなってしまって………お前たち子供にいらぬ心配ばかりかけてしまうな」
鈴の代わりにたんぽぽに謝罪する千冬であったが、幼女はそんな彼女を不思議そうに見つめながら逆に問いかけてきた。
「どうして、ちー先生がごめんなさいするの? わるいことしたの?」
「いや、どう伝えればいいのやら………いっそのこと、殴り合いの喧嘩でも出来たらこじれずに済む話なのかもしれないが」
「けんか?」
何気ない一言。
教師としては無論推奨はできないことだが、もし、これが本当の姉弟間の話であるのなら、いっそのこと伝えたい感情をぶちまけながらぶちまけながら殴り合いの喧嘩でも出来たら、清々しいのかもしれない。
そういえば、自分達の恩師はよく自分とアリアか束とが喧嘩をしているとき、酷くなりそうなとき以外は一切手を出さず、静かに見守ってくれていたものだ。感情が落ち着き、バツが悪くなりそうになるといつも決まって両者の顔を拭いながら笑ってこう言ってくれた。
―――『言葉は想いを伝えたいからあるの。でも、言葉だけじゃ全部の想いが中々伝わらないわね』―――
―――『仲直り………出来たら、もっと仲良くなれるわね』―――
喧嘩するたびに仲直りをして、先生が亡くなってしまうあの日まで自分たちはずっと絆を育て続けてきた。
「けんかすると、なかよくなれるの?」
「ううん。喧嘩して、仲直りできて、人はずっと前より仲良くなっていく」
こんな当たり前のことすら、もう自分たちは10年前に出来なくなってしまった。立派な大人になるということがいかに難しいことなのか痛感するが、本当はただ自分達が歳を重ねることに憶病になっていってしまっているだけなのかもしれない。
そう。本当の気持ちを伝えることに、ひどく臆病になってしまう大人だっているのだ。
「………」
涙は乾き、不思議なものを見つめる視線でしばし千冬を見ていた幼女は、やがて下に俯いて何かを考え出し、そして一度だけ頷くと、何かを決心したような表情で千冬達に背を向け、走り出していく。
「お、おいっ!」
「たんぽぽっ!?」
千冬と一夏が止めようとするが、そんな彼女に見向きもせずに行先を告げる。
「鈴お姉ちゃんのトコッ!!」
迷うのが大人の悪いところなら、迷わずに走り出せるのは子供の特権である。駆け出した小さな背中を不思議な気持ちで見送ることとなった千冬は、何かに痺れるような気持になりながら、思わず隣の一夏に問いかけた。
「なあ、一夏?」
「えっ? いや、千冬姉! たんぽぽのやつを追わなくていいのかよ? あのままじゃまた鈴のやつに………」
「お前と私、姉弟喧嘩したことがあったか?」
「えっ?」
突然の姉の質問に、二度見返した一夏は一拍置いて真剣に考えてみる。
幼稚園の頃、小学生の頃、中学生の頃、そして今の高校………不満を覚えることは多々あって、口答えをしようとしたことは何度もあったが、思い出されるのは何か逆らおうとした瞬間、必ず光り輝く笑顔と鬼神の如きオーラで自分を瞬時に黙らせる千冬の姿であった。
「!?」
幼いころから丁寧に刷り込まれた対応と恐怖を思い出し、ガタガタと震えだす弟の姿がおかしくなって小さく噴き出してしまった千冬は、たんぽぽが走り去った方向を改めて見つめ返す。
「(私は上手く喧嘩もできていなかったか………それに比べ、たんぽぽは)」
先日のセシリアとの一件を思い出し、驚くほど他者の懐に潜り込むのが上手な小さな少女は、今度は弟の幼馴染の問題にまで踏み込んでいく。存在を知っていながらも教え子との距離感で踏み込めなかった自分と比べて、驚異的な速さでだ。
「大事なことと大切なことの違い。ということか」
「?? どうした、千冬姉?」
今一つ分かっていない弟の姿に、さすがに可愛さだけではなく、呆れも感じ取り、深々とため息をつきながら苦言を一つ漏らす。
「お前よりもたんぽぽのほうが今は頼りになるぞ。と思っただけだ」
「うえっ!?」
次回、千冬さんの弟よりも頼りになるかもしれない幼女の、新しい『初めて』が起こります