王下七武海総監督物語   作:グランド・オブ・ミル

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レイの過去 ロビン編 3

 

 

 

 

 

「博士!!」

 

「どうした?ロビン。」

 

オルビアとレイが図書館を出ていってすぐにロビンが入ってきた。走ってきたため息が切れている。

 

なぜレイが図書館を出ていったのかというとクローバー博士の指示だ。博士はこれから政府の役人が押し掛けるであろう図書館に海賊であるレイを置いておくのはまずいと判断したのだ。

 

「私のお母さん・・・ここに来た?」

 

「!何を言い出すロビン。お前の母親がオハラにおるわけがなかろう。」

 

博士はロビンの質問に平常を装って答える。他の学者達も同じく平常を装っているが、みんなロビンから目を逸らしている。

 

「そう・・・だよね・・・。そうだ!大変なの!海軍の軍艦がこの島に来るって!この島の学者のみんなを捕まえに!!」

 

「「!!?」」

 

母がいないことにしょんぼりしたロビンだが、大事なことを思い出し、学者達に忠告をする。それを聞いた学者達は一瞬顔をしかめる。なぜたった今オルビアが持ち帰った情報をロビンが持っている?そんな疑問が沸き起こるがクローバー博士はそれよりも大事なことをロビンに伝える。

 

「その事なら軍艦ではなく"政府"の船がこの島に入ってきたらしい。おそらく今までより厳重な調査になる。」

 

「・・・・・・」

 

「いいかロビン。お前は政府の者達が来ようとも自分が考古学者であることを絶対に明かしてはならん。お前程小さければ誰も学者などとは考えん。分かったな。」

 

「どけ!!」

 

「うわっ!!」

 

クローバー博士がロビンに話し終わると同時に入口付近にいた学者の一人が突き飛ばされる。そして銃を持った政府の役人が続々と図書館内に侵入してきた。

 

「・・・ずいぶん手荒じゃないか。」

 

「このオハラの研究所に大犯罪である"歴史の本文(ポーネグリフ)"解読の疑いがかかっている!徹底的な捜索を要するので全員直ちに外へ!!」

 

「・・・・・・・」

 

今までの調査とは明らかに違う雰囲気にロビンは震え上がる。

 

「下手に荒らしてくれるなよ。ここにあるものはお前達には計り知れん程貴重なものばかりだ。」

 

「それを聞き入れる義務はない!!連れ出せ!!」

 

「「「はっ!!」」」

 

リーダー格の男の指示を皮切りに役人達は学者達を図書館の外へと連れ出していった。

 

 

 

 

 

 

 

所変わってここはオハラにある町。

 

「町民に告ぐ!この島の考古学者達には今"世界の滅亡を望む悪魔である"という容疑がかけられている!!」

 

「「ええ!?」」

 

ここにも政府の役人達が構え、町民にある忠告をしていた。

 

「よってこれより島全域を捜査の対象とする!!その間!考古学に関係のない者達は身分を証明する物を持ち、避難船に一時避難せよ!!」

 

「ひ、避難船!?」

 

「なぜそこまで!?」

 

「学者達の問題なら我々は関係ないんだから島を離れる必要なんて・・・!!」

 

突然押し掛け、島からの立ち退き命令を出す役人達に町民達は抗議する。

 

「これを伝えるのが我々の義務だ。後にこれを無視し、その身に何が起きたとしても我々は一切関知しない。」

 

しかしその町民達も役人の言葉を聞いて恐怖を感じ、一目散に避難船に向かう。役人達は町民達がどうなろうと構わない。ただ自分達は町民を助けるチャンスを与えた。その事実さえあれば良かったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで全員か!?」

 

「学者はここに集めろ!!」

 

オハラ図書館前には島の学者達全員が集められていた。強引に連行されたため、みんな所々に傷がある。

 

そしてその学者達の前にはロビンの姿もあった。

 

「ロビン。避難船なんて物があるらしい。もはや政府は何をしでかすか分からん。お前も早くそこへ行け。後でお前を拾い、どこかでまた暮らすようにレイには伝えておく。」

 

「そんな・・・いやだよ。みんなを置いていくなんてやだよ!!私もここにいる!!」

 

「ロビン!!」

 

「いや!!」

 

クローバー博士とロビンが言い合う。他の学者達もロビンに避難船に行くように言うがロビンは頑なに譲らなかった。そんな時・・・

 

「ム~ハッハッハッハ!!やっとるか~諸君~。」

 

「「ご苦労様です!!長官殿!!」」

 

CP9の長官スパンダインの笑い声が聞こえてきた。学者達はその笑い声の方へ向く。そしてスパンダインが引きずっているものを見て一瞬で目を逸らした。

 

「まったく、この島には恐ろしい猛獣が出るんだな。殺されかけたぜ俺は。」

 

「・・・うっ。」

 

それは血まみれのオルビアだったから。スパンダインに投げ出されたオルビアはドサッと音を立てて倒れる。

 

「こいつは脱獄囚。この女の一団も先日古代文字解読の罪で消されたのさ。てめぇらがこの女とつながってるってんなら話は早ぇんだがね。」

 

「・・・・ロビン!避難船へ行ってなさい!早く!!」

 

これから起こることをロビンに見せられないと感じたのか、クローバー博士はさっきよりも強い口調でロビンに指示する。

 

「(・・・ロビン?)」

 

クローバー博士がロビンの名前を出したことでオルビアが反応する。そしてゆっくりと顔をあげてロビンを見る。

 

「(そんなに・・・大きくなったのね。)」

 

ロビンの成長にオルビアは思わず涙する。

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、オハラ図書館から大きな爆発音が聞こえてきた。図書館を見るとなんと役人達が"全知の樹"を爆破していた。

 

「な!?何てことを!!」

 

「あの図書館を何だと思ってんだ!!」

 

「何考えてんだ!!おい!やめさせろ!!」

 

抗議する学者達。しかし役人達はやめる気配もない。やがてCP9のマークが描かれた電伝虫がプルプルと鳴る。役人の一人が受話器を取ると図書館で調査をしていた役人の声が聞こえてきた。

 

『発見致しました!!地下に部屋があり、"歴史の本文(ポーネグリフ)"と見られる巨大な石が一つと明らかな古代文字の研究資料が!!』

 

ガチャン!と電伝虫を切るとスパンダインが叫び出す。

 

「ムハハハ!さてオハラの学者達よ!!ここに貴様らの"死罪"が確定した!!実に残念!世界一の考古学者達が一同に命を落とすとは!!」

 

"歴史の本文(ポーネグリフ)"が見つかったことで政府は堂々とオハラの学者達を殺すことができるようになってしまった。実を言うとこれこそが今回強引な捜査に打って出た政府の目的だった。政府は考古学の聖地であるオハラを見せしめに、同じく"歴史の本文(ポーネグリフ)"を解読しようとする学者達を減らそうとしたのだ。

 

「え・・・博士!!みんな殺されちゃうの!?本当に古代文字を読んだだけで!?」

 

「バカ野郎子どもコラー!!こいつらの目的は研究の後強力な兵器を呼び起こし、大量の人間を殺す事にあるんだよ!!」

 

「ウソよ!!みんなはそんな事考えてない!!」

 

「ロビン、やめなさい。そんな使いっ走りでは話にならん。」

 

学者達を庇おうとするロビンを止め、クローバー博士はゆっくりと立ち上がる。そしてスパンダインに向けてこう言い放った。

 

「死ぬ前に"五老星"と・・・世界のトップと話をさせろ!!この考古学の聖地オハラが長きに渡り研究を続け、夢半ばながら"空白の100年"に打ち立てた仮説を報告したい!!」

 

 

 

 

 

 

『考古学の権威、オハラのクローバー博士か・・・。これまでの世界文化への貢献人である君が道を踏み外すとはな・・・。』

 

「過去はすべての人類のものじゃ。語られぬ歴史を知りたいと思う気持ちを止める権利は誰にもない。」

 

クローバー博士と"五老星"が電伝虫越しに話をする。ロビンはクローバー博士が遠くに行かせたためここにはいない。これからクローバー博士が話す仮説を聞くと罪になってしまうからだ。

 

『"歴史の本文(ポーネグリフ)"を読めば古代兵器の復活が可能となり、世界に危機が及ぶ!お前達にもし悪意がなくともそれを利用しようとする者が現れれば同じ事!』

 

「過去がどうあれそれが人間の作った歴史ならば全てを受け入れるべきじゃ!恐れず全てを知れば何が起きても対策が打てる!!」

 

世界の頂点に立つ者達にも臆することのないクローバー博士。そして彼は考古学の聖地オハラが立てた仮説を話し出す。

 

「過去の人々がなぜわざわざ硬石のテキストを使い、それを未来へ伝えようとしたのか・・・。ただ紙や本に書き残してもそのメッセージは根絶やしにされると考えたからではないのか!?つまりこれを残した者達には明らかに"敵"がいたという証拠じゃ!!」

 

『・・・何が言いたいのだ。クローバー博士。』

 

「その者達が何らかの"敵"に敗れ滅亡したと仮定するならば、"敵"はその後の歴史に生き残っておるはずじゃ。奇遇な事に"空白の100年"が明けた今から800年前、その時ちょうど誕生したのが『世界政府』。」

 

『・・・・・!!』

 

「"滅びた者達"の"敵"がもし現在の『世界政府』ならば、"空白の100年"とは世界政府の手によってもみ消された不都合な歴史とも考えられる。」

 

『・・・・・ほう。』

 

「さらに、世界政府は今から500年前、"南の海(サウスブルー)"のある島に栄えた"ある一族"を恐ろしい"兵器"で滅ぼしたと記された文献も残っておる。」

 

『・・・・っ!!』

 

「遥か昔の文献といくつかの"歴史の本文(ポーネグリフ)"を読み解くことで我々はやがて一つの国の存在に気づいた。今はもう跡形もないが文献の上に浮かび上がったのはある"巨大な王国"の姿!かつては巨大な力を誇ったようだがその国の情報は執拗なまでにかき消されておる。おそらく後に『世界政府』と名乗る連合国の前に敗北を悟った彼らはその思想を未来へ託そうと全ての真実を石に刻んだのじゃ!!それこそが現代に残る"歴史の本文(ポーネグリフ)"!!」

 

『・・・なるほど、大胆な仮説だな。』

 

「古代兵器は確かに世界を脅かす!だがそれ以上に歴史と共に呼び起こされるその『王国』と『思想』こそがお前達にとっての脅威なのではないのか!!」

 

『・・・・・・!!』

 

「その脅威が何なのかは解き明かさねば分からんが、すべての鍵を握るかつて探し回ってるその王国の名は・・・!!」

 

『消せ!!』

 

クローバー博士が王国の名前を言おうとした瞬間、五老星の指示を受けたスパンダインがクローバー博士を銃で撃つ。

 

「「「博士っ!!」」」

 

「博士ー!!」

 

クローバー博士が撃たれたことで学者達が叫び、隠れていたロビンも飛び出す。

 

「博士、しっかり。"生命の祝福"。」

 

「!?レイ・・・!?なぜ出てきたのじゃ・・・!!」

 

「じっとしてて。」

 

倒れるクローバー博士を姿を消していたレイがどこからともなく現れ、受け止める。そして人差し指の先を博士の口に入れ、L.C.Lを流し込む。

 

「!?誰だあいつは!!」

 

「スパンダイン長官!!あいつは懸賞金1億6800万ベリーの海賊"生命姫"インフィニティ・D・レイです!!」

 

「ほう!海賊まで関わっていたとはな!まあいい!大将センゴクより預かったこの"ゴールデン電伝虫"で『バスターコール』だ!!」

 

レイの登場に驚いたスパンダインだが、懐から金色の電伝虫を取り出し、頭部のスイッチを押す。

 

「オルビア、大丈夫?"生命の祝福"。」

 

「んっ・・・はぁ、ありがとうレイ。」

 

「お、おい!!あれ!!"全知の樹"に火が!!!」

 

その傍らでレイがオルビアを回復させていると学者の一人が図書館を指差す。見ると"全知の樹"の根元から火の手が上がっていた。先ほどの爆破で火がついてしまったようだ。

 

「図書館の火を消せー!!」

 

「水を回せ!!」

 

「本を図書館の外へ!!」

 

学者達は役人を押し退け、図書館の火を消そうとする。しかし、すでに火は広範囲に広がり容易には消せない。

 

「おい!インフィニティ・D・レイ!その女をよこせ!!」

 

「断る。」

 

「何だと!!」

 

学者達が図書館の火を消そうと奮闘している頃、レイはスパンダインとにらみあっていた。オルビアは"生命の祝福"で体力は回復したものの、傷は深くレイに肩を貸してもらっている。

 

「その女はもはや大罪人だ!!貴様も罪を被ることになるぞ!!」

 

「なら問題ない。私はすでに海賊。」

 

「このっ・・・!!減らず口をっ!!」

 

オルビアをめぐって言い合う二人。そんなレイをロビンは心配そうに見つめる。その時、スパンダインはロビンの前でオルビアの名前を言ってしまう。

 

「さっさとオルビアをよこせってんだよ!!」

 

「・・・え・・・?」

 

それを聞いたロビンは固まる。そしてオルビアをじっと見つめる。その瞳はやがて涙に潤み始める。

 

「あ、あの野郎!!」

 

「ロビンの前で!!」

 

その場に残ってクローバー博士の手当てをしていた学者達がスパンダインを睨む。そしてロビンは消え入るような声でオルビアに尋ねた。

 

「お母さん・・・ですか・・・?」

 

 

 

破滅はもう、始まっている・・・

 

 

 

 

 

 

 

 


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