王下七武海総監督物語   作:グランド・オブ・ミル

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描写が少なくて分かりにくいというコメントを多数頂いたので描写多めを意識していきたいと思います。


レイの過去 ロビン編 1

 

 

 

 

 

 

 

「「「え?」」」

 

思いがけないレイの微笑みに一同は困惑の声をあげる。そんな彼らを尻目にレイは光を貯めていた星形の砲台を消し、6対12枚の翼もしまってゆっくりとルフィに近づいていく。

 

ポカンとしていた一同だが、チョッパーがいち早く再起動し、レイの前に立ち塞がる。

 

「お前!ルフィに何をする気だ!!」

 

するとレイは背の低いチョッパーに対して手を膝について目線を合わせて優しく話す。

 

「大丈夫。ちょっと元気にしてあげるだけ。」

 

まるで保育園の先生のように話すレイ。それでもチョッパーは退かない。

 

「信用できるわけないだろ!お前は"七武海"だ!!」

 

チョッパーは怖かった。目の前にいるのはモリアと同じ"七武海"、それも"総監督"だ。レイの力はさっきの戦闘でありありと見せつけられた。間違いなく今までの敵の中でトップクラスの実力を持つ相手だ。怖くないわけがない。それでも自分は"海賊"だ。"麦わらの一味"だ。だから船長を守る義務があるとその使命感だけでレイに立ち向かっていた。

 

一方でレイは顎に人差し指を当ててコテンと首を傾げながら悩んでいた。どうすれば目の前の可愛い可愛いトナカイ君に納得してもらえるのか。確かに彼らから見れば自分は政府から抹殺命令を受けた"七武海"であるから、信用されないのは分かる。だからこそチョッパーはルフィの前で両手を広げて自分を睨んでくるのだろう。今のチョッパーは普段の小さいタヌキに見えなくもない形態"頭脳強化(ブレインポイント)"の状態だ。そんな形態で睨まれても可愛くて恐くもないのだが。正直抱きしめたい。ん?抱きしめる?

 

名案が浮かんだレイは再びチョッパーに目線を合わせて話し出す。

 

「じゃあ、まずあなたを元気にしてあげる。」

 

「え?俺を?」

 

「うん、見たところあなたも大分疲れちゃってるみたいだし。それで納得してくれる?」

 

「・・・よし、分かった!いいぞ!」

 

チョッパーの了承を得たレイはチョッパーの脇に手を通して抱き上げる。そして

 

「"生命の祝福"」

 

ちゅっ

 

目を閉じてチョッパーにキスをした。そして口からチョッパーがむせないようにゆっくりと優しくL.C.Lを流し込んでいく。これにはチョッパーも目を大きく見開いて驚き、周りの海賊達も驚いた。

 

「なっ・・・!!てめぇ何を!?」

 

「チョッパー!!てめぇうらやましいぞこの野郎!!」

 

レイの突然の行動に麦わらの一味は警戒体制をとる。サンジはレイにキスされたチョッパーをうらやましがり、血涙を流していた。

 

やがて"生命の祝福"が終わり、レイはチョッパーを静かに降ろす。

 

「ぷはっ・・・あれ!?疲れがとれたぞ!?」

 

チョッパーは自分の疲れがとれていることに驚く。怪我はまだ残っているが、元気は完全に戻っている。

 

「あくまで体力が戻っただけ。ダメージが回復したわけじゃないから気をつけて。これで信用してもらえる?」

 

「おう!お前すげぇんだな!!」

 

チョッパーは自分を回復させたレイにそれはもうキラキラした目を向ける。その目はもうレイを充分に信用している。チョッパーはまだ性格が子どもっぽい所があり、悪意・敵意が長続きしなかった。

 

「ありがとう。」

 

レイはそんなチョッパーの頭を撫でてルフィに近づく。そして膝をついて座り込み、ルフィの上半身をまるで我が子のように優しく抱き上げるとチョッパーと同じく"生命の祝福"を与える。

 

体力が戻ったルフィは目を覚ます。そしてレイを見ると心底嬉しそうに抱きつく。

 

「レイ!!レイじゃねぇか!!久しぶりだなぁ!!」

 

「ふふっ、ルフィも元気そうで何より。」

 

ルフィの反応を見て周りの海賊達はまたポカンとしてしまう。あの"七武海総監督"と親しげに話しているのだ。驚かざるを得ない。

 

「ルフィ、話はまたあとで。ロビンとブルックも元気にしなきゃ。」

 

「おう!頼む!!」

 

レイはルフィとの感動の再会を一旦切り上げ、ロビンとブルックにも"生命の祝福"を与える。

 

「姉さん!久しぶりね!会いたかった!!」

 

「おや!レイさん!お久しぶりですね~!!」

 

そして目を覚ますとロビンは笑顔でレイに抱きつき、ブルックはまるで旧友に会ったかのように挨拶する。

 

「ね、ねぇ。あんた達知り合いなの?」

 

その場にいる全員がポカンとしている中、ナミが代表して皆の疑問を口にする。すると三人は同時に答えた。

 

「ああ!俺の母ちゃんだ!!」

 

「ええ!私の姉よ!!」

 

「はい!私の友人です!!」

 

し~んとその場が静かになる。レイはこの後の皆のリアクションが分かったので耳を塞いだ。

 

「「「ええぇーーーーーー!!!!?」」」

 

海賊達は目を飛び出させながら叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

20年前

 

ここは"西の海(ウエストブルー)"に位置する島"オハラ"。樹齢5000年を誇る「全知の樹」を中心とした、小さいながらも緑豊かな島だ。この島の世界最大最古の図書館には世界中からあらゆる文献が運び込まれ、考古学が最も発達している島でもあった。

 

そんな島の森の中、大きな木の下でレイは小さな8歳の少女ニコ・ロビンを膝枕で寝かしつけていた。ロビンの手には今の今まで読んでいた分厚い本が抱かれている。難しい本を読んだため、眠くなってしまったようだ。

 

「ふふっ、よく寝てるねロビン。」

 

レイがロビンの頭を愛しそうに撫でているとどこからか石が投げ込まれる。

 

「それっ!攻撃開始だ!!」

 

「くらえようかい!!」

 

その犯人は子ども達のようだった。しかし、子ども達が投げた石はA.T.フィールドによって阻まれ、レイとロビンには届かない。

 

「くそ~、効かないぞ!」

 

「気持ち悪いようかいめ!!」

 

攻撃に失敗し、悔しがる子ども達。そんな彼らをレイはキッと睨む。

 

「わーん!!ようかいにおそわれたー!!」

 

「怖いよー!!」

 

それだけで子ども達は逃げてしまう。自分たちより体が大きいレイが睨むだけで小さな子ども達には相当な恐怖らしい。

 

レイとロビンはこのようによく島民達に攻撃されていた。なぜかというとレイもロビンも能力者だからだった。この島では悪魔の実というものは非常に珍しいもので、レイとロビンが異様な力を持っていることを気味悪がられていた。

 

「はぁ~、またどこかの親に文句言われる。」

 

「う~ん、お姉ちゃん?どうしたの?」

 

「ううん、何でもない。さ、図書館に本を返しに行こう。」

 

「うん!」

 

現在レイはこの島でロビンの義姉をやっていた。というのも海で海賊としてやんちゃをやっていた頃、とある歴史研究チームに出会い、ロビンの母親であるニコ・オルビアと親友になった。彼女が"歴史の本文(ポーネグリフ)"の探索に出掛ける際にロビンの母親代わりになることを頼まれたのだ。

 

母と呼ぶには少々小さい背丈のせいでロビンからは姉と思われてしまっているが。

 

実は、レイはもう一人"南の海(サウスブルー)"の親友から子どもを預かっていた。そっちの子はまだ0歳なので本来ならそっちの子どもこそ世話をしなければならないのだが、ロビンが島民達からいじめられている現状を見て、仕方なく"東の海(イーストブルー)"の知り合いに預けている。

 

元々子ども好きだし、その子もロビンもめちゃくちゃ可愛い子なので特に不満はないが、皆自分のことを育児士かなんかと勘違いしてんじゃないかとレイは思っていた。

 

「ロビン、今日の本にはどんなことが書いてあったの?」

 

「えっと、"南の海(サウスブルー)"のある島の話!その島には昔、"使徒"っていう神様の使いが降臨したんじゃないかって仮説があるの!」

 

「ずいぶんとロマンチックな仮説ね。」

 

ロビンとレイは街中を話ながら歩く。そんなレイ達を街の人々は指をさしてひそひそと話したり、わざと聞こえるように陰口を言ったりする。そんな街にロビンは表情に出すまいとしているが、義姉のレイには居心地悪そうにしているのがまる分かりだった。

 

やがて二人は島の中心にある"全知の樹"のオハラ図書館兼考古学研究所へと辿り着く。ここでロビンは定期的に本を借りていた。

 

「こんにちは、クローバー博士!借りてた本を・・・」

 

ロビンが図書館の扉を開けるとパパパァーンとクラッカーの音が鳴り響いた。たくさんの考古学者達がロビンに笑顔を向け、その中央にはこの図書館の館長であるクローバー博士がテーブルの上でダブルピースをしていた。

 

「おめでとう!ロビン!!先日の博士号試験見事満点じゃ!!今日からお前考古学者と名乗ってよいぞ!!」

 

クローバー博士の言葉にびっくりしていたロビンは笑顔になる。

 

「やったよ!お姉ちゃん!!」

 

「ふふっ、頑張ったものね。」

 

嬉しみのあまり抱きつくロビンをレイは愛しそうに撫でる。ロビンは先日、考古学者の資格を得るための試験を受けていた。レイと共に一生懸命勉強して見事試験に合格することができた。

 

そしてロビンはクローバー博士から学者の証を受けとる。はりきってロビンに考古学者は何なのかを力説するクローバー博士にレイはくすっと笑い、ふと図書館の壁を見ると一枚の手配書がある。

 

"生命姫"インフィニティ・D・レイ

懸賞金1億6800万ベリー

 

それはレイ自身の手配書だった。海軍相手にドンパチやったり色々してる内にいつのまにか"超新星(スーパールーキー)"と呼ばれる海賊になってしまった。

 

いくらなんでもフダツキの身でロビンを育てるのは問題があるので、レイの手配書はクローバー博士のおかげで島には回らないようになっていた。クローバー博士には感謝しなければならない。

 

「"歴史の本文(ポーネグリフ)"を解読する行為は犯罪だと承知のはずだぞ!!」

 

「だけど皆夜遅くに"歴史の本文(ポーネグリフ)"の研究をしてるじゃない!!」

 

レイが感傷に浸っているとクローバー博士とロビンの大声が聞こえた。近くの学者に何事かと聞いてみるとロビンが空白の100年の歴史の解明のために"歴史の本文(ポーネグリフ)"を研究したいと言い出したらしい。

 

"歴史の本文(ポーネグリフ)"とは世界中に散らばる古代文字が彫られた石で、それを読み解くことで歴史上空白になっている100年に何が起こったかが分かるというものだ。しかし、"歴史の本文(ポーネグリフ)"の解読は世界政府が禁止しており、研究すること自体が犯罪となる。

ロビンの気持ちも分かる。ロビンは夜遅くにクローバー博士達が研究に勤しんでいる所をこっそり覗き見ていたから、お世話になっている博士達の力になりたいのだろう。

 

同時にクローバー博士の言い分も正しい。いくら学者と呼べる知識を身に付けたからといってもロビンはまだ8歳の子どもだ。もし見つかれば首が飛ぶような危険な研究に巻き込みたくないのだろう。

 

結局、"歴史の本文(ポーネグリフ)"の研究に入れてもらえなかったロビンは図書館を飛び出し、海の方へ走っていってしまう。レイはその背中を追いかける。

 

「オルビア、ロビンは完全にあなたの影を追っちゃってるよ。」

 

レイは空に向けて一言呟き、半べそのロビンを抱きしめた。

 

 

 

 

 

 





技解説

『生命の祝福』

すべての生物の源である「L.C.L」を体内に取り込ませることで体力、精神力を回復させる技。「L.C.L」はレイが体を再生する際にも用いられるが、"生命の祝福"の場合は怪我やダメージまでは治らない。

ちなみにレイは"生命の祝福"を行う際、仲間や好きな相手、可愛い女の子や子どもにならキスをするが、それ以外の場合は掌から溢れ出させた「L.C.L」を直接流し込む。

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