王下七武海総監督物語   作:グランド・オブ・ミル

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第4話

 

 

 

 

グランドライン上空を飛行するレイ。彼女は今、表情には現れないがすごく困っていた。その原因は・・・

 

「アリサ。落ちないようにしっかり掴まって。」

 

「はい♪レイ様♥」

 

レイの背中にしがみつく腰に一振りの刀を差した白髪の少女アリサだった。

 

センゴクの指令を受けてグランドライン上空を飛んでいたレイはピキーンと女の子の危険を察知した。その方角に向かってみると海賊が島を襲い、女の子達が捕まっていた。女の子好きのレイはこれを見逃せるわけもなく、涙を流して捕まっていた女の子アリサをまるで少女漫画のように救出し、海賊達を瞬殺した。

 

そして島の町長や捕まっていた女の子達に泣きながらお礼を言われ、いざ指令に戻ろうとした時、アリサがレイの手をとってこう言ったのだ。

 

「レイ様!私をもらってください!!」

 

いきなり過ぎてレイは固まった。島民達もレイなら安心だと言い、結局あれよあれよとアリサを引き取ることになった。

 

レイは嫌なわけではなかった。むしろ嬉しい。アリサのような美少女に頬を赤くしながらもらってくださいなんて言われて嬉しくない奴などいないはずだ。いたらひっぱたいてやる。ただ、レイ様なんて敬称で呼ばれることに慣れてないのでむず痒いだけだ。

 

そしてレイは現在、指令を受けたスリラーバークとは違う方角に飛んでいる。それというのも、アリサをそこに連れていきたくないのだ。

 

スリラーバークは"魔の三角地帯"という霧の深い海を漂う世界最大の海賊船で、その船の主は七武海の一人「ゲッコー・モリア」だ。彼はカゲカゲの実の能力者であり、有能な者から影を抜き取り、死体に入れてゾンビとして部下にしている。そのため、アリサを連れていくとモリアに影を取られてしまう恐れがあった。影を取られた者は日光を浴びると体が消滅してしまう吸血鬼モドキになってしまう。

レイは可愛い部下に日光を浴びれない陰気な生活をして欲しくなかった。

 

というわけでレイは一旦指令は置いておき、ある場所に向かっていた。その場所はレイが普段から出入りしており、信頼している人物もいる。

 

「アリサ。見えてきたよ。」

 

「はい、レイ様♪」

 

レイとアリサはその島へと降り立った。

 

 

 

 

 

 

 

クライガナ島 シッケアール王国跡地

 

かつて戦争によって滅びたシッケアール王国にそびえ立つ古城。そこでは鷹のような鋭い目付きの男と水色の髪の少女がテーブルを挟んで座り、水色髪の少女の後ろには白髪の少女が従者のように立っていた。

 

「断る。」

 

「む、ミホーク。もう少し悩んでくれてもいいはず。」

 

「なぜ俺がそんなことをしなければならない。」

 

水色髪の少女レイの頼みを男ミホークはバッサリと切り捨てる。レイの頼みはごく単純で、ここでアリサに剣を教えて欲しいというものだった。

 

ちなみにアリサは最初ミホークを見た時、自分の前にいる世界最強の剣士にひどく緊急していたが、レイの従者として粗相はできないと今は平常心を保っている。

 

「いつも城の掃除とか洗濯とかやってあげてるでしょ。」

 

「それはお前が勝手にやっているだけだ。頼んだ覚えはない。」

 

実際レイはこの城に来るたびに城の掃除やら服の洗濯やらをしている。別にミホークがだらしないわけではないのだが、もはやレイにとってここは拠点のようなもので、掃除はしておきたいし、使わせてもらっているお礼として洗濯をしたり、時々料理を振る舞っていた。

 

ちなみにミホークは知らないがレイは密かに自分の部屋を作っていたりする。

 

まあ、ミホークが断るのも無理はないだろう。アポなしで突然従者連れで押しかけて「剣を教えてくれ」と言われても「はいそうですか」とはならない。

 

普通に頼んでも首を縦に振らないミホークに痺れを切らしたレイは奥の手を使うことにした。

 

「引き受けてくれなきゃミホークが女海兵に告白されたこと言う。」

 

レイのこの言葉にミホークの眉がピクッと動く。

 

「・・・・何故知っている?」

 

「私は総監督。七武海達の情報は出来る限り手に入れて当然。」

 

ミホークは先日海軍本部に召集された時に新米の女海兵に街の路地裏に連れていかれ、告白されていた。七武海と海兵。まさしく禁断の恋だ。女海兵さんがなかなかの美人さんで、陰から見ていたレイは唇を噛みしめていた。そのため若干根に持っている。

 

一応言っておくとミホークはこの告白を断っている。

 

「引き受けて。さもないと99%の捏造を加えたこの情報を持って新聞会社に殴り込む。」

 

「・・・ハァ、分かった。だが教えるだけだ。そこの娘が着いてこれなければどうしようもない。」

 

「ありがとう。大丈夫。アリサの腕は私が保証する。」

 

「レイ様、もったいないお言葉でございます。」

 

レイの賞賛にアリサがペコリと頭を下げる。レイはここに来る前にガラーナ島でアリサの腕前は見ていた。素直で直線的ながら、洗練された業だったのを覚えている。

 

「じゃアリサ、頑張って。私は指令を済ませてくる。」

 

「はい、レイ様。いってらっしゃいませ。」

 

ミホークとの交渉が終わったレイは城の窓を開け、飛び立っていった。レイが去って溜め息をつくミホーク。しかし彼はこの指令でレイが連れて帰ることになるもう一人の女の子に頭を抱えることになるのだが、知る由もない。

 

 

 

 

 

 

 

"魔の三角地帯" スリラーバーク

 

深い霧の立ち込める海に浮かぶ巨大な海賊船スリラーバーク。もはや一つの島と言っても差し支えないこの船に二隻の船が停泊していた。

 

一隻はもう50年も"魔の三角地帯"をさ迷うヨミヨミの実のガイコツ剣士ブルックの船。そしてもう一隻は今話題の海賊麦わらの一味のサウザンド・サニー号である。

 

W7を出港した麦わらの一味は次の目的地"魚人島"へ向けての航海中にこの"魔の三角地帯"に突入。そしてスリラーバークのモリアに捕まり、現在一味の大半がモリアと戦闘中だ。

 

今サニー号にせっせせっせと積み荷を運んでいるのはモリアの部下の一人ペローナとその部下達だ。ペローナはモリアには元々遊び半分で付き合っていたが、彼が大昔の魔人オーズのゾンビを従え、麦わらの一味と戦い始めたことから命の危機を感じとり、サニー号で脱出しようとしていた。

 

「ちょっとあんた!!サニー号をどうするつもり!?」

 

それを麦わらの一味の航海士ナミが許さない。彼女はモリアの部下の一人アブサロムという男に気に入られ、結婚させられる所をなんとか逃げてきたので花嫁姿だ。

 

「ホロホロホロ!お前達の船でこの島から脱出するつもりだ。それを止めたいというなら相手してやるぞ!私の天敵はあのネガッ鼻ただ一人!」

 

特徴的な笑い方をするペローナの言うネガッ鼻とは麦わらの一味の狙撃手ウソップのことだ。彼女はホロホロの実の霊体人間で、霊体をあやつりどんな相手でもネガティブにしてしまう技を持っていたが、元々ネガティブなウソップには全く通じなかったのだ。

 

「・・・!あれ誰?」

 

「ペローナ様!逃げて下さい!!敵です!!」

 

いざ戦闘に入ろうという時、ナミとペローナの部下のゾンビ達が何かに気づく。ペローナが振り向くとそこには水色の髪と赤い瞳を持つ無表情な少女が悠然と空中に浮いていた。

 

ドサッ

 

その少女を見た瞬間ペローナは震えて尻餅をつく。

 

「こ、こいつは王下七武海総監督だ!!"生命姫"インフィニティ・D・レイ!!」

 

「えぇーー!!?総監督ぅーー!!?」

 

「ウソだ!!そんなバカな!!」

 

「モリア様と同列、もしくはさらに上の女がこのスリラーバークになんの用だ!?」

 

ペローナの言葉にゾンビ達は狼狽える。

 

「ウ、ウソでしょ・・・!」

 

ナミも両手で口をおさえ、絶句していた。今自分の仲間がモリアと交戦中なのだ。この状況で一人でも厄介な七武海がもう一人、それも総監督が現れた。頭をよぎるのは絶望の二文字だけだ。

 

今もなお震え続けるペローナにレイはゆっくりと近づく。そして慌てて臨時体制に入るペローナに優しく抱きつき、何かを小声でしゃべる。小声だったのでこの会話はレイとペローナにしか聞こえない。

 

「あなたが欲しい。」

 

「・・・え?」

 

いきなりの言葉はペローナは驚き固まる。てっきり何かしらの攻撃を受けると思ったからだ。

 

「あなたを私のものとしたい。」

 

「えっ?何を?え?」

 

ペローナは告白ともとれるレイの言葉に絶賛混乱中だ。さらに抱きつかれたことで自分の鼻をくすぐるレイの甘い匂いがより一層ペローナの頭を惑わせる。そのほとんど正常ではなくなってしまった彼女の頭は、このままレイのものになってもいいんじゃないかと考えていた。

元々モリアには遊び半分で付き合っていたのでそこまで忠誠心があるわけでもない。現に自分は今まさに逃げようとしていたわけだし、無所属といっても間違いではないだろう。それに可愛いもの好きの自分にとって目の前の少女はあまりにも魅力的だ。

レイの言葉に心が揺れ動くペローナ。そんな彼女にレイから容赦なくとどめの一撃がくだされる。

 

ちゅっ

 

レイのやわらかい唇がペローナの唇に優しく触れる。キス。それはとても優しく甘いキスだった。唇から感じ取れるレイの味はまさに極上だった。きっと世界一の美女海賊女帝ボア・ハンコックでさえ、ここまでの味は出せないだろう。

これでもうペローナの心は決まった。もうダメだ。自分は肥えてしまった。あの味を味わったらレイ以外では満足できない。レイなしでは生きていけない体にされてしまった。

 

「お願い、私のものになって。」

 

ペローナはレイの言葉に顔を赤くして頷くしかなかった。

 

「良かった。私の拠点に飛ばすから先に行ってて。」

 

レイはペローナの返事に軽く微笑み、彼女に熊の肉球のマークが描かれたボールを当てる。

 

ぷにっ

 

するとペローナの姿はパッと消えた。レイが使ったのは海軍の天才科学者ベガパンクが人間兵器パシフィスタの試作品として作った「ウルスス・ボール」というものだ。バーソロミュー・くまのニキュニキュの実の能力を再現したものだが、エネルギーの消費が激しい一回こっきりの使い捨てで、兵器としての有用性もあまりないことから没にされたもので、レイがこっそり海軍からくすねてきていた。

 

「ペローナ様ぁーー!!」

 

「ペローナ様が消えたぁーー!!!」

 

「!!?あの子は!?」

 

一方、レイとペローナの会話が聞き取れなかったゾンビ達とナミは困惑していた。

 

「てめぇ!!我らがプリンセスに何しやがった!?」

 

「絶対許さねぇ!!」

 

ペローナの部下のゾンビ達は当然レイに掴みかかる。

 

「・・・・・・」

 

「でも腐れ恐ぇ!!」

 

「逃げろーー!!」

 

しかし、レイが彼らの方へ振り向くとその無表情が不気味だったのか一目散に逃げていった。その場に残ったのはナミとレイだけだ。

 

「あなたが"泥棒猫ナミ"ね。ルフィの仲間の。」

 

二人の空間にレイの透き通った声がよく響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





レイがペローナを飛ばした場所はミホークの所です。

生命姫は「せいめいき」と読んで下さい。

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