王下七武海総監督物語   作:グランド・オブ・ミル

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すみません。前回レイの過去編を書くと言いましたが、よく考えるといくらなんでも早すぎました。楽しみにしていた方々、ごめんなさい。もう少し待って下さい。

あと、レイは百合っ子です。



第3話

 

 

 

 

 

 

パリッ!モグモグ

 

海軍本部の元帥室。そこにせんべいをかじる音が鳴り響く。今この部屋にいるのは海軍本部元帥のセンゴクと王下七武海総監督インフィニティ・D・レイの二人である。一見すると敵対勢力同士なので多少ピリピリしても可笑しくないのだが、レイはガープ同様センゴクとも付き合いが長いのでそんな空気にはなっていなかった。

 

そんな二人は元帥の机をはさみ、せんべいを食べながら机の上の手配書を見ている。

 

"麦わらのルフィ"懸賞金3億ベリー

 

"海賊狩りのゾロ"懸賞金1億2000万ベリー

 

"泥棒猫ナミ"懸賞金1600万ベリー

 

"狙撃の王様そげキング"懸賞金3000万ベリー

 

"黒足のサンジ"懸賞金7700万ベリー

 

"わたあめ大好きチョッパー"懸賞金50ベリー

 

"悪魔の子ニコ・ロビン"懸賞金8000万ベリー

 

"鉄人フランキー"懸賞金4400万ベリー

 

そう、言わずと知れた海賊麦わらの一味の手配書だ。彼らの手配書が新しく発行されていた。何をしたのかというと「司法の島」エニエス・ロビーを落としたのだ。こんなバカなことをした海賊は前代未聞で本部も相当ザワついていた。

 

ちなみに先ほどから部屋の電伝虫の一つがプルプルプルと鳴りっぱなしだが二人は気にしないことにした。それというのも、そのコールは"東の海"のココヤシ村のゲンという男からで、最初レイが出た時に「こんな淫らな写真をよくも手配書に!!」と怒鳴られたのだ。彼は"泥棒猫ナミ"が水着で妖艶に微笑む手配書の写真が気にくわなかったらしくわざわざ本部までクレームをかけてきたのだ。そんな電伝虫をレイは「知らない。」の一言で切り、それ以降は無視している。

 

「まったく!ドラゴンといい、こやつといい、どうなっとるんだガープの血縁は!!」

 

「モグモグ、さすがはルフィ。誇らしい。」

 

「黙れレイ!!異例中の異例だぞ!少数とはいえ一味全員に懸賞金がかかるとは!!」

 

センゴク元帥は大層ご立腹だ。実際彼はものすごくストレスを溜めていた。七武海達の自分勝手な行いに同僚ガープの自由奔放な行動。さらにはガープの血縁の者達にもこんなことをされてはさすがに胃が痛くなるのだろう。

 

ちなみにガープの血縁達に先ほど話に出てきたドラゴンも入っている。彼の本名は「モンキー・D・ドラゴン」。世界各国で起きる革命の数々を引き起こす世界最悪の犯罪者だ。その正体は謎に包まれているが、ガープの息子、つまりルフィの父にあたる人物だということが分かっている。

 

そしてセンゴクの苦悩の原因には目の前で呑気にせんべいをかじる少女も入っていた。レイは普段から当たり前のように海軍本部に出入りしているが、そんなことをする七武海はレイだけだ。七武海は世界政府が雇ったものだが所詮は海賊。海軍とは敵対関係にあるのだ。だからその七武海の総監督であるレイに本部をウロウロされると海兵達が緊張してしまうのだ。本人はただガープとお茶会をしたり、クザンと散歩したり、おつるさんとしゃべったりしてるだけなのだが海兵達からしてみればいつ暴れだすのか気が気でない。

 

そんな厄介者のレイだが、実は政府はこの少女だけは手放したくないと密かに思っている。最強種自然系よりもさらに希少な動物系幻獣種の能力者、"神の力"を敵に回したくないのだろう。何をしでかすか分かったものではない。

 

「ふん!こいつらに関してはもういい!政府はもうこいつらを放っておかんだろうがな!」

 

「何をカリカリしてるの?カルシウム足りてる?」

 

「黙っとれ!!それよりレイ!新しく"七武海"に入った"黒ひげ"はどうなんだ!?」

 

「・・・私あいつ嫌い。」

 

センゴクの心配はルフィ達よりもこっちが大きかった。クロコダイルの後釜に七武海入りした"黒ひげマーシャル・D・ティーチ"。ラフィットが推薦したこの男は元の懸賞金が0で何もかもが未知数。もはや不安しかなかった。

 

レイもレイでティーチにはいい感情を持ってなかった。てゆうか険悪感しかない。彼は元はかの"四皇"白ひげ海賊団の2番隊隊員だったが、仲間を殺して逃亡した男。レイが嫌いなタイプだった。まあ、それだけならまだ良かっただろう。だが彼が七武海に入るためにしたことがレイの険悪感をMAXまで引き上げた。

 

白ひげ海賊団2番隊隊長"火拳のエース"を政府に引き渡したのだ。

 

レイはルフィ同様、エースのことも気にかけていたのでティーチにいい印象を抱けるはずもなかった。エースは世界一の大監獄"インペルダウン"に幽閉されてしまったが、海賊になったからにはこうなる覚悟もしていたのでレイは一応冷静だった。あくまで「一応」だ。いざとなったらインペルダウンに乗り込んでやるくらいの意気はある。

 

「・・・はぁ、まあ、まずはクロコダイルの後任が決まったことを喜ぶべきか。」

 

「あんな奴を七武海にしてどうなっても知らない。」

 

「そんなことは私にも分かる!だがこれは上が決めたことだ。口出しできん。」

 

「・・・・・・」

 

「おっとそうだ!忘れるところだった。レイ、お前に上から指令があった。」

 

「ん?」

 

「こやつら麦わらの一味がW7からの"記録(ログ)"を辿るとあそこで足止めされる可能性が高いだろう。奴が負けるとは思えんが万が一ということもある。様子を見に行き、必要ならば加勢しろ。」

 

「ん。了解。」

 

センゴクの命令にレイは食べかけのせんべいを口に放り込みながら窓から飛び立っていった。

 

 

 

 

 

 

 

ここはグランドラインに位置する島ガラーナ島。この島は今、海賊の襲撃を受けていた。襲っているのは懸賞金6200万ベリー"人売りのジャガー"の一味だ。その名の通りジャガーは島に立ち寄っては美女達を拐い、海上で奴隷商人の商船に売りさばくという手口で儲けていた。

 

そしてその行為がこの平和な島でも例外なく行われていた。

 

「うわぁぁん!!お父さん助けてー!!」

 

「娘を返せ!!」

 

「ヒャハハハッ!うるせぇよっ!!」

 

バァァンッ!!

 

「うわぁぁん!!お父さーーん!!」

 

捕まった娘を助けようとした男性が撃たれた。彼らは美女であれば子どもでも容赦なく拐っていく。かといって黙って娘を渡すような親がいるわけもなく抵抗はしたものの、元々ここはグランドラインの端にあって海賊の目にも留まりにくい平和な島だった。当然戦ったことなどあるはずもなく島の男達はジャガーの部下に殺されていった。皮肉にも海賊の目に留まりにくいことが災いし、海軍の駐屯所も近辺にない。そのためジャガーはいつも以上に好き勝手暴れていた。

 

捕らわれた女達は絶望し、涙を流す者までいる。奴隷として売られれば人生は真っ暗だ。未来に希望などありはしない。恋をして家族を作って幸せに生きていくはずだった未来が一瞬で暗く塗りつぶされる。

 

その女達の中にはバーン・アリサという少女がいた。白い髪に黒い瞳で頭に大きなリボンをつけた少女だ。彼女は昔病死した剣士の両親の意思を継いで、世界最強の剣士になるという夢を持っていた。ジャガー達が襲撃した時も今日まで鍛えてきた技を駆使して戦ったが、彼女の腕は危険と判断したジャガーに両腕を切り落とされていた。そのためアリサは両腕がない状態で縛られ、涙を流していた。この島を守れなかったばかりか、自分の夢も失う結果になった。こんな絶望はない。

 

「おいっ!次はお前だ!!さっさと船に乗れ!!」

 

ああ、どうやら次は私があの船に乗る番のようだ。海賊の一人がピストルで脅してくる。

 

「船長!いい所に島がありましたね!」

 

「まったくだ!いっそのことこの島を拠点にするか!」

 

「「「ぎゃはははははは!!」」」

 

誰でもいい・・・!どうか!どうか助けて下さい!

 

アリサが天に向かってそう願った時・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空から天使が降りてきた。

 

その天使は高速で急降下し、アリサを捕まえていた男を吹き飛ばし、アリサを優しく抱き抱える。

 

「てめぇ!!何者だ!!」

 

「どこから現れた!!」

 

海賊達の声で抱き抱えられた衝撃に驚き目を瞑っていたアリサはゆっくりと目を開く。そして自分の目の前にいた美少女に思わず顔を赤らめてしまった。水色の髪はキラキラと光を反射し、赤い瞳は髪の色によく似合い、神秘的な魅力を醸し出している。

 

「大丈夫?」

 

「・・・へっ!?あっ、はいっ!」

 

ポーッと見つめていたアリサはその美少女の言葉をすぐに返すことができず、慌てて返答する。

 

「そう、良かった。少しじっとしてて・・」

 

そう言うとその美少女はアリサのなくなった右腕の切断面に手を添える。そして・・・

 

「"L.C.L"再生開始。」

 

そう呟くと彼女の掌からオレンジ色の液体が溢れだし、アリサの右腕の切断面から右腕の形に伸びていく。そしてアリサが戻ってきた右腕の感覚に驚く暇もなく腕の再生が完了した。

 

「う、腕が再生した!?」

 

「何だ!?あいつ何やったんだ!?」

 

アリサは驚いて声も出なかった。海賊達がどよめいている間も彼女は再生作業を続け、アリサの左腕も再生した。

 

「さて、あなたは少し下がっててね。」

 

そう言いながら彼女はアリサを降ろしてジャガー達に向かって歩き出す。

 

「あっ、ま、待って下さい!あなたは!?」

 

アリサはとっさに彼女の名を聞く。すると彼女は振り返って少し微笑みながらこう呟いた。

 

「インフィニティ・D・レイ。これが私の名前。」

 

その瞬間、アリサは胸を射抜かれたような感覚を覚えた。顔は上気して熱く、ドキドキが収まらない。レイを見るだけで胸が苦しくなる。

 

一方でジャガーの部下達はレイの名前を聞いてかなり動揺していた。

 

「おい!あいつ今インフィニティ・D・レイって言ったか!?」

 

「七武海の総監督じゃねぇか!!」

 

「何でそんな奴がこんな所に!?」

 

そんな部下達をジャガーは怒鳴り付ける。

 

「狼狽えるな!!七武海っつってもただの女だ!!そんな奴、他の女達のように縛り上げろ!!」

 

「「「おおぉぉぉ!!!」」」

 

ジャガーの声で狼狽えていた部下達は一斉にレイに向かって銃を構え、撃つ。

 

バン!バァァンッ!!

 

「"A.T.フィールド"展開。」

 

キンッ!キキキンッ!

 

「「「え!?」」」

 

しかし、レイの前に出現した虹色の壁に阻まれ銃弾は跳ね返る。

 

「「うおぉぉぉぉ!!」」

 

銃がダメなら剣と部下達はレイに襲いかかる。

 

ブゥ・・・ン・・・

 

それに対し、レイは背中から6対12枚の帯状の翼を生やし、頭上に天使の輪を浮かばせた姿に変身する。

 

「なるほど、動物系の能力者か。」

 

遠くでジャガーが納得の声を上げているがレイは気にしない。

 

「"ベルトアーム"。」

 

「「「ぎゃあああああ!!!」」」

 

レイは帯状の翼を縦横無尽に暴れさせてジャガーの部下達を攻撃した。切り裂き、絡めとり、地面に叩きつけた。やがて大勢いたジャガーの部下も女達を捕らえている2、3人のみとなった。

 

「ひっ!せ、船長!やっぱりあいつヤバいっすよ!!」

 

「慌てるなバカめ!俺の"能力"を忘れたのか!!」

 

怯える部下を黙らせてジャガーはレイに歩み寄る。

 

「レイさん!気をつけて下さい!あいつは悪魔の実の・・・!」

 

「"斬(ザン)"!!」

 

アリサがレイに叫び終わる前にジャガーはレイに右の掌を向け、技名を叫ぶ。

 

ザンッ!

 

すると斬撃が飛ばされレイの左側の翼の内3枚が切り落とされる。切断面からはオレンジ色の液体が流れ出る。

 

「ふはははっ!!俺は『ザンザンの実』の切断人間!さすがの七武海総監督様もこの能力からは逃れられないようだな!!」

 

そう、ジャガーは悪魔の実の能力者だった。彼はあらゆるものを切り落とすことができる能力を持っていた。アリサの両腕を切り落としたのもこの能力である。

 

「・・・・・・」

 

レイは無言で切られた翼を再生させる。

 

「無駄だ!!今度は首を切り落としてやる!!"斬(ザン)"!!」

 

ジャガーは先ほどのように斬撃を飛ばし、レイの首を狙う。が・・・

 

ガキンッ!

 

「なっ!?」

 

レイは翼を振るって斬撃をかき消す。

 

「くっ!"斬(ザン)"!!"斬(ザン)"!!"斬(ザン)"!!」

 

ガキンッ!ガキンッ!ガキンッ!

 

ジャガーは何度も斬撃を飛ばすが、すべてレイに弾かれる。ジャガーは"南の海"からここまでこの能力でのしあがって来た。今までこの能力で斬れなかった相手はいなかった。そのためジャガーは慢心し、レイの力を見誤っていた。

 

「くそっ!くそっ!くそっ!!」

 

ビッ!

 

「っ!!」

 

いくらやっても斬ることができないレイに苛立っているとレイはジャガーに見えない程のスピードで接近する。

 

「このっ・・・!!」

 

突然接近してきたレイにジャガーは一瞬怯むも、能力を手刀に宿らせレイを斬ろうとするもレイの翼に絡めとられる。

 

ブゥンっ!!

 

「うわぁぁぁぁ!!!」

 

そしてジャガーは空高く投げ飛ばされる。レイは空高く上がったジャガーを見据え、右目に光の粒子を貯める。そして・・・

 

 

「さよなら。愚かな海賊。"破壊光線"。」

 

ピュンッ!!ボカァァァンッ!!

 

空のジャガーに不可視の破壊レーザーを放つ。着弾したジャガーは跡形もなく爆発する。

 

「「ひっ!!うわぁぁぁぁ!!!」」

 

残ったジャガーの部下達はレイの強さに怯え、一目散に逃げ出す。しかし、島の人を苦しめるだけ苦しめて逃げ出すなんてことはレイが許さない。

 

ピュンッ!!ボカァァァンッ!!

 

すぐさま破壊光線を放ち、彼らを消し去る。懸賞金6200万ベリーの大型海賊を沈めたレイはその場に悠然と立っていた。

 

「・・・すごい。」

 

そんなレイをアリサは上気した顔で見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アリサは東方の妖夢をイメージしました。

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