王下七武海総監督物語   作:グランド・オブ・ミル

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今回は少し急展開です。一番書きたかったシーンの一つなのでどうかお付き合いください。


第17話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

周りはすでに火の海だ。辺りを見渡せば木々が燃え、上を見上げれば炎で空が赤く、足下には動物の死骸が無造作に転がっている。

 

その光景を生んだのは海賊でなければ海軍の軍隊でもない。一体の"怪物"だ。仮面のような顔を持ち、肩の部分にはオレンジ色のクリスタル、胸には赤い球体がある身体を無数の帯状の腕で覆われた怪物は今もなお光線を撒き散らし、地獄をつくり上げている。

 

その怪物のすぐ近くに二人の少女がいた。幼い服を着た紫色の髪の小さな少女と水色の髪の少女だ。紫髪の少女は水色髪の少女に抱かれている状態だ。

 

二人の少女には決定的な違いがあった。水色髪の少女は全くの無傷なのに対し、紫髪の少女は腹部に刃物でえぐり取られたかのような穴が開いていた。

 

二人は恐らく知り合い、それもかなり深い関係を結んでいるのだろう。だが、紫髪の少女が今にも息絶えそうなのに、水色髪の少女は無表情だ。一滴の涙も流さない。

 

「……もっと……聞き…たかった…な…。あなたの……お話…すごく…おもしろ……かった……。」

 

紫髪の少女は息を切らしながら水色髪の少女に語りかける。水色髪の少女は相変わらずの無表情だ。

 

「…もし……願いが…叶うなら………見て…みたいな……。その…『ONE…PIECE』の…最後……。」

 

そう言い残し、紫髪の少女はこの世を去った……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の前で…エースが死んだ…。

 

死に様を現すなら見事な最期と言われるべきだろう。弟を赤犬の攻撃から守って死んだのだから。エースの遺体の前ではルフィが耳をつんざくような悲痛の叫びをあげている。インペルダウンからエースを救うために戦ってきたのに、そのエースが自分を守るために犠牲になったのだから当然だろう。

 

ルフィとエースは白ひげ海賊団やジンベエ、イワンコフらに誘導され、この戦場から真っ先に避難していた。あのまま行けば間違いなくこの二人だけは助かっただろう。だが、赤犬が白ひげを罵ったことですべてが狂った。その罵りをエースが見逃すはずもなく、私の制止も聞かずにエースは赤犬と戦ってしまった。そしてその結果がこれだ。

 

………私があの時、無理にでも止めておくべきだったのだろうか。いや、その前にエースが捕まった時にインペルダウンに乗り込むべきだったのだろうか。その疑問の先に答えはない。

 

「すべての人は寿命で死ぬ。病気や事故で死んだ人がいるならば、それがその人の寿命だったのだ。」

 

誰だったかこんなことを言った人がいた。確かに的を射ていると思う。ならば、これがエースの寿命、運命だったのだろうか。ならば、私の寿命、運命はいつ訪れるのだろうか。

 

自分の頬に触れてみる。…いつもの無表情だ。何年、何十年、何百年生きても変わらない、少し微笑む程度しかできなくなったいつもの私がそこにはいた。

 

赤犬が今度はルフィを狙った。私はすぐに"人獣型"になり、ルフィの前に立った。そして背中の忌々しい12枚の"ゼルエルの腕"をエースを包み込むように広げる。

 

___『ワタシノセカイ』

 

これでいい。あまり長くは持たないが、赤犬でもこのセカイには入ってこれない。ルフィはジンベエや白ひげ海賊団が守ってくれてる。彼らに任せておけば大丈夫だろう。

 

私は改めてエースを見た。幸せそうな死に顔だ。エースは死に際に「愛してくれてありがとう」と言っていた。生きる意味が分からなかったエースは死に際になってようやくその意味が分かったらしい。

 

……おかしい。さっきから私は何をやってるんだ?エースは私の息子だ。愛する旦那と交わったわけでも、お腹を痛めて産んだわけでもないが紛れもなく私の息子だ。その息子が殺されたのに、私は………

 

怒りを感じていない………。

 

それどころか悲しみすらも、一切の動揺も感じない。まるで赤の他人が死んだかのように私の心は冷めている。そんなはずはない。息子が殺されたのだ。本来なら泣き叫び、怒り狂い、復讐を考えてもいいはずなのに……。

 

…いや、分かっていた。分かっていたさ。"あの日"から私が悲しみを抱けなくなったことくらい。

 

『ばっ…!化け物っ!!私を誰だと………!!』

 

『……………………』

 

あの時も……

 

『ローを頼んだ……母上。』

 

『………分かった。』

 

あの時も……

 

『あなたと親友になれて本当に良かった…。』

 

『私も……。』

 

あの時だって、私は何も感じていなかった。頭では悲しい、憎いと思えても私の心はいつも冷めていた。

 

私はエースを抱きしめる。もう死んでしまったエースの体は私の手より冷たく、私の心より暖かかった。

 

ねぇ、エース。

 

もしあなたが私を……

 

こんな薄情者の私を母親と言ってくれるなら……

 

愚かな母にあなたの最後の願いを叶えさせて………

 

___『生命の奇跡』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦場は大混乱に陥っていた。

 

この戦争の鍵だったエースは死に、突如乱入してきた黒ひげによって白ひげも死んだ。さらに、黒ひげは何らかの方法で白ひげから『グラグラの実』の能力を抜き取り、不可能とされていた悪魔の実の能力の複数保持に成功した。まさに悪夢だ。

 

「お、おい!」

 

「"生命姫"が出てきたぞ!!」

 

そしてここはマリンフォードの広場。"人獣型"の6対12枚の翼でエースを覆っていたレイがその壁を解いた。レイが翼でつくったその壁は固く、銃で撃とうが剣で斬ろうが、はたまた能力で攻撃しようがビクともしなかった。

 

だが、その壁ももうない。翼をしまったレイはいつもとはどこか違う無表情で空を見上げていた。心なしか少し悲しそうだ。

 

「おい!あれを見ろ!!"火拳のエース"が!!」

 

レイを取り囲んでいた海兵の一人が声をあげた。そしてその海兵が指差す先を見てその場の海兵達は驚愕した。

 

エースが衣服のみを残し、完全に消えていた。

 

「貴様!!"火拳のエース"をどこへやった!?」

 

恐らくあの壁の中で何かが行われたのだろう。そう見切りをつけた海兵がレイに怒鳴った。だが、レイはそんな声は聞こえないとばかりに無視した。

 

「聞こえないのかっ!!?」

 

そんなレイの態度が頭にきたのか海兵はレイに剣で斬りかかる。その海兵は大佐だった。海賊などものともせず、億越えの賞金首とも優勢に戦えるほどの実力の持ち主だった。だからこそ、自分に自信を持っているからこその行動だったのだろう。だが、これが過ちであることに彼はすぐに気づくことになる。

 

ボンッ!!

 

………失礼、訂正しよう。彼は気づく暇もなかった。一瞬、一瞬だ。レイは軽く腕を振っただけ。それだけで一瞬にして海兵の身体はこっぱみじんに吹き飛んだ。海兵をゴミのように葬ったその腕は紫色で緑色のラインが入った巨大な腕だ。

 

「なっ!?き、貴様!!抵抗す……ひっ!!!」

 

大佐がやられたことでレイの正面にいた海兵がレイに歩み寄る。だが、レイの顔を見て海兵は腰を抜かした。

 

ビキッ…と、音を立ててレイの顔が"割れた"。比喩ではなく、本当にレイの顔にヒビが入り、ポロポロと皮膚が剥がれ落ちる。そしてグチュグチュと気持ち悪い音を立ててレイが姿を変えていく……。

 

……もしここにレイ以外に転生者がいるとするならば、その者はレイの姿をこう呼んだことだろう。

 

「オォォォォォォォンッッッッ!!!!」

 

エヴァンゲリオン初号機と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





はい、めちゃくちゃ短いですね。まぁ、長い間投稿してなかったリハビリ回として見逃してください。スミマセン。

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