チョッパーの『ヒトヒトの実』ってこの小説風に言えば『シトシトの実 モデル"リリン"』になるのでしょうか?ならセンゴクは『シトシトの実 モデル"大仏"』?それとも『リンリンの実 モデル"大仏"』かな?
うぅ~ん、難しいことは考えないようにしよう!
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白ひげ海賊団と海軍・七武海の戦いは想像以上に激しい攻防となった。あちこちで爆発が起き、海兵や海賊が血を流して倒れていく。
これが"四皇"との戦いだ。海の皇帝とも例えられる海の王者と戦う時はこのように大規模な戦争を覚悟しなければならない。
政府が海賊である七武海を雇っているのはこの恐ろしい四皇を抑えるためだ。"海軍本部"と七武海"、この二大勢力が"四皇"を抑え込む形で三大勢力の均衡が成り立ち、世界のバランスが保たれている。
「元帥殿、準備が整いました。」
「湾岸の作動の準備もか?」
「はい、全て。」
エースの処刑台に立つセンゴクの元に海兵の一人が報告に来る。海軍側の作戦の準備が終わったようだ。
センゴクの指示でエースの処刑の準備が始まった。処刑の執行人がエースの両脇に立ち、長い刀身の剣を構える。まだエースの処刑時刻ではない。当然海賊達もシャボンディ諸島で戦争の様子を見守る取材陣も不審に思う。
「直ちに映像電伝虫の通信を切れ!!」
センゴクはすぐに映像をシャットアウトするように指示した。それにより導き出される答えはたった一つ。
「……本当に執行時刻を早める気ですか。」
「フフフフフフ!おーおーそろそろ時間か!」
レイと戦っていたドフラミンゴは「また今度殺り合おうぜ!」と不敵な笑みを残し、その場を立ち去る。ドフラミンゴとの戦闘でかなりの深手を負ったレイはドフラミンゴを追いかけなかった。
「おい!湾頭を見ろ!!何かいるぞ!!」
海賊の一人が叫んだ。その声に振り返ると三日月型のマリンフォードの湾頭へと入り口に無数の人影が見えた。
「………もう実戦投入?」
それを見たレイは大きなため息をついた。その人影をレイは知っていたから。王下七武海"暴君"バーソロミュー・くま。彼と同じ姿の者が何人も並んでいた。政府の天才科学者Dr,ベガパンク作の人間兵器「パシフィスタ」だ。平和主義者の名を持つ人間兵器達はベガパンクのボディガード兼海軍本部科学部隊隊長"戦桃丸"に連れられ、悠然と出陣の時を待っていた。
「よし!いくぞおめぇら!始めろ!!」
戦桃丸がそう言うとパシフィスタ達は一斉に攻撃を開始した。黄猿の『ピカピカの実』の能力を再現したレーザーを口から手から撃ちまくり、海賊達を追い込んでいく。湾頭入り口からパシフィスタ達が攻めいったことで海賊達は海軍本部とパシフィスタの挟み撃ちにされてしまう。
「スキを見せたな!インフィニティ・D・レイ!!」
「その首もらったぁ!!」
パシフィスタの様子を観察していたレイに海兵が三人襲いかかる。いずれも海軍本部で名を馳せる少佐達だ。彼らは剣、斧、刀をそれぞれ構え、"六式"の一つ"剃"を使ってレイに襲いかかった。レイはドフラミンゴとの戦闘で傷を負っている。今が仕留めるチャンスだと思ったのだ。
「…………………」
「「「え?」」」
一瞬、それは一瞬の出来事だった。レイは海兵達に振り返りもしなかった。瞬時に"人獣型"となったレイは翼を1枚振っただけ。それだけで海兵達の腕は宙を舞い、地面にドサッと落ちる。数秒遅れて海兵達の傷口から血が勢いよく噴き出す。
「うわあぁぁぁぁ!!!」
「腕!!俺の腕がぁぁぁ!!!」
「痛ぇ!!痛ぇよぉぉぉぉ!!!!」
あまりの出来事に何が起こったか分からなかった海兵達もようやく自分の身に起こったことに気がついたようだ。悪魔のような激痛が交感神経から中枢神経、脳を揺さぶる。
「……とにかく今はルフィの補助か。」
そう呟いたレイはまるで海兵達など眼中にないかのようにその場から飛び去った。いつのまにかドフラミンゴとの戦闘で受けたはずの傷も消えている。
実はこの海兵達は海軍の中でレイを甘く見ている者達の中の三人だった。普段から政府に忠実だったレイの姿を見て、「レイは大したことない海賊」という巷の噂を鵜呑みにし、こうして少佐であるにも関わらず挑んでしまったというわけだ。その結果がこれである。その海兵達はレイの飛び去る後ろ姿を見て後悔した。
インフィニティ・D・レイは間違いなく王下七武海総監督だったと。
▽
ついに白ひげが動いた。世界最強の男に海軍も冷や汗をかく。海兵達を『グラグラの実』の力で吹き飛ばした白ひげの胸には深い刺し傷がある。海軍の作戦で先程海軍に騙された傘下の海賊の一人スクアードに刺されてしまったのだ。しかし、そこは白ひげ。見事に仲間達の信頼を取り戻し、戦況を振り出しに戻した。もう何人たりとも白ひげ海賊団の絆を壊したりはできない。
「…………………」
海兵の軍勢をものともせず進む白ひげを見るレイの顔はどこか悲しげだ。
白ひげは世界最強。これは揺るがない。しかし、白ひげも心臓一つの人間一人だ。いつまでも最強ではいられない。現にスクアードの一撃など昔の白ひげなら避けられたはずだ。例え心を許した仲間の不意打ちだとしても。齢を重ねたことで体調は悪化するばかり。その影響が隠しきれない程出ていた。
「うわぁ!何だこれ!?」
「壁!?」
突如湾岸から高い壁が上がってきた。その壁は湾頭を囲み、海賊達を氷の湾頭に閉じ込めてしまった。しかも壁からは無数の大砲が海賊達を狙う。
「"流星火山"!!」
しかも悪いことに海軍大将"赤犬"ことサカズキが火山弾を降らせ、湾頭の氷を溶かし始めた。白ひげの船三隻も火山弾が被弾したことで沈んでしまう。これが海軍の作戦だったようだ。海賊達の動きを封じた所を追撃。知将と名高いセンゴクらしい合理的な作戦だ。
ふとレイが空を見上げれば水柱が高く打ち上がっていた。ジンベエだ。その先端には折れた軍艦のメインマストを抱えたルフィがいる。その水柱は天高く打ち上がり、壁を超えて広場に飛んでいった。
それを見たレイがすぐにルフィを追おうとする。
「レイ!!」
それを誰かが呼び止めた。振り返れば白ひげがレイに叫んでいた。
「何ですか?」
「一つ、頼まれてくれねぇか?」
白ひげの顔はニヤリと笑っていた。何か策があるようだ。
◆
エースの処刑台があるマリンフォードの広場。そこにジンベエの水柱で打ち上げられたルフィが降り立った。水柱の軌道が良かったおかげでルフィは処刑台のちょうど正面に立つことができた。
しかし、そんなルフィの前に立ち塞がるのは処刑台を守る三人の海軍大将だ。
「エースは返してもらうぞぉ!!!」
ルフィは三大将に恐れることなく向かっていった。抱えてきたメインマストを三大将に投げつける。そのメインマストは青キジの能力で凍らされてしまう。
「"ゴムゴムのぉ!""スタンプ乱打(ガトリング)"!!」
ルフィはその氷のメインマストを蹴りの連打で砕いて三大将に発射して攻撃した。大きな氷弾が三大将に降り注ぐ。しかし、三人の大将はいずれも自然系(ロギア)の能力者。そんな攻撃が効くはずもない。
「"ギア2"!!」
氷弾をすべて撃ちつくしたルフィは素早く"ギア2"で身体能力を上げる。そして超スピードで三大将を振り切り、エースの元へ向かう。
「んん~、遅いねぇ~。」
「がっ!!」
しかし、ルフィは光速で回り込んできた黄猿の蹴りを喰らって吹き飛んでしまった。いくらルフィでも光の速さには敵わなかった。
「やれ!!」
「「はっ!」」
センゴクはそのスキにエースを処刑するように指示した。白ひげが壁を超えてくる前にすべてを終わらせるはらだ。
しかし、その裁きの白刃はエースを裁くことはなかった。どこからか飛んできた二枚の砂の刃が執行人を切り裂いたからだ。
「貴様……!白ひげに旧怨あるお前は我らに都合良しと考えていたが………!!」
センゴクが処刑台から見下ろせば広場のちょうど中心辺りにクロコダイルがいた。彼は自分が敗北した白ひげをつまらない罠にはめた海軍を敵とみなしたのだ。
「え!?」
「元帥殿!!オ、オーズが!!」
今度は湾岸の方で海兵の悲鳴が聞こえた。見ると戦争序盤で倒したと思っていた"魔人"リトルオーズJr.が起き上がっていた。ドフラミンゴが切り落としたはずの右足や、モリアが貫いた胸の傷も消えている。
「はい、コレ。大切なものなんでしょう?」
「ああ、ありがどう…。エースぐんのおふぐろざん…。」
「見ろ!!インフィニティ・D・レイがいるぞ!!」
海兵の一人がオーズの顔付近を指差した。そこにはオーズに巨大な笠を手渡すレイが浮いていた。その笠はエースがオーズのために作ったものであり、オーズの宝物だ。レイは白ひげの頼み通りオーズを復活させたのだ。
「し、白ひげの船がもつ一隻現れました!!」
「"外輪船"です!乗り込んできます!!」
湾頭の海賊達にも動きがあった。海底にずっと隠していた外輪船で広場へ向けて突っ込んでいく。目標はオーズの巨体のおかげでたった一枚開いた包囲壁の穴だ。
「オーズを撃てぇ!!」
海軍は白ひげが何をしようとしているか感付いたようだ。海軍の察しの通り、白ひげは外輪船をオーズの怪力で広場に乗り上げようとしていた。それに気づいた海軍は銃・大砲の集中砲火でオーズを狙う。
「"A.T.フィールド"展開。」
しかし、その弾丸がオーズに当たることはなかった。レイがオーズを包み込むようにフィールドを張ったからだ。フィールドに阻まれた弾はポトポトとむなしく地面に落ちる。
「うおぉぉぉぉぉぉ!!!」
そして白ひげの作戦は見事に成功し、海賊達は外輪船ごと広場に乗り込むことができた。海賊達が広場に侵入したことで海軍の作戦は大きく狂う。これでは包囲壁は海軍の障害になってしまう。唯一の幸いはこの失態が世に発信されていないことだろう。
「エースを救えぇぇ!!」
「海軍を滅ぼせぇぇ!!!」
広場に侵入した海賊達の士気は最高だ。戦う気力に満ちている。
「悪いな、レイ。」
「お安いご用です。オーズ、あなたはゆっくり休んで。」
「ああ…、エースぐんを…頼む…。」
白ひげから礼を言われたレイは白ひげに言葉を返した後、オーズに休むように言う。オーズは"生命の祝福"によって体力は戻ったものの、ダメージが回復したわけではない。レイの言う通りオーズは包囲壁にもたれ掛かるように座り、ゆっくりと目を閉じた。
「……さて、下がってろよ息子達。」
オーズに背を向けた白ひげは薙刀の先端に『グラグラの実』の力を宿し、ぐっと構える。
「うらぁぁぁぁ!!!!」
そして力一杯凪ぎ払った。その斬撃は地震の力が加わったことで尋常じゃない破壊力を生み、海兵達を何百人と吹き飛ばした。
「ガープ…、こりゃあ俺達も…ただじゃ済まんぞ。」
「………ああ。」
その姿を見たセンゴクとガープは腕をまくり、人知れず戦闘準備を整えていた。
今回は少し短めです。すみません。