王下七武海総監督物語   作:グランド・オブ・ミル

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さあ頂上戦争編です!インペルダウンから始まるのでかなり長編になる予感!

とりあえず頂上戦争編について一言・・・

この作品の題名間違えたかも!!


第8話

 

 

 

 

 

「センゴク元帥!監視船が白ひげの船を確認したようです!」

 

海軍本部元帥室、そこに少将が飛び込んでくる。今海軍本部はただならぬ緊張感に支配されていた。それもそのはず、先程ポートガス・D・エースの公開処刑を執り行うことを世界に発表したばかりだ。世界最強の海賊"白ひげ"エドワード・ニューゲートは仲間の死を許さない。間違いなく戦争が起こる。それを警戒しての緊張感だった。

 

「うむ、何か動きがあり次第すぐに報告するよう伝えろ!」

 

「はっ!それともう一つ、七武海達の召集の件なのですがやはりインフィニティ・D・レイがいないせいかすこぶる集まりが悪く・・・」

「くっ・・・やはりか。」

 

少将の報告には続きがあった。それは戦争に先駆けて召集している七武海についてだった。

先日行われた会議にてポートガス・D・エースの公開処刑を執り行うことを話した時、レイと"海峡のジンベエ"が激しく反発したのだ。普段はよっぽどのことがない限り比較的政府に忠実な二人なのだが、今にも暴れだしそうだったので仕方なく拘束。現在二人はインペルダウンに収監中だ。

しかしそれにより問題が起きてしまう。それまで政府の任務に嫌々だが従っていた七武海達がバラバラになってしまったのだ。この大変な事態にも関わらず召集にさえ渋る始末だ。

今まで召集や任務の通達はレイが行っており、七武海達は「レイなら」と従っていた。しかし、今回七武海達を迎えに行っているのは海軍の中将達。当然「レイはどうした?」という話になり、七武海達は素直に応じてくれない。

 

まさかレイを失う損失がこれ程とは。

 

失って初めて気づくレイの大切さにセンゴクは頭を抱えた。

 

「ふん!くだらん!あんな小娘いてもいなくても同じだ!!」

 

「ド、ドーベルマン中将・・・!」

 

元帥室のソファーに座っていた身体中に十字型の傷がある男ドーベルマンが声をあげた。

この男は海軍の中でも過激派に属する海兵で赤犬に似た考えを持っている。

 

「中将達に七武海の連中を引きずってでも連れてこいと伝えろ!!」

 

「は、はい!了解しました!!」

 

ドーベルマンに怒鳴り付けられた少将は慌てて元帥室を飛び出していった。

ドーベルマンはレイのことをどうやら軽く見ているようだがセンゴクはそう思ってなかった。レイは確かに傍から見れば政府に忠実な使い勝手の良い駒に見えるだろう。聞くところによると海軍の一部にはレイを大したことないと見くびっている海兵もいるらしい。

 

そんなわけはない。レイは絶対に都合の良い駒で終わる奴ではない。

 

センゴクにはそんな確信があった。というのも手錠をはめられ、ジンベエと共にインペルダウンに向かう時、レイはセンゴクとガープに向かって微笑を浮かべたのだ。それが一体何を意味する笑みだったのかは分からないが、レイだって海賊だ。いつも政府に忠実でセンゴク自身時折忘れそうになるがレイも一端の海賊なのだ。絶対にこのままでは終わらない。

 

「レイ・・・」

 

もしかすると海軍はこの戦争で"インフィニティ・D・レイ"という海賊の恐ろしさを再確認することになるかもしれない。センゴクの不安は募るばかりである。

 

 

 

 

 

 

 

 

大監獄インペルダウン。それは海王類達の巣である"凪の帯(カームベルト)"に建てられた海底大監獄。20年前ある男をとり逃がしたがそれから誰一人の脱獄、侵入を許していない鉄壁の監獄だ。

 

「おーおー、無残な姿に。息はあるか?エース。」

 

「・・・ジジィ。」

 

そんなインペルダウンにガープが訪れた。目的はエースとの面会である。

檻の中のエースは幾多の拷問を受けたのか傷だらけの満身創痍だ。エースの隣にはレイが同じく傷だらけで手錠をはめられていた。

 

「お前とルフィにゃ立派な海兵になって貰いたかったがのう。海兵どころかとんだゴロツキになりおって!まったく!レイに任せるんじゃなかったわい!」

 

「・・・私にエースとルフィを任せたのはあなた達でしょう・・・ガープさん。」

 

ガープに返事をするレイはとても辛そうだ。いつもなら受けた傷程度すぐ回復できるのだが、今レイは海と同じエネルギーを持つ石"海楼石"でできた手錠をはめられているので能力が使えない。

 

「・・・迷惑なことに俺もルフィも世界的大犯罪者の血を引いてんだ・・・。海兵になんてなれるわけねぇ。」

 

「・・・・・・・」

 

「・・・俺は「ポートガス」って大恩あるおふくろの名は継いでもろくでもねぇ父親の方の半分の血は願い下げだ・・・。何の記憶も何の恩もねぇからな・・・。」

 

「・・・まぁそうじゃろうがあいつはあいつでなぁ「だからよ!ジジィ。」・・・!」

 

「俺のオヤジは"白ひげ"一人だ・・・!!」

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・エース・・・。」

 

自分の父親は白ひげだけだと言い切るエース。そんなエースをレイとガープは複雑な表情で見ていた。

 

「・・・ガープさん、おせんべい持ってない?」

 

「ここに来る時に取り上げられたわい。」

 

・・・あくまで二人は二人だったのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

「モモンガ中将!インペルダウンに到着致しました!」

 

「まいったな、向かい風で少々遅れた。急ごう、ハンコックをすぐに呼べ!」

 

レイが収監されて数日が経過した。インペルダウンの「正義の門」には一隻の軍艦が浮かんでいた。モモンガ中将の軍艦だ。

シャボンディ諸島で七武海"バーソロミュー・くま"によって仲間達と離れ離れになったルフィはハンコックが治めるアマゾン・リリーに飛ばされた。女人国であるアマゾン・リリーに突如侵入したルフィに国は一時パニックとなるも、色々あって和解することができた。そして現在ルフィはエースを救出するためハンコックの協力を得てインペルダウンに来ていた。

少々メタい話になるのだが、原作とは違いハンコックはルフィに恋愛感情を抱いていない。ではなぜルフィに手を貸しているのかというとルフィがレイの息子であるからだ。昔からレイにルフィ、エースのことはよく聞かされていたハンコックはルフィの行動や言動、考え方などから間違いなくレイの息子だと確信し、こうして協力している。自分の魅力に支配されず"メロメロ甘風(メロウ)"が効かなかったことに悔しさを覚えたのは秘密だ。

 

さて、周りの海兵達のざわざわ声を耳障りに思いながらハンコックはインペルダウンの正門をくぐった。ルフィはマントの中でハンコックにしがみつくことで侵入に成功した。この瞬間、ルフィは史上初のインペルダウン侵入者となる。

 

「ようこそ我がインペルダウンへ!あ、間違えました!"我が"ってちょっと野心でちゃった!」

 

インペルダウンの入り口でハンコックを迎えたのはツタンカーメンのような被り物とぽっこりお腹が特徴の野心家副署長ハンニャバルだ。モモンガとハンニャバルが握手を交わした後、ハンコックは副看守長ドミノの案内でインペルダウン内を歩く。

 

「右手をご覧下さい。」

 

ドミノの指す右を見ると巨大な網が張ってあった。

 

「囚人の場合、この網の向こうへと進み衣服をすべて脱いで奥の鉄釜でたぎる100度の『地獄のぬるま湯』に突き落とされ、殺菌消毒を兼ねた"洗礼"を受けて入獄となります。」

 

「・・・なるほどの。」

 

「やはり囚人にも"格"というものがあり、"火拳のエース"、七武海ジンベエ氏、元七武海クロコダイル氏、そして七武海総監督レイ氏などは洗礼にも眉一つ動かさず見事な入獄でした。」

 

「なにっ!?」

 

「え!?レイ!?」

 

ドミノからレイも入獄済みだということを聞いたハンコックとルフィは声を荒げる。マントからルフィの声がしたのでドミノは不審に思う。

 

「?今誰かの声が・・・」

 

「そんなことよりそなた!今レイと言ったか!?インフィニティ・D・レイも収監されておるのか!?」

 

「ええ、なんでも今回の"火拳のエース"の公開処刑をジンベエ氏と共に反対したとか。」

 

ハンコックは男嫌いだ。それは例え海軍将校でも変わらず、モモンガ中将の話をずっと無視してきたハンコックはレイが収監されている事実を今まで知らなかった。

 

ルフィの声を不思議がるドミノをなんとか誤魔化したハンコックは取調室に通される。そこでドミノと監視用映像電伝虫を『メロメロの実』の能力で石化させ、ルフィをマントから出す。

 

「ルフィ、どうやらわらわが送ってやれるのはここまでのようじゃ。この先は能力も使えず、マントも取られては隠しきれぬ。もっとそなたの力になりたいが・・・。」

 

「何言ってんだよ!俺一人じゃこんな所まで来ることもできなかったんだ!軍艦が取り囲んでる建物の中に入れたらもう充分だ!」

 

「・・・ルフィ、ここは人を逃がさぬための要塞じゃ。捕まれば二度と外へは出られぬ。絶対に騒ぎを起こしてはならぬぞ!"暴れない"そう約束してほしい。」

 

「分かった!約束だ!しかしエースだけじゃなくてレイも捕まってんのか・・・。」

 

「あの副看守長が言うには今回の処刑に反対したそうじゃな・・・。息子が処刑されるのじゃ、当然じゃろう。」

 

「助ける奴が一人増えたな。本当にありがとうハンコック!この恩は忘れねぇ!いつか必ず返す!!」

 

「うむ、武運を祈っておる。」

 

しばらくして取調室の映像が途切れたことを不審に感じたハンニャバルが戻ってくるも、映像電伝虫とドミノの石化を解いて切り抜ける。石化された者は石化前後の記憶が少し飛ぶようでドミノもあまり不審に思っていない。

 

ハンニャバルが戻ってきた時に取調室の扉が開き、ルフィは"ギア2"のスピードで素早く部屋の外に出る。そして大型リフトで地下4階LEVEL4にある署長室に向かうハンコックを見送り、アラバスタでエースから貰ったその人がいる方角を指し示す"ビブルカード"で位置を確認し、エースとレイを救出するために地下への階段を降りていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはインペルダウンの海底深くにあるフロア。ここには起こした事件の度があまりに残虐すぎて政府から揉み消された海賊や犯罪者達、政府にとって都合の悪い者達が収監されているエリアだ。

 

そんなフロアへ続く階段を私「ミク」は、映像電伝虫に映らないように銀色に輝く毛を持った猫"ロシアンブルー"の姿で降りていた。目的はただ一つ、"あの人"に会うためだ。

 

やがて私は"その人"のいる檻へ辿り着いた。今私は小さな猫の状態なので鉄格子の間からするっと中へ入る。この檻には"あの人"の他に明日公開処刑される予定の"火拳のエース"、王下七武海"海峡のジンベエ"という人が入っている。

 

そして私はついに"その人"レイさんの元へと辿り着いた。両手を海楼石の手錠で張りつけにされたレイさんは傷だらけで俯いている。苦しそうだ。

 

「よいしょっ・・・と。」

 

私はすぐさま猫から人間の姿に戻り、持ってきた医療道具で治療を始める。まずは足からだ。レイさんの足は今は傷だらけだけど絹のように白くてキレイだ。

 

「ミク、また来たの?」

 

「うん、来ちゃった♪」

 

治療をしていたらレイさんが私に話しかけてきてくれた。なので私も返事を返す。

 

「へへっ、レイ。随分ソイツになつかれたみたいだな。」

 

「インペルダウンの医療班の子まで・・・さすがレイさんというか・・・。」

 

レイさんといっしょに捕まっている"火拳のエース"と"海峡のジンベエ"がレイさんに話しかけた。どちらもちょっと呆れ顔だ。

 

「ミク、また怒られるよ?」

 

「・・・うん、でも私レイさんのケガを治したいから。」

 

「ふふ、ミクは本当に優しいのね。」

 

治療を続ける私にレイさんは微笑んでくれる。"海峡のジンベエ"が言ったように私はこのインペルダウンの医療班だ。親がいなくて孤児だった私はたまたま化学、生物関係に強かったことからインペルダウンの医療班に無理矢理入れられた。政府や海軍は私の腕しか評価せず、内面的な部分は見てくれない。この大監獄では聞こえてくるのはいつも囚人の悲鳴ばかり。私はこの生活が嫌いだった。

 

そんな時に収監されてきたのがレイさんと"海峡のジンベエ"だ。二人は"火拳のエース"の処刑に反対して海軍に捕らえられたらしく、今程ではないにしても傷ついていた。だからこれから拷問を受けるにしても一応治療しておいた方がいいと思って治療したらレイさんが

 

「ありがとう、あなた優しいのね。」

 

と言ってくれた。私を医療の腕ではなく、"ミク"としての内面的な部分を見てくれた。初めてだった。結果だけが正当化される世界で生きてきた私にとってはそれがとても嬉しかった。

 

それから私は毎日ここに通っている。この前見つかった時にはものすごく怒られたけどそんな事が気にならないくらい私はこの時間が好きだ。

 

「!ミク、"獄卒獣"よ。早く私の服に入って。」

 

「うん!!」

 

レイさんの指示で私は猫状態になって素早くレイさんの服の中に入る。こうやってレイさんを間近で感じると胸の当たりが熱くなってくる。心臓の鼓動もやたら早いのも近づいてくる"獄卒獣"のせいではない。

 

"獄卒獣"というのはこのインペルダウンで囚人の処刑や拷問を担当している化け物だ。確か"覚醒"した動物系能力者だって話は聞いたことあるけど詳しいことは私もよく知らない。

 

その獄卒獣はレイさんと私がいる檻に入ってきて、"海峡のジンベエ"を捕らえている鎖をジャラジャラといじる。"海峡のジンベエ"が逃げ出そうとしていないか確認に来たようだ。

 

「誰も逃げやせんわい!!」

 

"海峡のジンベエ"がそう怒鳴ると獄卒獣は手にしたトゲ付き金棒で"海峡のジンベエ"を殴る。金棒からは"海峡のジンベエ"の血が滴る。

 

そしてあろうことか獄卒獣はレイさんの方へと歩いてくる。鼻を仕切りに動かしてるようなので私を嗅ぎ付けたのだろうか。

 

「・・・女性の匂いを嗅ごうだなんて失礼。」

 

私を庇おうとしてくれたのだろう。レイさんが獄卒獣を挑発すると奴は「口答えをするな!!」と言わんばかりに"海峡のジンベエ"の時よりも強くレイさんを殴り付けた。レイさんは頭からドクドクと血を流してしまった。獄卒獣はそれで満足したのかのしのしと檻から出ていった。

 

「レ、レイさん!!大丈夫!?」

 

「・・・なんとかね。大丈夫だから少し落ち着いて。」

 

私は慌てて服から飛び出してレイさんの傷を確認する。その傷の深さにオロオロと涙目で慌てながらも治療していった。

 

「またこっ酷くやられたな。ジンベエ、レイ。」

 

「体など痛うない・・・!!痛ぇのはエースさん!仁義を通せぬわしの心じゃぁ!!」

 

「私もジンベエと同じ。私の場合は可愛い看護師さんもいるし、ね。」

 

「うん!レイさんのケガは私が治すよ!」

 

レイさんに私は涙を拭いて笑顔で返事を返す。こうやって私を可愛いって言ってくれるのはレイさんだけだ。ほっぺたが熱くなる。

 

聞けばレイさんと"火拳のエース"は親子で、だからレイさんは今回の処刑に反対したらしい。"海峡のジンベエ"は"火拳のエース"のボスである四皇「白ひげ」に仁義があって処刑に反対したそうだ。

 

"家族"、"親子"。それは12年生きてきた私の人生でまだ触れたことのない憧れのものだ。"火拳のエース"はレイさんの子ども・・・。もし、レイさんが私のことを"家族"だと思ってくれたらどんなに嬉しいだろう。レイさんは海賊で、悪くて恐ろしい奴だとみんなは言うけど私はそうは思わない。こんな私を"可愛くて優しい"って言ってくれるとっても大切な人だ。

 

「・・・ねぇ、レイさん。」

 

「ん?何?」

 

だから私はこんなことを聞いてみた。

 

「あのね・・・わ、私も、レイさんの"子"になっちゃダメ・・・かな・・・?」

 

すごく勇気を振り絞って聞いた。モジモジして指を突っつきながらだけど何とか言い切ることができた。レイさんは嫌と言うかもしれない。それは耐えられない程嫌だけどこれだけは聞いておきたかった。

 

「・・・何言ってるの?」

 

「え・・・」

 

私に問いに返事をするレイさんは首を傾げ、不思議そうな顔をしている。私は絶望に身を打ちひしがれる。

やっぱり私じゃ嫌なのかな・・・。

そう思った時、レイさんは

 

「あなたはもう私の娘じゃない。」

 

と言ってくれた。私は嬉しくなって涙目でレイさんに抱きついた。身体中傷だらけのレイさんは痛そうにしてたけど私は嬉しくて気づかなかった。

 

「本当に!?本当にいいの!?」

 

「いいに決まってるでしょ。ミクみたいにいい子なら私も嬉しい。なんせ私が育てた子はみんな悪ガキばかりで・・・あ、ロビンとローは違ったか。」

 

「・・・悪ガキで悪かったな。」

 

"火拳のエース"が何か言っているが気にしない。私はすごい幸せだ!王下七武海は政府にとって重要な戦力だ。だからレイさんと"海峡のジンベエ"は"火拳のエース"の処刑が終わり次第釈放される予定だ。でもレイさんのことだからもしかしたらその前に何とかして脱獄するかもしれない。その時は私もついていこう。例え海賊として手配されることになってもいい。私はレイさんの娘として、船医としてしっかりサポートしていきたい。

 

レイさん、大好きだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ミクはちびミクそのままの容姿をしています。子どもになった初音ミクだと思ってください。

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