王下七武海総監督物語   作:グランド・オブ・ミル

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軽い日常回&説明回みたいなもの。


第7話

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・うぅ~ん。」

 

クライガナ島シッケアール王国跡地、そこにそびえ立つ古城は王下七武海でも上位の力を持つ"鷹の目"ジュラキュール・ミホークの拠点だ。廃墟となった国の跡地であり、さらに「ヒューマンドリル」という人の真似をする賢いヒヒが武器を持ってうろついているため、鍛練を積みながら生活できる絶好の隠れ処と言える。

 

そんな古城の個室のベッドで目を覚ましたのはミホークではなく七武海総監督であるレイだ。レイはミホークの拠点であるこの古城に勝手に住みついていた。もちろんミホークも遺憾の意を唱えているが、彼は暇潰しと称して度々一人旅に出てあまり城へは帰らないのであまり気にしてなかったりする。

 

「レイ様、おはようございます。」

 

「ん、おはようアリサ。ほら、ペローナも起きて。」

 

「・・・ん、ふわぁ~よく寝た。」

 

レイが起きるとほぼ同時にココアが入ったマグカップを二つ持ったアリサが入ってくる。レイはアリサに挨拶をした後、隣で眠るペローナを起こす。

 

レイ達三人は同じベッドで寝ている。寝る時は三人とも裸なのだがなぜかは言及しないでおこう。これがバレるとさすがにレイ達はミホークに追い出されてしまう。

 

 

 

 

 

 

「かかってきなさいアリサ。どれだけ強くなったか見てあげる。」

 

「はい、バーン・アリサ参ります!」

 

朝食を終えた後、城の前でレイとアリサは向かい合っていた。レイの提案でアリサがどこまで強くなったか組み手をしようという事になったのだ。

 

レイが組み手開始の言葉を言うとアリサは鞘の先端に花、柄尻にフサフサの毛がついていて、彼女がいつも腰に下げている刀、妖刀「楼観剣」を抜く。

 

「"波動斬り"!!」

 

「っ。」

 

そしてアリサは先手必勝とばかりにレイへ斬撃を飛ばす。ミホークやゾロのものとはまた違う味を持つ斬撃だ。それをレイは冷静に見極め、右にステップしてかわす。

 

「"ドリルソード"!!」

 

「!"ベルトアーム"。」

 

斬撃をかわしたレイにアリサは前に突進しながら斬りつける"ドリルソード"をくり出す。レイはそれを"ベルトアーム"で受け止めて防ぎ、アリサに攻撃を加えようとする。

 

「"こっぱみじんの術"!!」

 

「!」

 

レイの攻撃がアリサをとらえた瞬間、アリサの体が一瞬木っ端微塵になったかのように錯覚する。そしてアリサはすばやくレイの後ろに回り込んだ。

 

「必剣"竜巻斬り"!!」

 

「っ。」

 

そしてアリサはレイをまるで竜巻を起こしたかのような斬撃で攻撃する。アリサの攻撃をレイは上へ飛ぶことでかわした。が、一瞬反応が遅れたせいか顔に一線の斬り傷が走る。

 

「・・・すごく強くなったね。たった数日で。」

 

「これくらいしないとあなたの従者は勤まりません。」

 

レイは着地し、傷を再生させながらアリサに話しかける。レイは驚いていた。レイがアリサの修行のためとここに置いてスリラーバークへ行っていたのはほんの数日。そんな短期間で以前より数段腕を上げているとは驚きだった。

 

やがて二人は互いに構えをとる。次の一撃で勝負を決めるつもりだ。レイは星型のクリスタルのような砲台を出現させ光の粒子を溜める。アリサは楼観剣を大きく後ろに構える。

 

「"加粒子砲"。」

 

「必剣"マッハトルネイド"!!」

 

そしてレイはその砲台から膨大なエネルギーの光線を発射し、アリサは楼観剣を素早く、力強く振るうことで"竜巻斬り"とは比較ならない程巨大な炎の竜巻を二つ撃ち出した。光線と竜巻は拮抗し、互いに押し合う。

 

「っ!!」

 

「・・・・ふぅ。」

 

やがて光線が竜巻を貫き、アリサの顔のすぐ横を通り過ぎていき、遥か遠くで着弾する。"加粒子砲"は"破壊光線"とは違い、爆発せずにあらゆるものを焼き焦がす技のようだ。

 

「・・・参りました。やはりまだまだあなたには届きませんね。」

 

「そんなことない。アリサならこれぐらいすぐ辿り着ける。」

 

「お褒めに預り光栄です。」

 

アリサはレイの賞賛に照れくさそうにしながら楼観剣を鞘に収める。レイの見立てでは現時点でアリサはクロコダイルの右腕である「ダズ・ボーネス」くらいの力はあるはずだと踏んでいた。今回レイは手加減していたが、アリサがレイとまともに打ち合える日は近いかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

「はい、ペローナ。あ~ん。」

 

「あ~ん、ん~♪レイ様の作るケーキは最高だな♪」

 

アリサとの組み手を終えたレイはペローナとお茶会をしていた。テーブルには紅茶の入ったコーヒーカップとレイの手作りショートケーキが二つずつ置かれている。

 

レイにケーキをあーんで食べさせてもらっているペローナはとても嬉しそうだ。彼女の周りを浮遊する二体のネガティブゴースト達も頬を赤くして嬉しそうに踊っている。もう名前をポジティブゴーストに変えた方がいいんじゃないんだろうか。

 

「ねぇペローナ。私これから出掛けてくるけどアリサと一緒に留守番お願いできる?」

 

「ん?どこ行くんだ?」

 

「ハンコックの所。」

 

お茶会を終えた後、レイはペローナにこう切り出した。何度も言うがレイは七武海総監督だ。そのためレイは七武海達の所へ時々様子を見に行かなくてはならない。最も本人はこれをそれほど苦と思っておらず、友達の家に遊びに行くようなものと思っている。

 

「・・・海賊女帝ボア・ハンコックか・・・。」

 

それはそれとして、ハンコックの名を出したとたんペローナが不機嫌になる。レイが声をかけてもぷいっとそっぽを向いてしまう。ペローナは二人きりの時に別の女の名前を出したことが気にくわないのだろう。可愛らしい嫉妬だ。

 

「ペローナ。」

 

「なんっ・・・む!?」

 

レイはそんなペローナの顔に手をあてて正面を向かせちゅっとキスをする。それだけでペローナは顔を赤くしてほにゃっとなってしまう。レイのキスの甘い香りと絶妙な味は何度味わっても慣れないものだ。

 

「安心してペローナ。あなたのことも大好きだからね。」

 

「ななな何言ってんだ!?は、早く行っちまえ!!」

 

そしてペローナを抱き締めて愛を囁くレイ。恥ずかしすぎるペローナは赤面しながらレイを突き放す。部屋の隅で両手を頬に当て、「大好き・・・大好き・・・」と繰り返すペローナをレイは心底可愛いと思い、窓から空へと飛び出した。

 

ちなみにレイは帰宅後、ペローナを羨ましがるアリサにも同じことをすることになるのだが今は知る由もない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハンコックはレイのことを慕っている。それはかろうじて恋愛的なものではないがそれに近い感情を持っている。

 

初めてハンコックがレイに出会ったのは11年前、九蛇海賊団船長として8000万ベリーの懸賞金をかけられ、七武海になった日のことだ。元々天竜人の奴隷であったハンコックにとって聖地マリージョアはトラウマだった。そんなマリージョアで心がトラウマで埋め尽くされる所を支えてくれたのがレイだ。

 

ハンコックは自分の弱みを決して出さない。それはもう二度と誰にも支配されたくないという心情の表れだった。そのため例えマリージョアでトラウマに苦しめられても誰も気づかない。だがレイは違った。レイはハンコックの苦しみに気づき、分かろうとしてくれた。その時彼女からもらった「L.C.L」という液体の味は今でも忘れていない。

 

だがそれでもハンコックはまだレイに心を許したわけではなかった。長い間虐げられたハンコックは人に心を許すのが怖かったのだ。

 

レイに心を許すきっかけとなったのは彼女のハンコックの城である「九蛇城」へ招いた時のことだ。不注意から入浴中の姿をレイに見られてしまったのだ。ハンコックの背中には天竜人の奴隷の証である"天駆ける竜の蹄"の紋章を焼きいれられている。それをレイに見られてしまったのだ。

 

ハンコックの心はその瞬間恐怖に埋め尽くされた。

また虐げられる。

また支配される。

またあの地獄が始まる。

そんなことを考えていたのだが、そんな思いとは裏腹にレイはハンコックを抱き締めた。そして恐怖で挙動不審になっていたハンコックの背中をさすって

 

「辛かったね。大丈夫、安心して。もう誰もあなたを支配しないから。」

 

こう言ってくれた。ハンコックはレイの胸に顔を埋めて泣いてしまった。アマゾン・リリーの皇帝になってから初めて人に見せる自分の弱さだった。

 

ハンコックにとってレイは心を許せる数少ない相手だ。自分のわがままもちゃんと答えてくれるし、時に甘えさせてくれる。ハンコックの中でレイはなくてはならない存在となっていた。

 

ふと窓から外を見ればアマゾン・リリーの女達が集まり楽しそうに騒いでいる。その集まりの中心に水色の髪の少女の姿があった。レイだ。気配りができて子ども好きである彼女は国の女達からも絶大な人気だった。

 

やがてレイは九蛇城に到着する。ハンコックは部下に言ってレイを自分の私室へ通した。

 

ハンコックは普段皇帝に相応しい言葉使いをする。レイに心を許したといってもまだ傷が癒えたわけではないのだ。だが、レイと二人きりの時は子どもの頃のようなしゃべり方をする。せめてレイの前だけではアマゾン・リリーの皇帝ではなく、ただの"ボア・ハンコック"でいたいから。

 

「変わりない?ハンコック。」

 

「ええ、よく来たわね。レイ。」

 

これはハンコックとレイの二人だけの秘密である。

 

 

 

 

 

 




今回ちょっと短いですが、キリがいいのでここまでとします。

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