王下七武海総監督物語   作:グランド・オブ・ミル

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第1話

 

 

 

聖地マリージョア

 

『海軍本部からマリージョアへ、ドンキホーテ・ドフラミンゴ様次いでバーソロミュー・くま様がお着きに!』

 

レッドラインの上に位置する聖地に鳴り響くアナウンスの声。その声と共にサングラスをかけ、羽毛のようなモコモコのコートを羽織った男と、熊のような耳がついた大男が船から降り立つ。

 

彼らは世間では「王下七武海」と呼ばれ、政府に選ばれた略奪を許可された海賊達である。「四皇」、「海軍」と並ぶ三大勢力の1つであり、他の海賊を抑制する働きを持つ。

 

そんな彼らは今、世界政府から招集をかけられていた。七武海の一人、サー・クロコダイルがアラバスタ王国を乗っ取ろうとし、海賊モンキー・D・ルフィに敗れ、七武海脱退を余儀なくされたのだ。

 

その後任を決める会議のために彼らは呼ばれたのだが、彼らも海賊。政府への忠誠心など皆無であり、まず集まりが悪かった。普段から命令、徴兵無視など当たり前であり、政府の言いなりに動くのはバーソロミュー・くまくらいだ。

 

そんな七武海だが実はもう一人、忘れてはいけないメンバーがいる。それは・・・

 

『最後に・・・七武海総監督インフィニティ・D・レイ様がお着きになりました!』

 

今しがた海軍の船から降り立った水色の髪を持つ無表情な少女である。

 

 

 

 

 

私がこの世界に来て何年たっただろう。それすらももう正確に思い出せない。

 

だが、初めてこの世界に降り立った時の記憶はまだ鮮明に覚えている。

 

"南の海"のバテリラという島の端っこにあるボロボロの教会で私は目覚めた。今はもう誰も使っていないことがありありと分かるボロさ具合だった。

 

目覚めて最初の行動は何だっただろうか。発狂してしまったような気もするし、呆然とした気もする。とにかく何がなんだか分からなかった。

 

次に私は自分が誰なのか覚えていないことに気がついた。出身は日本・・・だったかもしれないしアメリカだったかもしれない。男だったかもしれないし女だったかもしれない。でも名前だけは分かった。「インフィニティ・D・レイ」というそうだ。

 

まあ、自分の名前が分かっただけ良かったのだろう。名前も分かりませんなんて私の人生はそこで詰んでしまう。

 

幸いその教会は森にあった。その気になれば森で何か狩ればいいし、食料に関しては問題なかった。

 

ふと鏡を見てみればそこに写ったのはかわいい14歳くらいの女の子。水色のショートカットの髪に赤い瞳、一見不機嫌そうに見える無表情がまたそそる・・・って!?

 

「綾波・・レイ・・・?」

 

有名な人型決戦兵器パイロットさんじゃないっスか!?え!?え!?なんで!?どうなってんの~~~!!?

 

・・・と取り乱した。今思い出すと恥ずかしい。あんなに取り乱すことなんてもう一生涯ないだろう。いや、ないと願いたい。

 

そしてこれが一番記憶に残っている。忘れたくても忘れられない。私の運命を決めた瞬間だったから。

 

教会の奥へ進むとそこには教会らしからぬ不気味な部屋があった。十字架に神と思われる人物が張りつけにされ、胸に何本も杭が打ち込まれていた。とても教会の部屋とは思えない光景だった。

 

そしてその下、祭壇と思われる場所に飾られていた1つの果実を見つけた。大体ハンドボールぐらいの大きさで銀色に輝き、全体的にぐるぐる模様がついていた。そう、言わずと知れた「悪魔の実」だ。しかし、私の知っている悪魔の実とは少し違っていて、実の上には何やら天使の輪っかのようなリングが浮かんでいた。

 

まあ、そんなことはささいな問題だ。

 

かの有名な悪魔の実が目の前にあるのだ。何の実か分からなくても誰かに盗られたり、なくしたりしない内に食べてしまおうという考えにいたっても可笑しくはないはずだ。

 

当然私も大喜びで食べた。しかしさすがは悪魔の実、宇宙革命的にまずかった。それはそれはまずかった。無表情な私は表情には出なかっただろうが内心ではすごく顔を歪めていた。

 

そんなこんなで晴れて能力者となった私はとにかく暴れた。思春期か!と突っ込まれてもぐうの音も出ない程に暴れまわった。

 

そして得た称号が「王下七武海総監督」だ。人生何が起こるか分からないものだ。

 

まあ、昔の話はこれくらいにしておこう。また機会があったら追々語る。

 

昔のことを思い出しながら海軍本部でガープ中将とおせんべいを食べていると部屋の電伝虫に着信が入った。

 

『ガープ、聞こえているか?』

 

「おお!センゴクか!どうした?」

 

相手はセンゴク元帥のようだ。

 

『そこにレイはいるか?招集だ。』

 

「そうか、分かった。伝えておく。」

 

ガチャと電伝虫の受話器を置き、ガープさんは私に振り返る。

 

「聞こえていたじゃろう。招集だそうじゃ。」

 

「ん、分かりました。」

 

私は食べかけのおせんべいを口に放り込み、立ち上がる。言い忘れたが私とガープさんは結構長い縁だ。「七武海総監督」と「海軍本部中将」。険悪ムードになってもおかしくない二人だが、たまにこうやってお茶会をしたりする。

 

「では、行ってきます。」

 

「うむ、気をつけてな。」

 

私は窓を開け、ガープさんと軽い挨拶を交わして飛び立った。自慢じゃないが私は七武海の招集には毎回出席している。さすがに政府の命令にはあんまり従わないがそれでも命令無視が当たり前の七武海の中では優等生ではないだろうか。

 

 

 

 

 

 

「よく来たな。海のクズ共。」

 

聖地マリージョアの会議室にて私達は会議開始を待っていた。ドフラミンゴが海兵で遊び始めたのでおつるさんと一緒に止めたりしているとセンゴク元帥が入ってきてこの一言を言い放った。辛辣だ。

 

「フフフフフ!お~お~えれぇ言われようだぜ。」

 

「だが、的を射ている。」

 

「・・・・・・」

 

ドフラミンゴとくまがセンゴクさんに言い返す。私はセンゴクさんと一緒に入ってきたヤギといつものように遊んでいるので無反応だ。

 

「始めようか。もうこれ以上待っても誰も来まい。7人中3人も来てくれたのは私の想像以上だ。くまとレイだけでも来てくれれば良しと考えていた。」

 

センゴクさんがおつるさんの隣に座る。

 

「だろうな。俺も来る気はなかった。島の興業があまりにも上手く行き過ぎちまって退屈だから来たんだ。」

 

ドフラミンゴが円卓にドカッ!と座る。

 

「ドフラミンゴ。行儀悪い。」

 

「フフフ!かてぇこと言うなよレイ。どうだ?今度またドレスローザに来ねぇか?シュガーの奴がおめぇに会いてぇってうるさくてよ。」

 

「暇があったら行く。」

 

ドフラミンゴが行儀悪かったので注意したら彼の治める国に招待されてしまった。彼の部下であるシュガーという女の子に私は何故かなつかれてしまったからだ。

 

「それは迷惑な話だ。海賊の興業が上手くいくこと程我々にとって不景気な話はない。」

 

「フフフ!やけにつっかかってくれるじゃねぇか。"仏"の名が泣くぜ?センゴク元帥。」

 

センゴクさんとドフラミンゴが言い争いをしていると・・・

 

「つまらぬ言い合いが聞こえるが俺は来る場所を間違えたか?」

 

気まぐれなあの人がやって来た。

 

「"鷹の目"!まさかお前が・・・」

 

「これはこれは最も意外な男が来なすった。」

 

背中に大きな黒刀を持った世界一の剣豪"鷹の目"ジュラキュール・ミホークだ。

 

「なに。俺はただの傍観希望者だ。今回の議題に関わる海賊団に興味があってな。それだけだ。」

 

いやあんたが来る時はいつもだろう。そんなツッコミを私は胸の中にしまい、席に着いた。するとどこからか響くはずのない声が聞こえてきた。

 

「では私も傍観希望ということでよろしいか?いや、傍観と言うには少し違いますが。」

 

「「「!」」」

 

声の主を探すと窓枠にシルクハットを被った男が座っていた。

 

「貴様!!何者だ!!どこから入った!!」

 

海兵の一人がその見知らぬ男に声を荒げる。

 

「あわよくばぜひこの集会、参加させて頂きたく参上いたしました。この度のクロコダイル氏の称号剥奪に受けて、後継者をお探しではないかと。」

 

「あなた、ラフィット?」

 

「おや、私の名などご存知で。これは恐縮千万。」

 

「誰だ?レイ。」

 

私はこの男を知っていた。小耳に挟んだ程度だが。確か"西の海"の保安官で度を超えた暴力で国を追われた男だったはず。

 

「ホホホ、私の事などどうでもよろしい。私はある男を七武海に推薦したくここへ来たのです。」

 

そう話すラフィットの顔は不気味に笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




レイの能力については追々話します。

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