緋弾のアリア×IS 緋と蒼の協奏曲   作:竜羽

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神王と言う男の実力

第4話 神王と言う男の実力

 

アリーナにでは一夏達が見学と言って俺達を見ていた。

 

「ではまずは軽く模擬戦でもしよう。ルールは…よし。和麻と流無が行動不能になるか、私に一撃入れたらそっちの勝ちでどうかね?」

 

「1人で相手をするつもりか?」

 

Sランク武偵2人に1人と言うのはあまりに舐めているとしか思えない。

 

「そうだが?大丈夫今の君達では私に触れる事など出来ないよ」

 

カチンと来た。これでも俺と流無はそれなりに修羅場も潜り抜けてきたという自負があるし、プライドだってある。それをけなされた気分だ。

 

「分かった。本気で行かせて貰う」

 

俺は風斬・水蓮を構え。流無も蒼霞閃を構える。

 

「良い心構えだ。最初から全力で来たまえ。じゃないとすぐに終ってしまうからな」

 

からからと笑う龍也にまずは様子見という事で、

 

「シッ!!!」

 

風牙を打ち出す命中するかというところで、

 

「ふむ。風の刃か……」

 

パンッ!!!

 

軽い素振りで繰り出された拳が風牙を掻き消す。

 

「ちょっ?えええ?素手で風術無効化されてるわよ!?」

 

「まあ、対処されるとは思っていたが、拳で弾くか?普通」

 

かなりの数の精霊を込めた一撃だったのだが…。

 

「その若さにしては素晴らしい練りこみの魔法だ、誇ると良い」

 

手をパチパチと叩く龍也。

 

「誇ると良いと言われてもそこまで余裕たっぷりな表情をされると流石に自信を無くすんだが?」

 

「ははは。魔導に関わった時間が違う。それは経験の差という事で割り切りたまえ」

 

そう笑う龍也に今度は流無がD・Eを抜き、蒼穿を放つ。

 

「ふむ、特殊な処理を施した魔弾か……これは流石に素手では防げんな」

 

龍也はそう言うと虚空に手を伸ばし、

 

「投影開始」

 

ぼそりと呟くとその手に魔力が収束し何かの形になる。

 

「燃え盛る炎の大剣(レーヴァティン)ッ!!!」

 

赤い刀身を持つ西洋剣が龍也の手に現れ、それで蒼穿を弾き飛ばす龍也。

 

「……どこからそれを呼び出した?」

 

俺がそう尋ねると龍也は、

 

「私はありとあらゆる武具を記録した魔道書を所持している。キーワードを口にすればどんな武器も呼び出せる。それは……君たちの武器も例外ではないよ。投影破棄……投影開始」

 

龍也の手から剣が消えまた魔力が収束し何かの形になる。それは

 

「嘘……蒼霞閃!?」

 

流無の手にある三叉槍が握られていた。

 

「では今度はこちらから行くぞ。一撃で倒れてくれるなよ」

 

ヒュッ!!!

 

龍也の姿が掻き消える、何だ!?何をした!?

 

(「和麻!後ろよ!!」)

 

シャーリーの言葉で反射的に風斬を振るう。

 

「はっ!?」

 

ガキーン

 

「ほう、良い反応だ。ではドンドン行くぞ!!!」

 

シュッ!!シュッ!!!

 

「くっ!!」

 

両手の獲物で繰り出される連続突きを弾くが、

 

(お、重い!!)

 

その速度の割りにとんでもなく重い一撃に手が痺れ始める。

 

(流無!)

 

(判ってる!!)

 

俺に龍也の意識が集中してるうちに、背後から流無が蒼霞閃を繰り出すが、

 

「ふっ!!!」

 

「なっ!!」

 

後ろ向きのまま蒼霞閃を流無に投げつける。予想外の攻撃に流無が後退する。

 

「貰った!!」

 

無手に戻った龍也に風斬・水蓮を振り下ろすが、

 

「良い判断だが、20点だ」

 

龍也の手に小振りの2本の中華刀が現れ、風斬・水蓮が弾かれる。

 

「敵の特性を即座に判断し、目先の隙に囚われるな」

 

「がっ!?」

 

ガラ空きの腹に蹴りが叩き込まれ身体が宙に浮く。

 

「少々高い授業料だが、何ごとも経験だ。受け取っておきたまえ」

 

ドゴッ!!!!

 

顔面に石かと思うほどの拳が叩き込まれる。

 

「ガハッ!!!」

 

蹴り飛ばされたサッカーボールの様に弾き飛ばされ2、3度弾みアリーナの壁に叩き付けられる。

 

(痛てえ……)

 

たった2発で俺の足は震え目が霞む、それほど強烈な一撃だった。気でとっさに強化しなければ間違いなく意識を刈り取られていた。

 

(これはさっきの言葉も納得だな)

 

地力が違いすぎる。シャーロックと同等かそれ以上だ。だがこれくらいのダメージでへこたれるほど柔な鍛え方はしていない。

 

「いやいや、中々やるな流無」

 

「ちょっと!和麻起きたなら手伝って!1人じゃ捌き切れない!!!」

 

龍也の手には大型の西洋剣が2本。それを片手で軽々操り蒼霞閃を弾きながら前進していく龍也。流無の間合いが徐々に詰められている。

 

「くらえ!」

 

龍也の背後から重刃を放つが、

 

「背後からと言う着眼点は良いが、少々甘い」

 

龍也は左手の剣でそれを弾き、右手の剣で蒼霞閃の中ほどを捉え流無をこっちの方に弾き飛ばす。

 

「きゃあっ!」

 

「流無!!」

 

地面に叩き付けられる前に流無を抱き止める。

 

「状況判断、戦術眼。どれも悪くは無いがまだまだ荒い。よく相手を観察しどれが有効でどれが効かないかを見極めたまえ」

 

龍也は肩に剣を乗せそう言ってくる。

 

「余裕のつもりか?」

 

「いや?実戦に近い訓練ほど経験を積めるものは無い。正直君達の技能には少々驚かされるが、まだ荒い。強いて言うのならダイヤの原石だ。それほどの逸材を見るのは随分久しい。だから君達の全力を持って掛かって来たまえ。私も秘蔵の剣を持って相手をする」

 

龍也はそう言うと両手の剣を消し目を閉じ意識を集中させる。

 

「これは私だけの剣。終焉を齎す剣。銘をオメガブレードと言う」

 

美しい装飾の施された白銀の剣を構える龍也は、

 

「魔術でも体術でも構わない。全力を持ってかかって来い」

 

凄まじい魔力と闘気……判る、今の俺達では到底叶わないとそれでもこの戦いには意味がある。

 

「流無、時間を稼ぐから龍也を止めろ」

 

「……2分かかるけど、1人で凌げる?」

 

「問題ない。龍也はこっちの動きを見てる今の状況ならなんともでもなる」

 

蒼穹覇王は使わない、あくまで今の俺の実力を試すのに蒼穹覇王の力を借りては意味が無い。

 

(「え~」)

 

(「すまん、だがたのむ」)

 

俺の中でふてくされるシャーリーをなだめる。

それと同時に、俺は自身の気を練り上げる。

 

「神風・蒼風――!」

 

風が染まる。蒼穹のごとき、蒼に。

風を極限まで高めた者のみが会得できる奥義、神風を纏い、風斬・水蓮を構え龍也に向かって切りかかる。

二刀を振るい、龍也に反撃のすきを与えないように斬りかかる。

 

「二刀を扱うのは難しいが和麻はうまく使いこなしているな」

 

キンッ!!キンッ!!!

 

二刀の連続攻撃を軽々防ぐ龍也、手数はこっちの方が多いのにまるで当たらない。

 

(こんなに近いのに当たる気がしない)

 

シャーロックと戦った時のような絶望感こそ無いが、まるで当たる気がしない。まるで、上海でのおっさんとの修行みたいだ。

 

(世界ってのは広いな――本当に!!!)

 

それなりに強いつもりだった、だが上に上が居ると改めて思い知らされる。

 

「はっ!!!」

 

「むっ!」

 

ガキンッ!!!

 

上段からの切り下ろしで龍也の動きを封じる。

 

「和麻!離れて!」

 

流無の言葉に、すぐさま距離を取る。

それと同時に莫大な水が龍也に向かって放たれる。

 

「これは!?」

 

水が六体の水龍となり龍也の四肢にかみつく。龍一体一体が内包する水の莫大な量が、とてつもない重圧となり、龍也を拘束する。

 

「まさか、これほどの――」

 

「捉えた!穿牙・九連ッ!!!」

 

突きを放つと同時に風の槍を9本飛ばす。蒼穹覇王無しでの俺の最高の一撃。これならば――!

 

「やれやれ、中々やるが……甘いな」

 

スウ……

 

龍也の髪が銀から緋色の変わっていく、それと同時に水龍が弾け飛ぶ。

 

「そんな!?あれだけの拘束を!?」

 

「悪いが私はその程度では封じる事は出来んよ」

 

「規格外すぎるだろ」

 

「否定はせんよ。では君達の奥義に報いるために私の奥義をお見せしよう」

 

龍也が間合いを取り腰の鞘に剣を仕舞う。

 

「ふううう……百邪斬断ッ!!!天断彩光刃ッ!!!!」

 

高速の二連抜刀を認識したが次の瞬間俺は凄まじい勢いで流無の方に弾き飛ばされた。

 

(な、何が!?)

 

何をされたのか全く理解できない判るのは強烈な一撃を貰ったと言うことだけだ。

 

「「ぐっ!?」」

 

俺と流無はからみ合う様に倒れた、ダメージが深刻すぎて動くに動けない。

 

「降参かな?」

 

「「……まいりました」」

 

全く持って動けない。俺と流無は倒れたまま降参した。

 

 

 

 

 

天断彩光刃を使う羽目になるとはなぁ、正直予想外だった。破邪・破魔の力を持つ神王の魔力を高密度に圧縮した斬撃は魔力の流れを断ち切る。ことネクロ・魔導師にとっては天敵とも言える奥義、それを使ったのは正直数える程度しか覚えが無い。だがこれを使わなければ私を拘束していた鎖は破壊できなかった。それほどまでに強力な戒めだった。

 

「さてとではと」

 

パン!!!

 

手を打ち鳴らし2人にぶつけた神王の魔力を無効化する。

 

「あれ?急に動けるようになった」

 

「何をしたんだ?」

 

不思議そうな顔をする2人に天断彩光刃について説明する。

 

「さっきの技は相手の魔力を断ち切る。本来はネクロの用の技だが人間にも効果がある。魔力の流れを断ち切られた人間はその動きを封じられる、こと魔法に携わる人間にとっては無敵の剣技だ」

 

そして、和麻のほうを向く。

 

「お前の風だが、浄化の特性が無いか?投影した剣の刃こぼれが異様に早く、蒼くなったあたりからそれが早くなった。それが気になるのだが、どうだろう?」

 

連続して獲物を変えたのは何も見せびらかす為じゃない。和麻の剣と打ち合うたびに私の剣の魔力が消え消滅していくから獲物を変え続けたのだ。その理由として和麻の風は私に似た物だと思い尋ねる。

 

「ああ。俺の風は浄化の特製を持っているが、蒼くなった風――蒼風はそれがさらに高まっている」

 

予想とおりの返答を聞いて私は

 

「その風の特性を突き詰めれば破魔の特性になるな」

 

和麻の特性は対ネクロに特化した物といえる。

 

「ふむ、では訓練をしようか?」

 

「あの……体力が限界なんですけど?」

 

「俺もだ……」

 

流石に少しやりすぎたか。

 

「どれ、ふむ……魔力の循環が上手く行ってない為の体調不全だな。これなら、傷付いた戦士に天界の祝福を……ヘブンズヒール」

 

私の手から蒼色の魔力の粒子が溢れ出し、2人を包み込む。

 

「どうだ?」

 

「凄い。身体が軽い……」

 

「俺達の知る回復系の魔術とは精度が違うな」

 

驚いている2人に問題はないようだ。

 

「これで動けるだろう?和麻は私が見よう、流無ははやてに見て貰うといい。はやては事氷結系に関しては右に出るものの居ないほど優秀な術師だ。まぁ言動は少々あれだが……馴れればどうと言うことは無い」

 

「馴れるのは馴れるので怖いけどね」

 

はやてに関わると高確率で魔王化するが、まぁ多分大丈夫だろう。

 

「では和麻は剣術の修行と魔術を並行して行こうか、まずは蒼風を発展させてみようか?」

 

「そう簡単に出来るのか?」

 

「無理だろうな。そこはお前のセンスと努力に期待しよう」

 

私はそう笑い和麻の訓練を始めた。

 

 

 

 

 

「なあ、龍也。お前の妹がじーとこっちを見ているんだが?」

 

「和麻、世の中には事実でも言わないほうが良い事が多数あるんだぞ?」

 

剣の稽古を受けながら、ずっと感じる流無と模擬戦をしているはやての視線の事を言うと、龍也は青い顔でそう言った。

 

「お前ってさ?妹に迫られているんだよな?今までで1番怖かったのって何だ?」

 

「手足をベッドに縛られてマウントポジションを取られたのが1番怖かったな」

 

……駄目だ、はやては完全に遥香と同じ人種だ。

 

「私の感ではお前も私と同じだと思うが。どうだ?」

 

「正解。1歳年下の妹に迫られているよ。この間なんか、媚薬を盛られた」

 

「「……お互い苦労するよな。妹には」」

 

龍也に強烈なシンパシーを感じる。凄く仲良く馴れそうなそんな気がする。

 

「まぁ。それはそれ、魔術の剣術に磨きをかけよう」

 

「ああ、頼む」

 

二刀の扱い方、剣や槍の扱いを事細かく教わる蒼穹覇王の特性を十二分に扱うには俺自身の武器を扱う技能を上げなければ。

 

「駄目だ!駄目だ!!槍は突き出せば良いと言うものじゃないぞ!!」

 

「くっ!!」

 

バシン!!

 

手元を叩かれ手から渡された槍を零す。

 

「良いか?槍は確かにリーチを生かした突きが持ち味だ、だが突きだけじゃ駄目なんだ槍は薙ぎ払いや突きといった点と面を使い分けてこその獲物、しっかりと見ておけ」

 

演舞を見せてくれる龍也の動きをしっかりと目に焼き付ける。

 

「だが重量もあるし取り回しも大変だ」

 

「そこは体重移動と足場の確保でフォローしろ。で?後はどんな武器が使えるんだ?」

 

「大鎌とか斧とか色々だ」

 

「そうか、なら徹底的に武器の使い方を叩き込んでやる。頭で理解するんじゃない身体で覚えろ」

 

「判った」

 

何度も何度も龍也と模擬戦をする、疲労はたまるがそこは龍也の魔法で回復させ何度も何度も模擬戦を行い、龍也の動きを自分のものにしていく。そんな毎日を過ごす。

 

「良く持つなーお前」

 

「お前の体力が無いだけだ」

 

この世界の一夏とも手合わせをしたが、俺の世界の一夏よりもこの世界の一夏のほうが強かった。心構えが違うと言うかなんと言うか、明確な目標を持ってるせいか剣が重く強かった。

 

「しっかし、魔術とか言うのに加えて龍也の剣術指導はきついだろ?」

 

「ボロボロになるがそれだけの価値がある」

 

龍也の訓練は実戦向きで打撲や怪我は付き物だが、そこは龍也が治してくれるので心行くまでボロボロになれる。これは俺としては大変ありがたいことだ。

修行時代は怪我を自力で治していたからな。

 

「ふーん、まあ俺もそう思うけどな」

 

「身体で覚えてこその武術だ」

 

身体能力や状況判断力、更に魔術の応用も教わり前よりも強くなったと思える。

 

「何時までここに入れるか判らんが、居られる限りは頑張って修行しようと思う」

 

「そっか、じゃあな。和麻また模擬戦しようぜ」

 

そう笑う一夏と別れ与えられた部屋に向かっていると、

 

「だれだ?」

 

風の探査範囲に突然何者かが現れる。

 

「久しいな、風の王」

 

「――バルバドスか!」

 

学園の外に浮かぶ緑の異形、忘れる筈も無いバルバドスだ。

 

「日が変わるときIS学園の森で待つ。1人で来いとは言わない仲間を連れて来るがいい。私もまた1人ではないのだから、ではな風の王」

 

バルバドスは言うだけ言うと光を纏い姿を消した。

 

「あれが転移か……それより龍也と流無に」

 

どうやらもうじきこの世界を去ることになりそうだが、それは仕方ない。

本来俺はこの世界の人間ではないのだから。俺はそんな事を考えながら龍也と流無の元へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 




2月2日修正

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