緋弾のアリア×IS 緋と蒼の協奏曲   作:竜羽

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三章 ダブルクエスト
作戦会議


武偵少年法により、犯罪を犯した未成年の武偵の情報は公開が禁止されている。明らかに悪法だが、いまだに改正されていない。

それゆえに、理子がハイジャックの犯人で『武偵殺し』だということは知られていない。

まあ、俺と流無はキンジ達から口止めを条件に聞いたので公言していない。

実際は俺達がチャリジャックにあったことと、理子がよろしくと言っていたかららしいが。

 

「みんなー!たっだいまぁー!」

 

いきなり、二年A組は盛り上がった。

人気者である理子が戻ってきたことで、クラスのみんなは理子のところに向かう。

なかには「りこりん・りこりん!」などと腕を振りながらコールしている奴らがいる。顔を覚えて今後関わらないようにしよう。

 

あの、カラオケでの理子の衝撃の依頼から数日後、理子は武偵高に帰ってきた。

 

司法取引

 

犯罪者が犯罪捜査に協力したり共犯者を告発することで、罪を軽減、もしくはなかったことにするという、アメリカではおなじみの制度だ。

これは数多のリスクや問題をはらむ危険な制度だが・・・増加し続ける犯罪に司法が対応しきれなくなった日本でも、近年、導入された。

理子はこの制度を使って、すでに取引を終わらせており、あの後、キンジ達の前にも表れて、アリアの母親の冤罪を最高裁で証言するという取引を交わし、例のドロボーに協力するよう持ちかけたのだとか。

 

「ルーちゃ~ん!ただいま~!!」

 

「理子ちゃ~ん!おかえりなさ~い!!」

 

流無と抱き合う理子を横目に、イライラしているキンジとアリアを見ながら、これからどうなるのだろうと、窓の外を俺は眺めた。おいそこ。現実逃避とかいうな。そして、流無。たまにお前の性格が羨ましくなるぜ。

 

 

 

それから数日後。

身体測定やら、探偵科(インケスタ)の小テストやら、SSRの出雲大社合宿をばっくれたりあったが特に何もなく、俺と流無の日常に特に問題はなかった。

キンジとアリアは理子のことでいろいろ警戒していたが。

そして、そんな俺達四人は今――

 

「「「ご主人様、お嬢様、お帰りなさいませー!」」」

 

秋葉原のメイド喫茶に来ていた。

始めてきたが、本当にいたよ、メイドさん。

実家には和服のお手伝いさんしかいなかったから新鮮だな。

 

「結構かわいいわね。一着もらえないかしら」

 

「よし、後で交渉しに行こう」

 

流無が着たら写真を撮りまくろう。

 

「あ、あ、あんた、あんなのがいいって、どんな趣味してんのよ!」

 

「え~、だってかわいいじゃない?アリアちゃんにも似合うと思うけどな~」

 

「な!?いやよ!なんで、私がメイドの服なんて!」

 

「あ!ここって試着とかできるみたいよ。行きましょう!」

 

「だから、嫌って言ってんでしょ!っちょ、手をワキワキさせながら来ないで!?」

 

「大丈夫よ~、絶対にかわいいから♪メイド服の試着お願いしま~す!」

 

「い、いやああああ!!」

 

流無に引きずられながら、アリアはメイドさんの案内に従って店の奥に消えて行った。

 

 

 

「・・・まさか、リュパン家の人間と同じテーブルにつくことになるとはね。偉大なるシャーロック・ホームズ卿もきっと天国で嘆かれているわ」

 

しばらくして、店にVIP扱いで入ってきた、いつものゴスロリ服の格好をした理子にアリアはももまんをもふもふと食べながら、文句を垂れ流す。

 

理子と同じようなふりふりのついたミニのピンク色のメイド服姿で顔を真っ赤にしながら。

 

店の奥から出てきた流無とアリアはそれぞれメイド服に着替えていた。

アリアはご覧の通りで、流無はデザインはアリアと同じだが落ち着いた紫色と白のメイド服だ。とりあえず、携帯で写メを取った俺は悪くない。流無だってポーズをとってくれたしな。

 

「ナイスだよ!ルーちゃん!!」

 

メイド服姿のアリアを見た理子は、同じくメイド服姿の流無を見てすぐさま、事情を理解。

「イエーイ!」と二人でハイタッチをしていた。

 

「やっぱ小っちゃいアリアにはこのミニが似合うよねっ!」

 

「でも、あえてロングっていうのもアリだと思うのよ。世の中にはそう言う趣味の人もいるし、アンティークのお人形みたいになりそうよ」

 

「お~、確かにそれもアリですねっ」

 

理子と流無はアリアをダシに盛り上がり、その内容を聞いたキンジが顔を赤くする。

俺は頭の中でロングのメイド服を着た流無を想像する。

 

昼下がりのティータイムに紅茶を用意してくれる流無。紅茶を入れながら微笑んでくれる。

 

『紅茶をどうぞ、ご主人様。フフッ』

 

・・・ありだな。

 

だんっ、だんっ!

そんな俺達にアリアが、拳銃で机をたたいて、

 

「風穴開けられたくなかったら――いい加減ミッションの詳細を教えなさい」

 

顔を赤くしながらそう言った。

民間の施設で抜くのかよ、そのガバメント。

俺とキンジが固まる中で、理子は――

 

「お前が命令するんじゃねえよ、オルメス(Holmes)

 

乱暴な男言葉と三白眼になって、アリアを射殺すように睨み付けた。

これが『武偵殺し』の理子か。

流無は特に驚いてないな。

案外、この理子のウラの顔をなんとなく知っていたのかもな。二人は仲が良かったし、流無の人を見る目はいいからな。

隠しているこのウラ理子をうっすらと感じていたとしても不思議じゃない。

 

 

 

横浜郊外にある洋館『紅鳴館』。

地上3階・地下1階の洋館でびっしりと防犯設備が施されていることが、理子の用意した見取り図に描かれていた。

なんでも、この洋館の主、ブラドに理子の母親の形見の十字架(ロザリオ)を取り戻してほしいというのが理子の依頼だ。

地下金庫にあるというそれを盗むためには、息の合った優秀な二人組と連絡役が一人で作戦を行うというのが理子が立てた計画だ。

ブラドっていうのはアリア曰く、『イ・ウー』のナンバー2ということらしい。

しかも、アリアの母親に冤罪を着せた一人なので、アリアはもしブラドが現れたら逮捕しようといったが、理子曰く、ブラドはもう何十年も帰ってきていなくて、管理人とハウスキーパーしかいないらしい。

管理人もほとんど不在で正体がつかめていないらしい。

 

「ちょっと待って?いきのあった二人組っていうのがキンジ君とアリアちゃんで、連絡役っていうのが理子ちゃんでしょ?なら、私と和麻は?」

 

一通り話を聞いた後で、流無が疑問に思っていたことを聞く。

まあ、息の合った二人組ということなら俺と流無もそうだが、だとしたらキンジとアリアはいらない。

 

「二人には保険ということで、いざという時のサポートをしてほしいの。かーくんの探査能力ならそう言うの得意だし、ルーちゃんもかーくんの考えをすぐに理解してくれるでしょ?二人がサポートしてくれれば百人力だよ」

 

あ~、まあ、確かにそうだな。

風術は探査向きだし、流無との付き合いはかなり長いし、前に一緒に一般の学校に潜入したこともある。

 

「でも、まだまだよくわからないんだよ、この洋館。お宝の場所も大体しかわからないし、トラップもちょくちょく変えているみたいなの。地下金庫だって理子一人じゃ破れない、鉄壁の金庫なんだよ。もうガチでマゾゲー」

 

それは厄介だな。となると取れる手段は一つだな。

 

「だから、4人にはしばらく潜入してもらいます!」

 

「せ、潜入?」

 

「どうすんだよ」

 

アリアとキンジが尋ねると、理子と流無は立ち上がり、手を組んでポーズをきめながら、

 

「「みんなには、紅鳴館のメイドちゃん&執事くんになってもらいます!」」

 

いつ打ち合わせした?お前ら。

キンジとアリアはハトが豆鉄砲を受けたような顔をした後、アリアは自身の服装を見て、さらに顔を赤くした。

 

 

 

「あ~、ちょっといいか?」

 

「ん?なに?かーくん」

 

「どうしたの和麻?」

 

キンジ達が固まっているなか、俺はおずおずと手を上げた。

正直、言い出しにくいけどこれを言わないと・・・。

 

「潜入するってことは数週間、しかも理子が作った計画表によると来週からだよな?」

 

俺の問いに理子は頷く。

理子の作ってきた計画表には侵入と逃走なんかに必要なルートと作業、潜入時の行動なんかがびっしり書かれている。

この作戦立案術を理子はイ・ウーでジャンヌに習ったという。

 

「この前に、俺はある依頼(クエスト)教務科(マスターズ)から言い渡されているんだ。ちょうど来週から」

 

「「ええ!!」」

 

アドシアードの出場を蹴ったから、それを盾に迫られたんだよな。おのれ綴と蘭豹のやつ。

 

「だ、だったら、それが終わった後にでも」

 

「1週間はかかる依頼(クエスト)なんだ。しかも初日が計画の1日目とかぶっている。だから、サポートは流無に頼むしかないんだ」

 

俺の言葉に理子はしかたないという顔をする。

 

「・・・それで、なんなの?その依頼(クエスト)って」

 

流無は口をとがらせながらそう言う。

流無になんの相談もしなかったからすねているんだろう。だけどな・・・、正直、あんまり言いたくない依頼(クエスト)なんだよな。

 

「IS学園の警備だよ。一週間かけて行われる学年別トーナメントの」

 

俺の言葉に流無と理子はぽかんとし、

 

「・・・マジ?」

 

「マジだ」

 

と聞いて来たので、沈んだ気分で答える。

 

IS学園の学年別トーナメント。

生徒たちがIS競技で闘うもので、IS関連の企業のVIPや、国の代表までやってくるという大掛かりな学園行事。その警備のために武偵が雇われる。

東京武偵局からの武偵以外に武偵高(うち)からも毎年数人派遣されていて、強襲学部(アサルト)探偵学部(インケスタ)の優秀生徒一人が指名される。

指名された生徒は他に数人の生徒に声をかけ、即席のチームを作り警備に当たる。実力だけじゃなく、リーダーシップも求められるかなり重要な依頼(クエスト)だ。

今年は俺が指名されたんだが。

 

はっきり言って無茶苦茶嫌だ。

 

なにせ、IS学園の生徒は武偵をバカにする傾向にあるからだ。

ISは現行兵器最強という認識を持っているからか、拳銃ぶっ放して戦う武偵を無駄なことをしているなどと陰口をたたく。

しかも、俺達はトーナメントが行われる1週間、IS学園に滞在するので居心地が悪い。

警備といってもIS学園を襲撃する物好きなんていないので、特に何もすることが無い。まあ、レイズ曰く、今年のクラス対抗戦で襲撃を受けたらしいがそう言うことが何度も起こるわけがない。

まとめれば、1週間もの間、陰口を叩かれに行く様なものなんだ。

だから、指名された生徒は貧乏くじをひかされたといわれる。

 

そんなところの警備の依頼(クエスト)なんかより、メイド服姿の流無と一緒の潜入の方が断然いいのだが、さっきも言った通りアドシアードの出場を断った手前、拒否できなかったんだよな。

 

「というわけだ。流無しかサポートできそうにない。ハァ」

 

ため息をつきながらそう言う俺に、いつの間にか石化から回復していたキンジ達も含めた4人から同情の視線が突き刺さった。

 

 

 

 




IS学園には和麻とほか数人が向かうことになりました。
誰が向かうかはお楽しみに。

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