私、星伽白雪はアドシアードの途中で
数日前のキンちゃんと一緒に見に行った花火大会。
そこで私に送られてきた一通のメール。
『アドシアードの日に、一人で武偵高の
キンちゃんを死なせたくない。
そう思った私は、何の知らせもしないでやってきた。
私がいなくなってもきっと誰も泣かない。
先生たちは私をもてはやすけど、それは星伽の
星伽の巫女は、
誰かのために身も心も捧げ、投げ打つのが定め。
キンちゃんを守るためなら私はどうなってもいい。
そう思ってここに来たのに、
「白雪逃げろ!」
キンちゃんは来てしまった。
なんで、どうしてここがわかったの?という疑問を持ったまま、私は
しばらくしてキンちゃん達が来てくれたけど、三か所もロックされている鎖の錠前にアリアも苦戦しているみたい。
すると、海水が流れ込んできた。
「くそ!アリア、白雪は俺が何とかする。お前は先に行け!」
「でもっ!」
「お前、泳げないだろ!それに戦闘力の高いお前が行った方がカギを手に入れやすいし、確実になる。少し予定と違うけど、まだ何とかなる」
「・・・わかったわ。でも、ダメだと思ったら絶対、わたし、ううん、
「・・・悪いな白雪。仕方ないとはいえ、こんな目に合わせて。でも大丈夫だ。絶対に助ける」
キンちゃんのその言葉に、少し頬が厚くなる感じがしました。
「なぜだ!?」
大型コンピュータ、スーパーコンピュータが衝立のように、無数に立ち並ぶHPCサーバー室に、剣がぶつかる音に混じって、
「なぜ、ここにいる!
「そんなの決まっているでしょ?」
「
一気に踏む込み、俺は片手だけの風斬、流無は三叉槍で突く。
「「逮捕するためだ!」」
「くぅ!?」
それを古めかしくも、手入れが行き届いている壮麗な
まさか、正体不明の超偵誘拐魔が同い年くらいの女の子だったなんてな。
「和麻!無事か!?」
「流無も、無事!?」
そうこうしているうちに、キンジ達がやってきた。
アリアはさっき見当違いの方に行っていたから、心配したがちゃんと合流できたみたいだ。
というか、キンジはまたヒステリアモードになっている。白雪もびしょ濡れになっているから今度は白雪でなったのか?
「る、流無に和麻君!?なんで、ここに」
驚いた声をあげる白雪。俺はさっき
それを白雪は「わ、わ!?」と言いながら受け取り、キンジの指示で抜刀して、構える。
「じゃあ、種明かしと行きましょうか」
そう言うと流無は手に持っていた槍をくるくる回しながら楽しそうに話し始めた。
「
「そして、敵の戦力を調べ終えたあんたは次に、私たちを分断しにかかったわ。白雪にキンジの声をまねた電話をして、そこに私が鉢合わせるようにね」
流無に続いて、アリアも油断なく二丁拳銃を構えながら言う。
「私ね、あの日、知り合いにちょっと面白い話を聞いたのよ。キンジ君の部屋のあたりに妙な電波が流れているってね。それで、SSRで聞いていたあなたの噂から少し仮説を立てて、もしかしたらあなたが盗聴しているかもって思ったの」
知り合いとはレイズの事だ。四六時中引きこもって世界中の電波を調べて、いろいろな情報をハッキングしていると噂のやつだ。これくらい気づく。
ちなみに、最近の趣味はIS学園の様子をのぞき見することらしく、つい最近も、男性IS操縦者、織斑一夏とイギリス代表候補生の言い争いを監視カメラの映像から見つけて、「ふふふ、これでイギリスを脅せるな」とつぶやいていたらしい。流石に流無が止めたらしいが。
「その仮説がその日の騒動でほぼ確信に変わったわ。だから、あの時、私はわざとボディーガードを降りた。ついでに和麻もね。も~、私の考えをすぐにわかってくれるなんて、さっすが私のダーリン♡」
「空気を読め」
チョップして黙らせる。
「あいたっ!」といって頭を押さえる流無を呆れた目で見ながら、アリアも話し始める。
「あの後、流無に呼び出された私とキンジは話を聞いたわ。そして、流無と仲が悪いふりをした」
キンジも続くように説明する。
「俺達は流無の話をもとに、今回の作戦を立てた。わざと白雪をさらわせて、お前をおびき出す。そこを俺達で確保する」
「ほとんどキンジが考えたんだけどな」
キンジの言葉に補足する。まさか、こんな大胆な作戦を考えるとは。
「流無の機転のおかげだよ。あのまま、二人が一緒にいたら
おい、何人の彼女にウインクしてんだよ。斬るぞ。
「ふ、ふふ。あはははは!!なるほどな。私はまんまとはめられたというわけか」
笑いながら、そう言う
「策士策におぼれたわね、
「――私をその名前で呼ぶな。人につけられた名前は、好きではない」
「あんたが、私のママに着せた冤罪、107年分は――あんたの罪よ!絶対に償わせてやるわ!」
この作戦を話し合ったときに聞いた、アリアが武偵として闘う理由。
アリアの母親、神埼かなえさんは無実の罪を着せられ864年もの懲役の刑を下されている。
アリアはその罪を着せた者たちを逮捕して、母親の冤罪を晴らすために武偵として戦っているのだ。
「アリア。お前のその美しく愛らしく、しかしその勇敢な心は我が祖先によく似ている。そう、偉大なる我が祖先、初代ジャンヌ・ダルクに」
その言葉に、全員が驚いた。
ジャンヌ・ダルク。
15世紀、イギリスとフランスの百年戦争を、フランスの勝利に導いた聖女。
こいつがその子孫だと?
「嘘よ!ジャンヌ・ダルクは火刑で、十代で知んだ!子孫なんていないわ!」
「あれは影武者だ」
アリアの言葉を、フン、と鼻で笑い、一蹴する。
「我が一族は、策士の一族。聖女を装うも、その実は魔女。歴史の陰に正体を隠しながら、誇りと、名と、知略を伝えてきた。私は30代目――ジャンヌ・ダルクだ」
「我が始祖は危うく火刑にかけられるところだった。その後、この力を代々研究してきたのだ」
そういうと、ジャンヌの、いやこの部屋の気温が急速に下がり始めた。
「これは、氷!?」
流無が驚いたような声をあげる。氷ってまずいぞ、それは!みるみる、周りのコンピュータに床、天井が凍りついていく
「ふふふ、蒼神流無。お前は水を操る正体不明の
「くっ」
「そして、八神和麻。お前の風もこの室内ではほとんど生かされない」
ああ、そうだよ。こんな室内じゃ、操れる風が制限されて大技が出せない。
「
ジャンヌが勝利を確信したようにそう言う、なか白雪が一人前に出る。
「キンちゃん、アリア、流無、和麻君。下がって。彼女は、ジャンヌは私が倒すよ」
「何を言うんだ、白雪。お前を一人で戦わせるなんてできない」
白雪にキンジがそう言う。
そして、それは俺達も同じ意見だった。たとえ、超能力が封じられてもまだ戦える。
「ありがとう、キンちゃん。でも、大丈夫」
微笑みながらそう言うと、白雪はジャンヌに凛とした顔で向き合う。
「ジャンヌ。もう・・・やめよう。私は誰も傷つけたくないの。それが例えあなたであっても」
「笑わせるな。原石に過ぎないお前がイ・ウーで研磨された私を傷つけることは出来ん」
イ・ウー。また出てきた。
推測するに、何かの秘密結社か?
「私はG17の
G17!?かなり高いレベルの
「ブラフだ。G17など、この世に数人しかいない。仮に事実だったとしても、お前は星伽を裏切れない。それがどういうことを意味するか、分かっているのならな」
「ジャンヌ――また、策士策におぼれたね」
白雪の声がどんどん強くなっていく。
「それは今までの私。でも、今の私は、私に星伽のどんな
カツカツと、白雪はジャンヌに近づき、その手に持つ刀を構える。
「キンちゃん、ここからが・・・わたしを見ないで」
「・・・白雪?」
「私、これから・・・星伽に禁じられている技を使う。でも、それを見たら、きっとキンちゃんは私の事、怖くなる。あり得ないっ、て思う。キライになっちゃう」
白雪は震える声でそう言う。
それは
普通じゃない力を持っていることで、周りから拒絶されるかもしれないという恐怖。
「安心しろ。あり得ないことは一つしかない」
そんな白雪に、キンジはやさしく語りかける。
「俺が、お前のことをキライになる?――そんなことはありえない」
キンジの言葉に押されるように、白雪はその紙に留めていた白いリボンを外した。
そして、刀の柄頭ギリギリ先端を右手だけで握り、刀の腹を見せるように横倒しにして、頭上に構えるという、普段使う八相の構えとは違う、奇妙な構えを取る。
「ジャンヌ。もう、あなたを逃がすことは出来なくなった。
星伽の巫女がその身に秘める、禁制鬼道を見るからだよ。あなたと同じように私たちは、この力を代々受け継いできた。
およそ2000年もの、永い時を・・・」
白雪がその手に力を込めたかと思うと、刀の先端に緋色の光が灯った。
そして、それはみるみる刀全体に広がり、室内を明るく照らし上げた。
それは焔――!
俺と流無も初めて見る。
あれが、白雪の超能力。
「『白雪』っていうのは、真の名前を隠す伏せ名。私の諱、本当の名前は――緋色の巫女、すなわち、『緋巫女』!」
言い終えると、白雪は床を蹴って、ジャンヌに迫った。
はい。まさかの喧嘩は演技で、このための布石でした!
読者のみなさんを驚かせられたなら、大満足です。
一応、アリアは推理物ですから、こういうのもいいかなと思いまして。
次回は遂に、二章の終わりに・・・なるといいな。それでは。
番外編も頑張りますよ!