緋弾のアリア×IS 緋と蒼の協奏曲   作:竜羽

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花火

戦徒(アミカ)というものが武偵高には存在する。

先輩の生徒が後輩の生徒とコンビを組み、1年間指導する二人一組(ツーマンセル)特訓制度のことで、男子同士の場合『戦兄弟(アミコ)』、女子同士の場合『戦姉妹(アミカ)』と呼ばれる。別に異性同士が組むことも可能だ。

 

なぜいきなりこんな話をしたのかというと、

 

「師匠、覚悟!はぁ!」

 

「ほい」

 

「くっ、まだだ!」

 

「はいはい。まだまだ直線的すぎるぞ」

 

絶賛、その戦妹(アミカ)の指導中だからだ。

 

俺の戦妹(アミカ)

名前は柳生神楽

長い白髪をツインテールにまとめ、紅い瞳に、右目を刀の鍔を模した眼帯で隠している。

また、小柄な体格ながら、アリアと違って出るところは出ているという、どちらかというと理子みたいな体つきをした一年生だ。

普段は冷静にふるまっているが、根はやさしい、思いやりのあるやつ。

そして、苗字から分かると思うが、神楽はあの剣豪、柳生十兵衛の子孫だ。

 

武器は番傘、唐傘お化けで有名なあの傘に、刀を仕込み、傘の部分も特殊繊維で防弾防刃加工を施した特注品を使っている。

刺突武器にもなるし、盾にもなる。

かなり万能な一品だ。

加えて、使い手の神楽もかなりの才能の持ち主で、武偵ランクは先日の試験で見事Aランクになった。

だが、

 

「まだまだ甘いな」

 

神楽の繰り出してきた全力の突きを垂直に跳ぶ音で躱し、傘の先端の上に乗る。

 

「な!?」

 

神楽が驚いているすきにもう一度跳び、目の前に移動する。

 

「くっ!」

 

とっさに傘から刀を引き抜くが、

 

「な!?」

 

真剣白刃取り(エッジ・キャッチ)の片手版で受け止める。

そのまま、神楽の目の前に拳を突き出す。

 

「参りました・・・」

 

 

 

「速度は上がっているが、それだけだ。もう少し、攻撃パターンに工夫を入れてみろ。お前の武器は虚実を混ぜた攻撃ができる優秀な武器だからな」

 

「わかった。いつも済まない」

 

「というか、お前の各上を相手にすると攻撃が力押しになる癖を何とか直せ。そんなんじゃ、いつまでたっても本当に強くなれないぞ」

 

「うっ、それはそうなのだが、強い人と向かい合うとどうも・・・」

 

こいつの戦い方は、本来は敵の動きに合わせて機をうかがい、隙を突き、一気に斬り伏せるというものなのだが、なんでも各上とは出会ったら全力で突っ込め、そうすりゃ何とかなると昔親に言われてそうしてきたらしい。

いや、どんな根性論だよと突っ込んだのは久しい。

で、各上でも自分の戦い方を忘れるなと、少しずつ直している。

 

ちなみに、こいつと戦妹(アミカ)契約したのは、こいつと訓練した際に、こいつの全力を叩き潰したからだ。受け流して吹き飛ばしただけだけど。

で、俺の戦い方にあこがれるようになったこいつは俺と戦妹(アミカ)契約したというわけだ。

 

「そういえば、陽菜から聞いたのだが師匠は住み込みで護衛の任務をしているのだったな」

 

「ああ」

 

陽菜とはキンジの戦妹(アミカ)の風魔陽菜のことだ。なんでも忍者の末裔で中学の時からキンジのことを尊敬している。そして、気が合うのか神楽とは無二の親友だ。

 

「基本的にキンジとアリア、流無に俺の四人でのローテーションで白雪のそばにいて、たまにレキが見張っているって感じだ」

 

「ふむ。この話を聞いた陽菜とあかりと志乃がかなり荒れていたので、真相が気になったのだが、本当だったか」

 

ちなみに、あかりこと、間宮あかりはアリアの、志乃こと、佐々木志乃は白雪の戦妹(アミカ)だ。

 

「今のところ犯人の動きらしきものは見えないが、用心するに越したことはないだろうな」

 

「うむ。何かあればオレも駆けつけるぞ」

 

ちなみに神楽の一人称はオレだ。

 

「ばーか。後輩は心配すんな」

 

俺は神楽の頭をなでる。

 

「こんな事件さっさと終わらせるさ。だからお前はお前で友達のために強くなれ」

 

 

 

流無と共に部屋に戻ると、信じられない光景があった。

 

拳銃を抜いたアリア。

 

床に服を半分脱いだ半裸の白雪。

 

「頭冷やしてきなさいっ!浮き輪は上げない!」

 

アリアの言葉と共に放たれた銃弾が何かを斬った音が響いた瞬間、キンジの悲鳴が水しぶきの音と共に聞こえた。

 

 

 

キンジを救出した後、何があったのか尋ねると、

 

「こいつらがふしだらな行為をしていたのよ!」

 

「キンちゃんの裸を見ちゃったから対等になっただけだもん!」

 

「ごめんなさい。よくわからないわ」

 

流石の流無もよくわからなかったらしく、頭を抱える。

 

「とりあえず、何があったのか最初から話して。まずは白雪ちゃんから」

 

「そんなことしなくても、こいつらが勝手に――」

 

アリアがまた犬歯をむき出しにして騒ごうとするが、

 

「黙りなさい」

 

流無の一言で黙った。

 

「私は白雪ちゃんの話を聞いているの。あなたは今は黙りなさい」

 

流無は普段は人のいいキャラで通っているが、いざという時は芯の通った何の文句も言わせないような威圧感を放つ。

Sランクというのは伊達ではないのだ。

それには流石のアリアも黙る。

 

「で、話してちょうだい」

 

「は、はい」

 

白雪の話しとアリアの話し、そして救助したキンジの話を組み合わせて推測すると、白雪の携帯にキンジから電話が来て「すぐに来てくれ」と言われてバスルームに入り、キンジの裸を見てしまったため、自分も対等になろうと裸になろうとしたところ、それをキンジがやめさせようとし、組み合っていたところにアリアがやってきて、キンジとアリアがそういう関係だと勘違いしたアリアがキンジに銃を乱射したということらしい。

 

「・・・」

 

「・・・」

 

重い沈黙が流れる。まあ、正直言って間抜けとしか言いようがないな。

 

「アリアちゃん、よく状況を確かめもせずにそういうことするなんて。前々から思っていたけど、あなた本当にSランクの武偵?」

 

「なっ!それどういう意味!?」

 

「そのままの意味よ。何を焦っているのか知らないけど、冷静な判断もできず、パートナーを撃つなんて。しかも、今のキンジ君は防弾制服も来ていなかったのよ」

 

「ちゃんと足もとを狙ったわよ!」

 

「それで?海に裸で落ちちゃったら、キンジ君風邪ひいちゃうかもしれないでしょ?パートナーだっていうならもっと体のことをいたわりなさいよ」

 

「うるさい!キンジと私が何しようと関係ないじゃない!」

 

「関係なくないわ。彼は和麻の親友よ。恋人の親友を心配して何が悪いの?」

 

「はっ、恋人?そんなくだらないものに浮かれている癖に、しゃしゃり出ないでよね」

 

「くだらないですって?」

 

おい。話がだんだんこじれてきていないか?

 

「ええ、そうよ。くだらないわ!恋愛なんてものに、恋人なんかにうつつを抜かしているあんたの方がよっぽどSランク武偵なのか疑問に思っちゃうわね」

 

「・・・もう許さないわよ。私のこの想いをバカにするのならあなたでも――」

 

「なに?やろうっていうの?上等よ――」

 

流無はD・E・ルナカスタムを、アリアは二丁のガバメントを取り出して、

 

「撃ち抜く!」

 

「風穴開けるわ!」

 

向けあう前に、

 

「そこまでだ」

 

二人の首に刀を添える。

 

「いい加減にしろ」

 

沈黙が再び部屋を支配する。

 

「――やってられないわ」

 

先に引いたのは流無だった。

 

「――正直、おもしろそうだったから参加したけど、もういいわ。私は抜ける。後はせいぜい頑張りなさい」

 

そう言うと、流無は部屋を出て行った。

流無が完全に出ていたのを見た俺も刀を収めて後を追った。

その間、アリアと白雪は何も言わなかった。

 

 

 

数日後、キンジは風邪をひいたらしい。

メールで確認してみたところ、アリアが買ってきてくれた大和化薬『特濃葛根湯』という薬で何とか治ったとか。

キンジはあまり薬が効かない体質で、しびれ薬や睡眠薬も聞かないのだが、そのせいで風邪薬までも効かない。だから、この薬が必要なのだ。

 

白雪の護衛はキンジとアリアが引き続き行っているのだが、俺と流無はあの後から不干渉ということにしている。

しかも、流無とアリアがあれ以来、とてつもなく険悪なのだ。

教室じゃあ、目を合わせないし、強襲科(アサルト)でも無視を決め込んでいる。

 

現に今だって、

 

「たーまやー!」

 

二人で東京ウォルトランドというところで花火大会を見に来ていた。

 

昼間の内から入園して、水色の水蓮の華が刺しゅうされている浴衣を着た流無と見て回り、日が暮れてから、花火を見ている。

 

「いやー、綺麗ね~」

 

「夏にはまだ早いけどな」

 

浴衣だからアトラクションなんかには乗らなかったけど、出ていた屋台を見て回ったから結構疲れた。

まさか、園内中に屋台があるなんて。

ちなみにその屋台での屋台主の様子をダイジェストでどうぞ。

 

――射的屋――

 

「ちょ、なんでこんなに簡単に当たるの!?」

 

そして、倒される一等の札。

 

「ええ!?なんで!?なんで、鉄で重くしてあったのに、あ、いや、どうぞ。これが景品です」

 

――金魚すくい――

 

「水面につけていないのに、金魚がお椀に入っていく!?どうなっているの!」

 

取りすぎたので返却。二匹だけもらった。

 

――型抜き――

 

「なんだ、この綺麗に抜き取られた型は!?この業界で三十年やってきたがこんなのは見たことが無い!」

 

とまあ、Sランク武偵二人でいろいろやりまくりました。

 

たこ焼きを食べながら、空に輝く花火を見る。

 

闇に咲く美しい花。

 

この光景を流無と一緒に見られるうれしさをかみしめながら、そっと流無の手を握り、流無も握り返してくれた。

 

 

 

そして、アドシアード当日を迎えた。

 

 

 




喧嘩のところうまくかけたかな。不安です。そろそろ二章も終盤。
今回登場した柳生神楽は「閃乱カグラ」の柳生をイメージしてください。ラウラと会った時の反応が楽しみだ。

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