【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン) 作:アニッキーブラッザー
学園祭とは、一つの学園生活の分岐点でもある。
そういう学校の行事事を通じて、普段見られなかった学友の一面や魅力、また新たな出会いもある。
学園祭を通じて異性と親しくなることや、新たな恋が芽生えることもリア充には珍しくない。
「あの・・・あの・・・お、お話が・・・」
その学園祭をキッカケに、一人の女生徒がいじらしいまでの思いを、ある一人の男に告げようとしていた。
学園祭で世界樹の下で告白すれば結ばれるという伝説がこの学園にはある。だが、学園祭が終了した今はそのおこぼれはもらえない。
だが、それでもげんを担ぐという意味でも、彼女はここを選んだ。
「その・・・私・・・私・・・ッ~~」
顔を真っ赤にさせ、モジモジとし、自身のスカートの裾を恥ずかしさでギュッと握りしめて、彼女は俯いてしまった。
麻帆良学園高等部女子の生徒。
マンモス学園である麻帆良において、飛び抜けて美人というわけでもないが、小柄なポニーテールが印象的で、普段は天真爛漫に明るく学園生活を過ごす彼女はそれなりに人気があった。
部活は新体操部に所属し、県でも指折りの実力者でもある中等部の佐々木まき絵などの後輩女子から尊敬され、また男子にはそのレオタード姿を目的に部活をよく覗かれるなどの悩みもある。
だが、今の彼女はそれよりも大きな悩みがあった。それが恋だ。
恋愛事には普段はあまり積極的ではなかったのだが、今の彼女は気になっている男性が居て、その気持ちが抑えきれずに、今日彼女は勇気を出す。
目の前の女生徒、そしてこのシチュエーション。どんな男でも気づかないわけがない。男はジッと、彼女の言葉を待った。
「その私・・・学園祭で会って以来・・・その・・・気になって・・・気づ・・・気づいたら・・・」
だが、彼女はなかなか思っている事を口に出さない。それどころか見る見るうちに目尻に涙が溜まっている。
電話やメールで告白するのも珍しくない今の世の中では、逆に珍しい。二人を見守るギャラリーですら、思わず彼女を応援したくなる。
すると・・・
「私は逃げん。気の済むまでここにいよう」
「ッ!?」
「だから、負けるな」
男は女生徒の頭を優しく撫でた。大きく、強く、そして温かい。
「私・・・・・・・デュナミス先生のことが好きです! わ、私と付き合ってください!」
その瞬間、女生徒は煙を頭から一気に吹き出し、その勢いに任せて思いを全て吐き出した。
「私、学園祭でロボットに襲われそうになったとき、先生に助けてもらって・・・それからずっと気になっていて・・・先生は大人だから同級生の男子とは全然振る舞いや心使いが違ってクールで、でも時々子供みたいにハシャぐところが人間くさくて可愛くて・・・うううーーー、とにかく、あれからずっと好きでした!」
そこに居たのは、高等部の女生徒に告られている、ダークスーツを着て出席簿を脇に挟んでいるデュナミスだった。
そしてデュナミスは、優しい目をして、軽く女生徒の肩に手を置いた。
「見事だ。よくぞ己の不安に負けずに想いを口にした。そなたの勇気は尊敬に値し、そしてその想いを私は誇らしく思うぞ」
デュナミスは女生徒を称えた。フラれるかもしれない。そうしたらどうしよう。気まずい。これから先、声も掛けられなくなるかも知れない。歳だって離れている。
告白には様々な不安が付きまとう。自分によっぽどの自信が無ければ、不安の方が大きい。
だが、彼女は負けずに想いを告げた。デュナミスはその心意気だけで、彼女を称えたのだ。
しかし、同時にデュナミスは切ない表情を彼女に見せた。
「だが、すまぬ。私はそなたの気持ちには答えられぬ」
「ッ!?」
真剣だからこそ真剣に返す。
たとえ勇気を出したとはいえ、それが報われるとは限らない。
デュナミスの正面からの返答に、女生徒の瞳には涙が潤んでいた。
「あの・・・理由・・・、聞いてもいいですよね」
「・・・・・・・・・」
「そ、それは・・・やっぱり生徒と先生だから・・・私が、まだ先生から見たら子供だから・・・それなら、私すぐに大人になりますから・・・」
「そうではない、その程度の事で我は貴公の勇気を汚したりはしない。ただ、応えられぬ理由は別にある」
「先生は・・・ずっと辛い恋をしてきたって聞いて・・・私は、先生を辛い思いなんてさせないです・・・だから・・・その・・・私じゃダメなんですか?」
超えられない現実があるからか? 断られた理由を聞く権利はある。
涙を溜めながらも精一杯気丈に振る舞おうとする女生徒に、デュナミスは包み隠さずに答える。
「確かに私は色々とあった。心が荒れ、狂乱したこともあった。だが・・・あの学園祭で彼女と再会し、それだけで私の心は救われた。報われた」
「デュナミス・・・先生・・・」
顔を上げ、遠くの空を見つめるデュナミス。彼の心の中に映るのは、ある女? だった。
「私は奴を見届けねばならぬ。奴に惚れた者として、奴の行く末を見届けること。そして奴が幸せになること。その隣に例え私が居なくともな。それが私の愛し方であり・・・それが私の役目だ」
・・・とまあ、どこの安っぽいラブコメだよという光景を、この二人は呆気に取られて見ていた。
誰にも気づかれずに、茂みの中を匍匐前進で移動している二人。
「のう、タカミチ・・・・あのうすら寒い男は誰じゃ?」
震えながら指さしするテオドラ。その反応は仕方ないという表情で、タカミチは答える。
「デュナミスです」
「いや・・・違うじゃろ」
「いえ、あれは紛れもなくデュナミスです」
テオドラはソッコーで否定した。「んなはずねーだろ」と。
だが、それでも紛れもない事実なのだと、タカミチは告げる。
「皇女。アレが今、学園で結婚にしたい、彼氏にしたい教員ナンバーワンのデュナミスです」
「のう・・・妾は二十年ほど前にあやつに誘拐されそうになって、死にそうになったのじゃが・・・」
「信じられないでしょうが、そのデュナミスと同一人物です」
「マジかえ?」
マジかよ・・・っていうか、あの男には一体何があったのだ?
「いや、違うじゃろ! 妾は認めんぞ。妾の知っておるデュナミスは、嫉妬に狂った露出狂変態マスクマンじゃぞ!? あれはデュナミスではない! ああ、デュナミスではないぞ!? あんなのデュナミスではないわ!!」
かつて死ぬほど憎らしい敵だった。悪口がたくさん出るのは、逆に言えばその人物を良く理解しているからこそである。
ジタバタとだだっ子のように否定しまくるテオドラ。タカミチはその皇女らしからぬ彼女の振る舞いに苦笑する一方で、今の彼女の気持ちが心の底からよく理解できた。
しかし、真実をねじ曲げるわけにもいかない。
「皇女・・・ハッキリ言いましょう。これぐらいで取り乱しているようでは、ここから先に知る真実に精神が保ちませんよ?」
「な・・・なぬ? なな・・・なにかえ?」
テオドラ、タカミチの言葉にビクッとなる。流石にこれ以上はないのではないか? そう思いたい一方で、これ以上に何かあるのかと、ガタブルした。
タカミチがテオドラに教えなければならない真実。
かつて命を懸け、世界を懸け、数多に燃える生命たちの全身全霊を懸けた歴史に刻まれる戦い。
その宿敵でもあった、「完全なる世界」
彼らの今は・・・・
「ぬぬぬ、フェイトさんめ・・・逃げるとは卑怯ネ。だが、それでもこのメンバーなら世界を狙えるネ!」
何やら物騒な事を腕組みしながら呟く少女。
彼女の前には、6人の可愛らしい少女たち。
全員がミニスカートにノースリーブという大胆な衣装で、その手にはマイクが握られている。
その壮観さに彼女はニヤリと笑みを浮かべて指を鳴らした。
「さあ、ワン、ツー、スリー、フォー!」
その瞬間、軽快な音楽が鳴り出して、少女たちは踊り出した。
「栞さん、そこでテヘペロヨ! 焔さん、そこはもっとお尻フリフリヨ! 暦さん、パンチラは控えるネ、こういうのは見えそうで見えないのが一番良い。ハイ、手首を軽く曲げてニャンコのポーズネ! 環さん、ドラゴンの尻尾でパンツ履けないのは分かるガ、やはり何か履かないととんでもないものが見えてしまうヨ! 調さん、そこでクルリと一回転ヨ! さあ、とどめはセクストゥムさん、そこで一瞬だけ微笑むヨ、クールキャラの一瞬だけ見せる微笑みに日本のオタク共はメロメロヨ!」
手拍子を叩きながら、少し力の入った声で真剣に指示していくお団子頭の女生徒。
彼女の名は超鈴音。
「ところで、超。何で私たちだけが昼休みも特訓なんだ!?」
「口答えは慎むね、焔さん! キヤルさんたちは既に完璧、ニアさんとヨーコさんはそつなくこなす、だがあなたたちは連携がまったくなっていないネ! こうして特訓しないと本番ではみんなに合わせられないヨ!」
「ぐっ・・・本番とは何だ!? こんなことして、私たちに何の得が・・・」
「だから、研修をもうすぐ終えるネギボウズのお別れ会ヨ! キヨウさんたちとも相談して決めたネ」
「だからって、ここまで本格的にしなくても・・・」
「ふふふ、しかしここで素晴らしいものを披露すれば、世の中の男性・・・もといフェイトさんもメロメロになると思うガ!」
「ッ・・・・それを早く言わないか!! 見ていろ、超鈴音。フェイト様に認めてもらうのは、私だ!」
「うむうむ、ヨロシ」
「超鈴音。話があります」
「うおっ、ビクッリした。途中でやめていいなどと指示してないヨ。セクストゥムさん」
「いえ・・・そろそろ私もマスターとお昼ご飯を食べにいきます」
「ふふ・・・セクストゥムさん。確かに、それも大事だが、今はもっと大事なことがある。本番当日、あなたが素晴らしいものを披露したとき・・・マスターはあなたにデレデレヨ」
「デレデレ・・・ですか?」
「うむ。例えば・・・ああ、なんて素敵なんだ、セクストゥム。俺、気づいたんだ。俺にはお前しかいないんだ。絶対一生離さないからな。お前は一生俺のものだ。俺のためにこれからも生きろ! ・・・みたいな感じネ!」
「私が・・・マスターの物・・・マスターの所有物・・・・一生道具として使っていただける!!!!」
「ぬおっ、セクストゥムさんが凄まじいやる気を! 無言と無表情の下に、とんでもない気迫を感じるネ!」
その瞬間、少女たちはアイドルマスターになったかのような動きを見せだした。
一つ一つの歌詞から伝わる想い、指先にまで行き渡った神経、体から発せられる汗に混じった魂。
「うむ、流石に全員基本スペックはずば抜けているネ! これなら全員集合で合わせたら、どんな化学反応が起きるか! プロデューサーとして鼻が高いネ!」
やる気に満ちた少女たちの潜在能力に超は鳥肌が出た。
「もうすぐ研修終わるネギボウズのお別れ会の出し物で、この間のキヤルさんの進路相談で出たアイドルユニット・・・ふざけて作ったがまさかここまでのものが出来上がるとは・・・これは楽しみネ!」
原石を磨くことに快感を得た超は、更なる質を上げようと的確な指示を出し、それに焔たちも答えていく。
「これなら掴めるネ・・・あとここにフェイトさん・・・いや、綾波フェイが居れば・・・私たちは掴めるはずヨ!」
彼女たちと一緒なら、掴めるだろう。
「目指せ、世界征服!」
己の野望を叶えるには、彼女たちの力が必要なのだと、超は感じたのだった。
・・・とまあ、そんな光景をテオドラは見ていた。
「・・・あそこで・・・お尻フリフリして踊っておる、どこかで見たツラと亜人の娘たちは?」
これまで絶句していたが、ようやく言葉を吐き出せた。
学園の昼休み。学園の噴水広場。外で弁当などを食べる生徒も多いため、ズラーッとギャラリーで囲まれている。
男子生徒たちは顔を真っ赤にしながらもエールを送って写メを取り、女生徒たちからも「かわいい!」と賛辞の言葉が飛び交っている。
そんな中で呆然としていたのは、テオドラとタカミチだけだった。
「のう、タカミチ・・・奴らは・・・なんじゃ?」
あえてもう一度聞こう。奴らは何者だと。答えは何となく分かるが、認めたくないテオドラ。
だが、それでもタカミチは悲しい表情で真実を告げる。
「女性型アーウェルンクスと、完全なる世界のメンバーです・・・」
テオドラ・・・口を開けたまま、また固まった。
「・・・・・・・・・・めんこいのう」
ようやく出せた一言に、タカミチも深々と同意。
「ですねえ」
「・・・・・・・平和じゃのう」
「まったくです」
「人気者じゃのう」
「それはもう」
「がんばっておるのう」
「はい、そのようで」
「これは幻じゃろう?」
「いいえ、それは違います」