【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第72話 デュナミスのいうことを聞きなさい 

「はい! では皆さん落ち着いてください! そろそろ話をすすめますよー!」

 

いつまでも騒ぎが収まらないので、ネギが手を叩いて皆を制す。

それに反応して皆も「おう」と良いながら椅子に座った姿勢を前へと正し、徐々に静かになっていく。

ただ、転校生の焔たちは自分の席がまだ決まっていないため、まだ黒板の前に立ったままだ。

 

「あっ、そうだ。それではさっそく焔さんたちの席を決めないといけませんね。では、皆さんの席ですけど・・・」

 

彼女たちの席を決めようと、ネギが教室をザッと見渡した。だが次の瞬間、

 

「「「「「ッ!!!!」」」」」

 

次の瞬間、超を除く少女たちは目を「キラーン」と光らせて瞬動的な動きで走り出す。

 

「わ、私はフェイト様の隣があいているので!」

「ふざけないでよ、焔! 私の方が絶対早かった!」

「暦! あなた今、アーティファクトを使いましたね!」

「ズルはいかんです」

「いいえ、ここは早い者勝ちではなく強いもの勝ちでということで!」

 

転校してきたばかりのフェイトの席を巡って乙女たちはつかみ合いになる。

 

「おお、なんだなんだ!」

「こいつら全員フェイトの席の隣狙いかよ!?」

「なにい! うらやまし過ぎってか、モテ過ぎだろ!」

「よっしゃー! 誰がフェイトの隣の席を手に入れるか賭けるか!」

「私、猫耳の暦に賭ける!」

「じゃあ、私は焔に!」

 

最初は緊張気味で礼儀正しく挨拶をしていた転校生の焔たちだが、急に仲間同士で髪を引っ張りあったりフェイトの隣にある机と椅子を確保しだしたりのキャットファイトが始まった。

 

「あああ、みなさん喧嘩は止めてくださいよー! 転校初日にこれはあんまりです!」

 

喧嘩っぱやいダイグレン学園に転校わずか数分で喧嘩を始める焔たち。

ある意味ではダイグレン学園の素質は十分で、キタンやキヨウたちは面白そうにはやし立てる。

ネギもここ数日は密度の濃い期間だったために、こういう光景も少し感慨深くなるが、だからといって見過ごすことはできず、しかし止められずにあたふたしているのだった。

すると・・・

 

 

「ぬぅうううううん!」

 

「「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」」

 

 

教室の黒板が粉々に砕かれた。誰もが一瞬時を止めると、砕いたのはデュナミスだった。

そうだ、この男を忘れていた。

恋愛事やリア充にとことん憎悪を膨らませるデュナミスの前で、少女たちの一人の男を争奪戦という羨まし過ぎる展開が繰り広げられたのだ。

こちらもまた、新任早々にとんでもないことを・・・

 

「まったく、はしたないものだ。少しは落ち着いたらどうだ。ネギ教員に迷惑であろう」

 

肩を震わせてビクッとなった焔たちが慌てて気をつけをした。

だが、デュナミスは意外なほど冷静に淡々とした口調で、思いもよらぬ指示をしだした。

 

 

「そこまでテルティ・・・・・・いや、フェイトのそばがいいのなら、フェイトの位置を動かせばよい」

 

「「「「「?」」」」」

 

「まず、フェイトの周りを孤立させる。その左右の席、前後の席に貴様らが座ればいいではないか!」

 

 

それはまさにコロンブスの卵。目から鱗。少女たちは感動のあまり、言葉も無かった。

おお~っと教室から感嘆の息が漏れる。

ちなみにこれまでフェイトはシモンの隣だったが、本人もその隣のニアも今日は欠席しているため、本人には了承を得ないでフェイトを彼らの席から離すことにした。

こうして彼女たちのポジションは、フェイトの右が焔、左が調、前が環、後が暦という席順になった。

この決定に・・・

 

「ああ~! 黒板は前だから一日中、前に座ってるフェイト様を見ていてもまったく不自然じゃない! それにプリントを配られたときとか、・・・フェイト様の指に触れちゃうかも!」

 

フェイトの後に座る暦・・・

 

「フェイト様の視線をいつだって受けられるです! 視線がゾクゾクと・・・そして振り返ればフェイト様がいるです! 前から回ってきたプリントを・・・フェイト様に手渡すのは私です」

 

フェイトの前に座る環・・・

 

「よしっ、勝ち組だ・・・あっ、フェイト様! まだ教科書がありませんので、もしよろしければ見せていただけませんか!」

「私も・・・せ、席を・・・くっつけて・・・見せていただくしか・・・」

 

左右に座る、焔、調。

彼女たちに異議など無く、デュナミスは僅か数秒で彼女たちの争いを解決したのだった。

この手腕にネギも目を見張る。

 

(すごい・・・普通はこういう特別扱いはよくないかもしれないけど、彼女たちは転校生だし、まだ緊張しているだろうから顔見知りのフェイトの近くに座らせるのは悪い事じゃない! すごい、デュナミスさん! いや、デュナミス先生! 僕もこういう柔軟な考え方は、見習わないと)

 

・・・しかし、ネギたちは失念していた。

フェイトガールズにはもう一人・・・

 

「あのー! 前後左右だと四つしかないんですけど!」

「ぬ・・・」

「デュナミス様・・・いえ、デュナミス先生。私はどこへ座ればよろしいのでしょうか?」

 

私! 私は? と身を乗り出して訪ねてくる栞。

そう、栞。彼女を忘れていた。

あっ、と気づくネギ。

ふむ、と顎に手を当てるデュナミス。

 

「ふむ、しかし誰かは必ずハズレなければならない・・・」

「そ、そんな! 何で私だけ!? 別に斜めでもいいですよ! フェイト様の横顔を斜め後ろから見るというのもいいです!」

「うーむ、しかしもう空いている席がだな・・・」

 

デュナミスは至極冷静に返した。そう、誰かはフェイトの側には座れないということになるのだ。

だが、当然これには納得できない栞。

この問題をどう解決するか・・・

 

「・・・他にこの教室で空いている席はシモンとニアの近くだが、これはセクストゥムが既に予約を入れている・・・ふふ・・・セクス・・・トゥムが・・・・せくすとぅむしもん・・・ほったセクストゥム・・・ぬああああああああ!?」

 

セクストゥムの名前を出した瞬間、デュナミスは豹変して苦しみだした。

 

「やばい! デュナミスが発作を起こした!」

「デュナミス様、しっかり!」

「あのーデュナミス先生、私はどこに座ればー!」

 

ある意味、シモンが謹慎中で良かった。セクストゥムもそれに合わせての登校で良かった。

しかし、リア充には耐性が出来たと思ったら、シモンとセクストゥムの名前を出しただけでこれ。

二人が登校したときは大丈夫なのかと、ネギとフェイトが少し不安に思う中、過呼吸状態のデュナミスが少しずつ落ち着きだした。

 

「はあ。はあ、はあ。はあ、はあ、・・・ふっ、まあいい。セクストゥムはシモンにくれてやる。私には心の女神が既にいるからな」

 

何とか堪えきったデュナミス。唇から血がにじみ出るほど悔しそうだった。

 

「さて、先ほどの続きだが・・・栞の座る席だが・・・ふむ・・・」

 

デュナミスがザッと教室を見渡す。

だが、今ではカミナたちは登校するようになったが、それでも本来何十名もいるクラスにしては欠席者がまだ多い。

だからどこが空いていてどこが欠席しているだけの人の席かを一々調べるのも面倒になってきた。

だからデュナミスは適当に・・・

 

「よし、こうなったらそこに居る二人の間に入れてもらえ」

 

デュナミスは半ばどうでもよさそうに、栞のために席を一つ設けた。

そこは・・・

 

「おう、困ったことがあったら何でも言え! 何でも教えてやるぞ!」

「おう! 聞け! 聞け! 聞け!」

 

もはや涙も出ない。

栞だけはジョーガンとバリンボーの間に挟まれる席になったのだった。

 

(・・・私の青春時代が・・・、今・・・終わりました)

 

既に学校生活に絶望を感じた栞だった。

 

「いや・・・それで私の席はどこヨ」

「ぬ? それじゃあ、そこの青髪の男の隣でいいだろう」

「なに!? カミナさんの!? どう考えてもやかましくて勉強できる気がしないガ!?」

 

なんやかんやで超鈴音の席はカミナの隣に決定した。

だが、これで問題は解決したはずだ。デュナミスも最初の仕事には納得したようで、振り返り笑みを浮かべる。

 

「さあ、ネギ教員よ。これで丸く収まった。ホームルームを続けてくれたまえ」

「あっ、は、はい! ありがとうございます、デュナミス先生! では、皆さん! 一時間目は英語なので、このまま授業を始めたいと思います!」 

 

 

 

 

・・・・・・・・・放課後・・・・

 

 

 

 

『・・・それで、一時間目の授業はデュナミスとフェイトの友達たちと、クラスみんなの自己紹介から何やら盛り上がり、それ以降の授業は全て歓迎会と称してゲーム大会、麻雀大会に発展してた・・・そういうこと?』

 

「ああ。最初はロシウが止めようとしていたけど、キヨウに弱みを握られていたらしくて大人しくなってしまった」

 

『ロシウの弱み?』

 

「ああ。どうやら彼は学園最中の自由時間に、キノンとデートしているところを見られていたらしくてね、今も冷やかされている」

 

 

放課後に帰路へと付くダイグレン学園の生徒たち。彼らはクラス全員集合して、今同じ方向へと向かっていた。

その先頭で携帯電話を片手に話をしているフェイト。その電話の相手は、謹慎中のシモンだった。

フェイトは携帯電話を耳から話し、一緒に歩いているクラスメートたちの会話をシモンに聞かせる。

 

 

「だ、だから僕とキノンはそんな怪しい関係ではありません」

 

「うっそだー。私ちゃんと聞いてたもんねー。躓いて転びそうになったキノンを助けたロシウ。ロシウはキノンをその両腕でお姫様抱っこしたの。その時、キノンは言ったわ。あの・・・重くありませんか? ロシウはこう言うの。ああ、重いよ。すごく重い。キノンは顔を赤くして・・・あの、降りますよ。でもロシウは首を横に振る。いいんだ・・・今は感じていたいんだ・・・この重さを・・・」

 

「かー、まじかよおねーちゃん! 見たかったなー。にしてもやるなー、ロシウ、キノン!」

 

「安心するネ、キヤルさん。学園祭期間中に私が校舎中に張り巡らせた超高性能監視カメラの中にその映像が恐らくは・・・」

 

「超さん、それはプライバシーの侵害ですよ! ダメですよ!」

 

「先公~、かてーなーオメーは。こういうのはみんなで盛り上げて祝福してやってなんぼだろうが」

 

「うおおおお、ロシウテメエ! ダヤッカだけじゃなくテメエまで俺の妹を奪っていくのかよ!!」

 

「ったく、キタンは相変わらずシスコンね。でも、そっかー。なーんかみんなラブラブねー。私もさっさと恋人でも作ろっかなー。でも、ウチのクラスで余ってる男子でいいのってあんま居ないからねー、バカばっかで。あ、フェイトは別かもね」

 

「ヨ、ヨーコ!? ダメだ! フェイト様はダメ!」

 

「ヨーヨの・・・ヨーコのお胸には敵わないもん・・・」

 

「おう、デュナミスの旦那。さっきから辺りをキョロキョロしてどうした?」

 

「いや・・・ちょっと探している人物が居てな・・・(綾波・・・お前はどこに・・・)」

 

 

賑やかなクラスメートたちの放課後の談笑を受話器の向こうへ伝えたフェイトは、再び携帯電話を耳に当てた。

 

 

「っとまあ、こんな感じだよ、シモン」

『はは、すごく楽しそうだな~。いいな~、俺も今日学校行きたかったよ』

「そう言うな。退学にならなかっただけでも奇跡だったんだ」

『うん・・・分かってるよ・・・そんなの』

 

少し電話の向こうのシモンの声のトーンが下がった。

シモン自身、色々と学園祭のことで思うことがあるのだろう。

例え操られていたとはいえ、シモンの起こした事件は消せるものではない。

何よりシモンの性格上、気にしないというほうが無理な話だった。

フェイトもこういうときにどう声をかけていいのか分からず、口を紡いでいた。

だが、少し間をおいてシモンの方からフェイトに尋ねてきた。

 

 

『なあ、フェイト。そこにさ・・・アニキと・・・ネギ先生と・・・デュナミス・・・いる?』

 

「ん? いるさ。これからダイグレン学園寮に戻って君とニアとセクストゥムを交えての闇鍋大会だ。あの過酷さをネギ君が知らないなど許せないから、当然誘っているよ」

 

『そ・・・そっか・・・』

 

 

確認するかのようなシモンの問い。それだけでフェイトは理解した。

 

「なんだ、気まずいのかい? 彼らに会うのが」

『・・・・・・・・・・うん』

 

それはそうかもしれないと、フェイトは納得した。

 

 

「ふん、くだらないね。そんなことで迷惑だと思う彼らでもあるまい。まあ、デュナミスはどうかは分からないけど、彼はアホだから気にすることもない」

 

『そ、そんなこと言ったって・・・そりゃー、先生もアニキも学園祭の時は俺をまったく責めなかったけど・・・でも、デュナミスには・・・』

 

「そうかい? 今の彼はなかなか充実しているみたいだよ」

 

 

あの学園祭でシモンが最も迷惑をかけたのがこの三人だ。

シモンと戦い傷を負ったカミナとデュナミス。シモンの担任故に全体的な責任を負うハメになったであろうネギ。

そんな彼らに対して僅か一週間の謹慎処分など軽すぎるのではないかと、シモンは思っているのだろう。

電話越しでシモンがまた無言になる。

すると電話しているフェイトに気づいた、ネギ、カミナ、デュナミスがフェイトの肩越しから顔を出した。

 

「おう、フェイ公! シモンと話ししてんのか? どうよ、謹慎生活満喫してるか!」

「シモンさん、今からみんなで行きますから、ちゃんと準備して待っててくださいよ!」

「なに、シモンだと!? 貴様ああああ!? 今からそこへ行く! 覚悟していろ!」

「ッ、僕の耳元で騒ぐな。うるさいな」

 

あまりのうるささにフェイトが少し早走りで逃れようとする。

だが、フェイトの肩にしがみついたネギが身を乗り出して電話の向こうにいるシモンに向かって叫んだ。

 

「シモンさーん、ちゃんと聞こえてますか~?」

『ッ・・・せん・・・せい・・・お、俺・・・』

 

 

シモンが明らかにビクリとしたのがフェイトにも分かった。

今話の中に出てきた張本人がいきなり電話から声が聞こえてきたのだ。不意打ちのような状況にシモンが緊張するのも無理はない。

だが、ネギはシモンの今の心情を知っていてあえて言うのか、それとも知らずに言うのかは分からないが、まったく裏表のない幼い声でシモンに向かって言う。

 

「シモンさん、あとで教えてあげます。今、新しい先生と転校生がいっぱいきて、学校がすごく楽しくなってますよ! シモンさんも謹慎が解けたらサボらずにちゃんと登校しなきゃだめですよー!」

『ッ・・・せ・・・せんせい』

 

シモンは謝りたい気持ちでいっぱいだったのだろう。

申し訳なさや複雑な想いが電話越しにも溢れていた。

だが、ネギは何もその話題を出すこともなく、ただ純粋にシモンに接した。

それが、シモンにはたまらなく心に響いた。

 

「おう、シモン! 聞いてっか!?」

 

ネギに続いて今度はカミナがフェイトの電話を奪って話し出した。

 

 

『アニキ!?』

 

「今日はメンバーがスゲー多いからよ! 闇鍋用の料理をいっぱいニアに作っとけって言っとけよ!」

 

「「「「「「「「「「なにいいいい!?」」」」」」」」」」

 

「「「「「????」」」」」

 

 

カミナの爆弾発言にどよめき出すクラスメートたち。事情の知らない焔やネギたちは首を傾げている。

 

「おいおい・・・ニアの料理って・・・」

「なるほど・・・今日はガチの闇鍋ってことかよ・・・」

 

いつもと変わらずに接するカミナの器の大きさに心打たれるシモンに対し、クラスメートたちは大きく顔を引きつらせていたのだった。

 

 

「おう、デュナさんよ、あんたもシモンに何か言ってやれ。あの野郎、せっかくの初謹慎処分だってのに、元気がねーみてーだからよ」

 

「むっ」

 

「お、おい、待ちたまえカミナ。今のシモンにデュナミスと話をさせるのは・・・」

 

 

デュナミスにフェイトの携帯を差し出してシモンと話をさせようとするカミナ。

 

「かまわん、代われ」

「デュナミス、しかし」

「俺も奴に少し話があるのでな。安心しろ。もう落ち着いている。取り乱したりなどはせん」

 

いや、それはまずいだろうとフェイトが止めようとするが、デュナミスは普通に受け取った。

少しハラハラとするフェイトだが、デュナミスは至って冷静に、これまで色々と複雑な因縁のあるシモンに話しかけた。

 

「もしもし、シモンか。聞いていると思うが私も今日からこの学園に勤めることになった」

『ああ。聞いてるよ・・・』

「謹慎処分とやらになったそうだな。いい気味だな」

『うっ・・・その・・・ご、ごめ・・・あの・・・』

「そう怯えるな。何も取って食おうと言うわけではない」

 

どこか大人の立場で、落ち着かないシモンと会話するデュナミス。

その表情に、フェイトはデュナミスのこれまでのようなシモンに対する憎悪を感じなかった。

 

「貴様とは何十年も前からの因縁だ。言いたいことも晴らしたい恨みも多々あるが・・・」

『ああ・・・』

「だが、これからもそれなりに学園で長い付き合いになるのだろうな」

『うん・・・・』

 

この時、フェイトは思った。

ひょっとしたらあの全てを出し尽くした学園祭での戦いで、デュナミス本人の個人的なシモンへのわだかまりは消えたのではないかと。

もしそうなのだとしたら・・・

 

「まあよい。シモンよ、これからは多く顔を合わせることになるであろう。だから、今はただ――――――」

 

今はただ・・・そう言いかけたデュナミスだが、どうやら話している間に寮についたことに気づいた。

見上げるとかなりのオンボロな学生寮。

麻帆良女子中の女子寮を知っているネギにとっては、あまりの設備の差に少し引き気味だ。

だが、その時だった。

寮の入口の前で買い物袋を引っ張り合って何やら口論をしている女が二人、彼らの視界に入った。

その二人は・・・

 

「セクストゥム・・・ですから、料理は私が作ると・・・」

「いいえ、これからマスターのお食事を担当するのは私です。ニア様のお手を患わせるわけにはいきません」

「いいえ、私とニアの仕事です」

 

白いワンピースで買い物袋を引っ張り合っているニア・・・というより黒ニアと何故かメイド服のセクストゥムだった。

 

 

「そもそもあなた・・・私とニアとシモンの夫婦の生活に出しゃばり過ぎです・・・」

 

「出しゃばってはおりません。ですが、本来雑事はマスターに仕える私の仕事だと思います。ですから、日々の雑事や朝にマスターを起こすことや、お風呂でお背中をお流しするのも、マスターのお耳を掃除してさしあげるのも私がするのが妥当であると・・・」

 

「それは雑事ではありません。特権です!」

 

 

・・・とまあ、寮の前で一目も憚らずに口論している二人を見て、デュナミスはフェイトの携帯を握りしめ・・・・

 

「そうだ・・・今はただ・・・」

 

デュナミスは学園の果てまで叫んだのだった。

 

「貴様をぶち殺したい気持ちでいっぱいだああああああああ、シモオオオオオオオオオン!!!! 何が謹慎処分だアアアア!! こんな謹慎生活で反省もくそもあるか! 今こそ貴様に昔年の恨みを晴らしてくれよう!! うおおおおおおおおおおおおおおお、死ねええええええええええ!!!!!!」

 

全員がかりで暴れたデュナミスを取り押さえ、正気を取り戻させるのに30分ほど時間が掛かったのだった。

そして、フェイトの頭痛の種が増えたのだった。

 


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