【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第61話 あなたを、犯人です

「タ、タカミチ!? ガンドルフィーニ先生も!?」

「刀子さん!?」

「他の先生方も・・・どうしたでござる?」

 

突如として現れ、さらに攻撃まで行ったタカミチたち。

その尋常ならざる空気が、まだ子供の刹那たちを少し緊張させた。

 

「すまない、ネギ君。だが、信じられない事実が発覚してね・・・そしてその直後に超くん・・・フェイト君・・・・・・そして新たなる・・・アーウェルンクス・・・もう、偶然とは思えなくてね」

「・・・えっ?」

 

タカミチの様子がいつもと違う。まるで戦場の武人のような空気を纏って、相手を威圧するかのようなオーラを纏っていた。

 

「高畑・T・タカミチ・・・君が僕に殺意を抱くのは構わないが、君にしてはいきなりだね?」

 

フェイトはタカミチが幼少のころより戦っていた『完全なる世界』の生き残り。

タカミチとは敵として命がけで相対し、互いのチームに大きな血が流れた。

だが、タカミチはどれほど相手が積年の相手とはいえ、武人としての礼節を弁える男。そんな彼の突然の威嚇に、フェイトも不愉快そうであった。

 

 

「フェイト・アーウェルンクス・・・今はその恰好にツッコみはいれないが、ネギ君たちが新たなアーウェルンクスに攻撃されているようだったのでね、ちょっと威嚇のつもりで撃たせてもらった」

 

「ふん・・・・」

 

 

フェイトとタカミチ。二人の間には、言葉の端々に棘のようなものを感じた。ネギにとってはタカミチがこれほど敵意をむき出しにする相手は珍しかった。

フェイトも、少し場にそぐわぬ恰好をしているのでシリアスな場面が台無し感もあったが、とりあえずは周りの魔法先生たちも「かわいい」とか思ったことは押しとどめて、今は仕事に集中したのだった。

 

「高畑先生・・・あの・・・先ほど仰った、信じられない事実とは?」

 

いつもと様子が違う魔法先生たちの空気を察し、刹那が尋ねる。

するとタカミチは怖い顔をしたまま、フェイトに尋ねる。

 

「フェイト・アーウェルンクス・・・・・・・シモン君は今どこに居るんだい? 実は、武道大会終了後に彼を探していたんだ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・はっ?」

 

またシモンか? しかし、ネギたちのように勝手な勘違いとは違い、タカミチは確信を持った表情をしていた。

 

「シモンさん? どういうことなの・・・タカミチ」

「ネギ君・・・僕たちもね・・・知らなかったんだ。だから驚いた。まさか、あのシモン君にこんな秘密があったとはね・・・」

「「「「?」」」」

 

シモンの秘密。その言葉にはネギたちだけでなく、フェイトも首を傾げた。一体何の秘密があるというのか?

するとタカミチから出た言葉は、ネギにとっては驚愕、フェイトにとっては「うわ~~」と思う内容だった。

 

 

「学園祭に武道大会で暗躍していた超君。僕たちは超君を抑えようとしたが、逃げられた。そこでもう一度彼女が何を企んでいるのかを探るべく、彼女の近辺を洗った。もちろん超君はこの学園に入学するまでの記録が一切ないので、ダメもとだった・・・しかし・・・」

 

「しかし・・・なんなの? タカミチ・・・一体何なの?」

 

「彼女が何を企んでいたとしても、彼女は単独ではない。仲間がいる。そして超君はやけにたくさんの部活に入っていた。僕たちはそこに注目した。僕たちの知らないところで、隠れたコネクションを持っているかもしれない。超君の素性は無理でも、その仲間の素性を洗えば何かが分かるかもしれない。そして一番怪しかったのが・・・ドリ研部」

 

 

ドリ研部。

現在フェイトにやられて横たわっている超が創設した部活。

 

「そしてこの部活が全ての黒幕だと確信した。そもそも、完全なる世界のフェイト・アーウェルンクスと超鈴音、この二人が同じ部活に居るだなんて考えられない」

 

そりゃそーだ。

 

「大体、この部員たちは異常だ。あのロージェノム氏の娘であるニアさん・・・ザジくん、そして何より、その中心にいるのがシモン君。そのシモン君の素性を洗ったら、とんでもない事実が発覚した」

 

そう、魔法先生たちが掴んだシモンの正体。その正体が、彼らの勘違いを確信に変えてしまったのだった。

 

 

「本名で堂々と、しかも入学の時の魔力値や結界にも引っかからなくて分からなかったが、シモン君・・・堀田シモン君は、かつて魔法協会が八方手を尽くして探した、堀田キシムという男の実の息子だったんだ!!」

 

「・・・・・あっ・・・・」

 

「「「えっ?」」」

 

 

それかーーー! フェイトはガックリと肩を落とした。

 

「「「ええええええええ!? って・・・誰?」」」

 

ネギたちは堀田キシムという人物を知らないために周りの魔法先生をキョロキョロと見る。

 

 

「堀田キシム・・・かつて、魔法協会に反発し、一度は魔法世界そのものを完全消滅させようとした男だ」

 

「「「ッ!?」」」

 

 

すると、拳銃とナイフをフェイトに構えたままのガンドルフィーニが重い口を開く。

 

 

「20年以上前・・・科学が急速に発展したころ・・・魔法や気などの力と科学を融合させようとする研究所があった。その名も・・・大螺巌科学要塞研究所」

 

「だ、大ラガン?」

 

「その研究所の所長が・・・堀田キシム」

 

 

ガンドルフィーニやタカミチの口から語られるのは、ネギたちの知らない過去に埋もれた歴史の話。

 

「しかし堀田博士は魔法協会の支援により設立したその研究所で開発したもの全てを持ち去って、数名の助手や仲間を連れて消えた」

「これは噂なんだが・・・なんでも堀田博士は、人類の進化の力を極限にさせるものを開発してしまい、その力を恐れた魔法協会が堀田博士とその仲間を抑えようとしたが、寸前に逃げられたそうだ」

「我々も、学園長がシモン君の資料を見て驚くまで、何も気づきませんでした」

「堀田博士は持ち去った開発道具を使い、今は影をひそめましたがかつては魔法世界で名を馳せた『黒い猟犬』という組織を設立させ、幾多の破壊活動や魔法界の姫君の誘拐までを企てたそうだ」

「それが20年以上前の話・・・堀田博士は突然に行方不明となった。噂では死んだのでは? というものもあったが、まさか・・・地球に戻って結婚し、子供までつくっていたとはね・・・」

 

最初はただの冴えない男。でも、勇気と愛を人一倍秘めて、気合を叫べばどんな壁をも乗り越えられる。それがネギたちの知っているシモンだ。

なのに、タカミチたちから語られるシモンの素性は、これまでのシモンに抱いたイメージが揺らいでしまうほどのモノだった。

 

「かつて世界を震撼させた堀田博士の血を引くシモン君。その彼を中心に集まったフェイト・アーウェルンクスも超鈴音も、偶然ではない!」

 

超重大事実ですと言わんばかりに強調するタカミチ。ネギはガクガクと震えながら否定しようとする。

 

 

「ウソだ! だって、だって、シモンさんを僕は知っている! 一緒に授業も受けたし、いっぱい一緒に遊んだ! 僕たちと一緒に居たシモンさんは、そんな何かを企むような人じゃない!」

 

「確かに・・・あのロージェノム氏との戦いが演技だとは思えない。だが、堀田キシムの息子というのであれば話は別。堀田キシムは数々のとんでもない物を発明した。記憶の置換や性格変化、はたまたワープ能力など眉唾的だが開発に成功している。最悪な話、我々の目を欺くためにそのような道具を使っていたとも・・・」

 

「待ってよ、タカミチ! ただの偶然じゃないの? だって、それならザジさんは・・・」

 

「それも、疑いを確信に変える物だった。今日になってシモン君と同様にザジ君のことも調べてみたが、ザジ君が入学時から身に着けていたアクセサリーの類・・・詳しく鑑定してみないと分からないが、かつて大螺厳科学要塞研究所が開発した発明品と酷似していたそうだ」

 

「えええッ!?」

 

「その彼女が堀田博士の息子であるシモン君と同じ部活に? シモン君とザジ君の面識は今年に入ってからだそうだが、偶然だと思うかい?」

 

 

なるほど・・・フェイトも素直にそう思った。

 

(偶然とは怖いものだな・・・・・・もはや運命と思いたくなるな・・・)

 

確かに何かを企んでいると疑いをもたれるようなメンツとバックグラウンドが揃っていた。

 

「フェイト・アーウェルンクス。シモン君の居る所へ案内してくれ。話をまず聞きたい。抵抗するのであれば、多少は手荒になる」

「ふん、手荒だと?」

「ああ、この事態では仕方がない。必要とあれば、シモン君の記憶も見させてもらおう」

 

これまでの話の流れに、意外なザジの秘密も重なり、これはもはや疑われても仕方なかった。

 

(やれやれ、堀田博士か・・・カミナたちの話を聞く限り、この学園祭に出現しているそうだが・・・・・・ここで知られると、もっと疑いが深まりそうだな)

 

カミナたちは超のタイムマシーンで過去の魔法世界に行ったシモンたちを、アンスパという愛称の堀田博士の手助けがあって加勢に来てくれた。

 

(だが・・・冷静にシモンと高畑たちが話し合えば、堀田博士の息子であることが明るみになっても、疑いは解ける可能性は・・・しかし、頭の固い協会の連中がどう判断するか・・・)

 

ここで堀田博士との繋がりをバレルと、もっとわけの分からないことになりそうだった。

 

(シモンのことが学園内に留まるならまだいい。しかし、魔法協会どころか本国にまで知られてしまえば・・・さらに、シモンの記憶を見られるのはマズイ。シモンは過去の世界では気づかなかっただろうが、シモンは僕たち完全なる世界の計画の全容や組織そのものとも触れている・・・協会側は決して見過ごさないはず。ここは慎重に・・・そして冷静に乗り越えなければならない・・・)

 

しかしフェイトのその考えは、この女が全てをぶち壊す。

 

「手荒? 兄様とマスターに?」

「ッ!?」

「私が許しません」

 

ウォーターカッター。

その鋭い高速の水の刃は、タカミチの腕の薄皮を軽く裂いた。

 

「だからーーー、なぜ手を出すんだ!?」

 

百戦錬磨のタカミチゆえに、何とか軽症で済んだ。だが、他の者たちにとってはこんな細身の女がタカミチを傷つけるほどの力を持っているのか!? という反応になる。

 

「ッ・・・アーウェルンクス!?」

「マイ・マスターの障害となる者は全て排除します」

 

こうしてセクストゥムはまんまとやらかした。

 

「セクストゥム!?」

「タカミチ!?」

「高畑先生!?」

 

まさか先に手を出すとは・・・

 

「くっ・・・新たなアーウェルンクス・・・それにしても君はいつこの学園に潜入した? 結界になんの反応も無かった・・・」

「マスターが私をここに導いてくれたのです」

「マスター? アーウェルンクスが使えるマスターなど・・・まさか・・・始まりの魔法使いとでも言う気では・・・」

「私を導いてくださったのは、マスター・シモン」

 

おいッ! フェイトが右手の甲で鋭いツッコみを入れる。

 

「あのバカは!!」

 

ダメだコリャ。フェイトがガックリと肩を落とした。

 

「マ・・・マスター・・・」

「マスター・シモン!?」

「完全なる世界のアーウェルンクスのマスターが・・・」

「シ、シモン君!?」

 

こうして勘違いがとてつもなく加速して、もはや言い訳の通じない事態と発展してしまったのだった。

 

「この! だから生まれたての自我のない人形は!」

「兄様・・・あれを全て殲滅します」

「やめないか!」

 

とにかくこいつを止めるのが先決だった。

 

「まずいぞ! これは我らの想像を遥かに超える事態かもしれない!」

「学園長に急いで連絡を! 本国の援軍の要請も打診しなければ!」

 

しかし、今さらフェイトがセクストゥムを止めようとももはや手遅れ感MAXであった。

 

「あ、あ~~~、もう、だからどうしてこうなっているんだ。君たちは何でそうやって物事を深く考える。ダイグレン学園程とはいかなくても、少しはテキトーになれないのかい?」

 

緊急事態だと言わんばかりに慌ただしく動き出す魔法先生たち。

 

「フェイト・アーウェルンクス、そして気絶している超君に新たなアーウェルンクス。この場で拿捕する!」

 

今さらどんな言い訳も通用しないだろう。しかも、フェイトやシモンたちの素性が素性なだけにもはやどうしようもない。

 

「くそ・・・今は退く。セクストゥム、今は僕の言うことを聞け」

 

フェイトはセクストゥムの手を引いて、やむを得ず逃げることを選択する。

 

「私はマスターの命令以外は・・・」

「ならば命令にないことをするんじゃない! シモンは決してそんな命令はしていないはずだ」

「・・・・・・・」

 

フェイトはセクストゥムの手を引いて包囲網から抜け出す。

そして逃げる。

逃げる? どこへ?

 

「高畑先生、奴らが逃げます!」

「無駄だ! 既に学園結界が最大限に発動している。いかに君たちとはいえ逃げられない。大人しくするんだ!」

「フェイトォ!」

 

どこへも逃げられないだろう。フェイトが『完全なる世界』のメンバーであることは揺るぎない事実だからだ。

 

「ちっ・・・のんきに寝て・・・もとはと言えば君が・・・」

 

走って逃げる先には超が、「ぐーすか」と寝ている。フェイトは寝ている超の首を掴んで引きずり出す。

 

「起きろ! こうなったら君にもこの状況をどうにかする手を考えてもらう」

「・・・・・・う~~・・・・ん・・・・おろ?」

「さあ、とにかく逃げるぞ、超。君も彼らに捕まるのは避けたいだろう? ここは協力して追跡から逃れる手段を考えるんだ」

「・・・はっ? フェイトさん?」

 

超が捕まれば、超が何をやらかすのか分からない。何をしゃべるのかも分からない。

 

「いかん、超鈴音まで連れて行く気だぞ!」

「逃がしません」

 

超はそこで目が完全に覚めた。何やら真剣に魔法先生たちに追いかけられている自分。

そして何よりも・・・

 

「うおっ、フェイトさん、何ネその恰好は!? 猫耳からさらにパワーアップしてるヨ!?」

「いいから、とにかく逃げるぞ」

「へっ? はっ? って、高畑先生にネギ坊主!? 寝てた間に何があったネ! 確かに私にもマズイ展開ヨ!」

 

超もようやくことの深刻さに気付いて、自分の足で走り出した。

 

「んで? どうしてこうなったネ!?」

「かくかくしかじかで・・・」

「はあ? それ、ただの勘違いヨ? 多少の取り調べは受けるだろうが、疑いは・・・」

「堀田博士の名は、もはや君がこの学園祭で何をやるかよりも問題となっている。シモンが魔法協会に捕まれば彼は今後、今の日常には決して帰ってこれない。その前にシモンを連れて逃げるんだ」

「逃げる? どこへネ?」

「知らない。だから君にも案を出せと言っている」

「フェイトさん意外にバカではないカ!? っていうか、あなたどれだけシモンさんのことが好きネ?」

「好きで何が悪い! 僕はシモンの友達だぞ!」

「開き直りやがったネ、コイツ!?」

 

猛ダッシュしながら魔法先生たちの追跡から逃げ回る三人。超、フェイト、セクストゥム。

 

「まったく。だが、こんな追手から逃れるなど簡単ネ」

「なに?」

「私のカシオペアを使えば朝飯前ネ」

 

そう、超には反則ともいうべきカシオペアがある。

これを使用すれば、いかに相手が最強クラスの敵とはいえ・・・

 

「ん?」

 

簡単に逃げられるはず・・・

 

「ア、 アリ?」

 

逃げられるはずだった。

 

「超?」

 

走りながらカシオペアをぶんぶん振り回す超。懐中時計をカチカチと何度も鳴らしながら、やがて超の表情が青ざめる。

 

「ど、どういうわけネ!?」

「どうした、逃げられるんじゃなかったのか!?」

「カシオペアが作動しないネ!?」

 

なんと、反則道具のカシオペアがうんともすんとも言わなくなってしまったのだった。

ぎょぎょぎょ、とした目で告げる超に対し、フェイトはひっくり返りそうになった。

 

「な、・・・こんな時に故障か!?」

「そんなはずないネ! 私のメンテナンスは完璧ネ!」

「なら、何故逃げられない!? あれだけ僕との戦いのときには使っていたじゃないか!」

「そう言われても分からないネ!」

 

どうやら本当に動かないらしい。だが、超は走りながら何度もカシオペアを裏表にして確かめるがどこにも異常は見当たらなそうだ。

何故急に使えなくなったのかがこの状況では調べられない。流石に超もテンパって逃げる速度を速めだす。

するとその時、軽快な着信音を響かせながら、超の携帯電話が鳴りだした。こんな時に一体誰だと思う超は乱暴に携帯に出る。

だが、その電話の主は、今の超と同じぐらいに切羽詰った声を出していきなり叫んできた。

 

『超さん! 大変です!』

 

あまりにも大声で叫ばれたため、思わず超は耳から携帯を話した。

 

「ハ、ハカセか。聞こえてる。っていうか、今取り込み中ネ。話なら後で・・・」

 

そう言って切ろうとした超だが、突如電話してきたハカセの次の一言が、超に衝撃の事実を知らせることになる。

 

 

『せ、世界樹の魔力を運用するためのコンピューターシステムが・・・いえ、それだけじゃなく・・・巨大ロボット兵器や、機械人形のコントロールや制御システムに、超さんのカシオペアを作動させる魔力運用のシステム、セキュリティーもろもろ・・・何者かに乗っ取られました!!』

 

「・・・・・・へっ?」

 

 

・・・・

超はハカセの電話に絶句し、しばらく走りながら頭が空っぽになった。隣で走っているフェイトとセクストゥムは不思議そうに首を傾げている。

だが、すぐに超も意識を取り戻して、頭をぶんぶん振り回したのちに電話の向こうに向かって叫ぶ。

 

「ちょちょちょちょ、はああああああああ!? 何言ってるネ! そんなことは絶対にありえないネ!」

 

超が絶対にありえないと断言する。そこには、超やハカセのような科学にどっぷりと浸かった者にしか分からぬ根拠が揃っていた。

 

 

「あれには今の時代よりも進んだ科学技術に魔法理論を融合させた超科学が―――――――うんたらかんたら――(作者もよう分からんので割愛)」

 

『分かってますよ! ですが、本当です! 今私の居るラボのメインコンピューターがのっとられ、次々と他の機器にもウイルスのようなものが感染し・・・』

 

「は・・・はあああああああァ!? のっと、・・・ハッキングか!?」

 

『は、はい。信じられません・・・ちゃ、茶々丸の処理能力ですら対処できないウイルスをまき散らされ・・・システムを完全に奪われました』

 

「バ、バカな!? 茶々丸相手に奪い取るなど人間には不可能ネ! ブラッディマンデーのファルコンか!?」

 

 

話の内容から、何か超の計画上でまずいことが起きたということはフェイトにも感じ取れた。

フェイトも茶々丸については良く知らないが、ネギの生徒の機械人形のこと。機器の扱いなら人間の能力では及ばないほどのスペックを持っているのだろう。

超が造ったであろう、万全な機器に茶々丸という存在があれば、コンピューターを乗っ取られるなどまずありえない。

そもそも超はそれを強みとして計画を推し進め、彼女の計画の大半は魔法というよりも科学技術の力が役割を占めていた。

それを全て統括するシステムが乗っ取られたということは、超の計画全てを破綻させるものとなる。

それが分かっているからこそ、そしてそれが決してありえぬことだからこそ、電話越しのハカセも声が震えていた。

 

『に、人間業じゃありません・・・でも、でも・・・この乗っ取った者は・・・乗っ取った者は・・・』

「どうした!? 何があった!?」

 

そしてその一言が・・・・

 

『このシステムを乗っ取った者が・・・我々のディスプレイにこう書きこまれました・・・み、みんなで・・・あんかけスパゲティーを食べよう・・・と』

 

その一言だけで、犯人がフェイトには一瞬で分かった。

 

 

「あ、あんかけだと?」

 

「ぶふうううううううううううううう!?」

 

 

フェイトは盛大に噴き出した。

電話の会話は分からなかったが、超のその呟きだけで、とにかく犯人だけが分かった。

 

「なな・・・なな・・・なにを・・・」

「フェ、フェイトさん? どうしたネ?」

「あ、あんかけなんて・・・彼以外居ないじゃないか・・・」

 

フェイトは走りながらガックリと肩を落とし、心の中ではデカい声で叫んだ。

 

(か、彼は一体何をしているんだァ!?)

 

アイツしかいない。フェイトは即行で気づいた。

 

(超に一体何があって、どういう問題になったのかは知らないが、とにかく彼が何かをしたのかだけは分かったぞ!)

 

あんかけ・・・ただそれだけで、全てを理解できた。

20年前の魔法世界で戦い、そして今なお存在し続ける『人』を超越した存在。

それが今再びこの世界に存在を現した。

 

「一体彼らは何を騒いで・・・ん?」

 

フェイトたちの後を追っていたタカミチたちが不審に感じていると、次の瞬間そんなことなど一瞬で頭から抜けるような出来事が起こった。

 

「た、高畑先生・・・あ、アレ・・・」

「あ、な、なんで・・・」

 

急に追跡の足を止め、彼らはとある方角へ目を向けた。

 

「ん・・・ちょっ、フェイトさん!?」

「バカな!?」

「あ・・・マスター・・・」

 

その空には何もなかった。

だが、急に空が大きく歪んだ。電波の干渉を受けたのだ。

次の瞬間、巨大な人の姿が映し出された。その姿こそ、シモン。

 

「な、なんで・・・」

「シモンさん・・・?」

「あれは、巨大立体映像?」

「だが、なぜシモンが!?」

 

もはや追いかけっこを忘れ、誰もが麻帆良に突如現れた巨大立体映像のシモンに意識が向いていた。

フェイトやネギたちだけではない。深夜まで騒ぎまくっていた学園の生徒たちもこの光景を見ていた。

そしてそのシモンは、彼らの知っているシモンではなかった。

死んだような瞳に、皮肉めいた口元。それは、この学園中が知ったはずのシモンとは大きくかけ離れている表情だった。

 

 

 

 

『もう、うんざりなんだよ・・・・・・』

 

 

 

 

 

「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はっ?」」」」」

 

 

 

 

 

あろうことか巨大シモンはそう呟いた。

 

『いつもいつも授業も普通に受けられず、ケンカに巻き込まれ、校舎が壊れれば修理するのは俺一人・・・何もしていないのに皆に巻き込まれて停学処分・・・こんな学園生活・・・もう、うんざりなんだよォ!』

 

「「「「「「ッッッ!?」」」」」」

 

 

何もかもが嫌になり、投げやりになった言葉。

シモンがそんなことを言うはずがない。シモンがそんなことを思うはずはない。

だが、突如現れたシモンの立体映像は、何の前触れもなくそう叫んだ。

 

『壊してやる・・・』

 

そして、全校生徒たちが注目する中・・・

 

『こんな学園生活、この学園と一緒に俺のドリルでぶっ壊してやる!!』

 

聞き間違えで見間違えで、とにかくこれは夢なんだと誰もが思いたかった。

 

 

「フェイトさん・・・」

 

「超・・・」

 

「「むぎゅ~~~・・・ひりひり・・・痛い・・・夢じゃない・・・」

 

 

あの超とフェイトが互いを見合ったまま、互いの頬を抓る。だが、ヒリヒリと痛い。どうやら夢ではないらしい。

 

「が・・・あががが・・・」

「な、なんと・・・」

 

ネギや刹那は口をパクパクさせている。

 

「やはり・・・彼は・・・・・・・・」

「高畑先生・・・これは・・・」

 

タカミチたちもショックを受けた表情をしている。

色々な勘違いでシモンを悪の大ボスのように疑っていた彼らだが、実にタイムリーにシモンがやらかしたおかげで、彼らは自分たちの疑惑を確信し、一方で生徒を信じていたかったという思いが裏切られたことにショックを受けているようだった。

 

「マスター・・・」

 

何故かセクストゥムはシモンの巨大立体映像に目をキラキラ輝かせて手を伸ばして崇めているかのように見える。

とにかく誰もかれもがショックを受けているようだが、とにかくフェイトは一言とりあえず叫んだ。

 

「父親も息子も何をやっているんだァ! っていうか、シモン! 君に何があったァ!?」

 

闇夜に向かって叫ぶフェイト。

その叫びはしばらく学園都市内に響き渡るのであった。

 

 

「やるではないか、超鈴音という生徒は。大した技術力だ。だが、所詮は人が生み出した技術。螺旋族の力を使えば、乗っ取れぬメカなどこの世にはない」

 

 

戸惑い渦巻く麻帆良学園都市。

 

「そしてシモンへの洗脳は・・・簡単には解けん。今のシモンは、ただのやさぐれた小僧。しかし、・・・螺旋の力はそのままだがな」

 

唯一その中で笑っているのは、黒ずくめで、あんかけスパゲティをすすっている人物ただ一人。

 

「さあ、今度こそ同じ時代に立って見極めてやるぞ、新時代たちよ。シモンという拠り所を奪われたお前たちは、一体何をする? いや、何かできるのかな?」

 


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