【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン) 作:アニッキーブラッザー
「しっかし、あんなガキが俺たちの教師になるとはな」
「しかもドッジボールとはね~」
ネギが企画したダイグレン学園VSテッぺリン学院のドッジボール対決。
麻帆良中央駅前にドッジーボールのラインを引いて、不良たちがたむろしていた。
その間に、ネギという10歳の少年が少しの間だけ自分たちのクラスの担任になると聞いたカミナ達は、物珍しそうにドッジボールのボールをリフティングしながらネギを眺めていた。
「先生・・・何でドッジボールなんだよ?」
この中で、唯一不良たちの中であっても普通の学生に見えるシモンが少し申し訳なさそうに訪ねて来た。するとネギは、太陽を見上げながら目を輝かせて答える。
「実は僕が以前教えていたクラスで先輩たちの学年と問題を起こしたことがありました。互いに取っ組み合いの喧嘩になりそうになった時、全てを解決してくれたのがドッジボールでした! 仲間と一致団結しあって汗をかく青春の時間。僕もこれを皆さんに味わってもらいたいんです!」
ネギはスポーツの起こす奇跡に期待していた。
自分はスポーツには詳しくないが、最近クラスでも話題のアニメやドラマでも不良がスポーツに打ち込んで変わるというのは良くある話だ。
ネギはドッジボールという自分にとっても思い出深いスポーツで、皆が心を入れ替えてくれることを期待していた。
「そ~簡単にはいかないでしょうけどね~」
ヨーコが誰にも聞こえないぐらいの大きさでボソッと呟いた。
周りを見渡してもやる気があるのだか無いのだか分からない連中ばかりだ。
「シモ~ン。私、どっじぼおる? というスポーツは初めてです。シモンは知っているのですか?」
「う、うん。小学生の時にやったことがあるよ」
「まあ、流石シモンは物知りですね! ならば私たちのチームはシモンが居れば大丈夫ですね!」
「えっ!? いや、ルールを知ってるだけで、俺は全然苦手だよ!?」
「大丈夫。シモンなら出来ます。シモンなら何があっても大丈夫です。だから一緒に頑張りましょう、シモン」
「ええ~~ッ!?」
相変わらずイチャついてるシモンとニア。
「ドッジボールか。どんなルールだっけ?」
「ほら、以前ハンターの漫画で出て来たあれだ。要するにボールを使って攻撃する競技だ」
「か~、面倒くせえ。ちょっと一服させてくれ」
やる気の無さそうなキッド、アイラック、ゾーシイ。
「へっ、上等じゃねえか。これだけの仲間が居て負ける理由がどこにある」
「そうだそうだそうだ!」
「当てるぞ、当てるぞ、当てるぞ!」
やけに気合の入っているキタン、ジョーガン、バリンボー。
「ドッジボール? 名前が気に食わねえ。ボールがとっちか分からねえなんて曖昧な名前だ! 全部俺たちのボールだ! 今日からこのスポーツの名前はコッチボールだ!」
意味の分からぬことを文句言いながら叫ぶカミナ。
「ドッジボール・・・確かルールは内野と外野に分かれて、相手の陣地に居る敵を殲滅すれば勝ちのルール。まったく、何て野蛮なスポーツだ。降伏も逃亡も許されずに相手を虐殺するなど、どこまで皮肉にできている」
「な~、まだ始らねえのかよ~」
「あ~ん、早く帰ってダーリンと一緒にお弁当食べたいのに~」
「あの~・・・私もう帰っちゃダメでしょうか?」
いつの間にか混じっているロシウに各々バラバラの思いのキヤル、キヨウ、キノン。
合計14人のメンバーだが、そこにチームワークも情熱もあったものではない。
ヨーコもあまりやる気は起きない。
「は~~~、でもさ~ドッジボールって相手と同じ人数同士でやるんでしょ? 相手は四天王とヴィラルしか居ないじゃない。あとの舎弟は全員ボコボコにしちゃったし」
やる気がないうえに、人数も公平ではない。本当にこんな状態で出来るのかと、ヨーコが疑問に思っていると、そこにチミルフが口を挟んだ。
「ぐわははははは、安心せい。そう言うと思って、既に助っ人を呼んでいる! さあ、来い! 黒百合たちよ!」
チミルフが叫ぶと、彼の背後から体操服とブルマの女性たちが現れた。
「あれ・・・あの人確か・・・」
ネギはその女性たちに見覚えがあった。
「あなたは、麻帆良ドッジボール部の人!?」
「おほほほほほ、久しぶりね、子供先生!!」
そう、彼女たちこそかつてアスナたちと問題を起こし、ドッジボールでケリを付けた相手だ。
「私は英子! 麻帆良学園聖ウルスラ女子高等学校の3年生よ」
「同じく、ビビ!」
「そして、しい!」
「私たちがテッぺリン学院側の足りないメンバーの補充に入るわ。あなたたちの方が男性が多いのだし、それぐらい構わないわね?」
それなりに美しく、そして恰好から既に気合十分の英子と彼女と共に現れた女子高生たち。
「「「「「うおおおおお、ブルマーーーーッ!!??」」」」」
男たちはそんなことよりもそっちに反応したのだった。
「すげえ・・・生のブルマなんて初めて見たぜ・・・」
「若者が一度は思う、あの時代に生まれたかったベスト10には入るであろう、伝説の装備」
「俺たちの学園じゃ違うからな・・・・・・体育の授業出たことねえけど」
マジマジと英子たちのブルマ姿に目を奪われる悲しき男たち。
「なっ、ななな・・・なんと破廉恥な。だからダイグレン学園の人たちは嫌なのよ」
女たちは顔を真っ赤にしながら、ブルマを隠そうと体操着のシャツを下まで引っ張る。
しかし、その姿が逆にドツボ。男たちは親指を突き立てて、英子たちに笑顔を見せた。
「こんの、アホどもーーッ!? そんなもんに反応してるんじゃないわよ!」
「ヨーコ・・・しかしだな~」
「大体、あんたたちウルスラってモロ麻帆良の学生じゃない! 何で同じ麻帆良側の私たちじゃなくて、テッぺリン側に付くのよ!?」
ヨーコが一通りブルマに反応した男たちをしばいた後、英子たちに文句を言う。
だが、英子はヨーコの言葉に鼻で笑った。
「ふっ、同じ麻帆良? ふふふふ、笑わせてくれるわね。あなたたち問題ばかり起こすような落ちこぼれ組みを、私たちと同じ麻帆良の学生扱いしないでくれない?」
「なっ!?」
「みんな迷惑しているのよ。あなたたちダイグレン学園が問題ばかり起こすせいで、麻帆良の品格を落とすってね。だから今日はテッぺリン学院側の助っ人として、あなたたちに暴力ではなくスポーツで徹底的に懲らしめてやるために来たのよ!」
高慢な態度でヨーコ達を見下す英子たち。
「まあ、ワシらに助っ人して勝てば、ワシらの理事長がドッジボール部の活動に寄付金を出すという取引もしたがな・・・・」
「そこ、お静かに!! とにかく、今日はあなたたちに思い知らせてあげるわ。スポーツの怖さをね!」
色々取引も裏ではあったようだが、正直どうでもいい。
お前ら授業は? と誰もツッコまないので、それもいい。
しかし、ここまで言われて黙っている奴らは、ダイグレン学園には居ない。
「言ってくれるじゃねえか、ブルマーズ」
「なっ、ブルマーズ!? 私たちは、黒百合よ!!」
「俺たちの大喧嘩に首突っ込むとは上等だ! だったら俺たちは、無敵のダイグレン学園の恐ろしさをテメエらに教えてやる。俺らの仲間に手を出したらどうなるかを思い知りやがれ!」
カミナが先頭に立って、四天王、ヴィラルに黒百合ブルマーズに向かって叫ぶ。
そしてカミナの背後には、同じ目をしたクラスメートたちが集結していた。
「勝つぜ、カミナ!」
「当たり前よ。俺を誰だと思ってやがる!!」
簡単な挑発を受け流せないのが不良。
ダイグレン学園問題児たちは、一つになった。
「「「「「オオオオオオォォォォ!!!!」」」」」
麻帆良中央駅で叫ぶクラスメート。
一致団結したその姿を見て、ネギは涙を流して感動した。
(やった・・・やったよ~~! やっぱりスポーツは凄い! あれだけの困った人たちが、こうも真面目にスポーツに取り込もうとしている! スポーツ・・・まるで魔法みたいだよ!)
自分が提案したことに、喧嘩ではなくスポーツで決着をつけてくれるというのは、とてもとても大きな進歩だとネギは感動した。
その涙は・・・
数秒後に、違う意味の涙になってしまうが・・・
「うおりゃあああ! 全員一斉攻撃だ!!」
「よっしゃああ!!」
「くたばれ!」
「おう、そうだそうだそうだ!」
「くたばれくたばれくたばれ!」
試合開始直後、いきなりとんでもない展開になった。
「なっ、カミナァ! 貴様ら!」
「キャ・・・キャアアア!?」
「いやあッ!?」
「おのれ~、何と卑怯な!?」
試合開始した途端、何とカミナやキタンたちは、大量のゴミを投げた。
次々と投げられるゴミに、相手チームは思わず声を上げて逃げまどう。
「よっしゃ、くらいやがれ!」
「えっ・・・きゃあッ!?」
そして相手がゴミに気を取られている隙に、黒百合ブルマーズの一人に当てて、さっそく一人をアウトにした。
「き、貴様らァ!? まともにボールも投げられんのか!?」
「ウルせえ、これも立派な俺たちのボールだ!」
「ゴミはゴミだ! ボールではない!」
「何言ってるんだ、当たり前じゃねえか!」
「ぐっ、カミナァァ!?」
あまりにも卑怯過ぎて、ルール違反だとか、反則だとか言う気にもなれない。
「・・・・・なんで・・・・こうなるの・・・・」
感動の涙が再び悲しみの涙になって、ネギはうな垂れてしまった。
「皆さん! スポーツでずるして勝ってうれしいんですか!? 男なら正々堂々とじゃないんですか!?」
かつてドッジボール中に魔法を使おうとした自分に向かってアスナが言ってくれた言葉だ。
だが、不良に卑怯もクソも無い。
「何言ってやがる! 裏で金使って取引してる奴と違って、俺たちはコソコソしねえで堂々とやってるじゃねえか!!」
「開き直ってるだけじゃないですかァ!?」
ネギががっくりとする。
その間にもカミナたちは相手チームの内野の人間を二人三人と次々と当てていく。
「いいペースね。どーせ、四天王もヴィラルも素人だし、相手が混乱している隙に倒すならやっぱり経験者の奴らよね・・・だったら・・・」
敵に当たって運よくこちらの陣地まで再び戻ってきたボールを拾い、今度はヨーコが投げる。
「次はあんたよ!」
運動神経抜群のヨーコの球は、スピードと威力を兼ね備えた中々の剛球だった。
しかし・・・
「調子に乗らないことよ」
「なっ!?」
英子がヨーコの剛球を正面から受け止めた。
流石は経験者。ましてやそれなりの実績を兼ね備えた強豪の部でもある。
何を隠そう麻帆良ドッジボール部は関東大会優勝がどうとかの部活である。
いかに剛球とはいえ、素人のボールを止めるのは当然と言える。
「ふっ、確かに威力はすごいけど、所詮は単調なストレートボール。こういう技があることも知っておくようにね」
「ッ!?」
英子はボールを持ったまま体を捩じる。
まるで野球のトルネード投法や円盤投げのようなフォームだ。
そして捩じった体の反動、そして回転を利用してボールを放つ。
「トルネードスピンショット!!」
英子の投げたボールが、螺旋の軌道を描いてダイグレン学園に襲いかかる。
「つっ!?」
「へっ? ・・・っていやあ!?」
「あううッ!?」
ヨーコは何とかジャンプして英子のボールを回避したが、その後ろに居たキヨウとキヤルが二人まとめてボールに当たってしまった。
「す、すごい! 僕たちのクラスとやった時は、あんな技無かったのに」
これが噂のダブルヒットだ。
「な、なんて技なの!?」
「あの技・・・昔のドッジボールアニメで見たことがあるぜ」
「ああ、小学生の時に真似して誰一人成功しなかった技だ。まさか現実に完成させた奴が居るなんてな・・・」
関東大会優勝も伊達ではない。
一瞬でペースを相手の物にされ、ダイグレン学園も顔色が変わった。
「おほほほほほ、これが私のトルネードスピンショット。あなたたち不良にはどうあがいても止められないわ」
そして英子の投げたトルネードスピンショットはダイグレン学園の二人をアウトにしてもボールの威力は衰えずに、そのまま外野まで転がった。
つまりまだ相手ボールのままだ。
そしてボールは外野を中継して、また英子の元に戻る。
「卑怯な手でだいぶ内野の数を減らされたけど、もうこれまでよ。さて・・・次はそこのブ男たちにぶつけるわ」
英子が男たちに狙いを定める。だが、ここでチミルフが口を挟む。
「まあ、待てウルスラの。慌てることは無い」
「えっ?」
「それにこれは元々ワシらの喧嘩でもある。ならばワシらも少し活躍させてもらおうか」
「そうだね、ドッジボールってボールが回ってこないと暇だからねえ」
「ふっ、我らの必殺ショットも披露してやろう」
「そして奴らに思い知らせてやるのだ」
要するにボールを渡して投げさせてくれと言っているのだ。
まあ、言っていることも筋が通っている。そのため英子もニヤッと笑ってボールを渡す。
「さあ、まずはワシからじゃ!」
まずはチミルフが投げる。
その丸太のように太い剛腕、両手のひらでボールを上下から押し潰す。
そして潰されて膨張し、形が少々変形したボールを、そのまま腕力に任せて投げる。
「パワーショットじゃ!!」
「きゃああ!?」
「キノーーーン!? この野郎・・・よくもこの俺の可愛い妹を!!」
今度はキノンが当てられた。
「どうした、そんなものかァ!」
「ふん、大したこと無いねえ!」
「これはニア様を奪還するのは意外と楽なことになりそうじゃのう」
一気に人数が減っていくことと相手の挑発に悔しそうな顔を浮かべるダイグレン学園だが、相手チームの猛攻は止まらない。
「むっ・・・出来る・・・もしテッぺリン学院にドッジボール部が設立されたら、我らの関東王者の座も脅かされる」
英子も素直にテッペリン学院の強さを認め、負ける要素が一切無いと、既に余裕の表情を浮かべている。
「あわわわ、どうしよ~。まさか相手がこんなに強いなんて。僕が言い出したことでこんなことになるなんて・・・教師の僕が助っ人に入るわけにもいかないし・・・」
生徒たちのことを思ってスポーツ対決を提案したネギだが、それが裏目に出た。
まさか相手が金を使って助っ人を呼ぶなどと予想していなかったため、ダイグレン学園は窮地に追いやられていた。
「このままじゃ残りの皆さんも・・・」
だが、まだだ。
そんなネギの不安を吹き飛ばす、諦めていない男がまだ居る。
「へっ、上等じゃねえか! このピンチをひっくり返したら、俺たちはヒーローだぜ!」
「アニキ!?」
「カミナッ!?」
「カミナさん!?」
ダイグレン学園番長のカミナは諦めていない。
「で、でもアニキ~、四天王に経験者が相手じゃ勝ち目が無いよ~」
「馬鹿やろう! 無理を通して道理を蹴っ飛ばす! それが俺たちダイグレン学園の教育理念だろうが!!」
心に過ぎる不安や弱気な心など全て吹き飛ばす。
それがカミナという男の力だ。
(皆さんの心が・・・すごい、持ち直している。言っていることはメチャクチャだけど、カミナさんの言葉で、皆さんも目の色が変わってきた)
ネギの思ったとおり、その言葉を聞いたキタンたちも、臆していた気持ちが少し軽くなった。
「で、でもどうやって?」
しかし、このままではただの強がりだ。素朴な疑問をシモンが投げかける。
この状況を打破する一手、それは・・・
「お前がやるんだよ!」
「・・・・・・えっ?」
反撃開始の作戦が皆に告げられた。
「むむ、何をやってるの?」
「気をつけろい。カミナもそうだが、あの小僧も加わると、何をしでかすか分からん」
コソコソと何かをやっているダイグレン学園に英子が首をかしげ、グアームたちは警戒心を高める。
これまで幾度と無く喧嘩してきただけに、相手がこのまま終わらぬことは彼らが一番分かっていた。
そして、次の瞬間グアームたちは目を見開いた。
「はーっはっはっは、こいつが兄弟合体! 待たせたなテメエら!!」
「ぬぬ、合体か!?」
何とシモンがボールを持ち、カミナに肩車されているのである。
「さあ、行け! シモン! 自分を信じるな! 俺を信じろ! お前を信じる俺を信じろ!!」
「わ、分かったよ、アニキ!」
カミナはシモンを肩車したまま走り出す。
シモンも恐れを覚悟に変えて、振りかぶる。
「シモンさん、自信を持って!」
思わずネギも外野から声を出す。
「おう、そうだシモン!」
「シモン、がんばるのです! シモンなら大丈夫です!」
「しっかりやんなさいよ、シモン!」
ダイグレン学園の仲間たちの声が響く。
「いけ、シモン! お前のドリルで壁を突き破れ!! 漢の魂完全燃焼!!」
その声援を背負い、己の気合と合体で生み出されたパワーを用いて、シモンは吠えた。
「うおおおお、必殺! ギガドリルボールブレイクゥ!!」
シモンが投げたボールは、ドリル回転で突き進み、うねりを上げて相手チームに襲い掛かる。
「な、なぜだああああ!?」
「いやああ!?」
「こ、これはジャイロボール!?」
シモンの繰り出した想像を遥かに超える魔球が英子たちの背筋を凍らせた。
その巨大な力を止めることは出来ず、ヴィラルとブルマーズの一人が同時にヒットした。
これで残る相手は四天王と英子のみ。
希望が再び見えてきた。
「やっ、やったよアニキ!」
「おう、流石だぜ兄弟!」
「シモン、素敵です!」
「やるじゃないの!」
シモンとカミナの力が先ほどまでの不安を希望に塗り替えた。
ダイグレン学園の勝機が訪れた。
だが、次の瞬間・・・
「ぬりゃあああ!!」
「ッ!? シモン、危ねえ!!」
「・・・えっ?」
喜びに踊るダイグレン学園の隙を突き、チミルフがシモン目掛けてボールを投げてきた。
誰も気づかぬ中で、唯一気づいたカミナがダイビングしてシモンを突き飛ばす。
「アニキ!?」
「チミルフ!? テメエ~」
危うくやられるところだった。
ボールはシモンに当たらず通過し、そのまま外野へと出て行く。
しかし・・・
「先ほどのお返しだ!」
「ヴィ、ヴィラル!?」
「外野の者もボールを投げられるというルールを忘れるなァ!!」
チミルフが投げたボールを、外野に居るヴィラルがキャッチし、そのまま即座に投げ返す。
狙いはカミナだ。
だが、カミナも何とか体を反転させて、間一髪で回避するが、敵の攻撃は終わらない。
「これで、終わりよ!!」
「げっ、ブルマーズ!?」
よけたボールの先には、今度は英子が居る。
そして英子はバレーボールのレシーブのようにそのボールを高く上げ、そしてボールに向かってジャンプする。
「なっ、逆光が!?」
太陽を背に高く飛ぶ英子。カミナは太陽の逆光で英子の姿を直視できない。
「必殺! 太陽拳!!」
何度もボールを回避してきたが、立て続けに起こったためにカミナの体勢は崩れていた。
そして・・・
「ぐわああああああああ!?」
ボールはカミナの顔面に直撃し、カミナの悲鳴が麻帆良中央駅前に響き渡った。
「アニキ?」
ヒットしたカミナを、シモンは見下ろした。
「やられた・・・すまねえな・・・ダチ公・・・」
そしてダメージを受けたカミナは、そのまま気絶してしまった。
「ア・・・ニキ?」
カミナは自分を庇って、体勢を崩して敵にやられた。
「アニキ! アニキーーーーッ!?」
カミナがアウトになってしまった。
ダイグレン学園は全員開いた口が塞がらなかった。
どんな喧嘩もカミナが居たから、自分たちはここまで来れた。
しかしそのカミナがやられたことは、彼らの心に大きな穴を開けた。
「アニキさん・・・シモン」
ニアはシモンの下へ走る。
自分の所為でカミナがやられたと思っているシモンは、自分を責め、ショックで肩をガックリと落としている。
「俺の所為だ・・・俺の所為でアニキは・・・」
「・・・シモン・・・」
期待されていたのに、自分の所為でチームを最悪の展開に追い込んでしまった。
自分を責め続けるシモンに掛ける言葉が見つからず、ニアは黙ってシモンを抱きしめる。
「そんな・・・カミナさんが外野になってしまったら・・・」
ネギも僅かな時間ながら、カミナという男がダイグレン学園の不良たちの中でどれほど大きなウエイトを占めているのかがそれなりに分かっていた。
だからショックを受けるシモンやキタンたちの気持ちが分かった。
敵は逆にカミナを当てたことにより、この勝負はもう自分たちの勝ちだと疑っていない。
完全に勝ったと思っている顔だった。
当てられたカミナも気絶して何も言わない。
もう、これで終わりなのか?
この勝負はダイグレン学園側の敗北になってしまうのか?
誰もがそう思いかけたその時だった。
「そこで何をやっているんだい、君たち! ここをどこだと思っているんだ! しかも授業中だぞ!?」
三人の教師が、騒ぎを起こしているシモンたちに向かって怒鳴りながら現われた。
「げっ、ガンドルフィーニ!?」
「鬼の新田!?」
「やべえ、デスメガネも居やがる!」
現われたのは、魔法先生のガンドルフィーニ、そして魔法先生ではないが、学園の広域生活指導員の新田。
そして・・・
「タ・・・タカミチ」
「やあ、ネギ君。研修初日に大変だね」
学園最強候補のタカミチまで現われたのだった。
どれもこれも麻帆良では有名な教師。
タカミチに関してなど、テッペリン学院の不良たちでも知っていた。
「ぬう、あれが噂のデスメガネか」
「だが、これでこの茶番も終わりだね~」
こうなってはもうドッジボールどころではない。
少し拍子抜けな感じをしながら、チミルフたちも学園の教師たちの下へ歩いていった。