【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン) 作:アニッキーブラッザー
何かが起こった。
その光景に目を奪われ、油断していたアルはそこで意識を失った。
「少々寝ておれ・・・貴様らの相手は後でしてやろう」
アルの意識を背後から奪ったのは、全ての始まりの魔法使い。
「それにしてもこちらでは・・・ふふ、中々面白いことになっておるな・・・・」
彼は、自らが現場に赴き、全てを見ていた。
シモンは今、ニアと出会って間もないころを思い出していた。
常識はずれのお嬢様が、何を思ったのか自分との出会いを運命の出会いと言い、家まで押しかけてきて、学校まで転校してきた。
シモンも元々一目惚れに近い感情をニアに抱いていたので、二人が強く惹かれあうのは自然な事だった。
二人は互いに強く想い合い、何人にも侵すことのできない強い絆を・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
・・・強い絆を持っているからこそ、申し訳なさと罪悪感でいっぱいだった。
「マスター、ご命令をなんなりと」
しかし、シモンの思いを知らずに、目覚めたばかりのアーウェルンクスは空気を読まない。
「あの・・・君?」
「なんでしょうか?」
無表情のまま首を傾げる。シモンは一瞬、「可愛いな畜生」と思いながらも、己の理性を精一杯保って彼女に告げる。
「とりあえず・・・そういうの無しにしない?」
咳払いして、言いにくそうに言うシモン。
「返品受付はされておりません」
しかし彼女はキッパリと断ってしまった。
「何でそういうところはキッチリしてるのさ!?」
ドサクサに紛れてアーウェルンクスをゲットしてしまったシモン。
女性型アーウェルンクスのセクストゥムは、シモンをかつてないほど動揺させていた。
それは無論、この男もそうだった。
「ぬうあああああああああああああああああああああああああああ!! なぜだああああああ、シモォオオオオ!!」
「デュナミス・・・」
「空の箱の1番を除いても、2番から6番まで5つもあったではないか!! 6番以外なら全然許したが、貴様は何一発でよりにもよって大当たりを的中しているんだ、貴様ああああああああああ!!」
誇り? 見っともなさ? んなもん知ったことかとか、デュナミスは人目はばからずに涙した。
「お前は神か!? 新世界の神かなんかか!? この世はお前の都合のいいように作られているのか!? この世の男たちに陳謝しろ!」
「あ、謝れって言われても・・・俺にはどうしようも・・・」
「いいか!? 貴様はその愛玩用アーウェ・・・ではなかった、世界平和のために生み出された聖なるアーウェルンクスを! 事故でワザとじゃないから許してくれなどと言って許されると思っているのか!? 確かにそいつは人形かもしれないが、そいつは貴様の欲望のはけ口のために生まれたわけではない! 私専属のメイドの夢・・・ではなく、共に大義を成すための同志! ご飯にします? お風呂にします? それともアーウェルンクスにします? という私の夢・・・ではなく、地球人類を救うための共に同じ道を歩くかけがえのない無い仲間を貴様は奪ったのだぞ!?」
デュナミスは、ちょくちょく大義という雰囲気を出そうとしているが、今の彼は見たまんま嫉妬と憎悪まみれの塊でしかない。
先ほどまでは絶対的に対立していたデュナミス相手に、何だかシモンも申し訳なくなってしまった。
だが、涙目のデュナミスの傍らで、無垢なるアーウェルンクスがその本領を発揮し始めるのであった。
「マスター、お怪我があります。治癒魔法をおかけします」
「えっ、ちょっ!?」
「ジッとなさってください」
顔色一つ変えずにシモンの顔を間近で覗き込んでくるセクストゥム。
「むむむ、無視をするではない!? 大体、セクストゥムよ! 貴様はそれで良いのか!? いくらインプリンティングしたとはいえ、貴様の身に備わった機能が泣いているぞ!?」
「マスター・・・無理を・・・なさらないでくださいね・・・」
「ってをおおおおおい、無視するではない! つーか、献身的すぎるではないか!? インプリンティングとはそれほどまでにすごいのか!?」
セクストゥムの視界には既にデュナミスは入っていない。クールな表情でありながら、何とも献身的で、シモンにはとても無防備な姿だった。
当然シモンも照れる。照れ隠しに、慌てて離れようとする。
「い、いいよ。戦いの最中だし、確かに痛いけどこんなもん舐めて唾つけときゃ治るさ!」
とにかく恥ずかしいシモンは、セクストゥムを突き放そうとした。
しかし、シモンはアーウェルンクスのクオリティと底力をまだ知らなかった。
「かしこまりました」
「かしこまりましって・・・うえッ!? おまっ、ちょっ、何を!?」
「チュッ・・・チロチロ・・・ペロペロ・・・ペロペロ・・・」
シモンの顔を両手で固定したセクストゥムは、なんとシモンの顔に唇を近づけ、その小さく穢れのない舌をくっつけた。
「なななななにをッ!?」
「マスターが舐めれば治るとおっしゃりましたので、水分を含ませ、全身を舐めさせていただきます」
「はあああああああああああああああああああああッ!? い、いいよ汚いし!?」
「お気になさらず。このために私がいるのです」
シモンは激しく抵抗して逃れようとするが、最強クラスの力を誇るアーウェルンクスから逃れることなどできず、ただ成されるがままだった。
「ほぢゅああああああああああああああああああああああああ!?」
デュナミスは、元の面影がないほど狂乱していた。
「セクストゥウウウウムッ!? 貴様は仮にも誇り高き完全なる世界のアーウェルンクスであろうがァ!? 誇りは!? 大義は!? 信念は!? 貴様の生みの親である造物主の意思はどうした!?」
「・・・・・・? プイッ・・・・・・マスター、こちらも致します。どうぞ、楽になさってください」
「私を無視するなぁああああああ!?」
デュナミスの言葉に一瞬首を傾げたセクストゥムだが、すぐに興味をなくして、シモンの傷の手当てに行動を移したのだった。
「こちらも怪我が大変ひどい状況です。こちらも私が致します」
「ちょまっ、ちょっま!? 服は脱がさなくていいから!?」
「命令のキャンセルと変更は受けかねます」
デュナミスは発狂した。
両膝を床について、何度も何度も頭を床に叩きつける。
そして頭がおかしくなったのか、デュナミスはローブをまくり、生傷がひどい自分の肌を見せつける。
意外とナイスでマッチョなボディをさらけ出し「ぬふ~ん」と言うデュナミスは、欲望のままに叫ぶ。
「セクストゥゥゥゥム!!!!」
「?」
「私も怪我しているぞ! 同志だぞ! 舐めて手当しろ!」
「・・・・・・・・・プイッ」
「そ、そこまで無視するか!?」
言葉に出さずとも、瞬時の拒否だった。
「こ、ころす・・・・」
「デュナミス、待ってくれ!? 俺にもどうしていいか分からないんだ!? っていうか、こいつはどうやったら止まるんだ!?」
「幸せ者の悩みなど知ったことかァァァァァァァ!! ぬおおおおお、今の私は何でもできるぞォ! 人間殺害不可という制約を解除することも出来そうだぞォォォォ!! つうか、私と死闘を繰り広げた男が、相手がそいつになると何故抵抗できん! 知ってるぞ! ワザとだろ! 嫌だ嫌だも好きの内だ! 見せつけてるんだ! 貴様の心など、お見通しだあああああああああああ!!」
デュナミスは、怒りのあまりにそろそろ何かに変身しそうだった。
身にまとう影がデュナミスの感情に左右されて、禍々しいフォルムになり、迫力が増していく。
「なんか・・・さっきよりすごくなってる・・・」
「ぐはははははは、この世の悲しみと憎しみ、全てを背負って今の私があるのだ」
だが、その限界を超えるキッカケをシモンが知っている以上、何だか見ていて悲しくなってきた。
「シモンよ・・・貴様は言ったな。アーウェルンクスが我々の仲間だと認めない。奴らを人間扱いしない居場所など、ぶち壊すとな」
「あ、・・・うん」
「その言葉・・・形を変えて貴様に返そう」
「な・・・なんてだよ?」
この日のこの瞬間は、デュナミスが本気で世界を滅亡させようと思った瞬間として歴史に刻まれる。
「ここまで不公平な世界など認めない。モテない男に居場所のない世界など、何百回でもぶち壊す!!!!」
悲しみを超越して力に変えていくデュナミスは、ドシンと床を踏みつけて、シモンを睨む。
「もうそれ、大義とか関係ないじゃないか!?」
「大義? 違うな。私を突き動かすのは、世界の声だ!! 世界が囁くのだ! 真の平等の世界を創世するためには、貴様のような奴は魂の欠片も残ることなく消滅させる必要があるのだ!!」
言っていることは非常に情けないのだが、そのどす黒い感情と殺意は紛れもなく本物だった。
「さあ、今こそ愚かなる人類に天罰下すとき!! シモン! 神妙に、消滅するがよい!!」
「くそっ、結局怪我が全然治ってないってのに!」
先ほどまで半死半生だったデュナミスは、怒りのあまりに限界を超え、本来の力を超越した。
巨大なパワーに、あらゆる応用の利く影魔法。
たとえ恋愛運に恵まれなくとも、その強さは偽りなかった。
当然シモンも迎え撃とうとする。だが、激戦のダメージが体を蝕み、思うように動かない。
(くそ・・・体が・・・でも・・・)
シモンはセクストゥムを見る。
どんなに人形だとデュナミスが言っても、セクストゥムは紛れもなく女の子だ。ならば、男として守らなくてはならない。
「くそっ、やってやる!!」
守る。
出会ってからの時間など関係ない。
例え限りなく他人であろうと、ここで逃げ出す男など、男ではなかった。
だが、シモンがそう覚悟を決めた瞬間・・・
「マスターに危害は加えさせません」
「・・・・・えっ?」
守ろうとするシモンを通り抜け、逆にシモンを守るようにセクストゥムが前へ出た。
「危ない! ここは俺に任せて!」
「はーっはっはっ! また女に守られるか、シモン! 貴様の存在と共に、その腑抜けた精神も消し去ってくれよう!!」
セウクストゥムを止めようとするシモンに、笑うデュナミス。
だが、次の瞬間、シモンとデュナミスは同じように驚愕する。
「氷神の戦槌(マレウス・アクィローニス)」
「「ッ!?」」
巨大な氷塊が、セクストゥムの無機質な呟きとともに天井に出現した。
「ちょっ、おまっ、で、でかすぎる!?」
「マスターは、私が守ります」
「き、きさまッ!?」
降り注ぐ巨大な氷塊。デュナミスは魔法で迎撃する暇などない。
「甘く見るなァ!! 目覚めたばかりの貴様なんぞにやられる私ではない!!」
彼はその身に備わったパワーで、巨大な氷塊を受け止め、渾身の力で抱き割った。
それだけでデュナミスがどれほどパワーアップしたのかが分かる。
だが・・・
「凍てつく氷柩」
「はっ?」
「こおれ」
「ぬおおお、体が!?」
砕かれたはずの氷がデュナミスを包み込み、デュナミスを四角形の氷の中に閉じ込めた。
「ぬううううううううううう、腐っても流石はアーウェルンクス! しかし、私がこれしきで・・・氷漬けになると思うなァ!!」
デュナミスが猛る。
それは、意地。
絶対零度の世界でも、這い出そうと氷河の中であがく。
しかしセクストゥムは・・・・
「その両手足を除去します」
「・・・・・えっ?」
それは、何の感情もためらいもなく、彼女はやった。
「水流斬破」
「ッ!?」
それは正にウォーターカッター。
セクストゥムが薙ぎ払うように振るった腕から、圧力と速度の誇る水流が放たれ、氷漬けで身動きの取れぬデュナミスの右腕を切断した。
「・・・お・・・ま・・・・・」
「ぐぬうおおおおおおおお、わ、私の腕が!?」
その光景に青ざめるシモンに、顔をゆがめさせるデュナミス。
だが、デュナミスはどれほど痛みを見せようと、体を氷漬けされているために身動きできない。
そんなデュナミスにセクストゥムは・・・
「なにやってんだ、いくらなんでもやり過ぎだろ!?」
「マスターへの脅威は全て排除します」
「やめ――ッ!?」
彼女は身動きできぬデュナミスの四肢を全て切断しようと・・・
「させぬわァ!」
「・・・・」
「このデュナミス、そう簡単に朽ちると思うな!」
デュナミスは氷の戒めから自力で這い出した。
「デュナミス、お前まだ!」
「これ以上はこの私ですら見るに堪えん! 我が同志となるはずであったセクストゥムよ! 一思いに、消してやろう!」
片腕を失ってなお、戦意が衰えていない。
片腕失っても、まだもう一つある。
「うおおおおおおおお、永遠の園でまた会おう!」
もはや魔力も体力と同じように尽きかけているデュナミスは残る力を振り絞って、セクストゥムを薙ぎ払う。
「無駄です。仮面の者」
だが・・・
「なっ!?」
「って・・・・うぇえええええええええええええ!?」
セクストゥムは体を水のように液体化し、デュナミスの攻撃を受け流した。
「き、貴様、水化だと!? そんな力は備わっていなかったはず!? どうやって!?」
「私に物理攻撃は一切通用致しません」
「そ、そんなのアリかァ!?」
巨大な魔法に、物理攻撃の利かぬボディ。
「水流連斬破」
「なんという水圧!? 魔法に身のこなしに、おまけに私の攻撃は一切通用せんだと? そんなもの・・・そんなもの・・・」
正に無敵だった。
さらに・・・
「ま・・・まて・・・やり過ぎだ! 殺す気か!」
セクストゥムは一切の情も加減も無い。既に半死半生のデュナミス相手を、徹底的に無力化しようとしている。
いくら何でもやり過ぎだ。
シモンも良心の呵責に耐えかね声を出す。だが、セクストゥムは一切の感情の乱れもなく返した。
「はい。マスターの脅威は全て排除いたします」
「なっ!?」
やり過ぎどころか、それを当たり前のように答えたのだった。
先ほどの一撃にすべての力を出し切ったデュナミスに、もう抵抗の力がない。
気づけば四肢を失ったデュナミスは、切断面を氷漬けにされたまま床に倒れこんだ。
「お前・・・・な、なんてことを・・・」
シモンはゾッとした。こうまで何も感じずに当たり前のようにできる、セクストゥムという存在に。
「切断面を氷結させました。これであなたは再生することはできません」
既に抵抗すら出来ぬデュナミスの状態を見ながら、セクストゥムはもう一度腕を振り上げる。
「さらにこの場で再生核を損壊させれば・・・」
まずい。
「やり過ぎだ! もう充分だろ!!」
「マスター?」
「もうこれ以上こいつも戦えない! 既に気も失っている! 死んじゃうじゃないか!」
シモンは慌ててセクストゥムを止めようとする。
「なにやってんだよ、お前は!? こ、ここまで・・・ここまでやる必要ないだろ!?」
「・・・マスター?」
「そりゃあ、俺たちは戦ってんだ。最悪の事態だってあるよ。でも・・・これ以上は、やっちゃダメだ!」
シモンとて戦う。ドリルなんてものを相手にぶつければ、どういうことになるのかは想像だってできるだろう。
そういう意味では何も違わないのかもしれない。
ただ、それでも何かが違う。何かが違うと思ったからシモンは止めた。
だが、彼女はあくまで自分を崩さない。
「それは・・・・・・ご命令ですか?」
「・・・なっ!?」
「この者はマスターの脅威。それでも命令だと仰るのであれば、従います」
「・・・ッ!?」
そういう意味ではない。そういうことではない。
だが、彼女の瞳を見ていると、うまく言葉が回らなかった。
世界を舞台に大義のために造られた人形。
そう、フェイトと同じような顔をしているようで、人間らしさを感じさせるフェイトと違い、どこまでも人に造られた存在に思えて仕方なかった。
でも・・・
「命令・・・なんかじゃない・・・でも・・・」
「命令でないのであれば、マスターの脅威と成り得るものを放置するわけにはまいりません」
「おまッ!?」
セクストゥムは腕を振り上げる。シモンの脅威と成る者の存在を葬るために。
「ふん、テルティウムと違って持て余すか。まだまだ若いな、螺旋の男よ」
「えっ?」
その時、シモンの背後に奴が現れた。
「あれほどの自我を持つテルティウム。アレと共にあり、さらには数か月前にはあの堀田の心をも変えたというお前ならと少しは期待したんだがな」
「お前は・・・」
「あの時の貴様は意識を失っていたが、これで会うのは二度目だ。時を超えて現れた螺旋族よ」
威圧感と存在感はアンスパ並み。
アンスパと同等並みの高みの存在に感じさせる、始まりの魔法使い。
造物主(ライフメーカー)がそこに居たのだった。