【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第35話 駆け落ち先はスゲーとこだ

麻帆良図書館島

明治の中ごろ学園創立と共に建設された世界でも最大規模の巨大図書館。

大戦中の戦火を避けるべく世界各地から様々な貴重書が集められ、蔵書の増加に伴い地下に向かって増改築が繰り返され、現在ではその全貌を知るものは居なくなった。

地下何十階と続くこの広大な図書館は、最早一種のダンジョンと化していた。

この巨大図書館の全容を知るために、この学園では図書館島探検部などというものが発足されているぐらいだ。

 

「どこだーーーー!」

 

その図書館島の壁をシモンは・・・

 

「くそーー、この穴の中にも居ない・・・って言うかこんなに穴だらけだとどこに逃げられたか分からん!」

 

その図書館島の壁をシモンは容赦なく掘りまくった。

とにかく壁に穴を開けて手当たり次第に進みまくった。

この図書館島はダンジョンゆえに途中で罠があったり道が途切れていたりと困難な道が続いている。

しかしそこは、穴掘りシモン。

正規のルートではなく、壁に穴開けて地中をドリルで掘り進みながら逃げていた。

 

「こんな所で超がくれたドリルが役に立つなんて・・・」

 

図書館島の地中をハンドドリルで掘り進むシモン。その傍らにはニアがいた。

 

「でも、随分逃げてきちゃったな・・・時間を見てちゃんと帰らないとな・・・」

「ふふふ、そうね。きっとその頃にはお父様の追手の人たちも諦めてるわ」

 

今頃は地上ではお祭りで学園中が賑わっているというのに、気づけば自分たちは地中の中に居た。

だが、それを苦だとは思っていない。

それは二人の表情が物語っていた。

そう、二人なら大丈夫。

例えどこへ行こうとも、どこに居ようとも、二人なら大丈夫。

そうこの先何があっても・・・

 

「あれ?」

「どうしたのシモン?」

「・・・空洞が・・・」

 

地中を闇雲に掘り進んでいたシモンのドリルの刃先が、何かを貫いた。そう、穴が貫通したのだ。

 

「ッ、ニア!?」

「えっ?」

 

下へ下へと掘り進んだドリルは、何と地下にある巨大な広場を掘り当ててしまった。

広場の天井の真上から床に落下するシモンとニア。少し天井からの距離があったが、シモンはニアを抱き寄せ、何とか着地に成功した。

 

「ニア、大丈夫か?」

「え・・・・ええ・・・・でもシモン・・・ここ・・・一体何かしら?」

「・・・ああ・・・」

 

シモンとニアは不思議そうに掘り当てた巨大な広場を見渡した。

図書館島は広大で地下何十階へと続くほど広いと聞いていたために、これぐらいの広場が地下にあってもおかしくは無いのだが、シモンとニアはこの空間に奇妙な感覚を覚えずにはいられなかった。

 

「何で・・・図書館島だよな・・・」

「ええ・・・何故本棚どころか、本が一冊も無いのかしら?」

 

そう、図書館島が地下何十階へと続くのは、膨大な量の蔵書を保管するためである。だからこそこの広場もそのうちの一つだと思った。

だが、ここには本が一冊も無い。

あるのは、妙な遺跡のような岩とサークルだけだった。

 

「何だろうここ・・・この遺跡も・・・この空間も・・・何だか不気味だな・・・」

「でも、何かしら・・・このサークルのようなもの」

 

広場の中心地点まで移動し、改めて部屋全体を見渡す二人。

なんだか不気味な感覚が拭い取れず、自然と二人は手を繋いでいた。

ここは一体何なのか?

ここは一体どこなのか?

少し不安で二人の口数がなくなった頃、誰も居ないと思っていたこの空間に、声が響いた。

 

 

「まったく・・・ザジに言われて探してよかった。とんでもないものを掘り当てたね」

 

「「ッ!?」」

 

 

やれやれといった口調で現われたその人物は、二人の良く知る人物だった。

 

「フェイト!? どうしてここに!?」

「フェイトさん! ・・・・・・・どうして泥だらけなのですか?」

 

フェイトは膝や髪の毛に土がかかって、そのことについて尋ねると不機嫌そうに怒った。

 

「君たちを追いかけて穴の中を這って進んだからだよ」

 

どうやらシモンたちが開けた穴を通って追いかけてきてくれたようだ。

 

「そうか・・・でもよく分かったな。一応追っ手を誤魔化すために色々なところに穴を開けたのに・・・」

「ふん、常人には聞こえないかもしれないが、僕の耳なら君のドリルの音を聞き取れるからね・・・まあ、それはいい。問題はここだよ」

 

フェイトは少し冷たい瞳をしている。

まるで初めて会ったときと同じような瞳でシモンとニアを見ていた。

 

「シモン、ニア・・・今すぐこの場から立ち去ろう。ここは君たちが関わっていいものではない」

 

広場の中心に居る二人に向かってフェイトは告げた。

 

「な、何だよ・・・お前はこれが何か知っているのか?」

「・・・・・・」

「フェイト!」

「・・・・知る必要のないことだよシモン・・・」

 

それはまるで壁だ。

見えない壁だ。

フェイトが転校してきて、少しずつ溶けてきたかに思えたフェイトとの壁がここに来て強固になったような気がした。

まるでフェイトが居る世界に、シモンとニアを絶対に入れさせないかのような拒絶の壁。

 

「何でだよ・・・ここはただの図書館島の地下にある広場・・・それだけじゃないのか?」

「・・・・・・・」

「フェイト・・・そんな風に俺たちと壁を作るような、そんなところなのか?」

 

フェイトは全てを知っている。そしてその真実からシモンとニアを遠ざけようとしている。

シモンにはそれが寂しかった。

 

「何を隠してるんだよ・・・フェイト・・・」

 

別にこの場所が何であろうと、フェイトが帰ろうといえば普通に帰っただろう。

ここがどんな場所であろうと、無理して調べようとするほどのことでもなかった。

シモンにとって寂しかったのは、明らかに重要なことを自分たちに隠して、何も言わずに遠ざけようとするフェイトの態度だった。

だがフェイトもまた、シモンのその瞳に思わず顔を背けながら、小さく呟いた。

まるで懇願するように・・・

 

「頼む・・・何も聞かないでくれ・・・そしてここで見たことは全て忘れるんだ。シモン・・・ニア・・・僕を友だと思ってくれるのなら・・・この場所のことだけは忘れて・・・!?」

 

だが・・・・

 

「・・・えっ?」

 

その時だった!

 

「見て! 何か光っているわ!」

「な、何だよこれ!?」

 

空間に異変が起こった。

 

「バ、バカな・・・」

 

フェイトが全てを言い終わる前に、空間が・・・いや、今自分たちが両の足で立っている地面が光り輝きだし・・・

 

「どういうことだ!?」

 

空間に巨大な紋様が浮かび上がった。

それを見たフェイトは取り乱したように叫んだ。

 

「バ、バカな!? このゲートはもう作動しないはず! 20年前に封印されたはずでは!?」

「フェ・・・フェイト?」

「いや、いくら破棄されていないからといって・・・! そうか! 世界樹の魔力! 今年は22年に一度の大発光の時期! その巨大な魔力の影響を受けて、封印されたゲートに影響が!?」

 

フェイトはシモンとニアでは理解できない言葉で何かを叫んでいる。

 

「し、しかも何だ・・・この魔法陣は・・・アレはただの転送用の陣ではない・・・妙な複雑な術式までかかっている・・・どういうことだ!?」

 

いつも冷静なはずのフェイトのこの取り乱しようから、何か尋常で無い事態が起ころうとしていることだけは分かった。

更に・・・

 

「・・・シモン・・・あなたの背中も何か輝いているわ?」

「えっ、うそ?」

「そのグレンウイングよ。グレンウイングから光が・・・・あれ? 何かしら・・・グレンウイングの窪みに時計が挟まって、それから光が漏れているわ」

 

超がくれたグレンウイングからも光が漏れだした。

シモンが慌ててグレンウイングを外して光の原因を見ると、ニアの言うとおり、グレンウイングに装着されている懐中時計のようなものから光が漏れていた。

 

「本当だ、こんなところに時計が・・・こんなの気づかなかった・・・でも・・・何だろう・・・これ」

「見せてくれ!」

 

シモンも何がなんだか分からず首をかしげているところにフェイトは割って入り、問題の時計を見る。

そしてフェイトは目を見開いた。

 

「これは・・・この時計からも妙な魔力が・・・シモン、これを一体どこで!?」

 

乱暴にシモンの胸倉を掴むフェイトの表情は本当に切羽詰っていた。

 

「えっ? これは超がくれたグレンウイングだけど・・・」

「超だと? 彼女は一体何を・・・いや、・・・いや、この懐中時計の魔力もゲートに共鳴して光っている! まずい・・・急いでこの場から離れるんだ! 速く!」

「えっ?」

 

その瞬間、天井に浮かび上がった巨大な紋様から光の柱が降り注ぎ、シモンとニアとフェイトを包み込んだ。

 

「こ、このままじゃ・・・シモン! ニア! 急いで僕の手を掴むんだ!」

 

フェイトは必死に二人に向かって手を伸ばす。

シモンとニアも言われるがまま、とにかくフェイトに向かって手を伸ばす。

 

「急ぐんだ! 魔法陣が複雑に歪んでいる! このままではどこに飛ばされるか・・・・・!」

 

だが、時既に遅し。

シモンとニアがフェイトの手に触れようとした瞬間、完全に三人を包み込んだ光の柱がその手を阻み、三人は光の中に消えた。

 

「シモン! ニア!」

 

 

そしてフェイトの叫びを最後に、シモン、ニア、フェイト、この三人の姿は麻帆良学園から完全に消えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは・・・・・・・・・」

 

 

 

自分は先ほどまで図書館島の地下に居たはずだ。

だが、巨大な光の柱に包まれたと思ったら、次の瞬間シモンは大草原の上に立っていた。

空は暗く日は既に沈んでいる。

こういうのを黄昏時というのだろう。

しかし先ほどまで地中の中に居ると思っていたのに、これはどういうことだ?

 

「どこなのかしら・・・」

 

隣にニアが居ることにようやく気づいた。それほどシモンはこの状況に戸惑っていた。

 

「ニア!?」

「私たち手を繋いでたから離れなかったのね・・・でもここ・・・どこなのかしら? 私たちさっきまで図書館島に・・・」

「ああ・・・それに・・・フェイト!? フェイトが居ない!?」

 

最後の瞬間を思い出す。必死にニアと一緒に伸ばした手は、フェイトの手まで届かなかった。

 

「まさか俺たち・・・はぐれて・・・いやいや、そもそも一体何がどうなっているんだ?」

 

フェイトが見せていた態度を思い出す。

フェイトなら恐らく何がどうなっているのかを分かっているのかもしれない。

その何かを知られたくなくて自分たちを遠ざけた。そこまではいい。

しかし、さっきまで地下世界に居たはずの自分たちが一瞬で地上に居るなど・・・

 

「こんなの・・・まるで魔法みたいだ・・・」

 

どれだけ考えても何がなんだか分からぬシモン。

 

「ねえ・・・シモン・・・アレは学園祭の出し物なのかしら?」

 

考え込むシモンの服の裾をニアが引っ張った。

 

「ん?」

「ホラあれ。お空に大きな鯨がたくさん飛んでいて、大きな人が歩いているわ」

「えっ・・・何を言ってるんだよ、ニア・・・・・・・・って!?」

 

ニアののほほんとした声に振り返り、ニアが指差す方角を見たシモンは、次の瞬間絶叫した。

 

「なななななな、何だよあれエエエエ!?」

 

そこにはシモンの人生でこれまで一度も見たことの無いものが、景色を埋め尽くしていた。

山に匹敵するほど巨大な鯨が空を飛行し、さらに巨大な人どころではなく、正に巨大な巨人の怪物を吊るしている。

そして鯨は次々と吊るしていた巨人を地上へ落とし、巨人はその巨大な両の足でズシンと大地を揺るがし広大な森林の木々を踏み倒しながら歩き始めたのだ。

 

「まあ、すごい! 一体どこのクラスの出し物なのかしら?」

 

ニアは相変わらず能天気に目を輝かせているが、シモンは震えていた。

シモンとて目の前に広がる光景が何なのかは分かっていない。ただ、全身の細胞が告げていた。

 

(あれは・・・学園祭の出し物なんかじゃない!? それにここ・・・麻帆良学園でもないぞ!?)

 

それは直感だった。だが、本能でヤバイと感じ取ったシモンは慌ててニアの手を掴んだ。

 

「ニア、急いでここから逃げるぞ!」

「えっ?」

「ここはなんだか知らないけど、とにかくヤバイぞ! 逃げるんだ! ここがどこなのかの問題は後だ!」

 

シモンはグレンウイングの翼を広げ、再びニアを抱きかかえて飛び立った。

それはロージェノムや黒服たちから追いかけられているときの逃亡とはわけが違う。

 

(こんなの・・・こんなのまるで・・・)

 

それはまるで戦争から命惜しくて逃げ出すのと同じようなものだった。

 

「シモン・・・・・・・・・・ここは・・・・・麻帆良学園ではないわね」

「黒ニア!?」

「状況は全て見ていたわ。だけど・・・これは一体何がどうなっているのかしら・・・・」

 

シモンの腕の中でニアの人格が黒ニアに変わった。こういう言い方は少し変かもしれないが、こういう時は冷静で頭の良い黒ニアの存在はありがたかった。

だが黒ニアも目の前に広がる光景を見渡しながら黙り込んでしまった。

 

「黒ニア・・・黒ニアにも分からないのか?」

「・・・・ええ・・・フェイトなら何かを知っていると思うけれど・・・・」

「やっぱりフェイトが・・・」

 

だがここにフェイトは居ない。

まったく何も分からぬ場所でシモンたちはどうすればいいのか分からなかった。

だからこそ、空を飛んでみたもののどこへ行けばいいのかも分からない。

 

「とにかくあの巨人や鯨・・・あれから遠ざかるように逃げて、人を探すのよ。まず誰かから話を・・・・・・・・」

 

その時、辺りをキョロキョロ見渡していた黒ニアの首が、ある方角を見たまま固まった。

 

 

「黒ニア?」

「シモン・・・・・・・・あれを・・・・」

 

黒ニアはある方角を指し示した。それは巨人や空飛ぶ鯨が目指している方角の直線状に存在していた。

 

「塔?」

 

そこにあったのは、巨大な巨人の大きさに匹敵するほどの塔だった。

 

「明らかに人工的に作られたもの・・・ならば・・・」

「そうか、あそこになら誰かが居るんじゃないか!?」

「ええ! でも・・・まずいわ、あの巨人・・・ひょっとしてあの塔を壊そうとしているんじゃ・・・」

 

そう、黒ニアの言うとおり、明らかに巨人は塔を倒そうと手を伸ばそうとしている。

そして良く見れば他の巨人や鯨も、その塔を破壊しようとしているのではないかと感じた。

だからこそ・・・

 

「ああああーーー! ま、まずいじゃないか!? もしあの塔に誰かが居たら・・・」

「急ぎなさい、シモン!」

 

そこに誰が居るかは知らない。大体危険すぎる。

だが、気づけばシモンは飛んでいた。

そこに誰がいるかは分からないが、いるかもしれない誰かを助けるために飛んでいた。

 

「見て、シモン! あの塔のてっぺん!」

「ああ、人がいる! 何か変なローブみたいなのを羽織っているけど、確かにアレは人だ!」

 

塔に近づくにつれてシモンとニアは塔の頂上に人の存在を確認することが出来た。

そして目に入った瞬間、余計に力が入った。

巨人が容赦なく拳を振り上げて頂上に居る人ごと塔をなぎ倒そうとしている。

そんなことはさせない。

 

「黒ニア! 絶対に俺から離れないで!」

「今更何を言っているの、シモン! 何があっても離れないわ!」

 

グレンウイングを加速させ、シモンはハンドドリルを構えて、ニアを抱えたまま塔をなぎ払おうとする巨人目掛けて飛んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい・・・・・なんだアリャ?」

 

 

そんなシモンとニアの飛行を、少し離れた草原の上から三人の男たちが眺めていた。

 

「さあ、分かりません。何者かがあの鬼神兵に突撃しようとしているようですが・・・」

「おい・・・よく見るとまだ若いぞ、あの二人!」

「ちい、早まりやがって! おい、俺たちも行くぞ!」

 

三人の男たちも駆け出した。シモンとニアの後を追いかけ、塔を目指して猛スピードで駆けていく。

 


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