Fate/Last Master   作:三代目盲打ちテイク

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神聖円卓領域 キャメロット 14

 アーラシュと名乗ったアーチャーのサーヴァントに案内されて村に向かう。

 アーラシュ・カマンガー。いろいろと勉強してきたはずだが、あまり聞いたことのない名前だ。英霊である限りはその名にふさわしい功績があるはずなのだが――。

 

「んー?」

 

 記憶にない。日本語の資料ばかりで手がいっぱいで海外の資料にまで手が回らなかったのが痛いなと痛感する。たぶん日本ではマイナーだけど世界的には超有名な英霊な気がする。

 

「先輩先輩。わたしがお教えします」

「ほんと? ありがとう」

「はい、えっとアーラシュさんのことですか?」

「そうなんだ。彼のことは――」

「知らないってか?」

「おわっ――!?」

「はは、そんなに驚くなって」

 

 先導している彼がいつも何か隣にやってきている。もう既に村は目の前だからまっすぐ行けば問題ないからきたとのこと。

 

「いや、まあ、そうです」

 

 勉強不足だ。もっと勉強しないと。やっぱ寝る暇なんてないよな――。

 

「そう心配しなさんな。俺のこと知らないからって怒らねえよ。勉強不足だって、思わなくてもいいさ。というか、寝る時間まで削りなさんな。いざって時大変だぜ?」

「ええ!?」

 

 なぜバレた!?

 

「先輩。アーラシュさんは、未来さえ見通すと言われる千里眼の持ち主ですから」

「マシュは知ってるんだ」

「えっと、はい。先輩が勉強なさっているので……」

 

 ――私も、と。

 

 そう顔を朱くしながら言ったマシュ。

 

 ――…………可愛い!!!!

 

 って、ちょっと待て。全てを見通す千里眼…………。それはもしや、マシュの3サイズまでわかってしまうのでは……。

 そっとアーラシュさんの方を見ると。ウインクして頷いてた。

 

 ――あとで聞かなければ……。

 

 観察眼である程度はわかっているが、やはり正確な値というものは知ってみたいと思うわけでして――。

 とりあえずアーラシュさんについてだ。

 

「んー、俺はあんま説明は苦手だし。そっちのお嬢ちゃんに聞いたらどうだ?」

「でも、本人の方が」

「あんま誇ることでもないし、正直生前のことなんて恥ずかしいからな!」

「そ、そうですか。じゃあ、マシュお願い」

「はい! 任せてください!」

 

 なんだかとっても嬉しそうだ。

 

「では、僭越ながら先輩にご説明します。アーラシュさんの出身はペルシャ、今のイランにあたる国です。一番古い記述はゾロアスター教のアヴェスターで、イランの方では国民的に知られる英雄譚だったそうです」

「なるほど。結構古い時代の人なんだ」

「はい。それで、英霊になるほどの逸話となるといろいろとあるのですが、一番有名なのはやはり国境線を引いたお話でしょうか」

「国境線?」

「はい」

 

 曰く、パルスとトゥランという国があった。その国は長い間戦争をしていた。しかし、何十年も続いた戦争により、ペルシャとトゥランはすっかり疲弊しきり、殺し合いを誰も望んでいなかった。

 そこで、両軍はある協定を結ぶ。その内容というのが――

 

「――矢を放って届いた地点を国境と定めるというものです」

「そこで白羽の矢が立ったのが俺ってわけだ」

「矢で国境線か」

「はい。アーラシュさんが放った矢は、大地を割り、最も速き流星より疾く、飛翔距離は実に2500kmにも達したとか。ただ、その人ならざる絶技と引き換えに、彼は五体四散して命を失ったということです」

 

 その功績から彼は英霊にまで祭り上げられたということらしい。

 

「なるほど。とってもすごい人なんだ」

「そう臆面もなく言われると照れるな。――っとついたぜ」

 

 ようやく村にたどり着く。

 

「ここが、山の民の隠れ里……。立派な村ではないですか!」

 

 山岳地帯からまったくと言ってよいほど見えなかったというのに、立派な村がそこにはある。魔術の結界もなにもないのにどうやって隠しているのか。

 

「そこは山に住む者の知恵ってヤツだな。うまく山陰に隠れるようになっているんだと。呪腕の兄さんがアンタらを案内したくなかったのは、村の位置を万が一にも知らせたくなかったからさ」

「なるほど、確かに。魔術の守りがないから、見つかったらおしまいなワケだ」

 

 それに生活も決して裕福そうには見えない。このような山間の村だ。農業をしようにも場所は限られているし、狩りをしようにも獲物は少ない。

 飢餓まではいかないが、わずかな余裕もない。オレたちを受け入れる余裕なんてものはもともとありはしないのだ。

 

 その上で、オレたちを受け入れてくれた。それには感謝する。なにより彼らは、聖地への想いをそれでもなお捨てていなかったということに純粋にすごいと思ったのだ。

 衣食住足りてこそ。飢えを知らない現代の日本人からすれば、信仰の為に不自由を許容するその心はわからない。

 

「…………」

「ま、そう難しい顔しなさんな。気楽にしていればいいさ。ここのやつらは異教徒に偏見はない。厳しい暮らしによるものだろう。辛い旅をしてきた人間は一目でわかるんだよ。ここのやつらには騎士の兄さんの生き方がそういう風に見えたんだろうさ」

「私の生き方が……ですか。私は、人に誇れることなど一つもない男ですが……」

「はは。ま、そう思っているのはあんただけかもしれないぜ? でだ、今度はこっちが聞いていいかい?」

「なんですか?」

「人間のマスターを見るのは初めてだが、ここまで来た経緯を利かせてくれ。随分と特別な星を背負っているようだからな」

 

 アーラシュに聞かれたので、ここまでに至る経緯を語る。

 カルデア。人理定礎。あらゆる時代の滅却。特異点。こちらが持ちえる情報を全て、アーラシュに語る。ここに至る経緯。オレの旅路を。

 

 思えば遠くに来たと思う。特異点も六度目。遠くに来たと思うのも何度目だろうか。大小の特異点を合わせればもっと来たか。

 その中でもこの特異点は、何よりも厳しい。普段と異なり、全てが終わりかけている。足掻くばかりで、何一つ、何もできない。

 

「とんでもない大任じゃないか」

「改めて言われると、そうですね先輩」

「大変なのは、みんな一緒だよ……」

 

 そうだ。大任。改めて言われるまでもなくそんなことはわかっている。だから、オレひとりがこうやって落ち込んでいる暇なんてないのだ。

 

「まあ、そう気負うな」

 

 ぽんとアーラシュの手がオレの頭に置かれる。

 

「アンタには、頼もしい仲間たちがいるじゃないか。んで、そっちの兄さんはお供かい? 元円卓の騎士として、仲間たちを糾しに来たと?」

「いえ、私は……砂漠地帯で彼らと出会ったのです。それから聖都の門で再会し、こうしてともに」

「……ふうん。とりあえず行き先が一緒なだけ、か」

 

 それは目的が一緒ではない。いずれは同じ目的になるとしても、今は違うのだとアーラシュは言った。ともかく、歓迎してくれるという。

 

「とりあえず、まずは召喚サークルってやつの設置だろ?」

「なんで知ってるの!?」

「はは、察しが良いだけさ」

「ですが、アサシンさんにお断りしなくてもいいのでしょうか」

「構わん構わん。呪腕の兄さん、口じゃアンタらを嫌っているが、もう仲間意識持ってるからな。最初の戦闘の時だって、おかしかっただろ」

 

 なるほどと納得する。アサシンのサーヴァントが戦闘を挑んでくるのがおかしい。それに明らかに本気ではなかった。あの腕を使っていなかったのもそうであるし、明らかにこちらの攻撃を喰らった。

 まったく回りくどいにもほどがある。ただ、問題がないのなら早速召喚サークルを設置する。マシュの盾を用いて召喚サークルを設置。

 

「な――な、な……!?」

「設置完了しました。いつもならダ・ヴィンチちゃんが小粋なトークを披露してくれるのですが……」

 

 今は、その声はない。その声は、もう、聞こえてはこないのだ――。

 

「落ち着いたな? じゃあ、これからの話だ。アンタら、しばらくこの村にいるんだろう? 円卓の騎士の目から逃れるにはもってこいだからな。この村にいるかりぎおまえさんたちは安泰。情報収集もできる」

「確かに。ベディも疲れてるみたいだしね」

「私は疲れてなどいません。難民たちを避難させた後、一人でも聖都に戻るつもりですが」

「――ひとりで行く気ですか?」

 

 彼はひとりで行く気だろう。表情が、そう物語る。

 

「はじめからそのつもりでした、から」

「……行かせられないな。一人で円卓と戦えるはずもないのは貴方がよくわかっていると思うんだけど」

 

 ドクターから聞いた話、彼の霊基はめちゃくちゃだ。今までどれほどの無理を重ねてきたのだろう。霊基が乱れすぎてモザイクレベルの不安定さだと。

 ただそれだけではない。オレの直感が、観察眼がそれだけではないと物語る。ただ、事実がどうあれ彼をひとりで行かせることができないことだけは確かだった。

 

 ――これ以上、誰かを失ってたまるか。

 

 それが何よりも強い。オレはもうこれ以上仲間を失いたくないのだ。

 

「マスターのいう通りだな。どのみち、腰を落ち着ける場所が必要だったのさ」

 

 その後アーラシュの提案で狩りに出かけた。張り切るクー・フーリンやマシュたちが狩りに出ている間、オレとジキル博士、ジェロニモ、ノッブは今後について相談する。

 

「まずは目的だけど、獅子王の目的を知ること、だな」

 

 口火を切るのはマスターたるオレ。まずは確認。目的は人理の修復であるが、そこへ至るためにはまず獅子王の目的を知る必要がある。

 どうして円卓の騎士を用いて人々の選別なんてものをしているその理由を知らなければならないだろう。そのうえでオジマンディアスを納得させて聖杯を譲り受けなければいけない。

 

 おそらくは、そののちに獅子王と戦うことになるだろう。どのみち、敵は二つということだ。獅子王と太陽王。彼らは決して味方などではない。

 倒して済む敵というわけでもないのがまた厄介なところだ。それにどうあがいたところで今のオレたちに彼らを倒す手段はない。

 

「そのためには獅子王に面会しなければいけないね」

 

 しかし、それが難しい。聖都へ迎えば否応なく円卓の騎士と戦闘になってしまう。現状において、円卓と戦うのは得策ではない。

 なにせ、ベディヴィエール卿のアガートラムしか対抗手段がないのだ。そんな状態で戦えば磨り潰されるのがオチだ。

 

「であれば、獅子王を外に出すのがよかろう。こちらから赴けぬのであれば、あちらを動かすほかあるまい」

 

 逆転の発想。こちらから会いに行けないのであればおびき出す。

 

「戦の常道じゃな。じゃが――」

 

 獅子王はそもそも聖都から動かない。動く必要すらないのだ。手足たる円卓がいる以上、獅子王自らが動く必要性などない。

 仮に円卓という手足を失ったとして、獅子王には超級宝具の一撃がある。それは聖都から離れることなくあらゆる全てを滅ぼすことができるだろうことは想像に難くない。

 

 また、獅子王自体が外に出ざるを得ない状況とはすなわち円卓を撃破し、彼の王の目論見がとん挫するその瞬間だけであろうから不可能なのだ。

 円卓は現状では撃破不可能。手足を切り落とすこともできないのだから、頭が出てくることはない。

 

「じゃが、それはわしらがやった場合じゃ。ない袖は振れんのなら、ある者を使えばよい」

「オジマンディアスを動かす、か」

 

 力がないのならば拮抗している力をもつオジマンディアスを動かせば良い。不可侵条約を結んでいるということは対等ということだろう。

 ゆえに、双方のぶつかり合いは互いの頂点たる王が出てくる公算は高い。

 

「問題は、あの王様を動かすのは並大抵のことじゃないってこと、か」

 

 あの王様絶対にこちらが何を言ってもうなずかないだろう。現状、どうして滅んだかなどもあらゆる全てが不透明。そんな状態では彼の王は動かない。

 そもそもオジマンディアスに言われたのは真実を知れということ。そのために獅子王と対面しようとしているのだから、本末転倒どころか順序が逆だ。

 

「ならばいっそ獅子王本人に対面は諦めたらどうだろう」

「ジキル博士、それじゃ駄目なんじゃ? ――いや、そうか。やっていることだけなら、理由を知る者がいるか」

「円卓の騎士は王に従うが、全てを王様が統括しているはずもなかろう。補佐官殿という言葉もあったしのう」

「なるほど、その補佐官なら何かを知っている可能性はあるか」

 

 獅子王が動かずともその補佐官ならば動かすことができる。獅子王と比べれば円卓の騎士の方がまだなんとかなりそうであるが。

 やはり問題はギフトだ。あれをどうにかしなければこちらは手も足も出ない。

 

「今は、情報を集めよう」

 

 わからないことが多すぎる。山の翁の情報網を信じて今は待つ。

 そうして一週間の時が過ぎた――。

 




東の村にて。
八方ふさがりな状況です。

ネロ祭。とりあえず六回のボックスガチャが終了。今回はレートが低くて助かります。なのでメダル集めに戻りますが、礼装がないからきつい。
ガチャ引いても礼装出ない。ここまで出ないのは久々です。

それにしても魔竜は強かった。硬い。防御無視でようやくでしたし。
沖田さんと式で頑張りました。
次は何なのかなぁ。

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