鬼と人の決戦。ならばこそいなければならない者がいる。退魔の者。かつて多くを屠った武者がいなくてどうするのだ。
「――そこまでです」
舞い降りる。それは微かな、されど絶対の希望の旋律。平安において最強と呼ばれた神秘殺し。理論で殺すでもなく、ただ身に宿した圧倒的な武において神秘を屠ってきた武者がここに降臨する。
滾る覇気は清廉にして閃光が
「……まさかとは思っていたがよ。なんで、アンタがここにいやがる、頼光の大将!」
「ああ、やっぱり出てきてもうた。これはあかんわ」
前に立たれるだけで感じるのは絶対の安心であり、敵が感じるのは絶望に他ならない。この人の後ろにいればもう大丈夫。そんな母性とともに感じられる圧倒的な安心感。
敵が感じる絶望と痛烈な輝きは、まさしくかつての時代において最強と呼ばれた武人そのもの。
彼女こそ
「いけません金時」
そして、放った言葉は諫める言葉であった。
「いつも言っているでしょう。皆さんといる時は礼儀正しい言葉を使いなさい、と。それに……ここにいやがる、とはあんまりな物言い。まるで私が厄介者のようではありませんか。……もし、もし本当にそんなことを想っているのだとしたら……母は、泣いてしまいますよ……?」
武人然とした姿、覇気を放ったまま、彼女は母であった。畏敬の念を感じさせるままに、貴人そのままの気品すらも感じられる圧倒的な気の中で、彼女だけは自然体で母のような言葉を紡ぐ。
両立しない二つの性質が両立している異常。武人と母親という二つの性質がそこに同居して、怖ろしいと思えばいいのか、それとも別の何かを想えばいいのかわからなくなる。
ただ一つ、この人は圧倒的な人類の味方であるということであり、異形の敵であるということ。鬼たちが一斉に臨戦態勢に入ったのがその証拠。
誰も彼女から目を離すことができない。この人は違うのだとわかってしまう。何もかもが隔絶していた。彼女を前に鬼二人は視線を逸らすことなどという愚を起こさないし、できやしない。
つまり対等。鬼が発する覇気と彼女が発する覇気、圧力が釣り合っている。ただの人間がこれほどの覇気を放つ。サーヴァントであることを考慮しても鬼と人という隔絶した種族の力の差を知っているがために、信じがたい。
体感して理解しているがゆえに信じられないが、目の前の現実は確かに釣り合っているのだ。いいや、この場の全てを敵に回したとして彼女は変わらぬだろう。
なんの痛痒もなく敵を切る。彼女こそ人外魔境、平安の時代において最強と呼ばれた神秘殺しであるがゆえに、覇気、技量、力、そのどれもが桁を外れている。定められた限界を一体いくつ乗り越えればこんな領域に至れるのか。
まず間違いなく、自分では不可能と断じられるがゆえに畏怖を越えて、こちらにも恐怖しか感じない。二度目の邂逅。一度目の邂逅では感じられなかったものが今感じられる。
一度目に感じたあの覇気はきっと間違いではない。何かがあると直感が感じ取っていた。だからこそ、金時と彼女の関係が気になった。
母と彼女は言ったが――。
「実の母親じゃねえよ。オレっちを引き取って育ててくれた、大恩ある人には間違いないんだが。この人は最初からこうなんだよ」
最初から母として鍛えると言っていた。武者とは思えぬ母性は初めからあったのだと彼は言い。それが彼女であると断言する。
高次元で両立している斬滅の覇気と慈愛の母性。相反する陰と陽の気の奔流にくらりとくるほどだ。
「義理の母親みてーなものではあるっつーか。武芸の師でもあるっつーか」
「そんな……義理だなんて。母はそんな風に貴方を育てた覚えはありません……」
それが涙目でぷるぷると震えている。なんだ、この状況はと心が叫んでいる。この中で誰よりも恐ろしい女が涙目で震えている? まったくもって冗談じゃないと吐き捨てたい気分にさせられてしまう。
だって、そうだろう。怖いのだ。恐ろしいのだ。
それが両立しているという異常事態。彼女はあの状態でも斬れるのだ。いいや、それだけではないとオレの直感と心眼が彼女の真を看破しようとして――。
「あきまへんよ」
いつの間にか目の前に来ていた酒呑童子に目を塞がれる。
「それ以上はやめておいた方がええ。今は、まだ知らん方がええよって」
「――まったく、おちおち再会を喜ぶこともできませんか。その方から離れなさい」
「相変わらずやなぁ、頼光」
「聞こえませんでしたか?」
どこまでも優しく、頼光は言う。
「怖いわぁ。それに、あんたはん、いよいよ」
「酒呑!」
斬滅の気が走り、刃が彼女へと迫る。
「ああっと――」
それをひらりと躱す。オレを抱えて。
「いや、ちょっ!?」
「暴れんといてや。あのままやとうちごと斬られとったで?」
「そんなことはありませんよ」
「まあ、せやろうけど、心の話やて」
神秘殺しの斬撃の覇気を受ければ身体は切れていなくとも心の方が切れると。
「なんせ、臆病者やからなぁ。それでも退かんのは実に良いけども」
降ろされながらそう言われる。
「――誅伐、執行!!」
「まあ、今回は逃げるで――」
「あいわかった!」
酒呑と茨木は跳躍し戦闘域を離脱していく。
「虫は一匹でも残すと際限なくわいてくるもの。私はあれらを潰しに行きます」
「……わかりました。ですが、オレたちは」
「仕方ありませんね。それでは、金時、一人であれらを追うこの母を応援してくれますか?」
「応援……? そりゃまあ……って、オイ!」
ぎゅっと金時が抱きしめられて頭を撫でられる。それから彼女は去っていった。
「なんというか、鮮烈な人だな」
ただ――。そうただ、違和感がある。彼女ほどの人物が顕現したということは、それほどの事態なのか。あるいは縁による召喚なのか。
どちらにせよ何かがかみ合わない気がするのだ。だって――彼女がいれば、この島程度落とせるのではないかという思いがあるのだ。彼女の戦いを直接見たわけではない。
強さはあの覇気ではかっただけで本当のところは不明。しかし――。
「…………」
彼女ならば、簡単にこの島などつぶせるのではないかという思いを止めることができない。彼女から感じた覇気はそれほどだった。
いや、酒呑に止められたが、
「先輩? どうかしましたか?」
「いや……」
考え過ぎだろうか。慎重になりすぎている? 臆病になりすぎているのだろうか。わからないが、頭の片隅には置いておこうと思った。
何かがあるのだ。少なくとも彼女には――。
「とりあえず先に進もう」
わからないことを考えるよりもまずは行動した方がよい。だからこそ次の大門へと向かった。赤い大門が行く手を阻む。
大鬼のほかにいるのはやはりひとりのサーヴァント。
「…………!」
「やっぱりおったかワープ侍」
そこにいたのはいつぞやの沖田さん。酒の匂いがしているところを見ると彼女も酔っているのだろう。しかし、かつての雰囲気などどこにもなく。
「お主、どうした……」
――斬!!
斬撃が走った。
「ッ――」
一瞬にして目の前に現出した沖田。縮地により視認した瞬間には、オレの目の前で鯉口が切られる音がしていた。
誰一人として反応できない超スピード。話を聞く気などなく、戦闘覇気は、必ずやここでオレを切ると告げている。
縮地というワープのような歩法から繰り出される居合の速度は、まさしく神速。斬滅の気を乗せて、刃が走る。咄嗟に反応できたのは、この前に鬼と頼光さんの覇気を浴びて
刃の軌道上に左腕義手を咄嗟にもっていった。全てがスローモーションで動く世界の中で、雷のように高速の斬線が奔る。
走った刃が左腕に入り抜けていく。だが、一瞬、間が生じる。首に到達するまでに一枚壁を挟んだのだから、当然だ。
そして、その一瞬あればサーヴァントには十分。
「オラァ!!」
金時の拳が猛り沖田へと迫る。
「…………」
一切の逡巡なく、沖田は回避を選択。流麗な歩法で、あらゆるサーヴァントの一撃を躱して仕切り直しと相成った。
「大丈夫ですか、ますたぁ!」
「大丈夫」
左腕の義手は見事に断ち切られていた。ダ・ヴィンチちゃん製のそれを容易く切り飛ばすとは凄まじい刀法だった。
さすがは新選組一番隊隊長と言うべきか。しかし――。
「厄介だな」
まさかこんな酔い方もあるのかと思ってしまう。
「沖田さん、酔っぱらうとぐだぐだがなくなるのか……」
最初から人斬りモード。全力全開で、そのうえで赤鬼――轟力丸すら彼女の背後に現れる。そして、その巨体とは思えないほどの超スピードで突っ込んできた。
力の具現。力はあらゆる全てに通じるがゆえに、すべてにおいて高水準。巨体でパワータイプだから鈍重というのはゲームなどの中だけの話。
確かに筋肉量が多くなればそれだけ重くなるが、瞬発力という意味合いにては別の話。瞬発力を必要とする競技において足が肥大化するのはそれだけ瞬間的な出力を引き出すため筋肉がつくということであるから。
瞬間的な突撃の速度は遅いどころか何よりも速い。それでいて、全身にまとった鋼鉄の如きパワーを支える筋肉によってこちらの攻撃が防がれる。
まさに攻防一体とはこのことであり、
「――金時、後ろだ!!」
鬼にかまければ、
「おわっ!」
後方から、側面から、神速の侍が来る――。攻撃の瞬間まで気配が感じられない。おそらくは、現在の彼女はアサシンのクラスで現界しているのだろう。
気配遮断を用いての奇襲。本来であれば、サーヴァントならば問題なく対処できるはずが、彼女の縮地と合わさることで異常なまでの凶悪さを発揮していた。
「ええい、ちょこまかうごきおって!」
ワープのように目の前に現れ放たれる三段突き。それは防御不能の魔剣であり、魔剣ゆえに魔力消費もなく連射可能。
どこまでも冷徹な薩長殺すマシーンが駆動する。こうなればほとんど面制圧しかない。ノッブの三段撃ちは相性によってとことん決まらない。
「サンタさん!」
ならば
「任せるが良い――」
増大する魔力。反転した極光はこの場全てを呑み込むと告げているがゆえにわかりやすく。
鬼も沖田もそちらを狙う。
「おっと、行かせねぇぜ!」
鬼を足止めするは金時。唯一この中で直接あの轟力丸とやり合えるだけのパワーを持っているのだから、彼に任せる。
沖田の方は足止め不能。視線が通ればそこは既に彼女の間合いだ。止めようにもその瞬間には彼女の姿が掻き消えサンタさんの目の前にいる。
「おいおい、わしを無視するなよ、新選組――」
彼女を迎撃するのは一発の弾丸。そこに来ると読んでいたがゆえに最初からそこだけに的を絞り放っていた。ゆえに沖田は回避を選択。必殺の魔剣は放たれずサンタさんは無事。
「まったく、相性最悪じゃろ。ワープってなんじゃワープってずる過ぎじゃろ」
そう言いながら、今度は自分の目の前に来た沖田の斬撃を圧切長谷部で受ける。
「ま、あの時ほどじゃないのう」
相性は悪いが、それでどうにかなるほど自分は安くなどない。このところふざけすぎておったし、そろそろ本気という奴を見せんと人気がマジでヤバイ。
なにせ、コラボイベントでついに配布されてしまった単体アーチャーの褐色ロリがいる。配布全体アーチャーであるため役割は被らないが、唯一の配布アーチャーというありがたみが消えた今、テコ入れが必須なのだ。
それに新規さんは総じて過去の配布鯖は手に入れられない。つまり、相応に貴重になりつつあるということであり、それだけ知名度があがらなくなってきているということ。
チビノブほしい、とか言う声はいまもあるが、チビノブじゃなくてノッブほしいとかないのかと小一時間ほどカリスマ授業したい。
というか、沖田ばかり立体化とかずるいじゃろ。同じコハエース出身なんじゃから、わしも立体化しろよと。これが社長に気に入られたものとそうでない者の差というのならあまりにも残酷ではないかと。
まあ、そんな思考がノッブの中を一瞬で駆け巡り、消えていった。
「じゃ、まあ、そういうことじゃ――って、ノッブ!?」
その隙に沖田は、彼女を無視してサンタさんを切りつける。
「チィ!」
聖剣の発動は止められたが、
「甘いな」
「サーヴァント界最大のヒットナンバーを、聞かせてあげる!
爆音が全てを消し飛ばす――。
頼光さん登場。うちのぐだ男のスキルは直感と心眼がついているため、それなりに鋭い。こともあって、いろいろと看過しかけております。
で、沖田さん酔っぱらって可愛いところ出すよりかっこいいところ出そうと思ったらアサシンの人斬りになったでござる……。
轟力丸が正面から突っ込み、沖田が縮地ワープで削るというコンビプレイでしたが、音響兵器によって鎮圧です。
なお、まだ鬼は倒してませんが、動きはとまりました。沖田さんはノッブにしばかれてます。
さて、プリヤイベ後半戦開始ですね。とりあえずクロだけは何が何でも宝具レベル5にすべく林檎を解禁。
さあ、行くぞォォォォ!!
で、きてくれたイリヤですが、うちでの運用はとりあえずマルタの姉御(騎)と獅子頭(凡骨)と運用しての宝具チェインOC500のアサシン絶対コロス砲台として運用していこうかと考えています。
マルタの姉御はデメリット解消用。なお、もしかしたら孔明先生や玉藻に代わる可能性あり。
そもそも一発だけの浪漫砲にするなら、礼装で打ち消すこととか考えず一発に全てを賭けて、あとは孔明バフで相殺してプラスになると思われるので、デメリット考えないでいいような気がする。
まあ、エレナとともに来てくれて倉庫で眠れる獅子やってたエジソン氏に活躍の機会ができるとは、イリヤは来るべくしてきたんだなとか思えてきた次第です。
やはりいろんなサーヴァント育てないとですね。イベント終わったら、玉藻、イリヤ、エジソン育てないと。見事にキャスターばかりだ……