Fate/Last Master   作:三代目盲打ちテイク

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天魔御伽草子 鬼ヶ島 6

「フッ……機械仕掛けの馬と忍者の鳥に敗れるか……」

 

 がっぽり稼げて良い相手だった。その際並べられた首は見なかったことにしよう。

 

「やはり、色香に迷ったのがそもそもの敗因か……いや、峠の茶屋の団子がうますぎてな……」

 

 そして、小次郎は、夏の青 浜辺でデレる マルタどの

 

 とかいう句を残して自嘲しながら消えていった。ともあれは鍵は入手した。門を越えてオレたちは先へと進む。

 

「ここが……この島で働かされている人々が暮らしている場所、ですか」

 

 やってきたのは集落だ。集落というよりはスラム街といった方がいいだろう。下手をすれば、そう人がいなければ廃墟同然だった。

 必要最低限の文化レベルしか維持できていない。本土から連れてこられたのだろう。ともかく数が多く、この人たちをどうにかすることはできない。

 

 それがわかっても口惜しさに拳を握る。全てを救えるとは思っていないが、こうやってつらそうな人たちを見ると助けたくなってしまう。

 そして、そんな力もない自分がたまらなく悔しい。わかっているのだ。オレは力のないマスター。サーヴァントを従えてはいるが、できることとできないことがあることくらいわかっている。

 

 彼らを助けるには船が必要だが、そんなものを一朝一夕で用意することはできない。そもそも、救助隊ではないのだ。

 そもそも、今解放したところで鬼たちに連れ戻されて終わりだ。根本から解決するしか方策はなく、それが出来るのはやはりオレたちだけ。

 

 こんなところで止まっているひまなどなく、彼らを思うならば一刻も早い解決こそが肝要なのは火を見るよりも明らか。

 しかし――、しかし……と思ってしまうのは人間の性だ。

 

「今は、情報収集をするしかない」

 

 だが、誰もがうなだれている敗残兵のようにうなだれて覇気が全くと言って酔うほど感じられない。このままでは、話を聞くにもまともな答えは帰ってこないだろう。

 誰かまともな人物はいないものかとさがしていると。

 

「おや、義経様奇遇ですな。ほむ」

 

 それはいつか見た黒いサーヴァント。義経の知り合いであるようだが――。

 

「誰だ貴様!」

 

 本人にはまったく見覚えがないというらしい。

 

「はっはむほはっは。何を言っておられる、弁慶。武蔵坊弁慶にございます」

「本当に、負けからいた弁慶何某か? 貴様がそこまでいうのなら主として皆の前で恥をかかせるのは忍びない。弁慶……ということにしておくのもよいが……とあえて私が見て見ぬふりしていた海尊――」

「弁慶にございます。弁慶に」

 

 何やら深い事情があるようす。これに関わるのはひたすら面倒くさいとオレのセンサーが察知した。だからそこにはつっこまないことにしてとりあえずついてきてくれるというのだから感謝しつつついてきてもらう。

 道中鬼を倒しながら進む。しかし、鬼を倒しても集落の人々は動こうとはしない。反抗する気力はやはり残ってはおらず、この世の地獄だと嘆くばかり。

 

 それを痛ましく思いながらも彼らを解放するために先へと進む。行きついたのは関所だ。

 

 

「おい、弁慶、おまえここを越えて来たんだろう。どうやってきたんだ」

「お恥ずかしながら崖を落ちたのでございます」

 

 つまりは怪我の功名というわけで、関の越え方などわからないと。

 崖を落ちるのは一瞬だが、昇るのはそうはいかない。サーヴァントでも難しいだろう。人間であるオレはもっと無理。崖を登っている最中に襲われでもしたらもうどうしようもない。

 

 一番早いのは空を飛べば一瞬だろうが、そんな飛行宝具なんてものはない。だからどうやっても山道を登るしかないのだ。

 

「強行突破は難しいだろうしなぁ」

「そうだね。鬼の反応が多数だ。強行突破はやめた方が良い」

「ふむ、ではこういうのはどうだね?」

 

 ジェロニモが提案したのは、鬼をだまして内部に潜入してから攪乱し伏せていた部隊によって一気に攻めるというもの。

 

「でも、どうやって鬼を騙すんだい?」

「やっぱり変装じゃないジキル博士」

 

 なにせ、ここには忍者がいるのだから、そういったこともできるのではないかと問う。

 

「ええ、できます」

「よし、じゃあ、それでいいかい?」

 

 同意をとってから作戦を開始する。変装した小太郎はまさしく鬼といった姿。化粧の延長線上というが、こんな化粧の延長線上と言われたら怖いと思う。

 だが、これで鬼には疑われないだろう。内部に向かうのは小太郎は当然として、オレ、マシュ、清姫、ジキル博士、牛若丸、弁慶。

 

 そういう人選で、関の中へ入る。途中牛若丸が破廉恥すぎて疑われるということがあったが、弁慶の機転によって何とか侵入。

 あとは混乱を起こせるだけ引き起こして、合図を送ると同時に金時たちが突入し一息で鬼たちを倒した。

 

「…………」

「どうしたの牛若?」

「弁慶がおかしいのです」

「そうなの?」

 

 はいと彼女は頷く。あれほど強かっただろうかと彼女は言う。それにどうみても身体が膨れているともいう。記憶の中にあるシャドウサーヴァントになっていた弁慶の姿を思い出す。

 確かにあれほど膨らんでなかったような、そうだったような。正直、あまり思い出せない。

 

「しかし、膨らんでいる。つまり何かしらしているとか」

「ドーピングってやつだね」

「ははは、ご冗談を。拙僧、御仏に誓えぬような行いは致しませぬ。茶屋で美味い茶は飲みましたが」

 

 ――それだ!?

 

 明らかにそれだろう。他に原因がないとしたらそれしかない。次の大門の先になるらしいが、茶屋があるらしく、そこだけは陰気でなく大繁盛しているという。

 そこでなら情報収集ができるだろう。

 

「うむ、弁慶()のくせにやるではないか。わたしも喉が渇いてきたところだ」

「やや、それはいけません。どうぞ、水筒に茶を詰めてもらっておりました」

「気が利くな。いただくぞ」

 

 牛若丸がそれを飲む。

 

「…………ひっく」

 

 そして、そんなしゃっくりにもにた…………。

 

「ちょっと待て」

「んん、どうしましたか主殿。私はどうもしませんよ。さ、方向性がきまったころで前進しましょう。おお、見てください主殿。こんなところにも道端に地蔵がありますね。まだ、信心を残している人間もいるのでしょうか…………」

 

 牛若丸は、じっと地蔵を見つめている。先ほど茶を飲んだとき一瞬顔色もおかしかった。これはもしかして――。

 

「あ……兄上ーッ!」

「!?」

 

 いきなり牛若丸が地蔵を抱えて兄上だと言い出した。それは普通の地蔵であったが、彼女は譲らない。つるりとした肌、石のような佇まい、独特の存在感。

 そして、表情が同じであるという。何とも言えない目で牛若丸を見る時の目であると。

 

 牛若丸はそのまま地蔵を小脇に抱えてしまう。明らかに様子がおかしい。

 

「原因は、お茶だよな……」

「そうですね先輩。お茶を飲んでから明らかに様子がおかしいです」

「ますたぁ、そうも言っていられませんわ」

 

 敵がやってきていた。

 

「応戦を」

「おお、いいですね。これは実にいい。たくさんいて、いっぱい首を兄上に供えられるというもの。兄上も褒めてくれるでしょう。

 またかヨシツゥネ、よくもやってくれた、マサコゥが怒鳴り込んでくる前に戦場に還れと!」

 

 ほろりと涙が出た。頑張っていたんですね兄上さん。ただ、マサコゥって言い方はどうにかならないんですか。笑いそうです。

 しかし、これは面倒くさいというか。明らかに酔っぱらっているような感じだ。褒められてないのに褒められていると感じているのは多分いつものことだろうから気にしないとして。

 

「とりあえずみんな、鬼を倒してからにしよう」

 

 とりあえず鬼を倒してから話を進める。飛び回るように戦う牛若丸。そんなに激しく動いたら当然のように地蔵の首が堕ちて転がっていく。

 

「あ、兄上の首がもげた! 貴様ぁ!!」

 

 理不尽に斬られる鬼。まあ、鬼だからいいけれど。そして、地蔵の首は肥溜めに沈んだ。

 

「……さ、参りましょうか主殿」

 

 そのまま胴体はポイ捨てしていた。

 

「…………」

 

 とりあえずいろいろと言いたいことはあったが、関わらない方がよいとオレのセンサーが言っているので無視して大門まで進む。

 そうして出てくる鬼とサーヴァント。

 

「はい、第二関門で待ち受ける美女は(わたくし)――自主的にお神酒を拝借した頼れるアナタの巫女狐、ほろ酔い美人の玉藻の前ちゃんなのでしたー!」

 

 バーン! と登場する玉藻さん。ロンドンでお世話になった玉藻さんがなぜ。

 

「ああ! テメェ、いつぞやのフォックスじゃねえか!?」

「おや。あらら、金時さん。今回は愉快なオモチャに乗っての顕現ですか。しかも、新しい衣装まで。ハイハイ、カッコイイデスネ。うらやましい」

「…………」

「ど、どうしたんでしょう。なんだかやさぐれているような」

「おや、おやおや。さらにメル友の清姫ちゃんまでいるじゃないですか。なんですか、当てつけですか。お婿さんと一緒にいられる幸運を見せつけちゃってくれちゃってるんですかキー」

「…………何やら変なスイッチが入っているようですわね」

 

 とりあえず説明してくださいということを頼むとなんか説明してくれた。

 曰く、待っていたとのこと。私の私による大舞台を。

 

「鬼ヶ島ですよ! 鬼ヶ島! 純和風の舞台! そして、鬼ヶ島と言えば桃太郎。桃太郎といえば三匹の仲間!」

 

 ――ああ、なるほど。

 

 この時点でオレは玉藻さんの内心を読み切っていた。というか、隠す気がないためわかりやすい。つまり、彼女は出番を待っていたということなのだ。

 ひたすら自分の狐耳をさして犬役で適任は私しかいないでしょう!? とすさまじいまでのプレッシャーを叩きつけてくる。

 

 犬枠である牛若丸が退くほどの覇気。政子さまと同じタイプの鬼神の類と評するほどだった。北条政子って鬼神タイプなのかとか言いたいことはあるがとりあえずは、スルー。

 

「忘れてるのかなーきっとそうですよねーと自己欺瞞しつつ、やっぱり待てども待てどもオファーなし。さすがにこれには堪忍袋の緒が切れました」

 

 だから勝手に鬼ヶ島に賑やかしでもいいから勝手に出番もらっちゃえとやってきたのだという

 

 しかしそこらへんはプライドがあるため素面では無理だということで茶屋でもらったお酒を飲んで今に至るという。なんというか――。

 

「うわぁ……」

 

 としか思えなかった。

 

「相変わらずテメェの欲望に忠実だなこのアニマルは! 遊びなら余所でやりな!」

「へーんだ。太郎(主人公)属性の金時さんにはわからぬ悩み。そんな貴方にはこの句を捧げます。

 いつまでも あると思うな サーヴァント枠」

 

 金時の喝破をスルーして意味不明な一句をプレゼントする玉藻さん。真剣に酔っているのか、まったくもって意味がわからない。

 

「というか、立ちふさがらないなら、連れて行ってもいいんだけど……」

「ミコ!?」

「いや、だって仲間は多い方が良いし」

「あ、いや、そのえ、いいんです?」

「いいよ?」

「………………すみません、技喰丸(わざはみまる)さん。玉藻ちゃん的にはやっぱり敵よりも味方で出番欲しいって感じなので。では――」

 

 ええーって顔の技喰丸にはとりあえずご愁傷さまと思っておいて。

 

「んじゃ、倒しちゃって」

 

 あとはもう全員でボコる。玉藻さんがもうここぞとばかりに活躍してくれてあっけなく技喰丸は倒されてしまった。

 彼はきっと泣いていいと思う。自分から誘導しておいてなんだけれど。

 

 ともかくこうして玉藻さんも味方に加わった。犬枠はとりあえずダブル犬制を採用して、二人を犬枠で扱うことにして先を進む。

 

「それにしても酒か。ねえ、玉藻さん?」

「はいはい、なんです? あなたの犬枠玉藻ちゃんがなんでも答えちゃいますよー」

 

 出番をもらえてうきうきなのはいいからとりあえず――。

 

「お酒って言ったけどさ。もしかして――」

 

 そう聞く前に漂ってくるどこかで嗅いだことのあるような匂いで確信してしまう。集落の中に漂う酒の匂い。デジャブのように思い出されるマシュの胸(デンジャラスビースト)の感触、清姫の実は意外にある胸の感触、ブーディカさんの素晴らしき巨乳の感触、サンタさんの……お美しいお胸の感触にノッブのあるの? ないの? わからないけど変幻自在な胸の感触。

 

 そうこの先にはきっと――。

 

「はーい、いらっしゃい、いらっしゃい。鬼も人も関係あらへんよ。喉が渇いとるんやったら、遠慮せんとおいでやす。ほれ、茨木。あんたもちゃんと客引きしぃやー」

「うう、なぜ吾が人間に愛想笑いなぞ……な、なあ酒呑。別にこのような真似をしなくとも――」

「おんやぁ? うちがこうしてちゃんと働いとるいうんに、茨木はサボる気かいな。うち寂しいわぁ」

「う、く……」

 

 想像通り、酒呑童子と茨木童子、怖ろしい鬼の二人組が茶屋をやっていた――。




まさかの玉藻ちゃん合流によって合われ技喰鬼はボコボコにされてしまいました。


さて、そんなことよりプリヤイベですよ。どうにかこうにかクロエを入手。再臨アイテムも入手終了。あとは回収アイテムを溜めつつ、クロエの宝具レベルを上げる準備をしている最中です。

ガチャは相変わらず爆死しております。ま、当たらないよネ。ということでしばらくはまた石溜めですかね。
プリヤの次はどんなイベをやるんだろうか。

そろそろ今年のハロウィンイベとか来るんだろうか。

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