Fate/Last Master   作:三代目盲打ちテイク

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天魔御伽草子 鬼ヶ島 3

 海岸を歩いていると。

 

「む、主殿、アレを」

「なになに?」

 

 牛若丸が何かを見つけたようで、そちらを見るとそこには鬼がいる。何かを取り囲んでいるようだ。人だ。人が倒れていて鬼たちに取り囲まれている。

 赤い髪の少年が見える。線の細い少年だ。

 

「サーヴァント反応だ! 彼はサーヴァントだ」

「助けようマシュ! 鬼退治だ!!」

「はい、マスター、指示をお願いします!」

「さあ、主殿、この牛若にもぞんぶんにご命令を! いざ――鬼ども、我が薄緑の露となれぃ!」

「ま、一番槍はオレだがな――」

 

 その俊敏のランクにモノを言わせて、クー・フーリンが鬼へと突っ込んでいく。姿勢を低く、放たれる突きは鋭く一瞬にして、鬼を刺し穿つ。

 身体に寄せた槍、そのまま体の軸ごと回転させることで突き刺さった死体を鬼へと当てることによって攪乱。大群の中にありながら、一騎当千の如く鬼を屠っていく。

 

「負けていられません。主殿少々お待ちを、すぐに首を献上いたしますので――さあさあ、遮那王流離譚、いざ、眼にモノを見よぉ!!」

 

 対人奥義――薄緑・天刃縮歩。

 

 牛若丸の愛刀薄緑による輝く斬撃。天狗の歩法がさく裂する。いつか見た沖田さんの縮地。いや、同じ技術による超高速接近から放たれる斬撃。

 単純に速く接近してからの斬撃。単純故に、躱すことが難しい。鬼程度の首などただそれだけできれいに切り取られてしまう。

 

「張り切ってるなぁ」

 

 片や熱望した槍を持てたこと、片や主にいいところを見せようと張り切っている。だが――。

 

「数が多いな」

 

 さすがにあの二人でも倒しきるにはそれなりにかかりそうだ。

 

「私が薙ぎ払うかトナカイ」

「いや、いいよ。サーヴァントほど鬼は強くないから数だけが問題なだけだしね」

 

 ここでエクスカリバー・モルガンで薙ぎ払ってしまってはもったいない。それに、他の厄介な何かに気が付かれる可能性がある。

 もっとももう気が付かれている可能性もあるのだが、極力気が付かれるような大規模破壊を放つような宝具は控えるべきだろう。

 

 

「だな――」

 

 式が鬼をバラし、放たれる攻撃はマシュが防ぐ。清姫は炎を吐き出して燃やし、ダビデは拾った石を投げて必中宝具を発動している。

 問題はない。この人数である。

 

「う……」

「マスター、行き倒れの人が目覚めたよ」

 

 倒れていた少年を保護したジキル博士とジェロニモによって少年は治療されてどうやら目覚めたようだ。

 

「……君たち、は……」

「通りすがりの桃太郎一行かな」

「……? よくわからない、けれど……君たちが鬼と戦っているのはわかる。僕を助けるため……。なら……」

 

 その時少年が動いた。オレの目ではとらえられないほどの速度。その瞬間、マシュの背後に迫ろうとしていた鬼が倒れた。

 

「……疲労困憊、精神衰弱につき、僕はほんとう、ぜんぜんダメなのですが……」

「君がやったのか?」

 

 死体を見ればそこには小刀、この場合はクナイと呼ばれる投擲武器が刺さっている。最小の動きで、最速の一投をこの少年はやってみせたのだ。

 

「忍者だ!」

「あ、……いえ、名乗るほどの者でもないですが、はい、忍、です、はい……」

「伊賀? 甲賀? 風魔?」

「あ、風魔です。五代目、小太郎、です」

「おお!!」

 

 ――忍者だよ、ニンジャ!

 

 いやー、一度会ってみたいと思っていたんだよね。侍には会ったし、新選組にも会った。なら今度は忍者にも会いたいなー、とか思っていたのだ。

 こんなところで会えるとは嬉しいものだ。日本人に忍者が嫌いなものなどいないだろう。かっこいいし、仕事人っていう感じがして素敵であるからだ。

 

 最近では外国人にも人気だ。まあ、その場合忍者じゃなくて高確率でNINJAになるのだがそれはそれでおいしいのでいいのではないだろうかと思っている。

 ともかく風魔小太郎だ。相州乱波、北条氏に仕えた風魔忍群の頭領。まさしく忍者と言うべき男なのではないだろうか。

 

「……そういう話です。かまゆでとか嫌いです。でも、今は――助けていただいた仁義を通します。自信はありませんが、鬼退治、始めました」

 

 その割に妙に覇気がないが、そこはそれ。助太刀はありがたい。この先に何が待ち受けているのかわからないが、戦力は大いにこしたことはない。

 

「よいしょ」

 

 彼が動けば相手は動かなくなる。いつの間にか眉間にクナイが突き刺さり相手を確実に絶命させる。

 

「おお、凄まじいですな小太郎殿! むむ、私も負けてはいられませんね!」

「あ……はい。寒そうな貴方も、ものすごい身の軽さ、ですね」

「この戦場の中で気遣いまで、さすがです! しかし、そのシュっとしてバッ、は天狗にも通じるものがありますが、さすが本家は違う! 私も覚えれば兄上に喜んでいただけたでしょうか。是非、この後ご指導を!」

「それ、無理……人に教えるとか、苦手なので……えっと、君は?」

「おお、これは失礼。私は牛若丸と申します」

「ああ、源の武士。武士はあまり好きじゃない……けど、仲間で。源なら……別だ」

「話はあとにしておれ根の者! まずはこの次々やってくる上杉みたいなやつらをどうにかしてからじゃ」

 

 まったく上杉みたく次から次へと出てきおってからにと信長が火縄銃を大量に背に浮かべてぶっぱしながら言う。割と余裕であるが、相手の数が多いだけに面倒くさいらしい。

 あと何か嫌な予感がするとか。

 

「なにやらわしの人気を分捕っていったうつけがいるような気配がしてな」

「誰、それ光秀?」

「ミッチーなら、とりあえず踏んでおけばよいわ。そうじゃなさそうだから面倒なんじゃ」

 

 アッハイ。

 

 だが、次から次へと押し寄せてくる鬼。まるでボウフラのようだとはドクターの言葉だ。

 

「この近辺の鬼が集まってきているみたいだ……ごめん。僕がもっと慎重に動くべきだった」

「今更仕方ないよ。まあ、そろそろいいか。全員退避ー」

 

 これだけやっても敵将が出てこないならこの近くに将はいない。これだけ騒いでも出てこないんだから、出てこないのか、あるいは待ち構えているのか知らないが、ここの近辺にはいないことがわかる。

 クー・フーリンが巧く攪乱し、相手を集めてくれた。だから、

 

「それじゃあ、サンタさんよろしく」

「行くぞ――約束された勝利の剣《エクスカリバー・モルガン》!」

 

 やはり軍相手にはサンタさんの聖剣が輝く。極光が戦場を一薙ぎすればそこに敵はいない。

 

「終わったかな?」

「ふん、まあ、こんなものだろう」

「ありがとう。小太郎、大丈夫?」

「……凄まじいですね、マスター殿……」

「まあ、慣れてるからね。君が無事でよかったよ」

「……申し訳ない」

「なんで謝るの?」

 

 別になにもされていないし、敵も十分に殲滅できた。

 

「何も問題ないよ」

「…………僕は、因縁からこの地に呼び出されたはぐれサーヴァントです。まだ、貴方たちの味方でも敵でもない。ですが、貴方はそんな僕を本気で心配し、無事を喜んでくださった。その真心に報いましょう。この未熟な身ではあり恐縮なのですが――この身、貴方に預けましょうマスター殿」

「気にしなくてもいいけど――ありがたい。なら、これをあげるよ」

「……きびだんご、ですか……」

「そう。なんか、仲間になってくれるんだし、あげようかなと」

「…………わかりました、ありがたく……はい……」

 

 そんなやり取りをしていると。

 

「おい、マスター」

「なに、式?」

「何か近づいてきてるぞ。バイクだ」

「は? バイク?」

 

 なぜほとんど平安時代にバイクが? と思っていると同時に響いてくる爆音。崖の上を見れば何かが爆走している。本当にバイクだった。

 そして、それは崖からとんだ。

 

「飛んだ!?」

 

 何事もないかのように着地し、バイクはオレたちの前で止まる。乗っていたのは――。

 

「坂田金時!?」

「おう、大将、この間ぶりだ」

 

 もう和サーヴァント要素どこにいったというライダースーツ姿。

 

「……!? あれが……坂田、金時……?」

「はい、小太郎さん。信じられないとは思いますが、あの方はゴールデンさんです」

 

 誰でもそりゃ戸惑うだろう。サングラスにライダースーツ。今日は一段と日本から遠いチョイス。それにあのバイクだ。

 どうみても宝具である。そんなものに乗ってやってきた男が坂田金時だと誰が信じられるだろうか。実物を知っているからこそ信じられるが、初対面だと絶対に信じられない。

 

「イカしたバイクだな橙子もいろいろもってたが、こんなのはなかったな」

「おう、そうだろ! そう思っちまうだろ! なんせ、こいつは足柄山にその(クマ)ありと謳われた伝説だからなあ!」

「…………………………(クマという言葉を聞き間違いだろうかと考えている)」

 

 式が真顔で固まってる。

 

「そういえば、金時君のクマって変形するってこの前言っていたね」

「ジキル博士、わざと無視していたことを言わないでくれるかな」

 

 つまりあのバイクはまさにクマということなのだろう。平安の日本はいったいどんな状態だったのか切実に知りたいと思う。

 鬼がいて、変形するクマがいる。この時点でいろいろとおかしいだろう日本。だからクールジャパンとか言われるんじゃないだろうか。

 

 違う? ならばそれでいいのだが。

 

「ハイパー・ウルトラ・デンジャラスマシン――ゴールデンベーア号だ!」

 

 ドヤァ、という顔の金時。

 

「…………」

 

 とりあえず凄いほほえましい顔で見ているとしよう。

 

「とりあえずゴールデン、この状況が何かわかる?」

「お、わかるが、しっかし笑えるよな、大将。ここの鬼、すげぇマヌケ面だろ? オレっちは鬼退治のプロだがよ、こんなマヌケ面の鬼、見たことねえぞ!」

「金時も見たことないのか?」

「ああ」

 

 そうなるとますますここはおかしいということになる。鬼も自然に出ないのなら何者かが生み出したものに違いないが、どうして本物の鬼ではなく、こんな絵にかいたような鬼なのだろうか。

 

「って、ちょっとまってサンタさん、いきなりソリ取り出してどうしたの。張り合わなくていいから、ゴールデンと張り合わなくていいから!」

「安心しろマスター、成層圏まで一瞬で行ける。バイクになど負けるものではない」

「勘弁して、あれやばすぎだから」

 

 礼装なかったら死んでる。

 

「――ともかく、この状況を解決するためにもとりあえず進もう。この先になにがあるにしてもとりあえずは、なんとかできるはずだ」

 

 そういうわけで海岸を進み道にそって崖を上がっていく。

 

「そうだ、小太郎」

「……なんでしょう、マスター殿」

「どうしてあんなところで倒れていたんだ?」

「鬼です。僕も……鬼に関わりのある英霊ですから、召喚されたのだと思います」

 

 鬼に関わりがある?

 

「どういうこと?」

「風魔の秘術は……鬼に転じる、というもの。だから、僕が鬼だという伝説もあるのです」

「……ああ、そうなんだ」

 

 でも、確か伝説だと身の丈七尺二寸(2m16cm)、筋骨荒々しくむらこぶあり、眼口ひろく逆け黒ひげ、牙四つ外に現れ、頭は福禄寿に似て鼻高しという異様な姿だったという話もある。

 目の前に彼とは似ても似つかないが、忍の本当の姿が伝説に残っていたら駄目だろう。それにしても乖離しすぎであるが、あまりにもその伝説から乖離してるからこそ、忍として動きやすかったのではないかとも思う。

 

 それにしても鬼になれるのか。

 

「……あ、ごめんなさい……宝具としては封じられているので、期待されているところ、恐縮なのですが……しかし、眼前に本物の鬼がいました。より近くで観察し、研究し、その有り様をわがものとすれば解放できるかもと」

 

 それで近くで観察していたら鬼の群れが別の群れをよび、それが連鎖してあんなことに。

 

「初手の行動としては悪手すぎました。こういう諜報は他の者がやってくれたので……」

 

 自分でするのは慣れていなくて恥ずかしい限りだと彼は落ち込む。

 

「なーに、気にすんなボーイ! 旅の恥はかき捨てっていうじゃねえか! しかし、このきびだんごうめえな」

 

 勝手にゴールデンがきびだんごを食べてしまっていた。いつのまに……。

 

「旅の恥は、かき捨て……」

「清姫……」

「はっ! ますたぁ、違います。わたくし、そんなことなど何一つ考えていませんよ。ええ、いません。ですが、その、犬でなくては良いので、雌犬扱いしていただければと! 大丈夫です、旅の恥はかき捨てですから! もっとこう激しく、清姫はオレのものだとわかるように扱っていただければ! 粗雑に扱われても構いませんから! 寧ろ、それが良い――い、いえ、違います。さあ、どうぞ、この清姫ちゃんと名前入りの首輪をつけリードを、さあ、さあ!」

「…………」

 

 どうしてこうなるまでオレは放っておいたんだ……。

 いつもならフォローしてくれるブーディカさんは、目を合せてくれない。ちょっと頬を赤らめてるのが可愛いですはい。

 

 ――やっぱり人妻って。

 

 その時、ダビデのにやけ顔が、眼に入った。

 

 ――違う! またダビデに呑まれかけた。

 

 早く戻さないと。ダビデと数か月も旅しちゃったから、すっかりと染められてる。このままじゃ、駄目

だ……!!

 

「マシュはかわいい」

「ましゅ!?」

「え、なに今の可愛い声」

「あ……あ、す、すみません、突然でしたので……驚いて……」

「聞こえてた?」

「…………」

 

 こくりと頷くマシュ。

 

 ――口に出てた。

 

 顔が赤くなるのが止められない。ヤバイ。恥ずかしい!

 

「まったく初々しいねぇ」

「そうだね。見ていてもどかしいけれど、そういうのもまたマスターらしい」

「うむ、どこに出しても恥ずかしくない好漢といえる」

 

 クー・フーリン、ジキル博士、ジェロニモはその様子を生暖かい目で見つめていた。実にほほえましい。

 

「エリザベート殿、エリザベート殿」

「なによ?」

「首を綺麗にしたいので、手伝っていただけると」

「いやよ!? ちょ、こっち向けないでよそんなの!?」

「なんと、エリザベート殿はこういうのは慣れていないのですか? 先ほどダビデ殿にお手伝いをお願いしたとき、そういうことはエリザベート殿の方が向いていると」

「あの全裸は、アイドルに何させる気よ!! 芸人のやることじゃない!」

「え、よくない? 最近のアイドルは芸人みたいなことやるし」

「良くないわよ!」

 

 牛若丸、エリちゃん、ダビデは何をやっているんだろう――。

 

「――! 鬼です、マスター殿!」

「みんな!」

 

 それでも鬼が出れば全員真剣になり、鬼を殲滅する。数が多くないのですぐに戦闘は終わった。

 




さて、鬼ヶ島三話目。どれくらいかかるかな。あまり長くないようにしたいが、長くなりそうだなぁ。10話以内には終わらせて円卓領域へと旅立ちたい。

水着イベですが、素材集めもだいぶ終わってきました。
土日で数少ない林檎を多少つかって集めました。やはりイシュカ合金が一番の難所でしたねぇ。
弓王のフレンドが全然いないし。一人いるけど、それつかったらやばかった。なにあの性能。ヤバイ。まだ育ち切ってないのに最後まで残って宝具連発してたんですけどヤバイ。

とりあえず、もう少しイシュカ集めたらあとはオイルとセメントという比較的集めやすいものを集めるだけ!

基本的にピースとモニュは三桁くらいはあるし、大丈夫だろう(慢心)。

そういえばプリヤコラボが決まったんでしたね。ランサー配布、ランサー配布。頼む、ランサー配布で頼む。
 ランサーがほしい(切実)!

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