Fate/Last Master   作:三代目盲打ちテイク

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鬼哭酔夢魔京 羅生門 2

「チッ、かてぇなコイツは!」

「くはは、くははは! 滾る、滾るな金時! 人は掴めばすぐ拉げる。人は撫でればすぐ割れる! だが汝との力比べは岩山を組み敷く手ごたえ! かけ比べはいずれか死ぬまで留まらぬ! これは一時に終わらせてはつまらぬな。ひとまず仕切り直しといこうかッ!」

「逃がすか阿呆! 吹き飛べ、黄金(ゴールデン)――」

「くはは、急くな急くな」

 

 一瞬にして門の向こう側まで消えた茨木童子。手ごわい相手だった。全員でかかってようやくといった程度。しかも、全然手ごたえがない。倒せるといったビジョンが見えてこない。

 あれは本当に倒せるのか。もし金時がいなかったらと思うとぞっとするほどだ。

 

「すみません、金時さん、こちらの被害も甚大で」

「そうだな。すまねえオレっちだけの戦いじゃあなかったな。続きは明日だろう。今のうちにメシでも食っときな。今の京でも、探せばマトモな飯屋があるだろ。金団か、金鍔焼きがオススメだ。精力つけて来いよ。他のどんな生き物よりも貪欲で、何をしでかすかわかんねぇのが鬼だ」

 

 

 見張りは金時がしてくれるということで、オレたちは京へと繰り出す。相変わらず、戦っているときは普通に思えたのに、戦いから離れるとみんなくっついてくる。

 

「ますたぁ、もっと引っ張って下さい!! もっとですもっと」

「…………」

 

 とりあえず強く引っ張ってあげると喜ぶのだが、これ無視しても喜ぶ。完全にドMです。雌犬です。酔っぱらうと清姫は雌犬(ドM)になるらしいのだ。

 だからこうやってリードでつないで雌犬みたいに引っ張ってやると喜ぶ。放置しても、まあ、放置プレイですね、興奮します! といって喜ぶ。

 

 正直、こちらとしてはあまり面白くはないというか恥ずかしいというか。救いは、京の人たちも全員酔っぱらっていて同じような状況ということだろう。

 どこを見てもお祭り騒ぎだ。京の中心から離れればどんちゃん騒ぎの真っただ中。誰もかれもがめちゃくちゃに踊ったり、いろいろとしている。

 

 それこそ未成年には見せられないようなことも繰り広げられている始末だ。心臓に悪いというかなんというか。三蔵ちゃんと旅をしていなかったら、危なかっただろう。

 だが、今のオレにその程度の煩悩など――。

 

「んー、んー、あーむ」

「うひゃ!?」

 

 いきなり耳を舐められた。

 

「!! どうかなさいましたか先輩! 敵襲ですか! 敵襲ですね! 安心してください、先輩は絶対に守って見せます! ですから、もっとくっついて! もっとです! もっとマシュっとくっついてください!」

「あん、んちゅ……んー、おいしぃ、もっとかまえーお姉さんも寂しいんだぞぉ」

「ちょ、ちょちょ、ブーディカさん!? マシュもちょっと待って!?」

「マスター、マスター! ライブしていいかしら! あの櫓? の上歌うのにちょうど良さそうよ!」

「ノッブー」

「おい、贈り物だ、受け取るが良い! 別に貴様の為に用意したんじゃないんだからな!」

 

 駄目だ、こんなに一気に相手できない!

 オレにはハーレム主人公になれる素質はないみたいだ!

 

「おーおー、マスターのやつ楽しそうじゃねえか。うらやましいねぇ」

「そうだよね。羨ましいよね。人妻にあんなにくっつかれて耳舐められるとか羨ましすぎるよ!」

「モテモテだな、あいつ。ま、いいか。全裸はとりあえず邪魔してやるなよ」

「だから全裸じゃないって!?」

 

 マスターが大変だからとジキル博士とジェロニモがこの状況がどうなっているのかを考える。

 

「このまま戦ったとして、どうにかできるだろうかジキル博士」

「そうだね……あの鬼をどうにか倒してっていうのが一番だけど、鬼だ。僕らが一斉にかかってアレだ。金時君がいなかったらと思うとゾっとする」

「ふむ、しかし今回は撃退はできた。今後はどう思う」

「勝てる、と言いたいかな」

「ほう。勝算があると」

 

 勝算。鬼退治の金時がいること。一度、退治し、現状力があがっているらしき彼ならば鬼と対抗もできる。また、鬼はそれだけに神性が強い。ノッブの固有結界を利用しての相性ゲーも可能。

 勝てないわけではないだろうが、時間がかかる。こちらも休みながらあちらを削っていくしかない。

 

「それにマスターだ」

「そうだな、マスターの有無は大きな差だ。アメリカであっても、彼の存在は大きかった」

「ここかな、金時君が言っていたお店は」

 

 金時のオススメのお店で食事をとり、休む。明日、また、茨木童子との闘いが待っている。しっかりと休養を取り、備えなければ。

 

「んじゃ。マスター、出かけてくるぜ」

「人妻、ひっとづま」

「テメェ、そればっかだな。まあ、好きな女の趣味は人それぞれだ、気にしねえがここらの花街にそんなのいるか?」

「それっぽいのはいるかもしれない。それに日本の女の子は、貞淑だからね、なかなか趣が違っていい」

「そうかー? だいぶ気の強いのもいるぞ」

 

 そんなことを言いながら宿を出ていくクー・フーリンとダビデ。

 

「…………」

 

 オレはというと――。

 

「ん、せんぱぁい……」

「だんなさま! さあ! 私を布団に! 乗って下さい! 柔らかな枕もどうぞ!」

「んんっ、ねぇ、お姉さんにも、かまって」

「ノッブ、ノッブ……すぴー」

「…………」

 

 状況は変わらず、酔った女性陣にまとわりつかれている。重いと言ったらだめなので言わないが、眠れそうにない。

 

「博士ー」

「はい、睡眠薬」

「ありがとう」

 

 寝てしまえばこっちのもの。睡眠薬で即座に睡眠。気が付けば朝。状況に変化なし。いや、なんと珍しいことにブーディカさんが隣で寝ていたのは驚いたが。

 清姫? 柱にリードでつないでおきました。喜んでましたまる。

 

 そんなわけで、今日もまた茨木童子と戦う――。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

「くは、くははははっ! 愉快、愉快!」

「愉快、じゃねえ! ちっとも目が笑ってねえぞ、テメェ!」

「――む。侮辱するな、笑い慣れておらぬだけよ。心の底から笑う、か……酒呑のようにはいかぬものだ」

 

 そう言って茨木童子は門の向こう側へと消えた。

 

「また、逃げられてしまいました……」

「でも、手ごたえは感じた。確実に向こうの体力を削っているはずです」

「焦りは禁物だマスター。慎重に。アメリカのように慎重に行こう」

 

 というわけで、今回はドクターへの報告も兼ねて多少離れる。京の中では通信が安定しないので外へ。

 

「――なるほどなるほど。ありがとうジキル博士。状況はわかった。それで、みんなの様子は大丈夫かい? その酔い加減とか」

 

 ジキル博士は無言で、隣を指さした。

 

「食事の用意が出来ました、先輩! ゴールデンさんの要望で作った、黄金のおむすびです。戦場ですので、みんな大好きカレー味です! ただ少し手がべたべたするのが難点で……。対処法は一つしかありませんね。はい、先輩。あーん」

「あーん。うん、ありがとうマシュ。オレだけ食べても悪いからみんなも食べて」

「さあ! だんなさま! 食べたければ雌犬のように這いつくばって尻を振れと言う時ですよ! さあ!」

「……ああ、うん、とりあえず黙って食べてて」

「あむ、うん、美味しいね。…………ねえ、マスター、お姉さんにもあ、あーん、ってほしい、かな」

「今、自分で食べてませんでした?」

「ノッブノッブー! わしじゃ! 是非もないよネ!」

「はいはいノッブノッブ」

「エリザベート! 歌うわ!」

「エリちゃん、良い歌だよ――ぐへ」

「トナカイ、貴様に私のおにぎりをくれてやろう。特別だからな! いいか、これは貴様の為ではなく、茨木童子を倒すためだ!」

「わかってる、ありがとう」

 

 カオスである。カオスである。それでも慣れて来たので、今では楽しめ――ない! 酔いの力で、どうこうとか絶対あとでやばいやつだから。

 つらい。酒で酔っぱらって、やらかすとか、男の風上にも置けないよ。だから、我慢してるんだが、辛い。タスケテ――。

 

「う、うーん……相変わらずだな」

「まあ、戦闘中は問題がないのが幸いだと思う」

「うむそれどころか、通常時よりも力強いと感じられるな。それは私たちにも言える」

「ふむ。金時君の湧きあがる力というのの影響かな」

「そう考えるのが妥当だろう。そうでなければもっと苦戦しているはずだ」

 

 二日目ともなれば鬼との戦いにもなれ効率的に動けるようになっている。このままいけば相手を削りきることもできるだろう。

 

 ――とりあえず、タスケテ。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 三日目。茨木童子は逃げる。

 相変わらずこちらの損害も大きいために痛み分けというカタチではある。

 

「…………」

「どうしたよ大将」

「いや、茨木童子を無理に倒す、ってのは現実的じゃないなって思ってさ」

「だったら見逃すってか? そいつはゴールデンねえな」

「いや、見逃さないけど、この先にあるものが原因だとすれば、そっちを先にどうにかした方が早いんじゃないかと思ってね」

 

 三日目ともなればさすがにこちらの被害も馬鹿にできない。相手もそうであると祈りたいが、こちらも徐々に押され始めているとみるべきだろう。

 だからこそ、門をくぐるのではなく乗り越える。あるいは、別の場所から入るというのも手ではないかと思うのだ。

 

 幸い、ソリはある。モルガンジェットで壁を超えるなんてことができないだろうかと金時に提案する。

 

「あー、そういうコトか。目の付け所はいいんだが……乗り越えるのは無理だ。門の上を見な」

 

 門の上。堀と門の腕に立ち込める濃い霧。まがまがしいものであり、あきらかによくないものであることは確かだ。

 それがあるからこそ門を乗り越えることは不可能だろう。

 

「なら、迂回は?」

「いっちょ調べてみるか」

 

 迂回できないかを調べる。

 

「……駄目だな」

 

 この京の中心は全方位を毒の霧らしきものでおおわれている。越えることは不可能だった。それに地形が明らかにおかしい。

 京のはずなのに、その西側には崖ができている。

 

「今の日本は縮んでやがる」

 

 列島ごと握りつぶされたようだと金時は称した。回り込むことは不可能。霧の向こう側に島のようなものは見えるが、それだけだ。

 船がないためにどうしようもない。モルガンジェットで成層圏からいけないかとも試すことも考えたが、そもそも毒の霧によって阻まれる。

 

 正攻法以外認めないというらしい。

 

「まあ、待て、しかして希望せよだ」

「そうですねマスター、諦めなければきっと倒せます」

「ああ、頑張ろう」

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

「っ――また!」

 

 また茨木童子に逃げられた。逃がさないように意識していたはずなのだが、どんなに囲んでも驚異的な速度で逃げていく。

 さすがは茨木童子というべきなのだろう。茨木童子は、腕を切られてなお生き延びたのだという。つまりはそういう性質なのだろうと金時が言った。

 

 仕切り直しのような性質を持っている。面倒なことこの上ないが、それでもだんだんと追い詰めている感覚はある。

 いくら強くともこれだけのサーヴァントに囲まれて毎晩のように戦っていればいつか削り切れるだろう。

 

「…………」

「やっぱり思うことが?」

 

 酒呑童子や茨木童子を見る金時は何か思うことがあるようだった。生前彼は戦っているはずなのだ。源頼光に率いられた四天王として暴れまわる大江山の鬼たちを討伐した。

 曰く、茨木童子が山のボスであり、酒呑童子はそこの食客だったらしいが、茨木童子は酒呑童子の方が上だと思っていたようだ。

 

 それが今では下剋上。

 

「それはありえねえ。何があったんだアイツら」

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 目の前に酒呑童子がいた。

 

「ふふ、なに見とるん、小僧? ま、うちはいくらみてくれてもかまへんけどな?」

 

 彼女はそう言う。これは記憶なのだとわかった。サーヴァントの記憶。つまりこれは、生前の、ゴールデンの記憶ということになる。

 

「……見てねェ。テメェがオレの前にいるだけだ」

 

 そんなぶっきらぼうな良いように酒呑童子は笑うばかりだ。楽しそうに。

 

「ふふ。いけずなおひとやわぁ。そこがまたええんやけどなぁ。さ、はじめよか。もう何度目になるかわからんけども」

 

 そう言って彼女は得物を構える。覇気は感じられないが、底知れなさが深まっていく。

 

「うちの得物に大物がなくて堪忍な? そのマサカリと正面から打ち合うたら、えらい楽しいんやろうし、えらい興奮するんやろうけど。うち、無粋に争うんは好かんねん。落とすなら力ずくより色仕掛けや」

 

 はぁと吐息を吐き出す。その吐息は桃色に色づいているかのように甘い。だが、金時にはその吐息は通じていないようだった。

 いや、もしくは――。

 

「まあ、アンタさんには通じひんからこの始末やけどな? ああ、いややいやや。首を落とさんと骨抜きにできんなんて、うち、自信なくすわぁ。でもしゃあないなあ。だって――戦い(こっち)の方が、小僧に好かれる作法なんやろ?」

「――おう。それが良い。それでいい。鬼は邪悪なモンと決まってるそれがテメェとオレの関係だぜ、酒呑」

「よういうわ。うちの前に一匹、情けをかけて逃がした鬼がおるやろうに。ほんま、ハラたつわあ。骨を抜くだけじゃ飽き足らんわぁ。アレやなあ。骨抜きにした後はうちの金棒でいたぶったるわ。それで、是までの因縁は帳消しやね?」

 

 そこで夢は醒める。

 覚醒する。

 

「……今の、夢は――」

「――チ。起こしちまったか。すまねえな。オレも気が抜けちまってた。うった寝で昔話とか、いい笑い話だっつーの」

「良いと思うよ。こんな時でもないと、金時の昔話なんてしてくれないだろうしね……」

「言うじゃねえの。ま、ようはアレだ。酒呑のヤロウとは何度か因縁があってな」

 

 本気で打ち合っても勝負はつかねえ。遊びで賭け事をしても勝負はつかねえ。

 彼はそう言った。お互いに引き分けしかない相手との出会い。だが、それは源頼光が出張ったことによって終わりを告げる。

 

 結末は――

 

「毒の酒を飲ませて、鬼たちを丸ごと眠らせた」

 

 眠らせての奇襲。

 

「あとはわかるだろう」

「…………」

「オレは酒呑の首を後ろから断ち切ったんだよ。なのにあのヤロウ、うっすらと笑いやがった」

 

 酒呑童子は最後にお先にな? と呟いたらしい。それは実に鬼らしい、最期まで自分の人生を楽しんで死んだのだろう。

 聞いているだけだが、とてもしっくりと来た。

 

「……こう――いや、気にくわないんだ、金時は」

「ああ、アイツはいい女だ。そんな女が茨木にいいようにされているのが気にくわねぇ。鬼として茨木はぶっちめるが、酒呑に迷惑喰らった被害者として捨て置けねぇのさ」

 

 ま、ただの八つ当たりだから気にするなと彼はいった。

 

「まあ、そう言うならそういうことにしておくよ」

「なんだそりゃ」

 

 思うのだ、きっと金時は――。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 金時の一撃が茨木童子に直撃する。

 

「ぐっ……オ……!」

「辛そうじゃねぇか頭領! 年貢の納め時ってやつか、オラ!」

「ッ……まだ……まだよ! 吾をそう容易く屠れると思うか! 汝は知っているはずだ!」

 

 そう茨木童子はたやすくない。

 如何な数の刀が肉体を引き裂こうとも。

 如何な数の槍がその身を貫こうとも

 

 茨木童子は止まらない。自らが飽くまで止まらない。

 それが茨木童子。生き汚さの極致。それが、茨木童子という鬼なのだ。だからこそ、彼女はどのような状態であろうとも生きようとする。そう在るものだから。

 

 焔を燃やし、大熱量が広がる。

 

「一軍すら焼き砕く、吾が炎熱の拳――その身に受けて、骨と化せ――」

 

 走るは焔、落ちし拳が、今、解放される――。

 

「――走れ、叢原火!」

「マシュ!」

「はい! 宝具――展開します!!」

 

 マシュの宝具で彼女の宝具を受けるが、そのすきに彼女は逃げてしまった。

 

「だが――」

「ああ、そうだぜ大将。ありゃあ、最後のあがきだ。もうあの火力は出せねえよ」

「だけどこちらもそろそろ限界かな。連日の戦闘。さすがにそろそろごまかしは効かないだろうね」

 

 ジキル博士がそう言う。確かに、こちらもできる限り回復させているが全快とはいかない。あちらが徐々に削れていったようにこちらも徐々に削れて来ていた。

 ジキル博士の妙薬やクー・フーリンのルーン、ジェロニモのシャーマニズムによって何とか回復を促進させてきたが、それもそろそろ限界だろう。

 

「次が最終決戦になる。――勝とう」

 

 全ては明日の決戦の為に――。

 

 そして、翌日。

 

「今だ金時!!」

「吹っ飛べ、必殺ッ! 黄金衝撃(ゴールデンスパーク)!!」

 

 爆ぜる雷光。もはや避ける力すら茨木童子に残ってはいない。

 

「ぐっ、お、オオオオオオオオオオオオオォォッ!!」

 

 茨木童子に致命傷が入った。

 

「なぜだ……なぜ、ここまで追いすがる!? 鬼の王に!」

「いや、鬼の王じゃないだろ」

 

 全員がうなずく。

 

「な、なに!?」

「酒呑童子喰ってないし」

「ガ――!?」

 

 ここに来て、オレは茨木童子の本質を垣間見た気がした。何か(・・)に歪まされていない、茨木童子という鬼の本質を。

 それからの彼女の言葉を聞かずともわかった。彼女は、実に――可愛いのだと。

 

「むがっ!?」

 

 いきなり頬をつねられる。両方から引っ張られる。

 

「にゃ、なやに!?」

「マスター、今、他の女の子のこと可愛いって思ったでしょ? お姉さん、そういうのわかっちゃうんだよー。あたしにも言ってほしいなぁ」

「そうだ、トナカイ、貴様は我々にも言うべきだ」

 

 ――すみません!

 

「ふ、ふざけているのか!?」

「あ、いえ、全然」

 

 ともかくだ、そんな可愛らしい(チキンな)茨木童子は、さんざん末代までたたるからな! と捨て台詞を言い放ち消えていった。

 それと同時に酒呑童子が目を覚ます。

 

「むにゃ……ん? んん~? ……おーおーおー! 小僧やないの。久しぶりやなぁ。元気にしとったかぁ?」

 

 これが、酒呑童子?

 

「あの?」

「あら、相変わらずイケメンな小僧に加えて、これまたちょっといい感じの男まで。ええやないの。ウチと遊ぶけ?」

「なんてうらやま――」

「ダビデは黙っててくれ。――遊ぶってのがどういうつもりかは知らないけど、話に聞いたよりも随分な様子だね」

「あら、小僧が話とったん?」

「まあそんなところなんですが――本当に鬼ですか?」

 

 オレでもわかる。茨木童子を見続けてきたからこそ、わかる。茨木童子以上の鬼酒呑童子。それが、ただの人間のようだと。

 

「あー、なるほど。なんや体に力が入らん思うたわぁ」

「原因は、わかりますか?」

「まあアレやろ。ついてきぃ。案内するわ」

 

 そして、通りを少し行ったところにそれはあった。

 

「聖杯……やっぱりか。でも、中にあるこれは……お酒?」

 

 嫌な予感がしてきた。もしかして――。

 

「美味そな酒やろ? もちろん飲んだわ」

 

 つまりこの聖杯のような何かに注がれた酒によって茨木童子はああなり、酒呑童子はこうなったと。

 

「こんな怪しげな道端にあるものを……」

「こんな美味そな酒、飲まな損やろ。茨木は涙目で怯えとったから、うちの酌で飲めんのか? って聞いたら涙目で飲んでくれたで?」

 

 立派なアルハラです。やめましょう。

 

「飲んだからこうなった――聖杯だから、願いを叶える酒ってところか…………」

 

 つまり全ては願いの結果ということ。感じた歪みというのは酒は酔うもの、酔えば惑うは必然。

 

「なかなか頭回る陰陽師やねぇ。あんたさんくらいなら今のうちでも食えそうやわぁ」

「断固ノーです!」

「おお、怖い怖い。手つきの娘がおるんなら、今は退いておこうか。さて、それじゃあ、これは壊して、早々醒まさんとなぁ」

 

 悪い酒の悪酔いは一夜限りで充分。連夜なんぞは無粋もいいところ。

 連夜酔うなら、想い人と二人、いつまでもいつまでも。

 

「そいじゃ、いつかまた続きをやろか。小僧――」

 

 そして、満足げに酒呑童子は消えていった。

 

「羅生門の鬼退治はこれで終わりだ。ったく、アイツは何がしたかったんだ」

「さあ、でもまあ、気にしないでいいとか言いたかったとか?」

「余計気にするっつーの」

「はは、まあ、多少はすっきりしたんじゃないのゴールデン?」

「……さてな」

 

 そう言って彼も消えた。

 

「さて、帰ろうか」

 

 酔夢はこれで終わる――。




さて、ちょっと長めに終わらせました。
このイベントは結構ぶつ切りで難しいので、こんな感じです。
次は鬼ヶ島イベなんでやりやすいかな。

鬼ヶ島イベの次は六章だ

それとミートウォーズ来たよ! やったよ目標達成。

あとは素材集めです。スカサハ師匠はもう宝具レベル5にしてありますし、種火、フォウ君、骨、鎖。とりあえず優先はこんなところでしょう。あとはランプとか素材集めです。

さあ、終わるまで頑張りますよ。

水着マルタさんの腰つきヤバイ――。

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