Fate/Last Master   作:三代目盲打ちテイク

58 / 180
北米神話大戦 イ・プルーリバス・ウナム 19

「さて、全員集まったな! では、始めよう! 世界を救うための会議を!!」

「はい! 先生! はい!」

「うむ、エリザベート君。何かな?」

「攻め込んで殴るのよ、それしかないわ!」

 

 エリザベートの案は単純明快。攻め込んで殴り倒す。実に脳筋な作戦だった。確かに最も早いもののそれは最も困難だ。

 攻め込んで殴らなければどうしようもないのはわかっているのだが、普通に攻めては意味がない。それが可能なら暗殺が成功している。

 

 ロビンからもたらされた情報からあちらにはクー・フーリン、メイヴ、アルジュナがいるのだ。こちらもアルジュナに匹敵するカルナがいるが、それだけで勝てるほど甘くない。

 ゆえに。

 

「超却下!! である」

「なんでよ――!!」

「ともかく状況を把握のために改めて地図をみるとしよう」

 

 ケルトは北米大陸の東半分を占領している。最終的なエジソンの予想では南北の二つのルートから攻め入るだろう。現状はそうするための布石をしいている段階。

 どちらかに穴が開き、押し負ける。この戦争の敗北条件は、一定以上の領土が占有されること。攻めるにしろ、これ以上の領土が食われることは避けなければならない。

 その話を聞いて、

 

「そうか、では……応急処置として兵力を増やし、前線を押し返した私の行いは……」

「結果的にこの国を救っていたということですね。患者の体力は減る一方でしたが、心臓は守り抜いた」

「うむ……うむ!」

「だが、それが限界であったな。前線はわずかに押し返したが、膠着状態だ。カルデアが来なければいつかは押し込まれていたことだろう」

「そうだな。マスターには感謝してもしきれん。信長たちを置いて行ってくれなければ、もっと状況はひっ迫していただろう」

「でもそれも長くない」

「そうね。マスターの言う通り」

 

 あちらの戦力は何度も言うが女王メイヴ、クー・フーリン、ベオウルフ、アルジュナ。数は少ないが、世界有数の英雄たちであることに間違いはない。

 そんなエレナの説明を聞きながらオレは考えに没頭する。

 

 少なくともサーヴァント個人個人の力はほとんど互角だろう。数も多いし勝っている部分が多いと言えるだろう。だが、クー・フーリンは強大な相手だ。

 また、ベオウルフを相手にするのはサンタさんとエリちゃんを除いた方が良い。竜殺しに竜の因子を持つ二人をぶつけるのは愚策だ。

 

 さらにあちらには数がそろえばサーヴァントに匹敵、あるいは圧倒すら可能とするケルトの戦士たちがいる。連続で攻められ続ければ疲弊し倒されるとはヘクトールとレオニダス、アストルフォの言葉だ。

 彼らはそのおかげで討ち取られそうになったのだから。それだけでなくモンスターやシャドウサーヴァントやらまでやってくる。

 

 こちらの戦力としてはエジソン大統王の旗下である機械化歩兵とエレナ、カルナ。野良のサーヴァントだったヘクトール、レオニダス、アストルフォ、書文さん、バベッジ卿。レジスタンスだったロビン。独立病院のナイチンゲール。ラーマとシータ夫妻。

 それからカルデアのオレ、マシュ、清姫、ブーディカ、ノッブ、サンタさん、ダビデ、エリちゃん。それからスカサハ師匠も数としては数えていいだろう。

 

 数はこちらが上。無限増殖は魔力が続く限りサーヴァントとも戦えるヘルタースケルターをバベッジ卿が生み出し続ければ何とかなるだろう。バベッジ卿は後方でヘルタースケルターを生み出し続けてもらうのが一番か。

 ケルト兵たちなら何も問題は要らないと考えればバベッジ卿の参戦は僥倖といえる。こちらはサーヴァントの相手を考えればいい。

 

 アルジュナにはカルナをぶつけるべきだろう。伝承からすればこの二人をぶつける以外にはラーマをぶつけるくらいだ。シータもいるからそこは問題にはならない。

 だが、できることならクー・フーリンの相手にラーマをぶつけたい。こちらの最大戦力は間違いなく彼だからだ。そう考えるとベオウルフには書文先生をぶつけるのが良いか。

 

 エジソンは否定したが存外正面から戦うことが可能な戦力がそろっている。何よりケルト兵を気にしなくてよいのであれば、サーヴァントの数で押すこともできるだろう。

 

「――であれば、やはり暗殺でしょうか」

 

 会議の話を聞くと暗殺が良いかもしれないとマシュが提案したようだ。しかし、それもスカサハ師匠が否定する。それにはオレも同意見だ。

 一度失敗したのならもう暗殺は不可能だ。やはりここは正面から戦うしかない。

 

「マスター……マスター!」

「ん、ああ、ごめん、なに?」

「深く考え込んでいたようだが、何か浮かんだかね?」

「やっぱり正面から挑むしかないと思う。暗殺は不可能なら正面から行くしかないしバベッジ卿のおかげでこちらも希望が見えたからね。ここには複数のサーヴァントがいる。なら、二つに分けよう。それだけ戦力はあるはず。一方は陽動で、膠着状態を維持しつつ本命はまっすぐに突破して王をとる」

 

 その意見にうなずくのはサンタさん、ラーマ、スカサハ師匠など人の上に立つ者や軍の指揮をしたことのある者たちだ。

 良かった、オレの意見、間違いじゃなかったようで。

 

「そうだ。今、ここにはサーヴァントが複数存在する。私を含めて相手に拮抗し得る強力なサーヴァントもな。しかし、二軍が拮抗では圧し負ける。かといって一軍に戦力が集中すれば、残り一軍が崩壊し、アメリカが占領される。あらゆるバランスを考慮して南北両軍の編成を決めねばならない。さて、どうするか」

「なんだ、それなら簡単じゃない!」

「む?」

「ほら、そこの子イヌ! 提案したんだから、アンタが組み合わせを決めなさい」

「自分が? いいの?」

「当然よ、フランスでもローマでも、他にも戦ったじゃない。アンタは世界で一番、サーヴァントを知っているマスター。アンタが選ぶんなら(アタシ)は信用できるもの!」

 

 そんな大役をオレなんかでいいのかと思った。だが、

 

「あら、エリエリにしては一理あるわね」

「アンタ、そのエリエリ言うのやめなさいよ!?」

「エリザベートの言う通りだ。余もマスターが編成するならば、それで良いと思える」

「私もラーマ様と同じです」

 

 誰からも異議は出ない。

 

「わかった……時間をくれ」

「構わんとも。明日までにサーヴァントたちの編成を考えておけ。その間にエジソンとバベッジは最終決戦に向けて軍備を整えるのだ」

「そうしよう。通信起動! 直ちに全軍へ告知せよ!」

 

 あまりの責任に倒れそうだし、吐きそうだ。

 

「先輩、責任重大ですが、どうかよろしくお願いします」

「ますたぁ、どうか無理はなさらず、大丈夫です。ますたぁ、どんな編成でも文句は言いません」

 

 そうして会議は終わった。それから部屋で考える。気が付けばすっかりと夜になっていた。

 

「ふぅ、少し気分転換に散歩でもするか」

 

 城塞の中を歩く。すっかりと静まり返った城塞の中ではあるが、外では今も誰かが動き回っている音が聞こえている。

 

「――おや」

「ナイチンゲール……」

「どうかなさいましたか。このような夜更けに散歩とは」

「気分転換に」

「では、これも何かの縁。お付き合いしましょう」

 

 ナイチンゲールとともに夜を歩く。決戦の前とは思えないほどに穏やかな夜だった。いいや、決戦の夜だからかもしれない。見えないところではきっと誰もが忙しく動いているのだろう。

 

「……マスター。エジソンの病は癒されました。アメリカの大統領(おう)という重責を軽減できた。あるいは歴代大統領の妄執が憑依されていたのかもしれません。予後不良の恐れがあるので、引き続き観察していかなければ……」

「なら、残る病は一つだけだね」

「はい。それで世界が癒されると良いのですが」

「頑張るよ」

「……貴方に重圧をかけているわけではありませんので、そこは勘違いしないでください。貴方はすぐに期待や重圧を受けると逃げようとする前に無理してでも頑張ろうとする。世界の崩壊を止める責務をただ一人に負わせるなど、本来は正気の沙汰ではないのです」

 

 ――知っているよ、ナイチンゲール。

 

 オレは内心でナイチンゲールに告げる。その正気の沙汰でない行為の結末をオレは知っている。その重さをその狂気をオレは知っている。

 絶望的な所業に心をひび割れさせながら、血を流しながら這いずるように進んで、その果てに絶望に押しつぶされたあの地獄を、オレは知っている。

 

 一度壊れたからこそ、わかる。今のオレはきっと壊れているのかもしれないし、狂っているのかもしれない。

 

「――いいえ」

 

 そう思ったオレを彼女は否定する。

 

「狂っていなければ耐えられないのは確かです。かつての私のように。しかし、貴方はそうではない。そうではないのです。貴方は正気です。正常です。怖ければ震え、辛ければ涙を流す正常な、人間です。貴方は壊れていません、狂ってなどいません」

「――うん、わかってる。大丈夫だよ、ナイチンゲール。オレは、ね、貴方と相棒に勇気をもらったんだ。どうすればいいのかを教えてもらったんだ。人間とはどういうものかって教えてもらったんだ」

 

 インバネスを触りながら思う。

 

「重たいよ。世界を救うなんて重責オレ一人には重たすぎる。でも、一人じゃない。支えてくれる仲間たちがいる」

 

 マシュや清姫たちサーヴァントが。

 

「サポートしてくれる。一緒に世界を救おうとしてくれる人たちがいる」

 

 ドクターやカルデアの職員の人たちが。

 

「オレにはいる。それに答えはもうもらってる。だから、大丈夫だよナイチンゲール。オレは人間だ。弱くて、怖がりで、ちょっと世界を救おうとしているだけのただの人間だよ。

 だから、最後まで歩いて行ける」

 

 たとえ血を流そうとも。涙を流しながらでも。

 

 ――だって、いつかオレは世界を救うのだと言ってくれたあいつの言葉が今も胸にある。

 

 ――今、貴方は人間だと言ってくれたナイチンゲールの言葉が胸にある。

 

 ――みんなの言葉がオレの中に息づいている。

 

 それは一度壊れなければ気が付けなかったことで、壊れたオレを繋ぎ止めて、治してくれたもの。だから、オレは前に進める。

 

「……ですが、無理は禁物です。人間は無理ができるようにできているのではないのですから、くれぐれも無理はしないように。三食きちんと取り、睡眠はしっかりと六時間以上。殺菌消毒を徹底してください。良いですね」

「はは。わかってるよ」

「――それから、私は貴方を信用しています。かつて、わからずやの陸軍を相手に戦った同胞たちのように。努力は必要ですが無理はしないで。重荷は背負わずに。貴方が間違えずとも託された我々が失敗することもあります。貴方が間違えても、我々が必ずや成功させます」

 

 どんなに盤石の体制を整えても、兵士は死に、病人は発生する。

 

「だから、気楽に決めてもいいのです。気楽に、誠実に――であれば、私たちはきっと大丈夫。さあ、戻りましょう。夜風を浴びて身体を冷やすものではありませんから」

「ありがとう、ナイチンゲール」

 

 ナイチンゲールとともに部屋に戻り部屋の前で別れて、椅子に座り机に向かう。

 

「さて、気楽に、か……」

 

 まずは第一軍。相手の足止め。膠着状態を維持しながら本命が王を倒すまでの時間稼ぎを行うサーヴァントたち。

 おそらく王と女王は最後までうごかない。軍を動かす王とはそういうものだ。それにそういう予感がするのだ。それはきっと僅かに残ったクー・フーリンとのパスを通じて感じられた予感なのだろう。

 

 だから考える。王と女王にぶつけるサーヴァントはラーマとスカサハ師匠だ。必然この二人は本命の軍になる。あとは個人的にラーマとシータを別れさせたくないからシータも本命の南軍に。

 ならばどちらにどちらが来るかということ。アルジュナとベオウルフ。この二人は南北に分かれるだろう。それを知るすべは。

 

「いや、アルジュナは、おそらくカルナのところに来る」

 

 編成を考えるために部屋に戻る前にカルナに言われたのだ。おそらくアルジュナはこちらに来るだろうと。であれば、アルジュナはカルナに任せる。そして、カルナにいる場所にアルジュナが来る。

 アルジュナは北軍に行かせるわけにはいかない。あちらはつぶれてはいけないのだから、強い方はこちらで引き受ける。ならばカルナは南軍。

 

 北軍には、エジソン、エレナは確定だ。オレは本命の南軍についていくことになる。だから指揮官を北軍にもつけなければならない。エジソンは大統王だから問題ない。エレナはそのサポートだ。

 あとは、ベオウルフの相手に書文さん、レオニダス、ノッブ、サンタさん、エリちゃんにロビン。軍を相手にできるサーヴァントたちをあちらに送る。

 

 最終的に、南軍が、カルナ、スカサハ師匠、ラーマ、シータ、マシュ、清姫、ブーディカ、ダビデ、アストルフォ、ナイチンゲールにオレ。

 北軍が、エジソン、エレナ、書文さん、レオニダス、ノッブ、サンタさん、エリちゃんにロビン、ヘクトール。

 そして後方にバベッジ卿を配置してヘルタースケルターを量産してもらう。

 

 そして、気が付けば朝になっていた――。

 




会議。今回は戦力十分。あとは編成のみ!
ナイチンゲールさんのアフターケア。
ぐだ男はまだまだ歩いていける!

ゲームに関しては、マスターミッションがイベント仕様でかなり楽でした。
さて、アンメアをマイルームで突っついていたら、完全に惚れました。ずっとアンメアのこと考えてる。

ちなみに、私はアン派です。腰つきがヤバイ。メアリーも好きですが年上のお姉さんスキーな私はアンの方が好み。
しかし、目的とは違うサーヴァントを召喚して触れあって惚れるパターン多いな私。

IFでまたアンとの触れあい書こうかな

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。