Fate/Last Master   作:三代目盲打ちテイク

49 / 180
北米神話大戦 イ・プルーリバス・ウナム 10

 ハリウッドから西に少し。マシュによる召喚ポイントを確立しドクターからの補給を受ける。

 

「さて、では現状の確認といこう」

 

 野営地で補給などを済ませた後、マスターや女性陣が寝静まった頃、ジェロニモが現状の確認をとる。

 

 現状、初期目標としてのセイバーとランサーの確保は成功。その上でケルト側の戦力であるフェルグスの叔父貴を倒すことが出来た。目標達成の上、フェルグスの叔父貴を倒す、アストルフォの合流というおまけ付き。

 状況としてはすこぶる良いだろう。

 

「ただ、問題があるぜ」

「ん? 問題なんてあるロビン?」

「ああ、見てみろ」

 

 ジェロニモとビリーがロビンの指差す方を見ると、マシュ、アストルフォ、清姫、エリザベート、ネロたちにほとんど抱きつかれ揉みくちゃになって寝ながら死にそうな声をあげているマスターの姿があった。

 

「気にしないでいいんじゃないかなぁ」

「嬉しい悲鳴ってやつだろ」

「いやいやいや、ビリーに式、流石に可哀想だからなんとかしてあげようよ」

 

 ほっといて大丈夫だろとビリーと式は言うがジキル博士は助けた方が良いのではと言う。

 

「それよりもだラーマの妻、シータがいる場所だ」

 

 未だ手掛かりすらない。

 

「ああ、それならマスターとドクターが予測をたてていたね」

「本当かジキル博士」

「うん、えっと地図はあるかい?」

「ああ」

 

 ジェロニモがアメリカの地図を広げる。

 

「マスターとドクターが話していたんだけれど、ここが怪しいと言っていた」

「アルカトラズ?」

「そう、アルカトラズ島。監獄島だよ」

 

 アルカトラズ島。灯台、軍事要塞、軍事監獄、そして1963年まで連邦刑務所として使用され、ザ・ロックや監獄島とも呼ばれている。

 

「誰かを捕らえておくにはおあつらえ向きの地形だ」

 

 島であり、移動手段は船のみだ。接近すればサーヴァントがいた場合攻撃を受け続けることになる。渡り切ったとして、待ちかまえられていた場合苦戦を強いられる。

 

「マスターとドクターの推測だけれど、女王の性格を考えた結果だから、それなりに確率は高いかもしれないといっていた」

「ケルトの女王って、正体わかってましたっけ?」

「わからなかったけれど、キーワードはたくさんあったからね。ドクターが不眠で調べてくれたらしいよ」

 

 クー・フーリン、フェルグス・マック・ロイ。そのあたりに関係する女王であることに間違いはない。だからこそそこをキーワードに総当たりで調べていった。

 マスターのおかげで影の国の女王スカサハを除外できていたのは大きい。それで結果、女王として浮上したのがメイヴだった。

 

 女王メイヴは、ケルト神話、アルスター伝説に登場するコノートの女王だ。数多くの王や勇士と婚約し、結婚し、時には肉体関係のみを築いた恋多き少女だと言われている。

 アルスター伝説最大の戦争を引き起こした張本人であり、自らに逆らうアルスターの勇士クー・フーリンの命を狙った。

 

 自分の欲望に一切逆らうことなく、生前には数多くの男たちを我が物としフェルグス・マック・ロイも恋人の1人だったという。

 財も大好きで、それが理由でアルスター全土を相手取った大戦争を起こし、自ら戦車を駆ってコノートの軍勢を指揮した。

 

 伝説的にも女王としても合致する。彼女が英霊として現界した場合どのような能力であるのかは不明であるが、すくなくともこれだけの軍団を作り出すだけの力はあるだろう。

 候補として残ったのがメイヴだった。性格の予想は意地が悪い。なにせ悪辣だと言っていた。シータをさらった場合どこに連れていくかをああだこうだと言いあっていた結論がアルカトラズ。

 

「西海岸にある島。東海岸から遠く離れていることを考えれば、ありえない話ではないか」

 

 わざわざ戻らなければならないのだから。そういう意味でもあり得る可能性がある。

 

「余としては可能性があるのならばゆくぞ」

「いいえ、患者は安静にしていてください」

「痛い痛い!?」

「では、明日はそちらに行くということで良いかな?」

 

 起きている全員が頷く。どちらにせよ手がかりはないのだ。ならば可能性があるかもしれない方に行ってみるのも悪くはない。

 そういうことだ。

 

「さて、本題だ」

 

 ジェロニモが切り出す。

 

「食事時にも言ったが、東部はほぼ完全にケルトに占領されている。そして、彼らが拠点としているのがワシントン。本来の首都だ」

 

 国家というものに最も屈辱を与えられる場所。実に悪辣な手であり、意地が悪い。

 西部もよく対抗している。難民を引き入れ、機械化歩兵の生産工場でに日々改良にいそしんでいる。また、あちらにはカルデア側のサーヴァントである、織田信長、ダビデ、ブーディカ、サンタオルタと名乗っているアーサー王が付いている。

 

 カルナに加えてそれらの戦力増強によってほぼ互角とみていい。

 

「だが、それも軍勢を合わせてだ」

 

 いつまでも大量生産を続けられるわけがない。互角ということはそれだけ戦争が長引くということだ。長期戦になれば不利なのはアメリカである。

 物資も人も無限ではないのだ。対してケルトは女王さえいれば増え続ける。ほとんどキリというものがないだろう。いつずれ戦争はあちら側に傾くことは容易に想像がついた。

 

「だから、オレたちがどうにかするんだろ」

「あれ、マスター、起きたんだ」

「うん、寝れない」

「余と一緒では不満と申すか」

「いや、陛下は別に不満じゃないんだけどね……」

 

 ――アストルフォがね、うん、なぜかいの一番に隣に入ってきたおかげで、マシュと清姫がね。

 

 そのうえで煽り発言。隣争奪戦の末、なら上でいいじゃんと上にまで載られる始末。そこにさっそうと参戦した陛下。

 

 ――カオス過ぎるよ!?

 

 というわけで、何とか寝静まるまで耐えて魔術礼装によってどうにか回避した。なぜか陛下起きてきたけれど。

 

「……こほん。本題に戻ろう。暗殺だねジェロニモ」

「ああ、そうだマスター。ここは暗殺しかない。ワシントンまで潜入――そして、サーヴァントの首を獲る」

 

 ケルトはバラバラに動いている。更に好戦的だ。首都の防備に関してはそれほど重視していないだろうと予想できる。

 

「根本からの治療は大切ですが、私としてはこちらの患者の治療を優先したい」

 

 ナイチンゲールがラーマの様子を見ながらいう。

 

「余は、だいじょ―――あだだだだ――!?」

「――うん、だから、部隊を二つに分けるよ」

 

 ゆっくりもしていられないのなら二つに分けるのが合理的。そう、合理的なのだ。

 

「マスターには辛い決断であろう」

「……仕方ないよ。世界を救うためだ。一方が暗殺部隊。もう一方は、シータを探す」

 

 暗殺任務は危険度が高い。失敗する確率の方が高いくらいだ。だからこそ、まとまって全滅しましたではお話にならない。

 そうそれでは駄目なのだ。世界を救わなければならない。エジソンのようにアメリカだけを救うのではなく。世界を救う。

 

 ――そのためなら、犠牲すらも覚悟しなければいけない。

 

 土台全てを救うことなどできない。

 

 ――わかっていたじゃないか。

 ――オレは、弱い。

 ――でも、だからって、犠牲を許容なんてしたくない。

 

 それでも救うためには必要なのだ。それがわかるからこそ、起きたと言ってもいい。

 犠牲になるかもしれないのならば、自分の手で頼むのだ。誰かに頼るのではなく自分がその責任を背負えるように。

 

「シータの方にはオレとマシュ、それからエリちゃん、アストルフォ、清姫で行こうと思う。ナイチンゲールとラーマもこっちになるね」

 

 うぬぼれるわけではないが、令呪のあるマスターは最後のカギだ。切り札と言ってもいい。そうジェロニモに言われた。それに暗殺について行ったところで足手まといになる。

 ならばシータを救出に行き、もしもの時に託されたものを受け取るのだ。

 

「うん。暗殺の方は式、ジキル博士、陛下、ビリー、ロビン、ジェロニモに頼みたい。問題ない?」

「うむ、任せよ余が必ずや成功させてみせるぞ!」

「任せろよ、サクッと殺せば終わりだ」

「精一杯頑張るよ」

「さーて、せいぜい気張るとしますか」

「あははまあほどほどにってね。気張りすぎてもアレだし」

「任された」

 

 式とジキル博士はアサシンだ。ネロ陛下は皇帝特権を使えばアサシンのまねごともできる。同行者にも有効になる上に、ロビンは宝具顔のない王を使うことで完全なる透明化、背景との同化ができる。

 それらを組み合わせれば誰にも見つからずにワシントンに入ることができるだろう。

 

「すまない。お願いするよ」

 

 ――どうか、無事に

 

 そう祈りが届けばいいと願った――。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

「では、行くとするか」

 

 マスターとマシュマロサーヴァント別れ、余たちは一路ワシントンへ向かう。

 

「うむ。短い別れであったが悔いはない。あとはことを為すだけだな」

「……死にに行くわけではないぞ、ネロ」

「承知している。だが、暗殺という任務の危険性を余も知っている」

 

 どれだけ確実な策を練ろうとも、どれほど不確定要素を潰そうとも、絶対というものはない。絶対的な王政が長く続かなかったように。偉大なりし余のローマもまたその姿を変えたように。

 まして、敵陣深くに潜り込む。生き残ることを前提に話してしまっては、成功するものも成功しない。

 

「なあ、アンタ……」

「いうな。それ以上は野暮だぞ緑アーチャー。ではない、ロビンフッドよ」

 

 生きるとも。生き残る前提を話せずとも。

 

「余は、図太さでは他の後塵を拝したことはないのだからな!」

「はは。そりゃそうだな。オレも死ぬ気はないし。せいぜい、頑張りますか」

 

 後ろではジェロニモとビリーが話している。

 

「ねえ、ジェロニモ」

「なんだ?」

「僕はさ、アメリカ人だからいいんだけど。君は誇り高いアパッチ族だろう? 本当にいいのかい? この国を救っちゃってさ」

「まだ言っているのか。この国を救わなければ、我らも救われない。アメリカに借りを作らせるというのも愉快なものだろう? それに、あのような少年が必死に戦っているのだ。ならば、アパッチとして戦わなくてどうするというのだ」

 

 誇り高いアパッチが戦わず、誇り高い少年が戦う。あってはならないことだ。

 それがたとえ、忘れ去られるものであったとしても、アパッチの誇りはマスターが継いでくれるだろう。彼だけが覚えていてくれるのだ。

 

「ならば、かっこよく記憶に残りたいとは思わないか?」

「…………はは。君からそんな言葉が聞けるとは思わなかったよジェロニモ。うん、そうだ。せいぜいかっこよくマスターの記憶に残ってやんないとね」

 

 うまくいくと良い。そう祈る。

 

「ねえ、式君」

「なんだ、ジキル博士」

「……いや、なんでもない」

「なんだよ、気色悪ぃな」

「マスターは大丈夫かなって思ってね」

「今は自分の心配してろよ。どうみたってこっちの方がやばいぜ? ただ、まあ、大丈夫だろ。あっちにはマシュマロとテケテケがいやがるんだ。何があってもマスターだけは守るだろうさ」

 

 ――それが心配なんだよ。

 

 ジキル博士はそういった。

 

「そりゃ……心配性だな、オマエ」

「僕は、かつてマスターを守れなかった。もう二度と、そんな思いはしたくないからね。心配性でちょうどいいくらいだと思っているよ」

「ま、いいんじゃねえの。そういうのがひとりくらいいてもな。ただ気合いは入れろよ」

「わかっているよ」

 

 暗殺部隊は進む。

 ワシントンに向けて。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

「さぁて、オジサンも仕事しますかねぇ」

「期待してるわよ、トロイアの英雄さん」

「期待しないでほしいねぇ、オジサンとしては」

 

 やれることは全部やる。そうでないと勝てないってのが、嫌なところよね。エジソンはうまくやっているけれど、それもいつまでも持つようなものじゃない。

 あの子のおかげで多くの英霊たちをこちらに抱き込むことができたけれど、今度はそれが問題なのよねぇ。特に、

 

「バベッジ卿とエジソンが大喧嘩。著作権とかなんかで訴訟で裁判が始まるし、カルナは余計な一言で油注ぐし。レムリアー(疲れたの意)」

 

 そのうえ、トロイアの英雄はエジソンのアレに気が付いてる。隙を見せればすぐに突いてくる気満々。本当嫌になるわ。

 おちおち本も読めやしないし。

 

「エレナ君! 聞いているのかね! 機械化歩兵は、盗作ではないとうことは電動であるということが証明しているということを!!」

「いいや、エジソン卿。見給え、我が機体を。蒸気式であるという点以外、似通っているではないか。そう思うだろう! ミセス・ブラヴァツキー!

「いいや、違う。バベッジ卿! 見るが良い、銃だ。卿は剣。大きく違う。それに何より、直流だ!!」

「エジソン卿よ。些細な違いだ。オプションだろうそのあたりは。何より私の方が開発が早いとあれば、結果は見えているのではないかね」

 

 ――なんで、あたしのところに詰め寄ってくるかなぁ。

 ――状況わかってんのこいつら。

 

 なんか通信があったから、信長たちが捕まえてきてくれたのは良いのだが、こんなことになるのならば連れてこない方が良かったとしか思えない。

 ここにニコラ・テスラがいないでよかったと心底思う。ここにあんなのがいたら、喧嘩どころじゃない。西部を二分して戦争が始まる。

 

「エレナ君!」

「ミセス・ブラヴァツキー。どうか公正な判断を」

「あ・ん・た・ら――!! 一回頭冷やしてこいやー!!! カルナ! 何も余計なことは言わずに、そいつらを外に放り投げておいて!」

「了解した。しかし、余計な一言とは心外な――」

「しゃ・べ・ら・ず・に!」

「む」

 

 ――ふぅ、片付いた。これでゆっくり

 ――でもこういう時ほど誰かくるのよねぇ――

 

「わしじゃ!」

「…………」

「ん、なんじゃ、ああ、やっぱりねとか、また来たとか。報告じゃぞ」

「なんで、私のところにくるのよ。エジソンのところに行きなさいよ」

「いやじゃ、あやつめ面倒なものにとりつかれておるからの、お主の方がまともじゃろ?」

「はぁぁぁ、で、なに?」

「うむ、やはりユニットを組むにあたりそろいの衣装は」

「なんの話よ!?」

「冗談じゃよ。そろそろマスターが動くらしいからの。それを伝えに来ただけじゃ」

「へぇ、伝えてくれるんだ」

 

 そういうことは伝えてくれないとおもっていたけれど。通信機の存在だって隠していたわけだし。

 

「西部に戻るという話じゃからの。言っておいた方が良いじゃろ。さすがわし、役に立ってるよね! 今回のMVPはわしで決まりだよね! なんてたって沖田とかいう社長にこびうって星5になったやついないからね、是非もないよネ!」

 

 ――なにいってるのかしらこいつ。

 

 とりあえず、戻ってくるというのなら少しは。

 

「…………」

 

 何やら外から爆音がしている。

 

「はぁ……」

 

 こうなるんだったらあの子について行けば良かったかしら。

 

 後悔は先には立たないとはよく言ったものだ――。

 




遅くなって申し訳ない。イベント周回してたんじゃ。
やはり今回のメインは酔いどれきよひー。名前呼んでもらえた瞬間、ちょっと一瞬ガチで放心しました。
我に返って、喜びに打ち震えてました。きよひーかわいいんじゃーぁ。忠犬は手に入らなかったです……(´;ω;`)。

今度は、エレナママのへべれけがみたいんじゃが、駄目かのう。
沖田さんでもよいぞ。ブーディカさんの酔いどれは地味に見たい。どんな風に酔うんだろう。

あ、あと電撃のアンソロ2買いました。リヨ先生は相変わらず先生だったよ。
沖田さんのリクルートスーツが見れたし、キャットの水着喫茶が見れたし。
ただ、おいエミヤ、おまえそんなことで固有結界使っていいのか。まあ、エリちゃんが嬉しそうだしいいのかな。
みなさんも買うべし! オススメ。

ああ、そういえばようやく沖田さんのスキルが全部マックスになりました。塵がなくなったんじゃ。QPもなくなったんじゃ。
じゃが、悔いはない。ということで、次はオリオンと孔明。高難易度対策じゃ。

さて、次回はアルカトラズ。
そして、暗殺は成功するのか。
ぐだ男ちゃくちゃくと成長していたようです。

待て次回。
そろそろ巻きで行きたい……。

あ、あとテイルズオブゼスティリアのアニメ見た。なんかいろいろと改変されているのでアリーシャ救済期待していいのかなと思っている。
原作はやったことないが、アリーシャ好みなんですよねぇ。救われてほしいものです。

あ、そういえば愉悦部のみなさん。不憫ヒロインは最後どうなってほしいですか? 私は幸せになってほしいです。
ぼこぼこのぼろぼろにされたヒロインには幸せになってもらいたいと思います。

その前まで盛大に愉悦しますが。みなさんはどうですか? 活動報告の質問というところに書いてもらえると嬉しかったりします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。