Fate/Last Master   作:三代目盲打ちテイク

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オール・ザ・ステイツメン 4

「私の敗北か……」

 

 紅の弓兵が消えて。

 

「申し訳、ありません……マスター」

 

 青い騎士王が消えて。

 

「…………」

 

 黒き復讐者も消え失せた。

 もはやここにはマスターただ一人。どこも見ていない、どこにも行けない。ただ、願いを叶えたかっただけの哀れなマスターが一人。

 

「終わりだ」

「……終わり……ああ、そうだね。終わり……ああ、もう終わってたのか……ただ会いたくて、それだけだったんだ」

「…………」

「異世界の私…………離すなよ」

 

 それは、誰をだろうか。

 誰の手をだろうか。

 いいや、違う。そんなものわかっている。

 

「わかっている」

「――――」

 

 笑ったように見えた。

 

「だが――バニヤンは駄目だ。アレは、危険すぎる」

「私が、危険……?」

「そうだ。ポール・バニヤン。世界を拡げるもの……」

「でも、私は、全部みんなの為に――」

「それが、世界を滅ぼす」

 

 ポール・バニヤンは世界を拡げる。

 いいや、破壊して作り上げる。

 確かにそれは有用だろう。

 だが――。

 

 それだけでは済まない。彼女に限度などと言うものはありはしない。彼女はあらゆる全てを拓く。

 木を切って、家を建てて。次第にそれは村になり、街になり、国になる。

 

 ポール・バニヤンは繰り返す。発展させるために。

 そして、最後には全て壊れてしまう。壊してします。

 何も悪くない。ただ良くしたかった。そのために壊してしまっただけなのだ。

 

「わた、しは――」

「バニヤン!」

「マスター……私は、いない方が、いいの……? 私は、ただ、赤ん坊が生まれずに死ぬようにしたかった。寒さに震える老人が、震えなくなればいいと思ってた。飢えて苦しむ農民が飢えなければいいと思ってた。

 全ての人を救いたくて、すべての人を助けたくて。だから、みんなが望む通りに、世界を開いてきたのに。私に心があるから、駄目なのかな。壊すべきものは、私なのかな。私は、必要のないものなの……?」

「違う! 絶対に! ポール・バニヤン。君は言った、寂しいと。それに、この世界に必要のないものなんてありはしないんだ」

「そうだよ」

 

 ジャックが言う。

 

「この世界に生まれるものに必要のないものなんてないんだよ」

「そうよ」

 

 ナーサリーがいう。

 

「この世界に生まれたものはね、どんなものでも素敵なの。今は、駄目でも、未来はわからないもの。評価されなかった傑作が、遠い未来で評価されて誰かを幸せにすることがあるのだもの」

 

 そう。

 この世界に必要のないものなんて存在しない。

 必要がないのならば生まれるはずがないのだ。生まれたからには意味がある。神話も、伝説も、民間伝承も。必要とされたからこそ生まれた。

 アメリカンジョークの与太話。それがどうした。生まれたからには、例え邪魔と言われようとも生きる権利があるのだ。

 

「世界の誰がバニヤンを要らないといっても、オレが言ってやる。おまえが必要だ。ポール・バニヤン。

 だから、オレの手を取ってくれ。ここにいよう。もう寂しい思いはさせない。オレは、君の味方だ」

「マスター……」

「そうか……ああ、そうか……」

 

 異世界のマスターは、まぶしそうな顔を見せて消え失せた。最後に残った聖杯は、異世界のマスターの手から零れ落ち、砕け散った。

 特異点が崩れ始める。ジャックとナーサリーは、この土地で召喚されたサーヴァント。特異点の消滅とともに英霊の座へと帰還する。

 

「ジャック、ナーサリー」

「んもう、そんな顔しないでバニヤン。また会えるわ」

「そうだよ。わたしたちは友達」

「だから、またねって言えばいいのよ」

「うん、友達。またね」

 

 彼女らは笑顔で帰っていく。

 

「さて、オレたちも帰ろう」

「うん!」

 

 オレたちは、帰る。

 例え誰が何を言うとも、この手を離さない。いいや、バニヤンの手だけじゃない。

 

 マシュの手も。

 

 クー・フーリンの手も。

 

 清姫の手も。

 

 ブーディカさんの手も。

 

 ダビデの手も。

 

 ジキル博士とハイドの手も。

 

 ジェロニモの手も。

 

 ベディの手も。

 

 エリちゃんの手も

 

 ノッブの手も

 

 サンタオルタの手も

 

 式の手も

 

 スカサハ師匠の手も

 

 アイリさんの手も。

 

 金時の手も。

 

 サンタジャンヌの手も。

 

 クロの手も。

 

 リリィの手も。

 

 ――絶対に離さない。

 

 そうして、意識は眠りのように沈み、再び浮かび上がる。

 

 そこは、いつものウルクのカルデア大使館にあるオレの部屋だった。

 

「…………ん……」

 

 目覚めると妙に体が重い。

 どうにも眠っている間に魔力を大量消費したようだというのも、おそらくはあの特異点のせいだろう。

 ただそれだけではない。

 

「……まったく」

 

 オレの上で眠っているのはアリスならざる少女だ。全てを思い出して、己を取り戻したポール・バニヤンだ。

 いつの間にか裸オーバーオールなのはちょっとまずくないだろうか。

 

「ん、あつい……」

「まて、脱ぐな脱ぐなぁああ!?」

 

 あ、いつも朝になると全裸になってたのって熱かったからかぁ。

 などとそんなことを思いながらも。

 

「んー。あ、マスター、おはよう」

「おはよう、バニヤン。とりあえず、服は脱がないでくれるとオレが助かる」

「わかったー……」

「それにしても良かったよ。一緒にこっちに来れて。いや、元から一緒だったからいいのか」

「うん。私もマスターと一緒にいられるようになってうれしい。――えっとね。私、あまり役に立たないし、パセリみたいなサーヴァントだけど、これからもよろしく」

「うん、よろしく――さて、お腹すいたし朝食にしようか」

「うん!」

 

 まあ、案の定バニヤンのことで色々とマシュに膨れられたりしたり、心配されたりと色々と騒がしい朝食になってしまったが、新しい仲間の加入にみんな喜んだのは言うまでもない――。

 




さて、今回短いですが、次回からバビロニアに戻ります。

では、皆さままた。

とりあえず、エレナが最下位でやる気がでないので、時間かかるかもしれません。
第2レース1位とれたけど、その落差よ……
まあ、頑張るけどさぁ……。

あと早くエレナ引きたい。エレナが画面に登場した瞬間、脳内がエレナ可愛いで埋め尽くされるクライダカラネ。

まあ、それはそれとしてノッブイケメンすぎで辛い……。ノッブがイケメンすぎてツライ……あんなん惚れるしかないやん……。

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