Fate/Last Master   作:三代目盲打ちテイク

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絶対魔獣戦線 バビロニア 10

 門を抜けて、ウルクに入る。それと同時に、オレたちを様々な声が迎えた。

 

「新入荷、新入荷だよ~~~!! 秋の麦酒が大量入荷だ~~!!」

 

 それは呼び込む声だった。

 王も贔屓しているドゥムジ工房の新作だとか。泡立ちが極上だとか。今だけしか味わえないとか。

 そんなことを言って客を引く声であったり。

 

「両替、両替はこちら~! 今だけ、限定の銀替制度、利用しない手はないよ~!」

 

 両替をすすめる声もしている。羊の銀が一つで魚の銀が五つだとか。麦の銀が一つで、亀の銀が三つだとか。

 

「鳥の脚肉をサービスだ! うちで食ってけよー! ただし、塗り物は持参してくれよな!」

 

 そんな店主の声がすれば、西区で粘土運びの人員を募集しているという兵士の声が響いていたりもする。兵学舎の人手不足で、槍が木の棒になると言って、ヒトを集めようとする声もある。

 かと思えばメルルの花屋で、花はどうかという可憐な声もしていたりと、多種多様だ。

 

 とにかく一言で言えば活気で満ち溢れていた。

 

「なんだ、この活気……?」

 

 戦時下ではないのか、と疑いそうになるくらいの活気で満ち溢れて騒々しい。誰一人としてうなだれてはいないし、暗いという言葉が見つからないほどに朗らかだ。

 本当に滅亡の危機がそこまで迫っているというのに、凄まじい活気にみんなが驚いてぽかんとしてしまったほどだ。

 

「ははは。いやはや、良い反応だ。これが、現在のウルクの姿さ。誰も諦めていない。緊張はしているが、笑顔。すごいだろう?」

「それだけじゃない……信じられない……なんて無駄のない街並みなんだ……そこの地図を見てみるんだ!」

 

 ドクターに言われるままに地図を見て、仰天した。

 

「なにこれ……」

 

 本当にここは神代か? 現代と言われても遜色ないくらいの街並みだった。区画整備がしっかりとされているのだ。役職ごとにきっちりと区画を分けて、合理的な交通網を構築している。

 兵産、建築、商業、生活。あらゆる全てをまかなえるようになっているのだ。古代都市などとだれが言った。こんなの現代でも早々を目にかかれないほどの都市だ。

 

「うんうん。本当、良い反応だ。よろしい。では、ウルク市の案内はまた今度だ。まずはジグラットに向かうとしよう」

「ジグラット……?」

「なんと言ったものかな。ああ、簡単に言ってしまうと、王宮みたいなものさ。さあ、これからギルガメッシュ王との対面だ――」

 

 ギルガメッシュ王との対面。

 王との謁見ともあれば複雑な手順で、散々待たされるのだろうと思っていたのだが。

 

「あっさりと王の間に通されてしまいました」

 

 その上、気さくに声をかけられたのが意外でもあった。マーリンの顔パスだった。巫女みたいな人たちはマーリンを見ると避けていったが、その理由は多分、ダビデと同じだと思う。

 ただ人数が多いから、オレとマシュの二人で来ている。

 

「それにしても、王への謁見って、こんなに簡単でいいの?」

「いました、王様です」

 

 丁度執政中のようだ。

 

「何度も言わせるな、戦線の報告は常に最新のものでなければならん。更新を怠るな! こちらが動けば動くほど、あちらは機会が減るのだ。楽に戦いたいのならば、脚を動かせ!」

「はっ! 秘書官による粘土板づくりを一時間ごとに、運搬役を三車増やして、対応します!」

 

 指示を受けた兵士がせわしなく謁見の間を出ていく。

 

「次だ。本日の資材運搬の一覧はこれか」

 

 積み上げられた粘土板をさっと見る。

 

「エレシュ市からの物資運搬に遅延が見られるな。奴ら街道に巣を張ったか。東門の兵舎から20人派遣だ。指揮はテムンに任せる。地元なら土地勘もあろう」

 

 更に次の粘土板へ。

 

「なんだ、この阿呆な仕切りは! バシュムの死体はエアンナに送らぬか! 学者どもが暇を持てましておるわ! ただ飯を食わせる余裕などないと知れ!」

「はっ! ティアマト神研究班に、送ります! それと、こちらはギルス市からの返信となります」

 

 兵士が次の粘土板を渡す。

 さっと目を通して――。

 

「おのれ、ギルス市の巫女長がほざきおって! まだ神殿に備蓄があることなどお見通しだ! 底が付くまで吐き出させよと伝えよ! 壁が壊れればどのみち終わりよ。冥界にまで地上の食料は持っていけんとな」

 

 次から次へと粘土板が行きかう。

 

「これは星読みの報告だな。(オレ)の視たものと一致している。収穫期を読む精度はまずまずだ。担当者にはラピス・ラズリの胸飾りを与えるように。だが、休む余裕などないぞ! 次はエリドゥの調査隊の報告に目を通させておけ!」

 

 報告を読み、それに対しての指示をテキパキと出していく。

 そのどれもが的確で速い。

 

「――ところで、タバドの娘が産気づいたと聞いた。巫女務めをひとりと、栄養のつく果実を送ってやれ。タバドは、北壁から引きあげさせ、三日の休みを与えるが良い。孫の顔は良い英気に繋がるだろう」

 

 更に、気遣いまで。

 

 ――え、え?

 

 オレは困惑してしまう。

 

 ――だって、あまりにも想像と異なるギルガメッシュ王の姿に。金ぴかではなく半裸でなんかすごい格好しているし。

 

 前に出会ったギルガメッシュ王とは、あまりにも異なりすぎていて。

 

「アレ、偽物じゃないの?」

「……はい、聞いていた想像とは、違うような……もっと、こう……とにかく酷い王のイメージでしたが……」

 

 アナの言う通り、そう言った想像をしていた。けれど、現実は違った。

 いや、根底は変わらないのだが――なんだろう、こう、言いようのない感覚がする。

 

「何人もの神官が怒鳴りつけられてます……」

「すごい忙しさだなぁ」

 

 とても話しかけられる雰囲気ではない。

 でも、このまま帰るわけにはいかない。

 

「良し、さあ、行こう。ギルガメッシュ王! 魔術師マーリン、お客人をお連れした!」

 

 マーリンに連れられて、というか、引っ張られてギルガメッシュ王の目の前に連れていかれる。

 

「帰還したのですね、魔術師マーリン。ご苦労でした。王はお喜びです」

 

 前に出てきたマーリンにそう言葉をかけたのは王の補佐を行う女性だった。

 

 ――いや、あの眼は喜んでない目だ。

 

「それで、成果は? 天命の粘土板は、見事に持ち帰りましたか?」

「いや、そちらはまた空振りに終わってしまったよ。西の杉の森にもないね、アレは……まったく、王様がどこに置き忘れてきたのかさえ、覚えていくれれば楽だったのに」

「不敬ですよ、お黙りなさい。粘土板を記した時、王はたまたま、そうたまたま、お疲れだったのです。貴方は、命令通り、粛々と探せばよろしいのです」

 

 そうマーリンに女性が言ってから、彼女の視線がこちらに向かう。

 

「その者たちは? どう見てもウルク市民ではありませんが……」

「よい。貴様は下がっておれシドゥリ」

「王? 神権印章(ディンギル)を持ち出すなど……まさか……」

 

 ――ああ、うん、それはこっちでもわかるわ。

 

「そのまさかよ」

 

 ――ここで戦う気だ、この王様!

 

「我は忙しい。言葉を交わして貴様らを知る時間も惜しいほどにな!」

 

 ゆえに、戦いを以て計る。

 

「構えるが良い、天文台の魔術師よ!」

 

 ――それはこの人数相手に戦うということですか、王様。

 ――なんという自信。

 

 けれど、あのアーチャーは、それだけの力があった。ならば、きっと今の彼にもそれだけの力があるのだろうということは予測可能。

 というか、魔力量が半端ない。

 

「マーリンは手を出すなよ」

「はっはー。ありがたい。荒事は苦手だからね。じゃあ、アナ、僕の代わりによろしく」

「……また、余分な戦いを……マーリンは死んでください」

「アナ、ごめんね」

「……いえ」

 

 ギルガメッシュ王が腕を振るうと、地面から生える腕。魔術砲台。財宝の射出ではないのかと思ったが、これならば対処可能。

 数体の魔術砲台から大威力の魔力弾が放たれるが、

 

「マシュ!」

「はい!!」

 

 マシュの盾にとってこの程度造作もない。こちらへの攻撃をマシュが防いでいる間に、

 

「アナ!」

「了解しました――」

 

 アナの鎌で魔術砲台を破壊してもらう。最速の速度領域での破壊。魔術砲台の攻撃は強力だが、固定砲台であるがゆえに、問題にならない。

 問題はギルガメッシュ王の攻撃だ。彼の背後から様々な礼装が出てきて多様な攻撃。さらに、それだけでなくどこにでも出せるという自在。

 

 これを突き崩すのは容易ではない。初見だから、未来視もどきもできない。今は、視て、そこから反撃を――。

 

「フン……」

 

 そう思った。

 しかし――。

 

「不機嫌そうだなぁ……」

 

 王様は不機嫌そうだった。あからさまに手を抜かれている。

 

「我が手を貸す器でもなければ、我に使われる価値もない。出直してくるが良いわ!」

「王よ、私には驚くべき力を持つ戦士に見えたのですが……あの者たちが、王が話されていた異邦人なのではないのですか?」

 

 ギルガメッシュ王はこちらのことを知っていた?

 

「そうなのだろうよ。しかし……早い。早すぎる」

 

 ――早すぎる?

 

 いったい何が早すぎるというのだろうか。

 

「何もわからない。そう言った顔だ。この世界を、己が目で見ていないのだろう。今も、この我を相手に見に回っていたからな。話にならん」

「――オレは――」

 

 名前を告げるが、

 

「知らぬ」

 

 知らぬ、下がれ下郎の一点張りだ。これは聞く気がない。

 ここまで話にならないとは。

 

「マーリン?」

「おっかしいなー。私と同じ認識のはずなんだけど。確かにカルデアとか、サーヴァントとかについては何も説明してないんだけど」

 

 絶対それだよ。何も説明してないじゃないか。

 

「空気を読めばわかるじゃないか」

 

 その空気を読まないのが、この王様じゃないのかな。

 ぽんと手を叩いて、おお、そうだった、とマーリン。

 

「よぅし! さすがマーリン、話にならない! こうなったら君だけが頼りだ」

「良い、姿なき者よ。この我の眼に見通せないことはない。この通り、天命を全うする前ではあるが……だいたいのことは心得ておるわ」

「ギルガメッシュ王は、この時代の方なのに、カルデアのこともサーヴァントのことも心得ているのですね……でしたら、お話だけでも! 特に聖杯のことだけで――」

「これのことか?」

 

 その手には確かに聖杯があった。

 

 ――いや、待て。

 

 確かにアレは聖杯だと思おう。ドクターが見た反応も聖杯だ。けれど――。

 

 ――違うという直感が走った。

 

 観察眼が確かにアレは聖杯であると告げている。だが――直感が、アレはこちらが求めているものではないと告げている。

 

 ――だが、なぜ? なぜ、そう思う。

 

 自分がわからない。

 

「――っぅ」

「先輩!?」

「ほう、三流と言え、天文台の魔術師ではあるか。その眼だけは、評価してやろう」

 

 ――頭痛がする。

 

 何かを捉えたのだ。どこかで。何かで。

 何を見た。このメソポタミアに来てから、オレは、何を視――。

 

「それ以上はやめておけよ、天文台の魔術師。神代の人間ならばまだしも、貴様如きがアレを解析などできるはずもなかろう」

「ア、レ?」

「フン、まあ良い。ともかく、これは我の宝、貴様らに譲渡などせぬ」

「……確かに、交渉するにしても、こちらには何もありません……」

「――一応、聞きますが――三女神同盟を倒す、のと引き換えには?」

 

 アレは違うかもしれない。けれど、それでも捨て置けないものであるのは確かだろう。聖杯なのだから。十中八九、アレを狙って三女神同盟が来ているのだから。

 なにより、聖杯が余分にあればマシュを救えるかもしれない。それは、ありえないことなのかもしれないが。

 

「倒す! ――フ、フハハハハハハ!! シドゥリ、水差しを持て、これはまずい、命がまずい!」

 

 笑い転げる王様。

 

「あの阿呆ども、我を笑い殺す気だ!」

 

 そこまで、笑われるとは。まあ、確かに女神を倒すなど、無謀、極まりないかもしれないけれど、それくらいしか交渉材料などないしなぁ。

 

「――ふう。いや、今のはなかなかだった。後で王宮誌につけておこう。王、腹筋大激痛、と――だが、どうあれ我の判断は変わらん。今の貴様らに用はない」

 

 それは圧倒的な自負の発露でもあった。

 カルデアの手を借りるまでもなく、ウルクとはこのギルガメッシュ王が守るべきものであるという、自負。

 参った、これをどうにかしような出来ないだろう。

 

 何かこの事態を変えるだけの何かがあれば――。

 

「王よ、ご歓談中失礼を」

「誰が、ご歓談中か!」

「え? しかし、王の笑い声がジグラット中に響いておりましたから」

「そんなわけあるものか。何事か」

「ティグリス川の観測所から、上空に天舟の移動跡を確認。猛スピードでウルクに向かっているとのこと! 女神イシュタルです!」

「……はあ。またあの愚か者か」

 

 やばい相手の到来、というはずなのに、ギルガメッシュ王の反応は至って淡泊だ。呆れてすらいる。

 

「王よ、イシュタル様はこのウルクの都市神であらせられます。あまり酷評されては、巫女所の立場が――」

「ええい、あの女神が、このウルクを守ったことがあったか。ないだろう」

 

 滅亡させなくてよいものを滅亡させて、造らなくてよいものを造り、イナゴの大群を呼び起こすわ、子供の癇癪で我儘ばかり。

 今回もどうやら寝床を自分で滅ぼして、父神に泣きつくだろう、とは王の言葉。

 

 いや、本当、何やってるんだろう、あの女神さまは

 

「更に、父神様は、とっくに姿を消しておるわ」

 

 つまり、父親にも愛想つかされていると。

 

「ひとり取り残され、泣きつかれて無様に死ぬのが、あの女の結末に違いないわ、ふはははは!」

「なんですって――!」

 

 さんざんな言いように我慢でもできなくなったのだろう。天井を突き破って、そのイシュタルが現れた。やはり、あの時の女神様だったようだ。

 

「総員、退避! 酷い難癖をつけられるぞ!」

 

 酷い退避理由もあったものだ。

 

「緊急事態です! 神官たち、特許祈願の準備を! 緊急につき、都市神への鎮呪を許します」

「…………」

 

 周りは慌てているというのに、王様本人は心底いやそうにさっさとどこかへ消えろと手で追い払っている。

 

「大人げないのはそっちでしょう!? 黙って聞いていれば言いたい放題! もう頭に来たわ!」

 

 天弓に手をかけるイシュタル様。兵士たちが、王の武運を祈って退避する中、王様はまったく変わらず自然体。それどころか、自滅するから見ていかないのかと余裕だ。

 それを見たイシュタルが、兵士にまで見捨てられるなんて、ざまあないわねと言っても、憤ることすらしない。ものすごく呆れているというかなんというか。

 

「どうしようか、これ」

「王様とすごい罵詈雑言の応酬をしてらっしゃいますが、マスター、あの女性は、あの時の」

「うん、あのぶつかってきた女の子だね」

「ほう? もしやあの女神と遭遇済みか? ほうほう? しかも中々のトラブルだったと見える――ふははは、それは愉快! イシュタルの武勇伝がまた増えたみたいだな!」

「――もうこっちもいいわよね? 全部まとめてふっ飛ばしてやるわ!!」

「良かろう! 天文台の魔術師よ、今だけ、この瞬間のみ、共に戦うこと許そう。あの放蕩女神にきつい灸をすえてやろうではないか!」

 

 なにやら、凄まじい理由で戦うことになってしまった。

 

 ギルガメッシュ王の魔術に加えて、こちらはアナとマシュ。みんなは、どうやら兵士たちを遠くから見ている野次馬に阻まれているらしい。

 まあ、ここまでくる前には終わりそうだ。

 

「腐っても女神。並みの魔術では肌にすら届かぬか。その上権能は出し惜しみか! やる気あるのか貴様」

「それはこっちの台詞だっての! 権能を使わないのはウルクの為だし。それに、やりにくいのよ! そこのやつ! なんなの!? こっちの動き全部、読んでるみたいに指示だして! それがいやらしいったらないのよ!」

「ええ、そう言われましても……」

 

 それがオレの仕事ですし。

 

「なんて、性悪!」

「こやつも貴様にだけは言われたくないだろうよ」

「なんですって――って、ちょっとそこの人間、あんた、背中に誰庇ってるのよ」

「? アナだけど?」

 

 何か問題が?

 

「……いえ、サーヴァントを庇うのは問題かと……」

「……なるほど、因果なことなってるのね」

 

 何を納得したのか女神イシュタルは、上昇する。そのまま帰るらしい。此処に来たのも枕を取りに来ただけらしい。

 

「なんと、あのイシュタルが尻尾を巻いて逃げるのか」

「何を言ってるんだか。私は、私のやりたいように気ままにやるだけよ。――それとシドゥリ、そこの裸の王様が死んだら助けてあげないこともないから、白旗を用意しておきなさい」

「白旗? 何のことでしょうか……」

「チッ、逃げたか。もう少しで捕縛ネットが展開できたものを」

「そのようで」

「まあ、良い。仕事を続けるぞ」

 

 ことが終われば、彼らは何事もなかったように仕事を再開する。兵士たちものんびりと戻ってきていた。何事か賭けでもしていたのか金銭のやりとりもあっているようである。

 それだけ、彼女の襲撃は日常的なことなのだろう。

 

「どうしようか、明日また来る?」

 

 明日になればまた話を聞いて――くれなさそうだな。

 

「その通りよ。貴様らに付き合っている暇などないからな」

「だが、彼らはプロフェッショナルだ、特異点に関しては、何度も修復している」

「マーリンよ、貴様を召喚したのは誰か言ってみるが良い」

「――なるほど、そう来るか。ええ、あなたですよ、王様。戦う者ではなく、指揮する者、術を行使する導く王へと装いを変えたギルガメッシュ王」

「フン――我一人では、この世は救えぬ。業腹であるが、勝つためには、このメソポタミアの全てを使う必要があるからな」

 

 ゆえに、彼は英霊召喚すら行使した、という。

 本当に規格外だな、この王様。

 

「だが、貴様らの行いは、確かに見事というべきものだ。よくぞ、か細い糸のような希望を頼りに此処まで来たものだ。

 それでも、我には不要よ。もし我の役に立ちたいというのであれば、下働きから始めるが良い――祭祀長! こやつらの待遇は貴様に一任する! 面倒だろうが、面倒を見てやるが良い!」

 

 それを最後に、ジグラットから追いだされてしまった。

 

「というわけでして――」

 

 外にいた皆に説明をした。

 

「そういうわけですので、皆さまの当面の生活は、私が保証します」

「ありがとうございます。ええと――」

「私はシドゥリと申します。王の補佐官の一人で、祭祀場をとりまとめているものです」

「よろしくお願いします。それと――白旗というのは、降伏の記しですよ。こう、白旗を掲げて振るんです」

「なるほど、覚えておきますね。ありがとうございます。

 さて、参りましょう。ご安心を、王は不要とは言いましたが、無価値とはおっしゃられませんでした。

 ですので、王に話をきいてもらいたければ、功績をあげるのが良いかと」

 

 功績。オレたちにできそうなことと言えば、魔獣戦線だろうか。これだけのサーヴァントがいればかなり楽になると思う。

 

「いえ。いえ、それは兵士たちの仕事です。あなたたちには……そうですね。このウルク市内で起きている様々な仕事を見ていただきたいと思います」

「見分を広げろ、そういうことですか」

「ええ、そうだと思います。何でも屋、というところでしょうか。仕事の斡旋は、最初は私が行おうと思います。評判が高まれば、そのうち市民の方からも依頼が来るでしょう。では、専用の宿舎にご案内します」

「ありがとうございます」

 

 シドゥリさんについて、市内を歩く。どこも活気に満ち溢れている。

 

「珍しいですか?」

「いえ、すごいなと。こんなにも笑顔が溢れているなんて」

「ふふ、そうですね。ウルクにおいては、麦種と羊、そして人々の笑顔こそが生きる糧です。たとえ、滅亡に瀕していようとも、笑顔は絶やさない。

 どうか、貴方がたも笑顔のある善き日々を送ってほしいと思います」

 

 そうしてやってきたのは、ウルク中心から東の城壁にほど近いところにある古い建物だった。

 

 




現在第二章を圧縮解除中なので、こちらの更新の方は遅くなっております。
圧縮解除を優先したいので、最新話の更新はしばらく休みか、ゆっくりになると思いますが、ご了承ください。

これから経営シミュレーションカルデア大使館の開始です。
どこぞのサモンナイト的にウルククエストを受けて、信頼と実績、それとお金を稼ぎ、大使館に物を増やしたり作物の栽培、大使館の増築などを行っていきたいと思います。
また、各サーヴァント事にイベントをご用意。各サーヴァントの部屋訪問とか。日が進むごとに私物が増えていくサーヴァントの部屋の変化とか。ただし、毎日数人だけという。マシュは確定。
ウルク市民との絆クエスト実装。絆の力って、大事ですよね!

な感じのことを予定しております。
たぶん、過去最高に長くなるだろうなぁ。50話こえるだろうなぁ。
まあ、是非もないよネ!

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