Fate/Last Master   作:三代目盲打ちテイク

151 / 180
絶対魔獣戦線 バビロニア 2

 ノッブの茶室で茶を飲んで、散歩を続ける。カルデアの中は夜だととても雰囲気が変わっている。

 薄暗い廊下を歩いて行く。誰かに行き会うだろうか、そう思いながら。すっかりと夜も更けていくカルデアを歩く。

 眠らなければならないと思ってはいるのだが、どうにももう寝付けそうにない。明日にはレイシフト証明が完了する。そうなれば明日にはもう第七特異点だ。

 

 神代の時代、何が待ち受けているのだろうか。

 

「あ、サンタさん」

「む、トナカイか。こんな時間に何をしている」

「それはこっちの台詞だけど?」

「私の方はターキーの補充と、ラムレイ二号の整備だ。次回の特異点の移動も多かろう。整備は大切だ」

「自分で?」

「いや、暇な職員にやらせている。今、差し入れを持って行ってやるところだ」

 

 なるほど、ラムレイ二号は、この前結構な扱いをしたから確かに整備はしておいて方がいいだろう。

 ちなみに差し入れは何かというとジャンク感満載のバーガーとターキーだった。まあ、簡単に食べられるし、腹が膨れればいいのだろう。

 明らかにターキーは自分ような気もするが。

 

「では、こちらからだ。トナカイは何をしている」

「ちょっと散歩だよ。寝付けなくて」

「そうか。ではな」

 

 本当、この王様は王様だなぁ。変わらない、オレを甘やかすことはない。スパルタだ。でも、そのおかげで、オレは少しは強くなれた。

 だから、この対応も慣れたものだ。特に用がなければ、こちらにかまってこない。だから、

 

「ああ、そうだ――」

 

 彼女が振り返ってそう言葉を繋げたのが意外だった。

 

「チビッコサンタが仲間になっただろう。いつまでも私をサンタと呼んでは紛らわしい。だから、な……アルトリアと呼べ」

 

 そう言って彼女は去っていった。その顔はいったい、どんな顔をしていたのだろうか。少しだけそれが気になった。

 

「さて――っと?」

 

 サンタさん、いや、アルトリアに別れを告げて歩いていると、バーへと行きついた。未成年だから、あまり立ち入らないが、

 

「やあ」

 

 ドクターとジキル博士、ジェロニモがいるのを見て、中に入ってみることにした。

 

「こんばんは、眠れないのかい?」

「ドクターこそ、ここで酒盛り?」

「そうだよ。まあ、少しだけの休憩さ。ダ・ヴィンチちゃんに追いだされちゃってね」

 

 ナイス、ダ・ヴィンチちゃん。ドクターは言っても休まないからね。こうやって強制的に休ませるのがいい。

 

「じゃあ、なんでジキル博士やジェロニモと?」

「ドクターが暇そうにしていたから、僕らが誘ったんだよ」

「ああ」

「へえ、二人はよくここで飲むの?」

「たまに一緒になる程度だよ、マスター。お酒よりは紅茶の方がいいからね。でも、たまに、昔のことを思い出しりしたときに、たまに飲みたくなる時がある」

「…………そうか。いや、いいよ別にそんなジキル博士のマネしなくて」

「――――。チッ、なんだよ、バレバレかよ」

「ええ、ハイド君だったの!?」

 

 話をしたらわかった。ジキル博士は今眠っているのだろう。伝承通り、眠ったあとにハイドが出てきて、うろついているらしい。

 ドクターは気が付いてなくて驚いたようだが。

 

「ったく、なんでわかるんだよ」

「もう付き合いもだいぶ長いからね」

 

 数か月といっても、内容の濃い付き合いだ。だから、わかる。今ではなんとなく。

 

「ケッ、白けた。帰るわ」

「明日はよろしく」

「ああ……俺がテメエを守ってやるよ。今は、そうしねえといけねえからな」

 

 そう言ってハイドは去っていった。

 相変わらず、彼になると言葉は少なく、行動で出る。戦う時は頼もしい。

 

「よくわかったね。ボクにはわからないよ。君の観察眼もかなり極まってるって感じかな?」

 

 ドクターに言われると嬉しいね。

 

「うむ、良き指導者だ。アメリカでもそうであったが、ずっとよく成長しているよ。彼方の世界では、君と私のような絆を刎頸の交わりと言うらしい。君の為なら、私は喜び戦場へと旅立つ」

「ありがとうジェロニモ」

「私は、以前のマスターを知らないが、良い顔だ。語らいは人を安堵させる。寝付けないのであれば語らうのがいい。では、マスター、明日も頼む」

「うん、おやすみ」

 

 ジェロニモもバーを出ていく。もともと終わる時間にオレが来たらしい。

 

「で、ドクターは? まだ飲むの?」

「ボクもそろそろ戻るよ。これだけ休憩を取ればダ・ヴィンチちゃんも文句はないだろうしね」

「しっかり寝てもいいのに」

「まだやることがあるんだ。だから、寝るのはその後かな」

「それで朝までかかるやつでしょ」

「はは。そうだね。そうかもしれない。でも、やらなくちゃいけないことだ。――それじゃあ行くよ。君は早く寝るんだよ」

 

 それはこっちの台詞なんだが。まあいいか。アレがドクター・ロマンだ。疑惑があるのかもしれない。けれど、それでもオレはドクターを信じる。

 

 バーからさらに歩いて訓練スペースに行くと、

 

「おわっ!?」

 

 槍が吹っ飛んできた。顔の横に朱槍が突き刺さっている。冷や汗がだらだらと流れ出している。

 

「む」

「おお、大将すまねえ」

 

 すまねえじゃねえよ!?

 

 スカサハ師匠と金時がどうやら戦っていたらしい。

 

「つい興が乗ってしまってな。ゆるせマスター」

 

 当たってたらどうするつもりなんですかねぇ。たぶん、その時点で終わってましたよ師匠。

 

「なに、何とかするさ。即死でなければルーンでなんとかな」

 

 本当にルーンって便利だなぁ。

 

「それで? マスターは眠らずにふらふらと散歩か? ふふ、可愛いな」

「まあ、そんなところです。スカサハ師匠と金時は、訓練?」

「応、なんでも訓練相手が必要らしくてオレっちのベアー号で付き合ってたってわけよ」

 

 そう言いながらスカサハ師匠から目を背けまくりですがねゴールデン。それもそうだろう、だって師匠は水着だから。

 戻り方を忘れたとか言ってそのままだ。動きやすいからいいだろうとか、見られても困るような肉体などしていないと堂々としているのがまた何とも言えない。

 

「お主も大概慣れてきただろう? ……いや、そうでもないか」

 

 いや、まあ、凄い美人だから、慣れるに慣れない。ただ、堂々としているから、その辺の感覚は麻痺してきたのだが、覚悟なくみるとこう。

 

「初心よの。可愛らしいものだ。眠れないというのならマスターもやっていくか。まずは、軽く走り込みからいくとしよう。なに、終われば眠れる」

「それ疲れて気絶の間違いぃいぃいい――――!?」

 

 蹴り放たれるゲイ・ボルク。オレは必死に逃げる羽目になってしまった。礼装と訓練した魔術を使ってなんとか逃げ回る。

 

「はは。避ける避ける。では、もう少し増やしてみるか――」

「ちょ――」

「なに、お主ならできる。信じろ。このスカサハのお墨付きだ。ふむ、無事にクリアしたら、ご褒美をやろう」

 

 そんなお墨付きいらない! と言いそうになったが、ご褒美が気になります頑張ります。

 

「おっかねえぇ……頼光の大将と同じくらいおっかねえぇ」

「む、お主もいたな。そら、お主もマスターに負けんようにな」

「こっちに飛び火した!? いや、オレっちはこれから――」

 

 金時と二人して走らされまくった。

 

「ぐ、も、もう無理――」

「む、しまった、やりすぎたか。師と弟子ではないとあれほど言っておきながら、ついついな。しかし、お主も悪いのだぞ。こちらの要求に必死になってついてこようとする。可愛いではないか。親鳥についてくるひな鳥のようだぞ。そら、ご褒美だ。膝枕をしてやろう」

 

 膝枕をして頭を撫でられる。それだけで疲れが吹っ飛ぶようだった。というか、実際ルーンでも使っているのか疲れは完全に吹っ飛んだ。

 せっかく出てきた眠気も吹っ飛んだが。

 

「むぅ、すまぬ……だから、その、そんなに恨みがましくみてくれるな」

「いや、別に見てないけど。それより金時は?」

「きっちり逃げ切ったあとシャワーを浴びにいったな。ふむ、そうだな。よしこうしよう」

 

 ? なにがこうしようなのだろうか。そう思っていると、抱え上げられて、そのまま浴室に連れていかれる。さて、気が付いてしまったが、どういうわけか動けない!

 

「なに、案ずるな、別にとって食おうというわけではない。汗だくでは気持ちが悪かろう。だから、身体を洗ってやろうというのだ」

 

 一瞬で水着を脱ぐスカサハ師匠。こちらの服も全部一瞬で脱がされてしまう。ルーンで洗浄して綺麗にしてあるからまた着れるとかそんなことはどうでもよく、そのままなし崩し的に体を洗われてしまう。

 正直やばいです。いろいろと理性の面で。

 

「ふむ、逞しくなったな。あの幼子がこうも立派に成長したというのも感慨深い。初めは忠告を聞かない奴だと思ったが」

「いや、それは……ごめんなさい」

「なに、私の方こそ特に何もできんでな」

 

 そんなことはない。彼女のおかげで、オレはこうしてここにいられる。彼女がいなければ、オレは今頃、あの監獄塔で息絶えていたかもしれないのだから。

 スカサハ師匠。とても強い、オレの師匠だ。師匠と弟子じゃないとはいうけれど、オレは彼女のことを師匠と呼び続ける。

 

 いろんなことを、大切なことを教えてくれた彼女はやっぱり、師匠なのだ。

 

「そら、次は前だが――やめておくとしよう。それともやってほしいか?」

「……いえ、結構です」

 

 前は自分で洗う。

 

「ふっ。そら、上がるならあがれ。私はもう少し入っておく」

「じゃあ――」

 

 さっさと上がります。この空間はマズイ。

 そう思って上がると、脱衣所の外で金時が牛乳を飲んでいた。

 

「お、大将もあがりか。ってか、なんか女湯からでてこなかったか?」

「キノセイダヨ、キノセイ」

「お、おう、そうか? まあ、大将がそういうならそうなんだろうな」

 

 風呂上りの牛乳はやはりうまい。しかも瓶入り。いったい誰が届けくれるんだろうか。それともリサイクルなのか。

 特異点から牛乳は定期的にとりに行ってるけど。あの無人島の特異点は今やかなり発展しているらしい。

 

「そんじゃ、オレは寝るぜ。しっかし、今回の喧嘩は派手でいい。俺っちもそれなりに修羅場はくぐってきたが、この規模の殴り合いは記憶がねえ。なんで、気楽に行こうや、大将。どっちも初めてなのは変わらないじゃん?」

「こんなグランドオーダーみたいなの経験してる人がいたら驚いだよ」

「そりゃそうか。はは。とにかく、ドカッと安心して命令しな大将。アンタのやりたいことは俺が叶えてやる。アンタの為ならこの坂田金時、ベアー号をカッ飛ばして雷神様だろうとぶん殴ってやるからよぉ!」

 

 頼もしい限りだ。頼りにさせてもらうとしよう。

 

「んじゃ、 Good nightだ、マスター」

 

 後ろでに去っていくライダースーツの彼。まったくもって、頼りがいがある。女の人に弱いのが玉に瑕だけどね。

 

「しっかし、寝るための散歩がいつの間にかすっかりと眼がさえちゃったよ。まあいいか。もうすぐ朝になるし。そろそろ戻るか」

 

 居住区に戻る道すがら、朝時間に入ったのだろう、カルデアの照明が明るくなっていく。その途中で、訓練場に向かうリリィとベディとすれ違った。

 

「おはようございます! マスター!」

「おはようございます。お早いのですねマスター。良いことです」

「リリィもベディもおはよう。これから訓練?」

「はい! 私は未熟ですから、皆さんの足を引っ張らないようにベディヴィエール卿に訓練をつけてもらうのです!」

「ええ、リリィ様に私如きが訓練など畏れ多いことなのですが」

「ベディヴィエール卿はすごい方なんですよ! 教え方がとっても上手なんです! マスターも一緒にやりますか?」

「いや、オレはいいかな。今から戻るところだから」

「そうですか……わかりました。では、行ってきます!」

「うん、頑張ってね」

 

 ベディヴィエールにリリィ。二人を見ていると本当に良かったと思うのだ。第六特異点での戦いは無駄ではなかったそう思える。

 

「おい、こんなところで立ち止まんなよ」

「っと、ごめん式」

「朝っぱらからなにしてんだ」

「いや、ちょっとね」

 

 式はいつもの格好だ。着物に赤い革ジャン。手にした袋の中にはハーゲンダッツがあるようだ。

 

「ほしいのか。ひとつならやるぞ」

「いや、さすがに悪いからいいよ。それよりもいつも着物だけど気に入ってるの?」

「ああ、気に入ってる。しかし、オマエもわかんねえよな」

「何が?」

「いや、なんでもない。おまえも幹也の同類だってことを思い出しただけだ。ま、護衛役はちゃんと果たすから、オマエもしゃんとしてろよ」

 

 去り際にハーゲンダッツを投げ渡された。溶けるとアレなので、食べるとして。

 

「ずいぶんと早いね、クロ」

「む、バレバレだったか。本当、凄い勘してるわ」

「そりゃどうも」

「まあ、一番すごいのはコミュ力よね。こんなにたくさんのサーヴァントを従えているなんて、貴方ほんとに何者って感じよ? 魔力はわかるけど、精神力とかどうなってるの?」

「そんなにすごいことかなぁ」

 

 カルデアがあるからこそだし、オレ自体の魔力なんて全然だし。

 

「自覚ないの? 貴方本当にすごいことしてるのに。世の魔術師が聞いたら卒倒するわよ? 赤い悪魔とか」

「赤い悪魔?」

「そ、すっごい守銭奴なのよ。まあ、会うことはないと思うだけどね。――ああ、でもママにも会っちゃったし、もしかしたら本当に会っちゃうかも?」

「おーい、クロ?」

 

 何やら考え込んでしまった。それにしても、どうしてこんな早い時間に外に出ているのだろうか。

 

「別に。ママが一緒に寝ましょうって私とかサンタジャンヌを部屋に連れ込んだところから逃げ出してきたわけじゃないわ。まだ、距離感がつかめないのよねぇ」

「同じ顔、同じ名前、同じ性格なんだっけ」

「そうよ、それなのに赤の他人、すっごくやり辛いわ」

「それは、ごめん?」

「アンタは謝らなくていいの。こっちの問題なんだから、こっちで何とかするわ。それよりサンタジャンヌよ。アレ、アンタに惚れてるわよ」

 

 また、面倒なところに話を持っていくな。ちょっとどうしようかってこっちも悩んでいるのに。

 

「私が、ママのあんな姿見て、膝抱えている間に解決したみたいだけど、火種増えすぎじゃない?」

「そう言われても、特に何かした覚えはないんだけど」

 

 ――ああ、これも自覚なしなのね。

 

 すごい呆れたつぶやきが聞こえた。

 

「ただ、親友に教えられた言葉を伝えただけだよ」

「本当、エドモンのこと好きよね。エドモンと結婚するの?」

「そんなわけないでしょ」

 

 エドモンとオレとかないない。男同士だし。

 

「じゃあ、あんたが女だったら、誰がいいとかある? エドモン、ドクター、ダビデに、ジェロニモ、ジキル博士、金時にクー・フーリンもいたわね。誰が良い?」

 

 どうしてそうなるのやら。だが、そうだな、仮にオレが女だとしたら。まずダビデはない。絶対にない。他は良い感じだけど、やっぱり選ぶなら。

 

「エドモンかな」

「本当、大好きよね。アンタが男で良かったわ」

 

 そのまま呆れられたままになってしまったが、なんだったのやら。

 ともあれそのまま自室に戻ってきた。

 

 その時だった――。

 呼び出しがかかる。

 

 レイシフト証明の完了。

 

 これより、最後のグランドオーダーが発令される――。

 

「行こう」

 

 最後の旅が今、はじまる。




というわけで次回から特異点へレッツゴー。
すまない、アイリさんとサンタジャンヌの夜会話は絆レベルがまだまだ足りないようだ。

まあそれはさておき、ジャガーさんの最終再臨を見るたびに思う、見た目だけは好みなんだよなぁ……。
いや、本当、見た目、が好み過ぎてヤバイんじゃが。中身を思うとな……。

コアトル姉さんもほしいです。ピックアップ来たら回そうかな、ちょうどライダーの星5いませんし。
というか、私がほしいと思った年上系のお姉さんサーヴァントはほとんど引けてない。悲しい。
なぜかロリが集まっている、ロリコンではないのに、なぜだ……。

というわけで、神代へレッツゴー。
うたわれるもの的にクエストもしっかりと描写していこうかなと思います。
ワニとか蜂とか酒とか。
何かオリジナルでも募集しようかな、ウルク民も少なからずここにはいるでしょうし。

まあ、使うかわかりませんが、活動報告の方に板たてておきますんで、暇なら何か投げていってくださいな。
使うかわかりませんが。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。