ニトクリスを仲間にして進むは雪原。見てるだけで寒い。こういう時は引っ付いてくれる清姫がぬくい。カルデアの制服はこういう気温にも耐えられるけど気分の問題。誰かのぬくもりがあったほうが温かい。
「「……しゃむい……」」
そして、露出過多な御二人ががたがたと震えていた。もはや叫ぶ余裕もない様子。とりあえず、早々に駆け抜けるとしよう。
「それじゃあ、ひとっ走りするとしますか」
とロビンの一言で早くこのゾーンを抜けるべく走っていると。
「ブーディカさん?」
ブーディカさんと遭遇した。
「そうだよー、みんなのブーディカお姉ちゃんだ」
「どうしたのーはこっちのセリフなんですけど」
「んー、ちょっとねー。お料理が出来たからみんなを呼びに行ったのに誰もいない。ドクターに聞けば、特異点に行ったというじゃないか。困ってるんじゃないかって、助けにきたよ」
女神か! あ、勝利の女神だったよ、この人――とあれ?
「その、なぜに茨木ちゃんがいるんです?」
「もしゃもしゃもしゃ――」
何やらもしゃもしゃ食べていらっしゃるご様子。頬を膨らませて、可愛らしいものである。
「ああ、この子? なんだか、この辺りをうろついていてね。ハロウィンでお菓子が食べられるって聞いてきたみたいなの。だから、でもこんなところでお菓子なんて手に入らないでしょ? 可哀想だからね、あたしがあげたら懐いちゃって」
「もしゃ、懐いて、もしゃ、など、もしゃ、おらぬ、もしゃ。こやつが、もしゃ、お菓子を、もしゃ、献上するので、もしゃ、吾が連れて、もしゃ、おる、もしゃ、だ」
――物を口に入れたまましゃべるのはやめなさい!
「吾は鬼だ、人間の、もしゃ、道理など、もしゃ、知らぬわ、もしゃ、む、なくなったぞ、ブーディカとやら、はようチョコレイトを出せ」
「うん、あげるけど。あたし言ったよね、ヒトと話すときは、ちゃんと食べてからって」
「む、しかしだな――」
「約束は?」
「……次からは、気を付ける」
「ん、良しよし。それなら、いっぱい食べてね」
なんというか、餌付けされてないか、茨木ちゃん……。
「それで、今回はどんな問題かな?」
ブーディカさんにエリちゃんのことを話すと。
「なるほど……うん、わかった。そういうことなら協力するのもやぶさかじゃないかな。ね、茨木ちゃん」
「む、なぜ吾も」
「鬼っ子、協力した方がいいぜ。なにせ、考えてもみな、そっちの姉ちゃんはこっちのマスターのサーヴァントだ。なら、マスターの為になるようなことをすれば、報酬としてお菓子がもらえるかもしれないだろ?」
ロビンの押しの一言で、茨木ちゃんあえなく陥落。というか、そんなに甘いもの好きなんだ。
「はい、昔は高級品でしたので」
「清姫も好きなの?」
「わたくしは、ますたぁの方がすきです」
ああ、うん、はい……。
「どうしたの、子イヌ、顔が真っ赤よ。風邪?」
「今にも風邪ひきそうなほど震えてるエリちゃんには言われたくない」
「そ、そそそ、それよりも、早く移動しましょう。私も、薄着ですから……」
「エリちゃんも、ニトクリスも寒そうだぁ。よぅーし、お姉さんの戦車に乗って、行こうっ!」
「賛成!」
満場一致の賛成により、ブーディカさんの戦車に乗り雪原を超える。雪原を超えると今度は真逆に熱くなる。溶岩地帯に入ったとドクターは言った。
サーヴァントと魔術礼装のおかげで寒暖差で参ることはないが、気分は暑さで最悪だ。軽減されていても暑さを感じるのは溶岩地帯で限度を超えているからだろう。
「あついー、あついー」
「あー、こりゃ蒸れて大変だ。ふぅー、胸とか汗かいちゃったよ」
「…………」
ブーディカさん、そこは無防備にタオルで拭かないでください、男もいるんですよ! 眼福です!
「こーら、そんなにじろじろ見ないの。お姉さんも少し恥ずかしいんだぞ」
それならば目の前でやらなければいいと思うのだが、確かに道も狭いので、他にやる場所がないのだから仕方ないのだろう。
しかし、暑い。魔術礼装で軽減されているとは言えど暑い。汗はとめどなくあふれ出してくる。サーヴァントの皆さんも汗だく。
話は変わるが、汗だくの女の子って、エッチぃと思う。つぅーと身体を伝いおちる汗……思わず生唾を呑み込んでしまう。
エリちゃんとか、ニトクリスとか、薄着だから、特にそれが顕著で、ヤバイ。
「しっかし、女王は馬鹿なの!? こんな熱いところ通って城下町に行くの!?」
そんなエリちゃんは、過剰なストレスでインテリジェンスが強化されたようだ。まあ、それは確かに言える。まるでこちらを待ち構えるためだけの試練に思える。
ん、んー? 試練。試練か。ふむ、確かに向こうの女王様だって、なんの考えもなくこんなことはしないか。いきなりエリちゃんのチェイテ城に突撃をして、支配領域を奪う。
そんな意味のないことをして何の得があるというのか、何もない。では、なぜ? 先ほど思いついた通り、これが試練なのだとしたら、誰に向けたものだ?
それはもちろんエリちゃんだろう。エリちゃんの領域でこんなことをしているのだから、エリちゃんに向けられていると考えるのが自然だろう。
そうなると――本当になんでこんなことをしているのかだ。エリちゃんに試練を与えて楽しみたいのか? いや、それにしてはあまりそういう風でもないような?
「んー?」
「小僧が何を考えても詮無かろうて」
「む、原因を考えるのは解決の一歩なのに」
「そのような些事にとらわれては、頭目として立派になれんぞ。良いか、頭目であるのならば、酒呑のようにだな。もしゃ――笑って日々を楽しんで居ればいい。それだけで下は付いてくる」
いや、オレ鬼じゃないから、鬼のようにとかやめてほしいところというか、それは目指したら駄目な部類だろう。
裏があると仮定して考えるのなら、もっと気楽にしていろってことなんだろうけど、たぶん違うと思う。駄目だな、人間と鬼じゃ価値観が違いすぎる。
前の二世もこんな気分だったのかな。ごめんよ、二世。
「ええ、ダメです。鬼など、母が許しません」
「そうですよねー…………え? 頼光さん?」
「はい、母ですよ?」
今、どこから上がってきたんですかね。溶岩の中から上がってきたように見えたのですが。見間違いではないとすると泳いできてませんでしたか?
サーヴァントって溶岩でも大丈夫なのだろうか。いや、それなら、エリちゃんが暑がるはずないだろうし…………考えないようにしよう。
「はい、対岸に出てみれば、
「ええ……」
「愛、ですわ」
なんで、そこで驚愕して慄いてるんですが清姫さん。というか、愛で溶岩が泳げるんだ、サーヴァントって、そりゃ凄い。
って、そんなわけあるかーと、想っていたら、なんか静謐ちゃんが泳いできたではありませんか。
「愛、です……」
ああ、はい、愛ってすごいんだなぁ……。
――思考停止した方が楽なので、考えないようにしよう。
「ますたぁ、わたくし、ますたぁへの愛ならどのような責め苦でも、快感に!」
「あの、ごめん、オレが悪かったから、いつもの清姫でいてくれると嬉しいです。ごめんなさい」
すっかりMに目覚めてしまった清姫。いつも通りに戻ってください、お願いします逆にこっちが自制がきかなくなりそうだから!
「先輩、最低です」
「かはっ……」
「マスターが、死んだ!?」
「まあ、悲しいことがあったのですね。母の胸でお泣きなさい。ええ、すべて、受け止めて差し上げます」
「だ、駄目です!」
「カオスだね、こりゃ」
ロビンのつぶやきはマグマに燃えつきていった。
「――で、どうして頼光さんが?」
「はい。せっかくお鈴をお渡しいたしましたのに、いつまでたっても、母を呼んでくれないので、これはもう母の方から行くしかないと。もしかしたら、泥棒猫などいるかもしれないといてもたっても入れず。ですが、もう安心ですよ、遠慮なく母に甘えてください」
そうしてそっと抱き寄せられる。自らにもたれさせるようにしてるから、ちょうど胸に頭が、乗る――。
―oh……頭の上にのってるオパーイが、凄い。
この柔らかさ、まさしく――至高と言わざるを得ない。
一言で言えば爆乳と言わざるを得ないほどの大きさ、質量、過去最高。マシュのマシュマロよりも巨大にすぎる。
その柔らかさ、弾力は、最高の枕を凌駕している。ありていに言ってしまえば、最高――。
「ちょっとおお!? なんで、僕がいないところでいつも君だけそんななんだい!」
「ダビデ……」
ダビデが通信してくるほどのことだった。それも当然だろう。オレがこうなったのはダビデが原因でもあるのだから。
毎晩毎晩、耳元でおっぱいの魅力語っていくし。最近は、おっぱいだけじゃなくて腰とかお尻とかにもシフトしてるけど。
「くぅぅ、エリザベートが何か余計なことしているから、男連中で逃げたっていうのに、なんだい、君は、どうして人妻とそんなことになっているんだい! しかも、親子プレイとか、なに、背徳的すぎるよ! こっちはむさい男だらけなんだよ!? ――くそう、逸材とはわかっていたけれど、ここまでになるとは、僕も予想外だ……」
だから、ダビデは黙ってて、こっちは頭に全神経を集中しているんだ。
「まあ、親子だなんて。ふふ、嬉しいですね。やはり、母と子の愛に満ちた、平穏な世が一番ですね」
「あ、あの頼光さん……できれば、先輩を離していただけると」
「そうです、ますたぁに聞きたいこともあるのです」
「あら、そうですか? ではこのようにして」
くるりと一回転。後頭部に、柔らかな感触が!
「このようにすればお話しできますね。私は母ですので、どうぞお気になさらず。そこの虫さえ、近づかなければどうもいたしませんので。ああ、それとも先に虫退治をした方がよろしいでしょうか」
「それはやめておいてもらえると嬉しいです」
「いいえ、それはいかにあなたでも駄目です。虫を一匹みたら三十匹はいると思えです。アレだけとは限りません。息子の安全の為にも――」
「お願いします、やめてください」
ここで茨木ちゃんと戦われても困る。絶対収拾がつかなくなるから。
「それで、こんな感じなんだけど、何聞きたいことって?」
「はい、ますたぁにちょんと触れているこの、わたくしとキャラがかぶりそうなテケテケは誰でしょうか」
「……いえ、私は……ご主人様に、触れてるだけで、幸せ……ですから……キャラ、かぶりなど、考えてません……」
「ま・す・た・ぁ?」
どうして、不倫がばれた男みたいになっているんでしょうか、オレ。無罪を主張したいのですが、マシュさん、弁護を。
「――頑張ってください」
見捨てられた!?
「……え、えっとですね、清姫さん」
「はい、ますたぁ、わたくしちゃんと聞きますよ」
そう言いながら、なんだか、燃えてるんですが。燃やされそうで怖いんですけど。
それでも、何も悪いことをしていないのだからと正直に話す。
「ああ、これはちょっと、ええ、なんだか敵が出てきそうですので、その準備に。さあ、彼女は?」
「静謐のハサンさんで、えっと、エルサレムで一緒に戦った仲間……です」
「特別な関係はないと? 随分と仲がよろしいように思えますが」
「あの、彼女の宝具が特殊でして、触れられる相手がいなくて、オレとマシュが触れられるということですので――」
「理解しました。つまるところ、敵、ですね」
――どうしてそうなる!?
「ああ、うん。マスターは本当、もうちょい、乙女心ってやつを学んだ方がいいと思う訳よ」
「え? え? なに、グリーン、
「オタクは、賢さの実を食べるところからはじめな」
「かしこさを上げろってことね――って、かしこさ足りてるわよ! 勇者なのよ!? 魔法もいっぱい使えるわよ!?」
「あはは、大変だね――」
なんかブーディカさんの視線もちょっと、棘がありませんか? できれば助けてくれると嬉しいんですが――。
「あらあら、人気者は大変ねぇ」
アイリさん、そんなこと言っているのなら助けてほしいんですが。
「ほら、アイリさん僧侶だから、助けてあげたいのはやまやまなのだけれど。
――浮気って、駄目だと思うのよ。どうしてかそう思うのだけれど、具体的に言うと、どんなに苦しくても妻がいるのなら、この場合は私なんだけど、どんな話でもちゃんと聞いてあげるのに、それをほかの女のところに行ったりする、正義の味方とかってやっぱり駄目だと思うのよ」
浮気じゃないですよ!? というか誰の話してるんですか!?
「ともあれ、母が来たのです、存分に頼ってもらっても構いませんよ」
「はい、マスターの為に頑張ります……あの、そうして、頑張ったら、少しだけ、触れさせてもらえれば……」
――頼光さんと静謐ちゃんが仲間になった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「――居眠り豚、前に」
「ははっ、居眠り豚トリスタン、御前に」
「音楽が気に入らないので、違うものを」
「ではこちらを」
その音楽は、気が狂いそうになるようなそれだった。まるで深淵をのぞき込んでいるかのような。そうその音を言葉にするならば、こう聞こえたような気がした。
――いあ、いあ
だとか、
――くとぅ■ふ、ふたぐん
だとか。
Look to the sky, way up on high
だとか。
頭蓋を内側からかきむしられるかのような、陰湿にして、陰鬱にして、陰惨な、狂気の音楽がフェイルノートより奏でられる。
このままいけば、そのうち大変なものを召喚してしまいそうな気がするくらいのそれ。盲目にして白痴の何かが呼び出されてしまいそうな、気配すら感じられる。
聞くだけで正気度が削られていく。落ち着いて本を読みたいという要望でどうしてこれをチョイスしたのだろうか。
「やめなさい、気が狂いそうです! 落ち着いて本が読めないでしょう!」
「愉快な曲の方がよいかと思ったのですが」
愉快を通り越して不快である。
「限度というものがあるでしょう、限度というものが。何を呼び出すおつもりですか。まったく。というか、明らかに琴では出ないような音が混じっていたのですけど」
そんな女王の疑問を遮るように、ランスロットがやってくる。
「失礼、女王」
「何用か、妾はもう寝ます。報告なら、明日――」
「彼のファラオが、カルデアのパーティーに参入したようです」
「な、なんですと――!? あの御方が!? そんな、あんな間が抜けていて、愚鈍で、知性の欠片もなさそうな者に!?」
「ああ、悲しや。我らが女王の貌が悲痛に歪む。しかし、その貌もまた、輝かんばかりに美しい」
「いえ、どうやら、マスターの方に」
「ああ、それならば納得です。たった一度の共闘で、妾はそれど見ていませんが、指揮官として、あれほど優秀な男はそうはにいないでしょう」
サーヴァントなどという尋常ならざる存在を軍勢として使役している時点で、並みではない。それに彼のオジマンディアス様、サーヴァントという格落ち状態とはいえど彼の王の全てを読み切り、対等にセネトを指して見せたのだ。
己が身を削ってというのはいささかクレオパトラの好みから外れまくってはいるが、それでもあの結果はすさまじいほかない。
ただの人間が史上最高のファラオと対等にセネトの席に着いたのだから。その観察眼、直感、心眼、鍛えあげられたそれらを舐めることなどどうしてできよう。
非才と嘆き、それでも進んできた男。敬意を表する。であればこそ――。
「むつかしいわね。むぅ」
「憂いを浮かべた貌もまた美しく」
「考え事の邪魔。窓から飛び降りなさい、貴方は」
「おお……
「本当に飛び降りただと――!?」
トリスタンは本当に飛び降りた。しかも、音の衝撃で空を飛んでいた。さながら鳥のように。トリスタンの名は伊達ではないという事か。
――違うと思う。
「それは飛ぶでしょう。トリなのですから! それはそれとして、ヒトヅマンスロット」
「はっ! ……………………はっ!?」
「溶岩地帯に派遣した彼女たちに、くれぐれも止めるようにと言っておきなさい。既に接触しているはずだから」
「いえ、すでに接触しているらしく」
「…………まあ、大丈夫でしょう。さすがにあのマスターでも、あの二人なら、きっと……」
「(…………不安だ)」
ヒトヅマンスロットの予想通り、全然だめだったのは言うまでもない。
茨木ちゃんと、ブーディカさんと、頼光お母さん、静謐ちゃんが仲間になった。
それにしても、旧支配者のキャロルって癖になりますよね――。
セネトは、古代エジプトのチェスみたいなものだそうです。私も詳しくは知りません。
通常2人でプレーする戦略的すごろくゲームだそうです。
ファラオがこれをやっていたのかは定かではありませんが、盤面上での戦いという意味合いで使用しております。一応。
さて、クリスマスイベ、まさかクエスト追加されるとは(初日と二日目にいろいろと林檎食ってた阿呆は私です)。
まあ、そのおかげで現在ボックスは四箱目なんですが。
そこまであけてもまだ礼装がドロップしない。嫌な予感がしてきました。もっと周回します。
それにしてもクリスマス第二次はどんな風にしようかなぁ。ハロウィン第二次もあと二話か三話くらいで終わらせる予定なので、そのあとはクリスマスをさっと書き上げるつもりなのですが。
こればかりはもうちょい見てみないとですねぇ。しかし、仮面好きだなw。あの仮面は卑怯だってw。
それにしてもジャンヌサンタのツインアームリトルクランチの意味がわかりました。なるほどです、ロジカルです。
それにしても、ジャンヌサンタ可愛い……。最終再臨までもう少しじゃ。
しかし、坂本真綾さんのロリ声って、物語シリーズの忍くらいしか聞いた覚えがないので、結構新鮮。
ただ、マテリアル見る限り、この子成長する余地が残されているらしい。善い方にも悪い方にもなるという…………ジャンヌ・リリィ育成ゲームとか、出ませんかね。あの、ほら昔あった、プリンセスメーカー的な感じの。駄目? そうか、駄目かー。
なお、私はゲームなど制作できないので、言い出しっぺの法則で作れと言われても作れない。
え、小説でやればいいって? ……………………い、いや、ちょっと、それは、あれですか? また活動報告で、選択肢をいくつか用意して、ジャンヌ・リリィの育成を考えろと、そういうことですか?
ははは、勘弁してくださいよぉ(なお、褒められると途端にやる気になるのが私なので、協力してくれる方がいるのならやることもやぶさかではない。
別に褒められたからじゃないんだからね!
とかいう感じに突然出るかもしれないが、予定は未定。