Fate/Last Master   作:三代目盲打ちテイク

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Fate/Accel Zero Order 3

 ノックをして、中に呼びかける。

 

「――クロエ、入ってもいいかな?」

 

 返事はない。けれど、鍵は開いている。悪いと思ったが話があるのだ。だから、扉を開けて、中へと入る。

 

「あら、マスターじゃない。何か用? もしかして、夜這いとか? それだったら――」

「悩んでることあるでしょ」

「――――どうしてか、一応聞こうかしら」

「セイバーのマスター。アイリスフィール・フォン・アインツベルンだっけ。君と苗字が同じだし、何より君のつぶやきを聞いた」

 

 ――ママ……。

 

 そう彼女はアイリスフィールを見た瞬間に呟いたのだ。おそらく、この時代、この世界での彼女の母親とは同じで違う人なのだろう。

 だが、それでも思うことがないわけではないだろう。オレだって、自分の母親にあったら、きっと平静ではいられないだろうから。

 

 ――ただ、まあ、顔も覚えていないけれど。

 

「……あーあ、なんで聞かないフリできないかなー」

「それだったら、もうちょっと普段通りにするべき」

 

 あの湾港地区からここに来るまで一言もしゃべってないし、今も、マスターとか呼んでるし。

 

「そこは流しなさいよ、デリカシーなさすぎ」

 

 デリカシーなくて結構。悩みがあるのなら言ってもらわないとオレにはわからない。オレはそういうところには鈍いというかなんというかだし。

 何より言葉にしてくれた方が解りやすい。言葉にしすぎてもいけないけれど、言葉にしすぎないのもダメ。バランスが一番。

 

「だから、言いたいことは言ってくれて構わない。オレはちゃんと聞くよ」

「はー、それアンタに一番言いたいことなんだけどね」

「アレ、オレ結構言うようにしてると思うんだけど――」

 

 ってそうじゃない。

 

「もし、戦えないのなら、戻ってもいい。無理をする必要はないよ」

「本当、間違えてくれないのね。まあ、わかってたけど。――大丈夫よ、ママとは別人だってわかってるから。それに、悩んでたのはそういうことじゃないの――この世界では、イリヤもわたしも……」

「なんだって?」

 

 最後だけ聞き取れなかった。

 

「なんでもないわ。でも、そうね、こうやって優しくされるなら、もっとこうしてようかしら」

「おい――」

 

 まったくクロエは。でも強いと思う。彼女は、事実気にしていないのだ。ただ、少しだけ思うことがあったのだろう。

 彼女なりに何かを感じ取ったというべきなのだろうか。たぶん、聞き取れなかった。いいや、聞き取らせなかった最後の一言を考えていたのだろう。

 

「冗談よ。あと、クロエじゃなくてクロって呼んで。そっちの方が呼びやすいでしょ」

「一文字しか変わらないんだけど」

「いいのよ。とりあえず、座ったら?」

「いいよ、このまま戻るし。ちょっと様子が見たかっただけだから」

「それなら、もうちょっとだけいなさいよ。聞きたいことがあったのよ」

「――仰せのままにお嬢様?」

「似合わな過ぎ。でも、そうね。いつものインバネスに帽子だったら似合ってたのかしら」

 

 現代日本だから巌窟王のインバネスは持ってこれなかった。帽子はあるけど。現代服に合わせてエドモンアレンジだ。

 それを言ったら、ブーディカさんには苦笑され、清姫にはふくれられ、スカサハ師匠には乙女心をもう少し知ると良いぞと忠告され、式にはいつか刺されそうだなとか言われた。

 

「聞きたかったのはそれよ。インバネス。好きよね。何か思い入れでもあるわけ?」

「ちょっと長くなる話だけど、それ」

「いいから聞かせなさいよ。わたしだけ仲間はずれになんてさせないわ」

「明日、大丈夫?」

「大丈夫よ。わたし新参だし、そういう話は聞いておきたいわ――だから、ほら座りなさいな」

 

 ベッドに腰を下ろすと彼女が隣に座ってきた。近いとは思ったけれど、とりあえず話すとする。

 彼の話を。

 シャトー・ディフにおいて、ともに戦った相棒の話を。

 理想(オレ)人間(オレ)になった話を。

 

「――ふーん、本当、乙女心がわからないのね、あなた」

「なんでさ……」

 

 聞き終わったクロの反応が、これ。どうして話したらそう言われなくちゃいけないんだ。エドモン、オレにはわからないよ。親友のことを話すのって、そんなに駄目なのか?

 

「駄目というより、相手を考えなさい。わたしとかならまだいいけど、マシュとか清姫とかにもそうやって話したんでしょう。嬉しそうに」

「そうだけど?」

「だから、駄目なのよ」

 

 何が駄目なのか詳しく教えていただけるのでしょうか。

 

「えー、どうしよっかなぁー」

 

 え、ここまで来て、焦らすの。というか、眼が怪しくきらんて輝いた気がするんですが。

 

「そ、れ、じゃ、あー、魔力供給でもお願いしようかなー」

「それ、女の子限定なのでは? というか必要ないのでは?」

 

 彼女にまつわる状態は聞いているが、カルデアからの魔力供給がある以上、彼女が自然消滅することはない。だから、魔力供給の必要はないはずなのだが。

 時々、何やら女性サーヴァント相手に時々キス魔が出現しているらし。赤い外套に褐色とかどう考えても彼女です。まあ、問題はないらしいので、放置しているのだが。

 

「習慣っていうのはなかなか抜けないのよ。それに、お兄ちゃんならいいわよ」

「大人をからかうのはやめなさい」

「むぅー、本っ当、面白くないわねー。そこはもう少し反応してくれないと」

「はいはい。それじゃあ、戻るよ。ちゃんと寝ること。サーヴァントだからって女の子なんだからね」

「はーい」

 

 ともあれ、心配しすぎだったかな? でも、久しぶりにエドモンのことが話せたしいいか。うん。

 

 ――そう思っちゃうから駄目なのよ。

 

 というクロの言葉は聞こえなかった――。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 約束の時間となり、オレたちはディルムッドのマスターとの交渉に向かう。

 

「本当にうまくいくのでしょうか……なんとなく酷薄そうな方のようでしたが」

「任せておけ――ただ」

「そこらへんは全部任せるよ」

「――む、いや話が早いのはいい。一応、念話のパスだけはつなげておく。内緒話は可能だが、口だけは動かすな。他の全員もだ」

「了解」

 

 指定の場所に向かうとディルムッドが臨戦態勢だった。空気が重い。どう乗り越えるつもりなのか。

 

「……昨夜のうちにアーチゾルテに問い合わせた。ライネスの名代など、よくも根も葉もない法螺を吹いてくれたものだ」

「だが、それでも我々の会談に応じてくれたということは――」

「問い糾したいところではあるが、遺憾だが、七騎のサーヴァントを連れている貴様らを敵に回すのは愚の骨頂であることはわかる。

 故に、まず一つ問おう。なぜ、こうも我らが陣営のみならず、全ての陣営について長じていたのか、答えてもらおうか」

 

 どうやら二世は彼を乗せるために、この時代の六騎のサーヴァントについて話をしていたようだ。七騎の情報を知ることが出来れば、確かに有利にことを進められる。

 それは確かに魅力的な話ではある。

 

「それは、私にとっての事後……遠い昔の記憶だからです」

「なに?」

「私は、話した通り、様々なことを知っているのです。あなたが当初、この戦いにおいて召喚する予定だったのが征服王イスカンダルだったこと。

 そのための聖遺物が、時計塔の聴講生ウェイバー・ベルベットに盗まれ、やむなく代わりにディルムッド・オディナを使役していることも。

 アサシンが敗退していないことも、黄金のアーチャーがギルガメッシュであることも、すべて話した通りです」

「…………」

「もう一つ。そちらのサーヴァントに魔力を供給しているのは、貴方ではなく婚約者のソラウ・ヌァザレ・ソフィアリ嬢であることも知っています」

 

 対するケイネスは無言。ここまではすべて昨夜話していること。ここから先は――新しい情報。

 

「ああ、そうそう。ソラウ嬢といえば、貴方の書斎に恋文の下書きが残されていましたよ。ええと、たしか書き出しは、「麗しき我が想いの君よ、その瞳には朝露の輝きを宿し……」――」

「ええい、やめんか! もういい! 貴様は一体何者だ!?」

「レディ・ライネスの名代であることは事実です。ただし、その肩書を賜るのは、今から四年ほど後のことになります。故に、今申し上げた諸々は、すべて私の過去の記憶に属する事柄です」

「ほほう……」

 

 なんというか、それを信じることができるというのがすごいというか、オレなら笑うぞ、未来から来たとか暗に示されたら。

 だが、二人ともよどみなく会話を続けている。これが魔術師の会話というやつなのだろうか。というか、そもそも、オレ自体タイムトラベラーみたいなもんじゃん。

 

「なるほど……時間渡航者か。そういう研究に血道を上げている輩もいるとは聞いている。実現の目処などない、馬鹿げた研究だと思っていたが……それにしても、もう少し納得のいく説明がほしいところだ。魔法に手が届くほどの術理ともなれば、当然、生半可なものではあるまい?」

「それでは、かいつまで説明させていただきます。しばし、ご傾聴を」

 

 二世は語る。

 

 地球環境モデルを投影し、過去を観測、英霊召喚システムを応用したレイシフト。

 何のことはないカルデアのオレたちがどうやってここにきているかについてを話している。確かに、一番の説明はそれだが、二世だって昨日ドクターとかに聞いた説明をよくもまあ、自分のことのように説明するものである。

 そして、一番、アレなのは――。

 

「それらすべての魔術的偉業が、アーチボルト門閥によって達成されることになります」

 

 全部、目の前のアーチボルトさんがやったことにしちゃったことだよ。未来を知るすべはないのだから、ここで何を言っても確かに意味はないのだけれど、二世さんものすごくディルムッドのマスターを持ち上げている。

 

「――で、なぜ、スカサハ師匠はオレの頭を掴んで胸を押し付けているんでしょうか。見えないんですが――」

「うむ、おまえは隠し事が下手だからな」

 

 そうですか――。

 

 気分がいいのでこのままにしておこう。

 

 話は勝手に続いている。

 

「未来のアーチボルトがそこまで大それた成果を上げた、と?」

「もちろんケイネス卿の卓越した采配と統括あっての成果です。今後の時計塔におけるあなたの躍進が……様々な学派の成果を吸収し、この一大プロジェクトカルデアの実現に至ったのです」

 

 それにしてもオルガマリー所長が聞いたら、どんな顔をするのかわかったものじゃない会話だな、これ。想像したくないな。うん。

 

 ――それよりスカサハ師匠そろそろ離して――いや、やっぱり離さないで。

 

「うむ、ならばぞんぶんに味わっておくが良いさ、いつも頑張っているご褒美だ」

 

 話はやっぱり勝手に続く。

 

「フン。私にアトラス院とのつながりはない。むしろあの偏屈たちを毛嫌いしている。あの悲観主義者たちと手を取り合うことはない。ないと思っていたが……ふ、ふふふ」

 

 あれ、なんだか、ケイネスさんの様子が?

 

 しかし、柔らかいな……。

 

「そうかー、うん、まあありえぬ話ではないな!」

 

 ええー……。

 

「これ、顔に出すでないといっただろう」

 

 むぐ……むぎゅ……うむ……。

 

「むぅ、先輩へのこれはなんという気持ちでしょう……」

「あーあ、わたし、しーらないっと」

 

 だってこんなの耐えられる方がおかしいでしょう。

 

「いやぁ、そろそろ降霊科と鉱石科だけでは派閥争いの切り札には足りないかな、とは思っていたのだよ。何か別口の研究にでも手を付ける頃合いかとね。うむ、しかし、まさか、そんな方向にも才能があったとはなぁ私。そうかー。歳食ってからも大人げなく本気出しちゃうかー」

「さすがです! ええ、このディルムッドめは信じておりました! マスターは今でこそいろいろ危なっかしいものの、将来は必ずや大事を成し遂げられる御方だと!」

「無論、技術的成果だけでなく、ソフィアリ家の経済的援助によるところも大です、カルデアの施設構築に至る莫大な経費が賄えたのも、貴方と未来の奥方様の仲睦まじい私生活あってのことで」

 

 これでいいのか、時計塔のロードよ、と思いたくなるような会話だと思うこれ。絶対そうだと思う。魔術師ってもっとこう、こんなんでいいの?

 そういえば、オレ魔術師とそんなにかかわってきたことないからわからないや。魔術師の英霊って基本どっか吹っ飛んでいる人も多いし。

 

 エレナを基準にしていいとは絶対に思わないし、これを視てると。

 とりあえず、アレだ。二世がまずランサー陣営に手を付けたのって、きっと、だますのが簡単だからだな。

 

「というわけで、我々は御身にアーチボルト家の栄光の(きざはし)を確実に築いていただくべくはせ参じた次第です」

 

 そのために予備システムに介入し七騎のサーヴァントを召喚して連れてきたとかいうと本当大事な気がするが、スカサハ達のことを話すにはそれが一番だし、戦力は大事というのはわかることだろうからね。

 何より、手ごまは多い方が嬉しい。誰もがそう思う。更に情報まであるのも大きい。多大な支援はできないと言いつつ、これ結構多大な支援だよね。

 

「過剰なほどの戦力に、あらゆる敵に先手を打てる。ククク、この戦い、もはや勝ったも同然ではないか。――しかし、遊びで参加したこの戦い。未来の末裔が関わる以上、大きな意味があるということかね?」

「そうなり得る可能性が無視できない、という程度にお考え下さい。我々は過去に干渉するにあたって、すでに確定した事象についてしか言及できません」

 

 つまり確定していない事象については説明不可能ということ。そもそも全部嘘だから。ただ、それだけでもなく、歴史改編の余波が大きくなりすぎると抑止力の発動させかねないために慎重にならねばならないという。

 そもそもこうやって介入している時点で未来は確度を失うっているのだから、絶対だと言及はできないのだ。

 

「なるほど……」

 

 ともかく――その後、もろもろの方針を定め、今回の会談はお開きとなった。

 

 トランベリオ一派の陰謀だとか、仕組まれたことだとかそういう話で、ケイネスはランサーをこの地を残し去っていった。

 大嘘から出た話に乗せられた形での離脱なのだが――。

 

「二世――」

「いうな、わかっているとも。ここが、本筋にはまったく関係のない領域であることはな。徒労だとも。私自身がわかっている。だが、何よりも大きな意味があることだ。私は、今、この場で、最善を尽くしたかったのだ」

「そっか――」

 

 その気持ちはよくわかる。なら、オレはこの人に協力しよう。最後まで。こんなことを言う人なんだ、信用できるさ。

 それに無駄なんじゃない。記録にも、歴史にも残らなくても、オレたちが覚えているのだから。

 

 




術ジルがいないから、活躍の機会すらなくサラバするケイネス先生であった。

まあ、そんなことはいいのだ。というか、カボチャ村もやらないといけないから、テンポよく行くぞぅ。
なんとか第二次クリスマスまでやって、槍を仲間にしてから七章に行きたい。なぜかって、おそらく高確率で敵に回りそうな困った金ぴかの為だよ!
槍が配布じゃなかったら、きよひー、ジキル博士で挑まなければいけなくなっていたよ。

第二次クリスマスイベ。
それもやって七章。大丈夫だ、レベマまで配布鯖たちは育てた。フォウまでは回らんが、星4以上はフォウマまで行っている。
だから、大丈夫だ……クリスマスはボックスをこれでもかと開けてやる。林檎馬鹿食いだ。
とりあえず明日のガチャの為に一万円も課金済み。
十連7回分の石がある。これで引けなければその時だ……家賃までは行く。


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