Fate/Last Master   作:三代目盲打ちテイク

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Fate/Accel Zero Order
Fate/Accel Zero Order 1


「――べつにオレが悪魔でも構わないんだよね。でもそれって、もしオレ以外に本物の悪魔がいたりしたら、ちょっとばかり相手に失礼な話だよね。そこんとこ、スッキリしなくてさぁ。

 

 ――チワッス、雨生龍之介は悪魔であります!

 

 なんて名乗っちゃっていいもんかどうか。それ考えたらさ、もう確かめるしか他にないと思ったワケよ。本物の悪魔がいるのかどうか。

 でもね。やっぱりホラ、万が一本当に悪魔とか出てきちゃったらさ、何の準備もなくて茶飲み話だけ、ってのもマヌケな話じゃん? だからね、坊や…もし悪魔サンがお出ましになったら、ひとつ殺されてみてくれない?」

 

 男がいた。

 血みどろの部屋に男がいた。

 男は何事かをしゃべっている。

 何かを唱えている。

 

 それは呪文。詠唱。

 

 その足元には、生贄のように小学生の子供が、いた。

 

 何かがリビングの中を吹き荒れている。

 

 男の詠唱とともに何かが、そう何かがこの部屋に現れようとしている。

 

 それは人だった。

 

 それは男だった。

 

 それは、赤いコートの男だった。

 

「ふむ、まさか本当に行けるとはな。特異点化しているとは思ったが、しかし、よりにもよってこのような場所か」

「おお! なんか、出た! ――えと、雨生龍之介っす。職業フリーター。趣味は人殺し全般。子供とか若い女とか好きです。最近は基本に戻って剃刀とかに凝ってます」

「そうか。ひとまずは黙っておいてくれないか。今、こちらは忙しい――」

 

 暗示一つ、男を黙らせ、コートの男は子供を警察に届けて、このどうしようもない男を簀巻きにして引きずっていく。

 

「まったく、マスターが必要とはいえ、このような男だと?」

 

 まったくと嘆きながら、コートの男は、都市を一望できるビルの屋上へとやってくる。

 

「だが、今こそあの結末――我が計略をもって覆す――」

 

 男――キャスター。

 否――諸葛孔明。

 否――ロード・エルメロイ二世。

 

 男は、今、再び、この結末を覆さんと計略を奔らせる。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 夜――ふと目を覚ました。最近、直感が鍛えられているからか、何かが部屋に入ったり、ベッドに入ってきたりしたらわかるようになってきたのだ。

 夜中に目を覚ますというのはそれ以外にはありえない。特異点でもなるべく魔力回復のために寝るようにしているし、起きる時はしっかりと目を覚ますように訓練している。

 

 だから、起きたということは、単なる寝ぼけじゃないということ。

 

「――重い」

 

 まず感じたのは重みだった。誰かが上に乗っているような。この感じは久しぶりだなと思う。さて、誰だろうかと布団を剥ぐと――。

 

「クロエだったかー」

 

 これは予想外。まあ、子供ならいいか。とりあえず、ぬくいのでそのまま眠ろうとすると。

 

「ちょっとちょっと――」

「なに、クロエ」

「やっぱり気が付いてるのよね。寝ぼけてるとかじゃないのよね」

「それが?」

「だったら、驚きなさいよ」

 

 いや、だって、寝たい。それにぬくい。なんというかカレンダーが秋に差し掛かっているということもあって、カルデアの中の空調は普段通りなのだが、どうにも気分的に肌寒さを感じてしまうので、ぬくもりがほしいというか。

 クロエなら子供だし、別に入り込んできても問題ないし、ゆたんぽには最適? とか思ったり。きよひー? きよひーは、駄目だ。うん、ちょっとアレはダメ、発育的に。

 

 ――ガーン!?

 

 どこかで、落ち込んだ音が聞こえた気がするが、気にしないでおこう。

 

「で、なぜに潜り込んできたのか――っと、呼び出しだ行こうか」

 

 管制室から呼び出しを喰らったので向かう。

 

「真夜中ですがおはようございます先輩」

「おはようマシュ」

「クロエさんとご一緒だったのですか?」

「なんか布団に潜り込んできた」

「む、それはいけません。クロエさん、先輩の休息を邪魔してはいけませんよ」

「……なんか思っていた反応と違うわね……もっとこう、なんかないの? 女の子がベッドの中にいたのよ?」

「はい? いえ、とくには。クロエさんはまだ子供ですし、両親が恋しいこともあるかと」

 

 今回は完全にいたずらだったんだろうけどね。呼び出しがあるってことは何か起きたってことだ。ドクターのところに行くと、案の定特異点が発生したのだという。

 

「魔法少女の一件から、まだ日もたっていなくて悪いけどね」

「それは仕方ないし、ドクターのせいじゃないからね。今回はどこ?」

「日本の地方都市だよ」

「ん? それって」

「そう特異点Fと同座標だ。けれど特異点Fよりも十年過去にあたる。聖杯そのものとは断定できていなけれど、きわめてそれに類似した反応が観測されている」

 

 なるほど、特異点Fよりも過去なのか。しかし、それはそれでありうるのだろうか。同じ場所に何度も聖杯が出現するのは。

 

「うん、そうなんだよ。まったくもって謎だ。今回ばかりはダ・ヴィンチちゃんでもわからないとのことだ。そもそも情報が少なすぎる」

「ゆえに、直接乗り込むということじゃな」

「スカサハ師匠」

 

 水着じゃなくて今日は現代衣装だ。カジュアルなジーンズに冬物のジャケット。さすがに水着じゃ寒いのかなとは思うが、似合ってるよ似合いすぎてるよこの人。

 

「ならば私が出ようではないか。なに、ここ数日まともな戦いもない。お主たちが固有結界に行っている間に出現した敵も歯ごたえのないものであったのでな、久方ぶりに槍を振るいたい気分よ。そのための現代衣装に衣替えをしてみた。どうだ?」

「似合ってますね、お美しいです。さすがスカサハ師匠」

「う、うむ。相変わらず歯に衣着せぬ物言いよ」

「彼女が言ってくれるのなら心強い。何が起きるかわからないからね。前回のようにこちらに襲撃があるかもしれないから、全員でいけない。それに、観測している限り、現代の都市部だ、人選はした方がいいね」

 

 確かに。現代の都市部にあからさまに鎧やら銀の義手やらつけているのが行くのは絵的にマズイ。誰もいないのならいいけれど、少なくとも生命反応があるらしいことからして、誰かいるのは確実だろう。

 

「じゃあじゃあ! わたしの出番ね! 現代っ子だし」

「そうだな。そう考えると式と、金時も行けるか」

「わしじゃ、わしも行くぞ」

「ちゃっかりノッブも現代服に着替えてるし……なに女子高生? なぜに女子高生?」

「わしじゃからな!」

 

 まあ、いいか。

 

「それじゃあ、今回はマシュ、スカサハ師匠、クロエ、ノッブ、ジキル博士、式、金時、頼むよ」

「頼んだよ。こちらは警戒をしておくし、レオナルドもちゃんとやっているから、君たちが戻る頃にはいつも通り全員で特異点に挑めるようになっているはずさ」

「あんまり無理はしないでね、ドクター、何かお見上げがあったら持って帰るよ」

「お、それなら、あのアイドルの限定版グッズを――い、いや、うん、それはまた今度。今回も聖杯の回収、もしくは破壊が任務だ。頼んだよ」

 

 レイシフトする。レイシフトを終えると出たのは、夜の街だった。燃えてしまう前の冬木市。人の営みが息づいている都市だった。

 平和そうな都市だ。こんなところに聖杯なんてあるのだろうか。そう思ってしまうほどには穏やかな空気が流れているような気が――。

 

「――なにっ!?」

「――ああ、なんだやっぱりおまえらか」

 

 その瞬間、風切音を聞いた。それは第六特異点で聞いた風切り音。ダークのそれ。聞き取れたのは、何のことはないよく聞いていたから。

 聞いていなければ気が付けなかっただろう。そして、気が付けても躱せないが――ことこういうたぐいにはめっぽう強い式がいる。

 

 すでに式が飛翔するダークを切り払った時点で、全員が戦闘態勢に移行。

 

「出て来いよ。アンタらのそれは視てるからな。バレバレだぞ」

「貴様、どうやって我が気配遮断を」

 

 闇夜から現れるのは黒衣のアサシン。仮面をつけた女サーヴァント。百貌のハサン。まさか、レイシフトした瞬間に襲われるとは予想外だ。

 彼女の能力は分裂。つまり彼女だけではない。だが、普通ならば出てきていいはずのそれらはこない。ということはここにはいない?

 

 となれば、分散しているのか。この都市に。ともかくサーヴァントがいることがわかったのならば、ためらう必要もない。

 敵を逃がさないように取り囲んで倒す。ハサンを相手に情報を引き出せるとは思わない。だから、まずはここを離れるためにも彼女を倒す。

 

「さて、マスター、すまぬが、私には行くところが出来た」

「はい?」

 

 アサシンを倒した後、スカサハ師匠がそんなことを言ってきた。

 

「行くってどこへ? あちらだ」

 

 地図で確認。埠頭の方だ。

 

「誘っている。この気、ケルトのものだな。ならば、少々試さんとな、気が済まん」

「まあ、何が起きているのかわからないから、行くのはありか」

 

 どのみち当てがないのだ。ならば、誘われているというのならば行くしかないだろう。

 

「では行くぞ」

「ちょ――」

 

 スカサハ師匠に抱えられて全力で移動させられる。埠頭までそれなりに距離があったはずだが、ものの数秒でたどり着く。

 

「ふむ、何やら賢しい陣が敷いてあるようだ――だが――」

 

 ルーンをスカサハ師匠が描けば、何かが割れるような音と同時に、そこに現れる青い騎士と二槍の騎士とコートの男。

 どいつもこいつも見た顔だ。アーサー王、ディルムッド、諸葛孔明。

 

「ええい、また邪魔か――な!?」

「む、石の迷路が消えた――」

「ほう、輝く貌のディルムッド。よしよし、相手にとって不足なし」

「何者!」

「なあに、誘っておっただろう。そういうわけだ、マスター、ちょっと遊んでくる」

 

 なんというか師匠がノリノリだ。暴れたかったんだろうなぁ……。

 

「名乗るほどのものでもないが――そら、これを見たらわかるだろうて」

 

 現代服のまま、彼女は朱槍を取り出す。

 

「――!!」

 

 ディルムッドの気配が変わる。気が付いたのだろう、彼女の正体に。ケルトの英雄ならば知らない者はいない。朱槍――ゲイ・ボルク

 その持ち主たる男――クー・フーリンを。であれば、気が付くはずだ、その師の名へと。

 

「ここで、影の国の女王と相まみえることが叶おうとは」

「御託はいい。決死の覚悟で挑むが良い」

「名乗ることが出来ぬ身をお許しを。その代わりと言ってはなんでしょうが、全霊を以て挑ませていただく。では――!!」

 

 二槍が翻る。赤の軌跡が迎撃する。

 煌きだけがそこに在る。もはや人間の動体視力では何が起きているのか視認すら不可能な領域の高速戦闘。これが本来のサーヴァント戦なのだと言わんばかりの暴威を見せつけながら、互いの絶技を比べ合っていた。

 

「もっと速度は上がるか?」

「あがりますとも!」

 

 ならばついてくるが良い。サーヴァントの霊基、アサシンとしての霊基であるが、ちょうどよい。ランサーとして現界したかの者とやりあうのならばこのくらいがちょうどよい。

 槍だけでなく、あまた朱の武具を用いて、変幻自在の二槍を防ぎ、または攻め立てる。

 

「セイバー、これは――」

「下がってアイリスフィール」

 

 セイバーたちは、戦闘態勢を維持したまま動かない。こちらを常に視界に収め、こちらの動向を探るべく睨み付けている。

 

「うそ、ありえないわ」

「アイリスフィール?」

「あの男の子の周りにいる人、全員現代の服装をしているけれど、みんなサーヴァントよ――!」

「な――」

 

 それはありえない事態だ。彼女らの常識においては、聖杯戦争は七騎のサーヴァントによる戦いなのだ。それなのに、単独のマスターの周りに、ランサーと戦っている女も含めて七騎のサーヴァントがいる。

 明らかに過剰。理解の及ばない尋常ならざる事態だ。

 

「ええい、くそ。特異点化しているからいつか来るだろうとは思っていたが、まさかこの時だと! ええい、あちらを止めるのは不可能か。ならば――そこのマスター!」

 

 

 諸葛孔明がこちらに話しかけてくる。たしか、ロード・エルメロイ二世とも名乗っていた、ローマで出会ったサーヴァントの一人だ。

 まさかここで出会うとは思わなかった。

 

「あなたはなにか事情を知っていそうだね」

「ああ、知っている。それを説明してもいい。故に、あちらで戦っている女サーヴァントを止めてもらいたい」

「……わかったよ、スカサハ!」

 

 こちらとしても情報はほしい。

 

「む――」

 

 高速戦闘のギアがさらに上がろうとした瞬間、されどぴたりと止まる。

 

「なんじゃ、マスター。こちらもようやく温まってきたところ」

「ちょっとストップ。なんで、こうめ――ふがっ」

「二世と呼んでもらおうか」

「二世が、止めろって」

 

 なんともいいところであったのにとスカサハ師匠はぼやいているが、槍を収めてくれる。

 

「すまぬなディルムッド。そういうわけだ」

 

 ディルムッドもまた止まるが、様子見といったところだ。彼のマスターも気が付いたのだろう。こちらがサーヴァントを七騎もつれているということを。

 

「さて、止まったな。予想外のところで乱入されて計画は狂ったがちょうどいい。足りない戦力がやってきたんだ。ならば有効に使うまで。さて、マスター、もう一つやってもらいたいことがある」

「それをやるメリットは?」

「おまえたちの目的がここの聖杯だろうということは知っている。それについての危険性、この状況すべての説明と打開策の提示をしよう」

 

 言葉を吟味する。

 

「式?」

「嘘はついてないな」

「博士?」

「提案にのっても大丈夫だと思う」

「おう、何かあればオレっちがぶん殴ってやるからな」

 

 ならいいだろう二世の提案に乗ろう。

 

「であれば、まずは、そこのセイバーを追い返す。重要なのは倒さずにやることだ」

「また変な注文だね」

 

 まあ――やろうと思えばできるけど。

 

「く、攻撃が読まれて――」

 

 悪いけれど――そちらの動きは読めている。アーサー王とオレが何度戦ったと思っているのか。型は違うが、源流が同じ、そこから辿れば根源に至る。

 そう、アーサ-王の動きはオレは完璧に予測可能だ。

 

「マシュ!」

「はい!」

 

 剣戟を予測し、マシュが防ぐ。

 

「く――その盾は――!」

 

 マシュの盾は円卓だ。見覚えがあるだろうね。だから、満足には動けなかろう。その剣戟など読みやすいことこの上なし。

 バージョンアップしたダ・ヴィンチちゃん眼鏡のおかげで予測しやすくてしょうがない。

 

「く、ここは退きます!」

 

 マスターを連れてセイバーは撤退した。

 

「よくやった――さて」

 

 セイバーが終わり、次はランサーかとディルムッドが構えているが、

 

「落ち着かれよフィオナ騎士団の一番槍。我々はアーチボルト陣営の敵ではない」

 

 彼は――そう話を始めた――。

 




というわけでAZO編開始。始めは孔明先生なしでいこうと思っていたんじゃ。
だが、な、何度構想しても、聖杯の泥にぐだ男が呑まれるか、地獄を見た――にしかならなかったので、孔明先生がイン。
さらば術ジル。

まあ、そんなことはどうでもいいんだ。重要なことじゃない。

重要なのはクリスマスイベが月曜日に始まるということ。
配布がランサーだったということ。
期間限定ガチャが赤い悪魔だったということ。

私が本気を出すと決めているのは悠木鯖、植田鯖、エドモン、キャラが気に入った鯖。
あのイシュタル、おそらくどころか植田鯖。
ならば、本気を出すしかあるまいよ。
あ、でも課金は家賃までです。

ボックスガチャにスキル石入ってるし回すぞ。
配布鯖縛りで七章攻略の為にも林檎を喰らいつくす勢いで回る。
大丈夫だ、覚悟はできている。

ちなみに配布鯖は全員最終再臨しました。スキルもあげられるのは6くらいまであげたりしてます。QPが足りません。

ともかく、私は七章を配布鯖縛りする。逃げられないようにここで宣言しよう。
7章配布鯖縛り
・雑魚戦以外のサーヴァントや強敵戦で味方サーヴァントが死んだら使わない&小説でも死亡。
・フレンドは縛らない。
・マシュやナビゲーターなど物語上一緒にいるサーヴァントは配布以外でも使用可。倒れても使って良し。
・令呪は三回のみ使用可。
・コンティニュー不可。

フレンドとガイドのサーヴァントとか、物語上一緒にいる味方サーヴァントは使っていいことにすれば、七章で出てくるサーヴァントは使えるかもしれない。
基本は配布のみですが、クリア不可能になるのを避けるためにそれくらいは見逃してくだしあ。

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