「ロマニ先生、呆れてたね……ごめんなさい、わたしとルビーのせいで……ごめんなさい」
「いえ、イリヤさんが気に病むことではありません」
「そうだよ。ドクターはオレたちの司令塔代理だ、本当に危険なら強制的に呼び戻すはずだからね」
まあ、それでオレのこの状態がどうにかなるかはわからないのだけれど、ダ・ヴィンチちゃんが何も言わないのなら、この空間から出ればオレの状態は元に戻るのしれない。
十中八九、固有結界内にいるからこその変容なのだ。だからこそ、固有結界の力の届かない場所に行けば元に戻るというわけだ。
「だから、あれは拗ねてたんだよ」
今回は全然役に立てないし蚊帳の外だからというのが大きいだろう。そういう意味ではちょっとマシュも拗ねているのは、魔力供給云々のお話があったからであって。
この状態ならいかがわしくはないのだが、ちょっとうむ、あれだったのでドクターの静止は助かったといえる。
ともかく、そのおかげで定時連絡までカルデアとの連絡手段はなくなった。気を引き締めねばならないだろう。
中立地帯にまでメイヴの軍勢はやってきている。もうすぐお菓子の国だ。国境を超える。景色は既に雪国となっており、いつ敵の襲撃があってもおかしくないのだ。
見た目ほど寒くはない。まさしく魔法の国という風情。
「いや、ちょっと待った」
雪景色? オレたちはお菓子の国に向かっていたはずだろう?
「あれ、そうでした!? なんで?」
「まさか――」
「おう、そのまさかだ」
響く声。それはメイヴの
「――!」
「それは、此処が雪華とハチミツの国になったってことだよな」
「その通りだ。領土の移譲、魔力供給源の再分割だ。珍しかぁねえよ。ふざけた国名にはうんざりだがな。おかげでオレが見張る城門前の空き地も随分と広くなりやがった」
「メイヴさんは、いますか」
「あいにくメイヴは留守だ。噛み殺すのは番犬だけだ。感謝しな」
「あの守護獣の強さは破格よ……っ!」
エレナが言うことは解る。確かにアレはイアソンとは違う。エレナのところにいたエジソンとも違う。アレだけは別。
使い魔のはずが魔法生物まで召喚するという守護獣。
「なんだ、辛気くせぇと想えばアンタかよ、エレナ。書庫の紙魚を数えるのも飽きたってか? なら、ますます励まねえとだ。メイヴいわく、軍団創成の第一歩だよと」
ゆえにあとくされ、潰す。そんな躊躇いメイヴは覚えもしないだろうが、忙しいのだと守護獣は言った。平行世界に手を届かせるために。
「カルデアに敵性体を送り込んだのはお前たちか!」
「ほう……メイヴめついに届いたんだな。そうか。なら、もうファースト・レディの力を奪うまでもないわけだ。メイヴのやり方で、やれるころとまでやるだけだな」
クー・フーリンオルタが戦意を露わにする。
「先輩!」
「ああ、ここは敵地だ」
ならば魔法少女でないマシュとリリィは力を発揮できない。
「それでもできることがあります!」
「ああ、行くぞ!」
凄まじい速度、力。魔力。
魔法少女の守護獣との闘いとは思えないほどの力が炸裂する。振るわれる朱槍。それを防ぐのはマシュ。攻撃はすべて、魔法少女たるイリヤ、ノッブ、清姫に任せて、マシュはただ防ぐ。
「ハァ……ハァ……」
「おお、やるもんだ。いい連携じゃねえか。何戦かやって息があってきたのか――いや、そっちの
「それがどうした?」
「はい。先輩の言う通りです。それの何か問題がありますか。わたしはシールダー。盾の英霊。先輩が防げというのならば、すべての攻撃を防ぐのがわたしの役目です!」
「チッ、
イリヤを……欲しがる?
「おう、
「マシュ!」
「はい! 真名、開帳――私は、災厄の席に立つ」
甘噛みという真名は正しくない。あれは正しく、かつてのクー・フーリンオルタの宝具そのものだ。いいや、魔法少女の守護獣とかしている今、かつてのそれよりもまた。
だが、かつてのオレたちではないのだ。あの時とは違う。なぜならば――。
「それは全ての
「こいつは――!!」
顕現する白亜の正門――。それは全てを護る、我らが故郷。
人理定礎を証明する遥かなりし理想の城――。
その名は、キャメロット。
かつて円卓の騎士の誰もがその目に焼き付けた、美しき白亜。
円卓の騎士たちが座る円卓を盾として用いた究極の守り。
「守護獣如きが、突破できるわけがない」
傷一つつかない。彼の宝具の一撃だろうとも、完全に防ぐ。
「マシュさん……すごい」
「ややー! すごいですよー、イリヤさん、これはまさしくパーフェクト! って、おや?」
「ルビー? ――んん?」
何やらイリヤたちが何かに気が付いたようだった。
「イリヤ様ー! ルビー姉さん! 遅くなりましたー!」
「やっふー! 無事だったんですね、サファイアちゃーんっ☆」
「サファイア!? あなただけ!?」
「え、誰?」
青いステッキが増えたんだが。
「ああ、お兄さん、あれはミユの杖です」
しかし、杖だけか。
「でも、いいところにきましたー、サファイアちゃん、そちらのマシュさんと一時契約を!」
「彼女はイリヤ様のお味方ですね。承りました。失礼します」
何やらサファイアなるステッキがマシュに近づいて行き、契約を結ぶ――その瞬間、マシュの姿が魔法少女のそれとなった。
「くそう、カルデアとつながっていれば、マシュの魔法少女姿を、写真に残せたのに!!!!」
「え、えっと、泣くほどですか、先輩?」
「マシュって、季節もののイベントの時も同じ格好だから、こういう姿の変化は正直、そのすごく、いいなと……」
「そ。そうですか……え、っと、先輩が、その、お望みでしたら、今後もこのように衣装替えを……」
「ますたぁ、わたくしはぁ?」
「清姫の魔法少女姿はどうして、ケモミミが生えてるのかなってずっと思ってた、もふっていい?」
「はいどうぞ」
おお、すごい。
「……なんですかー、あのピンクな空気。こちらも対抗しようにも美遊さんがいません、クロさんの方が適任ですが、くぅ、痒い所に手が届きませんねぇー!」
「むぅ、マシュさんまで魔法少女に、私もステッキほしいです」
「ねえ、あんたら、そんな小芝居やっている間にあいつ退いたわよ」
エレナに言われた通り、クー・フーリンオルタはいつの間にか姿を消していた。まあ、エレナがいろいろと言ってくれたようなので問題はないだろう。
そんなことよりマシュの撮影会がしたい。どうやら、ルビーにその手の機能があるようで、しっかりと撮影させてもらった。
しかし、なんだろう、こう微妙にエロいのは、なんでだろう。魔法少女の衣装が微妙にこう、なんかエロティックなのは、どうしてなんだろうか。
まあ、それはともかく、サファイアは美遊から託されたメッセージがあるという。映像であったが、酷い状態だった。
拘束されたひどい状況に。
ただ、知りたいことは知れた。彼女はファースト・レディに囚われている。ファースト・レディこそがこの固有結界の世界を作った張本人。
黒い障壁の内部に、レディの城がある。
ファースト・レディは平行世界に干渉する技術を得たこと。
そして、美遊は言ったのだ、彼女の計画を防がなくてはいけない。だが――
「イリヤは来てはいけない、ね……」
そのおかげで、すっかりとイリヤは落ち込んでしまっている。サファイアが慰めているのですぐに復活するだろう。その間にこちらはサファイアとの自己紹介のあとに聞いた話を検討してどうするかを決める。
「そういうわけで、もう話は決まってるけど、一応聞くけど反対意見がある人」
「あるわけなかろう」
「はい、サファイアさんの大切なマスターさんである美遊さんを助けるためにも頑張りましょう!」
「さあて、本丸攻めじゃ。こんな少数で城攻めとは嫌じゃのう。桶狭間とか二度としたくないんじゃが」
「バレてるから奇襲も何も無いし正面から挑むじゃん」
「ふむ、まあ、なんとかなるじゃろ。なにせ、こっちには移動できる城が付いておるし」
今までならそれも無理だった。なにせ魔力供給がオレという貧弱一般人だけだったからだ。カルデアとの通信を切断している今、魔力供給はない。
だが、それではこの人数のサーヴァントなど賄えないはずだったのだが、そこは魔法のステッキさんがいい感じに魔力を集めてくれているらしく、戦闘も現界するにも問題ない分の魔力が供給されているらしい。
それはルビーやサファイアも一緒で、マシュもこれならば全力で宝具も使えるというわけだ。問題はリリィであるが、
「申し訳ありません、マスターさん……」
「わかります。わかりますよ、戦いたいのに戦えない気持ち。私も生前、そのような思いをして、それがもう無念で無念でしかたなく――こふっ――ほら、こんなふぅに……」
「人斬り、お主なんか、吐血が芸になってきておらんか。だいぶアレじゃぞ、見慣れてきて全然笑いも取れんぞ、それじゃ。もっと新しい吐血の仕方をじゃな」
「ノッブは何を言ってるんですか!?」
いいからその猟奇的な赤いマスコットになる前に拭こう。
「リリィは、仕方ないよ。ステッキがあれば良いんだけど……」
どうにもそういう気配がない。
「どのみち一人はオレの防御に回ってもらいたい。イリヤを前線に出している以上、マシュにはそっちを守ってもらいたいからね。
「わかりました。不肖セイバー・リリィ、全力でマスターさんを守ります!」
「その意気です、リリィ様」
「おう、そうだぜ大将の守りも立派な仕事だからな!」
やる気十分。復活したイリヤとともにメイヴの城へと向かう。敵はいない。どうやら完全に待ち構えているようだ。
「……あたしはここに残るわ」
エレナが城門の前でそう言った。
「こちらの襲来を予期している以上、彼女は万全の態勢で待ち構えているでしょう」
「……エレナさん……」
「メイヴを相手にして和解や妥協はありえないわ」
どちらかが倒れるだろう。ああ、それは知っている。オレは彼女を知っている。魔法少女ではないけれど、彼女と同じ彼女とは違う、女王メイヴという女を知っている。
ゆえに、どちらかが経終えれるまで戦うことになることは予測している。両方が立つことはない。両立は不可能。彼女はそういう女だ。ほしいものは奪う。そういう女。
「あたしはもう……本当は……魔法少女が倒れるところを見たくはないの」
「……わかりました! お兄さんもそれでいいですよね」
「ああ――案内をありがとう、エレナ。今は、それで十分だ。けれど、これだけは行っておくよ。待て、しかして希望せよ」
「何度も聞いたわ。馬鹿の一つ覚えみたいに言うんですもの……まあ、それにほだされてるのかもしれないわね……あたしも……イリヤ、あたしの宝石を持っていきなさい」
本来の所有者は既にエレナではなくイリヤなのだ。だから持っていくと良い。必要がなければまた持ち帰ってこいと彼女は宝石を渡す。
「案内しか、できないけど……あたしはこれでも、友達想いなの」
うん、知ってるよ。そしてきっとそれはイリヤにも伝わっている。
「うん、知ってますよ?」
ほらね?
「…………っ……」
顔を朱くするエレナ。なんだかすごい珍しいものを見た気がする。
そんな彼女と別れて城に入る。襲撃はなく、玉座まで一直線にやってこれた。そこに待ち構えているのは女王メイヴ。
「待っていたわ――イリヤ。そして、カルデアのマスターとサーヴァント」
「…………」
「一瞬だけれど、覗かせてもらったわ。つまらない世界ね。くだらない世界ね。だから、そんな世界は、さっさと見限ってこの私につきなさい?」
「生憎と、見限るほど世界に絶望はしていない」
どんなに辛く苦しい絶望の世界だって、オレは、知っているんだ。
心に刻んだ言葉がいつも教えてくれている。
「――待て、しかして希望せよ」
「……ああ、なるほど。貴方たちも救いようのない愚か者で、自分に酔いながら死にたいわけね。まあいいわ。所詮は偽物の魔法少女。本当に欲しいのは貴女よイリヤ。私の軍門にくだる決心はついた?」
「メイヴさん……ううん。わたしはあなたの仲間にはなりません。わたしは、あなたとは違う!」
「そういうわけだ。悪いけど、イリヤもオレたちもあんたの軍団にくだるつもりはない」
そう何があろうとも絶対に。
それでも彼女は語ることはやめない。ファースト・レディの望みを、願いを早めた女は、魔法少女たちを戦わせた女は、笑みので、願いを、夢をかなえるのだと、告げている。
もはやファースト・レディに畏敬はなく、尊敬もなく、もはや、ああ、もはや、全ては自らの為に、彼女を嗤うのだ。
「なるほど――確かに君は狂ってはいないようだ」
「――――」
「必死に絶望と戦っている。オマエも、また、望みを捨てていない。諦めていない。その右手を伸ばしている――」
「ハッ、戯言ね――いいわ、殺してあげる。死にたいんでしょう?」
メイヴとの戦闘に突入する。いろいろと見抜いたことがある。わかったことがある。相変わらず、彼女は変わっていないということで、エレナの言う通りだったということだ――。
さくさく行きます。
そして、エクステラやらなんやらのおかげで時間がなさそうなので贋作イベとネロ祭とセイバー・ウォーズは七章前には無理そうです。
なんとか残りの日数でZEROとハロウィン第二次までは終わらせたい。
そして、配布サーヴァント全員最終再臨できました。あとはレベマとスキルを最低でも6まではあげたいところです。
ともかく七章配布鯖縛り、小説と現実リンク企画はなんとかなりそうです。
さて、復刻クリスマスですが皆さまどんな感じでしょうか。私は、まあ、ボックスガチャ優先でやってて、礼装が一切ドロップしないので、限凸は諦めております。
素材はだいぶ交換したので、もういいかなと思っております。
エクステラですが、エリちゃんがかなり使いやすい。
使いにくいのはイスカンダルかなぁ。動き遅いし。
一番笑えるのは呂布。あいつだけなんか三国無双やってる気分w。
あとアルテラ可愛い。アルテラとエリちゃんと玉藻の水着DLC買っちゃったぜ。
ついでにFate/Seventh grailというオリジナルの聖杯戦争を構想中だったりします。
友人たちと設定を出し合い、私が書く、世界規模の聖杯戦争を描くものです。
オリジナルサーヴァントばかりですので、真名当てとか連載したらどうぞ。