魔法少女紀行 ~プリズマ・コーズ~ 1
――ねえ、あたしたち、いつまでもどこまでもずっとずっと、ずぅ~っと友達でいられるよね? ね?
――おばか。ばかじゃないの? あなた、きのう『もう絶交よ!』って私に怒鳴ったばかりのくせに、もう忘れたの……?
――うーん、忘れちゃった。それにだいじょうぶよ! 魔法がある。魔法があるもの! あたしたち魔法少女なんだもの!
――魔法……少女? 自分で言う? ナニそれ? 魔女じゃなくて? 自分から未熟を認めるなんて……恥ずかしくない? そんなの単なるなり損ないだわ。それに――わ、私には……魔法の才能なんて、無いし……ほんのすこし魔導書が読めるだけ……
――あら、何言ってるの? それもりっぱな魔法だわ! あたしにはとうていムリムリ! すぐつっかえちゃうし!
――自信たっぷり否定しない! 本当におばかなんだから……最初からあきらめたりしてちゃしょうがないでしょっ……! ちゃんと魔法を使いこなしたいんだったら、まずはルーン文字の読み方からしっかりと勉強を――
――べんきょ~う……? あっ、ごめんごめん。ちゃんとがんばりまーす
――もうっ……
それは誰かとだれかの会話。きっともう交わされることのない、誰かの、思い出――。
悲しいくらいに純真で、憐れなほどに無垢な、それは少女たちの、かつての――。
もはや二度と戻らぬ、いつかの――。
ゆえに、その世界は、できたのだと、理解して――。
「……先輩。先輩。しっかりしてください。寝ている場合ではありません。起きないと……します。いいんですか。実行には、わたしの全身全霊、大いなる蛮勇をもって挑まなければいけませんが、致し方ありません。いいのですね? 本当に――しますよ?」
オレを揺り起こす後輩の声で、理解したはずの真実は、するりと脳裏を抜けて、虚空へと堕ちていくのだ。未だ、それは理解してはならぬこと。
真実を探らねばならぬことゆえに。
――今は、ともかく――。
「……起きたよ。マシュ……」
目の前には武装したマシュの姿がある。どうやらいつもの突発的なレイシフトとやららしい、とふとそこで気が付く、なにやらマシュ、大きくない?
うむ、マシュのマシュマロはいつも大きいがそういうことではなく、オレが縮んでいる?
「……なに、これ……」
なんかマスコット的な大きさに身体が縮んでいるのですが、なんですか、これ……。
「はい、初めての現象です。先輩が、その、ものすごくプリチーなデフォルメされたお姿に。フォウさんのお耳も生えています。何か変化はありませんか?」
「いや、とくには? あ、浮ける……」
何やら身体が小さくなったくらいで特にあまり変わりはない。ただ、何やら宙に浮けるくらいか。あとは、特に何も変化はなさそうである。
なんかもう驚き過ぎて逆に冷静になっている。
「んー、でも飛んでるのもなんか疲れるし、ちょっと肩のせて」
「はい、どうぞ先輩。先輩の為なら、肩でも頭でもお貸しします」
「ありがと。ふぅ……」
さて、またも突発的な展開であるが、いつものことなのでとりあず周りを見てみよう。
「なんというかはじめてみるなぁ」
変わった光景だ。なんというかすごくファンタジック? というか今までとはどこか気色が違うという感じがする。世界観がまるきり違うというか。
異世界のようでまるきり落ち着かない。
「ですが、今回は我々だけではありません」
確かに、今回は全員ではないが仲間たちも一緒だ。清姫、ノッブ、リリィの三人とデフォルメされた金時とベディヴィエール、それからなぜか沖田さんがいる。
「それにカルデアにも連絡が通じます」
「そーういうこと。まったくもって不可解なレイシフトだ」
「ドクターなんかわからない?」
「今、ダ・ヴィンチちゃんが解析中だ。もう少し待ってほしい」
「わかった」
さて、それじゃあ状況の把握といこう。
「そうですね、ますたぁ、どうやら男性のみなさんは小さくなっているご様子。金時様もこのような調子ですわ」
「ゴールデンに力がでねえ」
「そうなると何か危険があるとわたくしたちが頑張りませんと。……それからマシュさん、できれば、そのますたぁをちょっと、抱いてみたいのですが、交換いたしませんか?」
「むむ、何やらそれは駄目という電波が」
とりあえず、オレを取り合って引っ張り合いにならないようにしてほしい。少しだけなら頭の上くらいで休憩させてもらう程度なら行けそうだし。
「おそらくこれがこの世界の在り様なんだと思う」
「つまりは法則という奴じゃな。となれば、この世界は女性に関して何かしらがあるんじゃろうが、しかし、なんでわしの連れが人斬りなんじゃ?」
「私だってわかりませんよ! 突然目覚めたらこんなですしぃい! こふっ」
って、沖田さんじゃないか。すごい久しぶりだな。マスコットが吐血するのって、いいんだろうか……。それにしてもどうして片目しかみえないんだろう……。
「どうやら、私はリリィ様から離れられないようですね」
「はい、ベディヴィエール卿のいう通りです」
とりあえず全員問題はなさそうである。ただ、男性陣はみんなしてデフォルメされているせいか力が出ない上に、なんだかそれぞれの担当っぽい女性から離れられないようだ。
――ん? 担当?
担当……デフォルメマスコット……。
何やら今ある情報で一つ思いついたものがあったのだが……。いいや、まさかね。まさかそんなことあるはずないよね。
「キャー――」
「おや――あちらで何か物音が。フォウさん……ではない、陽気な声が――」
「キャー、どいてくださーい!」
「――!? はうっ!?」
「ちょ、マシュ!? 顔面激突!?」
「大丈夫です……シールダーです……」
涙目ですけど。
とりあえず何が飛んできたのやら…………。
杖だった。ステッキだった。よくわからない生もののような感じのナニカだった。見た目は魔法のステッキだが。
「あらあらー、わたしったら出会い頭の濃厚な顔面☆激突! 申し訳ありませんー!」
しゃべるファンシーな魔法のステッキ……だと?
「おやおや? なかなかの魔力反応? ひょっとして、あなたがたも異邦人ですかー? ややーこれはツイてますねー! それならぜひ、お助け願いたいんですけど―?」
「というか、きみはいったい何者?」
しゃべるステッキとか明らかにまともな存在ではないのだし、敵か味方かもわからない。この世界の事情も分からないのに助けていいものか判断ができない。
「あ! 聞いちゃいます? それ聞いちゃいますぅ~?」
「なんだかものすごくうれしそうです……!」
「しからば名乗りを上げましょう! 魔性の人工天然精霊、その名も――」
人工なのか、天然なのか。
「愛と正義ノマジカルステッキマジカルルビーちゃんです! イッツミー! あ、先ほどは顔面失礼いたしました」
ぺこりと器用にステッキの体で頭? を下げるマジカルルビーちゃんとやら。ともかくいろいろと説明を求めようとして――
「マシュ!」
「――っ!」
どこからか攻撃が放たれた。それを防ぐ。現れたのは1人の女性。
「あら、ステッキの方だった? まだ生きてたの?」
そういうのは見覚えのある女性だ。第五特異点。アメリカで戦った女王メイヴそのひと。
「ずいぶん頑丈なのねー。宝石魔術系の礼装は、伊達じゃないってとこかしら」
ただ、いつもと感じが違う。いきなり攻撃魔術をぶつけてきたこともそうだが、何よりも空を飛んでいる。彼女が空を飛べるとは聞いていない。
そういう伝承もないはずだし、アメリカではずっと地面に足をつけていたはずである。まさか、修行でもして飛べるようになったとでも?
いいや、まさかそんなわけはないだろう。あるとすれば、この世界に働いていると思われる特別な法則か、あるいは何か別の理由があるのか。
「このピンク髪ですよー! わたしをマスターごとブッ飛ばしてくれたのは!
ともかく敵という事。ならばと戦闘態勢に入った時、メイヴはようやくこちらに気が付いたのだろう。
「へぇー、また新しいお客様なの? でも……
主人、使い魔……。
視ればメイヴの隣にも何やらデフォルメされた、いつぞやのクー・フーリンの姿がある。あの時と違って、こちらの兄貴が取り込まれたわけではないようだが、ここまでの情報を総合するともしかしなくてもアレなのかもしれない。
「わたしたちのこと……でしょうか? ――
「そこらへんを聞かせてほしいな、女王メイヴ」
「あら、私の顔をご存じなの? ちょっと嬉しいな。でもね、それは少し違うの」
違う? 雰囲気が微妙に異なることと、ティアラが普段よりもキラキラしていることと関係があるのだろうか。あとはその隣に浮いているデフォルメされたクー・フーリンオルタに。
「仕方ないわね、教えてあげるわ! 今日からあなたたちを支配する、女王の名を。一度だけよ、よーくお聞きなさい。二度目は私の番犬の
そうして彼女は愛らしく名乗りを上げるのだ。
「
――やっぱりか。
年齢的に魔法大学生とかそういうことはまあ、放っておくにしても魔法少女。この状況から推測した予測はどうやら当たりだったようだ。
どうにもマシュ、清姫、ノッブ、リリィは魔法少女であり、オレを含めた、金時、沖田さん、ベディはいわゆるマスコット的なアレなのだ。
理解しやすいのはオレ自身がそうなっているからか。自覚するとするりといろいろと浮かんでくるというのがまた気持ち悪いが――。
「とりあえずメイヴちゃん」
「あ、あら、普通に呼んでくれるの? なんかここは普通敵対っぽいんだし」
「だって、呼んでいいって言ったじゃん。ともかく、ここはどこで、どういう法則が働いているのかいろいろと教えてもらえちゃったりはしない?」
「雪華とハチミツの国を統べる女王たる私の支配を受け入れるのなら、考えないでもないわ」
なんとなく遠慮しておきたい。それに――。
「狙いは君っぽいよね」
「はいはい、そーですよ、そーなんですよ! なので、どうぞお助け下さればいいなーなんて」
「いいからそのステッキを渡しなさい」
エネミーが召喚されこちらに向かってくる。
「ますたぁ?」
「ど、どうしましょう!」
「さて、敵対するには面倒そうな相手じゃろうが、どうするマスター」
「ルビーちゃん、あいつ悪い魔法少女?」
「ルビーちゃん的にそういう判断は難しいのですが~。自分の国なら問答無用、何をしてもフリーダムというのは腹が立ちますネ! わたしのマスターだったら絶対に許しません! ドッギャァァァンとおしおきの必要アリです!」
さて、それなら――。
「了解。ルビーとそのマスターに力を貸そう」
何より弱い者いじめは見ていていいものじゃないからね。こんなステッキ一本に軍勢差し向けてくるような相手にはお仕置きだ。
何より直感からして、ルビーのマスターはなんだかとてもいい娘な気がするし。
「はい、マスター!」
「ならば燃やしてしまいましょう」
「精一杯、頑張ります!」
「魔法少女マジカル☆ノッブか。是非もないよネ!」
トナカイマン、スノーマンへと戦いを挑む。
「ヤァァ!!」
盾でぶん殴り、清姫で燃やし、リリィが斬って、ノッブが撃ち抜く。いつものようにオレを守る必要がないから攻めやすいようだ。
ただ、何か違和感がある。まるで、倒されても問題ないとでも言わんばかりだ。
だが、考えている暇はない、ともかく全部倒してしまう。残りはメイヴ。
「あれ、負けちゃったの? ふーん。結構やるのね、アナタたち。この中立地帯だと、私の兵士たちも百パーセントの力は出せないみたい。勉強になったわ。でも――ゲームはここからよ、ブタさんたち?」
女王メイヴはいくらでも兵士を創り出せる。先兵を斃したところで、終わりではないのだ。
「もうこれ以上、敵性体を召喚させません!」
「いや――待ったマシュ!」
マシュの攻撃はメイヴには届かない。いいや、届いているのに効いていない。
「あら。なに、今の攻撃? 弱すぎてわからなかったわ。ふふ。私に触りたい気持ちもわかるけど、
いくら攻撃を加えたところで届かない、効かない。それを見て、オレはこの世界のルールを急速に理解していった。
マシュの攻撃というサンプルが増えていくごとに、この世界の仕組みがわかってくる。それはオレがマスコットであるからこそでもあるのだろう。
魔法少女のマスコットとは未熟な少女に助言を与える存在だから、オレもまたその
だが、今はそれが幸いしている。この世界の法則がわかるのだから。
「くそ、だが、どうする。それがわかっても対策の手立てが――いいや、諦めるな。諦めたら駄目だ」
「…………ん?」
「――そう! あきらめちゃ、だめ!」
誰かの声が響く。それは少女の声。諦めてはいけないと励ますように強く熱い声が――。
そこにいたのは走ってきたからだろう息も絶え絶えな小学生くらいの少女がいた。
「ぜぇ、ぜぇっ……走りすぎて、もうっ……ルビぃ―!」
「イエース! マイ・マスター! ルビーちゃんはここですよー!? ご足労をかけましたー! ただいま、参ります!」
「戦車で轢いても壊れないなんて、いきがいいのね! 名乗りなさい、私の無敵の軍団に加えても構わないわ!」
「また勝手なことを言っていますよー」
「わたし……わたしは! イリヤスフィール・フォン・アインツベルン! 無敵の軍団なんて知らない! それよりなにより――美遊を返して! ミユはわたしの一番大切な友達なの! ルビー! ――転身!」
「かしこまりましたー!」
イリヤスフィールという少女の参戦を少女を中心にして状況が動いて行く。
「コンパクトフルオープン! 鏡界回廊最大展開!!☆」
さあ、見よ、視よ、ミヨ!
今ここに刮目して見るが良い。
華麗なる少女の可憐なる変身を!
「
それは魔法少女が魔法少女となるための大儀式。
女の子が、魔法少女となるための、自らの覚悟を形にするもの。
その姿は可憐。その姿は華麗。
万華鏡のように美しく色とりどりの輝きを以て――。
「
今ここに、超新星の輝きを放ち、
天駆ける星々のきらめきよりも尊く、天高くそこにある太陽よりも強く!
その輝きは遍く世界を照らす無窮の煌き。
誰もがその姿に、永久に輝ける希望を見るのだ。
「カレイドライナー プリズマ☆イリヤ! ここに推参ですー!!」
少女の姿が魔法少女のそれにかわる。煌びやかな光の破片を纏わせて、変身する。その姿、まさしく魔法少女。ピンクの衣装は可憐で、可愛らしく、されどその瞳に宿る意思は何よりも力強い炎をたたえて――。
「…………ごめん、今の勧誘はなし。なにその変身。ちょっとムカついたわ。そういうの、私たちにはもういいの。――目障りだから、本気で殺すわ」
「さっきはいきなりで油断しちゃったけど、今度はそう簡単にはいかないんだから!
今ここに、魔法少女同士の戦いの幕が上がる。
放たれる斬撃。
その一撃は、マシュの攻撃を防いでいたメイヴにダメージを与える。
「やっぱりか」
「おう、大将、何がやっぱりなんだ?」
「うん、この世界はおそらく魔法少女を中心に回ってる。たぶん魔法少女は魔法少女でしか倒せないんだと思う」
「なるほど、つまり我々は魔法少女らしくなってはいますが、魔法少女でないから攻撃が利かなかったと。さすがですマスター慧眼です」
「うん、ありがとうベディ」
そうなると、問題はここで戦うにはどうにかしてこちらも魔法少女にならなければならないということだ。
「動きが鈍りましたよー!」
「うん、任せて! 最大収束……っ――
このまま彼女だけに戦わせるわけにはいかない。押しているようだが、彼女一人ではいずれ限界が来るはず。彼女の一撃からクー・フーリンオルタに庇われたメイヴは撤退していく。
今回はどうにかなったが、今後はどうなるかはわからない。それに――。
「――えっ……!? 転身が解けちゃった!? なにするのルビー!? これじゃ、あのひとを追い掛けられないよ!」
何やら彼女の方にも問題があるらしい。
「うん、とりあえずお互いに自己紹介してから今後のことについて話そう――」
「わかりました。イリヤスフィール・フォン・アインツベルンです。穂群原学園小等部の五年生です。そ、それで、その……ま、魔法少女……やってます……やらされてます……はうぅ、自分で名乗るの大変に恥ずかしい。あのルビーを見つけてくれて、敵からも守ってくださって、本当にありがとうございました」
小学五年生なのに実にしっかりしているいい子だ。
「マシュ・キリエライトです。よければマシュと呼んでください、アインツベルンさん」
「わぁ、じゃあわたしもイリヤで! 友だちはみんなそう呼んでくれるから! それと、あの、こちらのデフォルメされちゃってるお兄さんは……?」
「はい、こちらはわたしのマスターにしてカルデア一番のマスターです」
「よろしく。なんかデフォルメされてるけど、本来はマシュと同じ人間だから」
とりあえず本物の魔法少女に出会えて号泣しております。まさか、こんなファンタジーな存在に出会えることができるとは。
サーヴァントも十分ファンタジーだけど、こう柔らかくて、優しくて、何の危険もなさそうな、普通の女の子に会えたことに感動です。
どうにも、いつもちょっと人を越えた存在と付き合っていると、カルデア職員のお姉さんとか、こういう小さな女の子との出会いが、新鮮で仕方ないというか。
ともかく、なんだろう、うん。
「泣いてるー!? えっ、どういう涙なのかなこれっ!?」
「イリヤさんの
「えぇ……。えっと、そちらの着物のお姉さんは?」
「清姫と申します。よろしくお願いしますイリヤさん」
「坂田金時だ。あんたの戦いゴールデンだったぜ」
「清姫さん……すっごく、おしとやかでお姫様っぽい。坂田金時……? って、ええ、あの金太郎!? すごい、絵本の人だ!」
「ふっふっふ、ならばわしはもっと驚くじゃろうな。聞いて驚くがよいぞ少女よ。第六天魔王織田信長じゃ!」
「あ、私アルトリア・ペンドラゴンです、えっと、アーサー王ですが、まだ未熟なのでセイバー・リリィと呼んでください」
「その騎士ベディヴィエールと申しますレディ」
「えええ!? 織田信長って、男じゃないの!? 女の子なのー!? あ、アーサー王さんは女の人っだってのは見たことあるからわかります」
「最近流行りですからね、偉人を女の子にしちゃうのってー。織田信長だけじゃなくて、いろんな人が女の子になってきゃっきゃうふふしてたりしますよー。しかし、アーサー王ですかー、あの時は、たいへんでしたねぇー」
そこにまた沖田さんもいるもんだから、さらに驚きは倍。
それにしても彼女たちはアーサー王と戦ったことがあるのだとか。黒化英霊として暴れていたのを倒したとか。すごいな、魔法少女は英霊を倒せるのかと感心したが、まあ、そう簡単には行かないらしいのだが。
「でもよかったぁ。また知らない場所にひとりだったらどうしようかと」
「それにしてはなんか慣れてない?」
「イリヤさんは違う世界に迷子になる天才ですからね! もはや慣れっこなのです」
「違うからねー!?」
「楽しそうなところ悪いけど、状況を確認させてもらうよ」
「あ、はい」
まずイリヤたちは、現実世界から、隣接する鏡界面へと移動しようとした際に原因不明のトラブルがあり、美遊・エーデルフェルトというもう一人の魔法少女が巻き込まれてしまい、この異世界にやってきた。
その直後に、美遊という少女は魔法生物に連れ去られ、そこに魔法少女を名乗る女王メイヴが現れ、問答無用の襲撃を受けたということらしい。
彼女たちもこの世界に来たばかりで、この世界のことは何一つわかっていないということ。確実なのは、彼女たちはオレたちとは異なる平行世界から来たらしいということ。
「そうだ。マシュさんたちの地球ってどんな世界なんですか?」
この質問が来た時は、どう答えたもんかとひやひやした。なにせ、世界が焼却されてますなんて、そんなことこんな少女に伝えるわけにはいかないだろう。
「それにしても、マシュさんは珍しいクラスの英霊を
「いえ、わたしは――」
それにこの夢幻召喚なるものの存在を知れたのはある意味大きいかもしれない。ダ・ヴィンチちゃんに理論を構築してもらえれば、もしかしたらオレも戦えるようになる可能性があるのだ。
クラスカードなる英霊の力の宿ったカードを自らにインストールすることで英霊の力を行使する。もしそれが出来たのなら――。
「そう、それ!」
「――っと、なにどうかした?」
「それなの! さっき気が付いたんですけど! わたし、クラスカードが夢幻召喚できなくなってるよ~、ルビー! どうしよう? これじゃあミユだって」
「出来ていたことができない――それはやっぱりこの世界の法則に関係があるのかもしれないね」
しかし――。
「デミ・サーヴァントって魔法少女に少し似てるね?」
「何を言っているんですか、マスター」
「……ごめんなさい……」
「おーい、そろそろ僕のことも紹介してくれるとありがたいんだけどー」
「わっ、立体映像!?」
「警戒しなくても大丈夫です。彼はドクター・ロマン。カルデアに所属する医師で、わたしたちをサポートしてくださる頼もしい味方です」
「珍しく素敵なご紹介ありがとう。僕はロマニ・アーキマン。よろしくイリヤスフィール・フォン・アインツベルン」
何やら含みがあるような言い方だな?
「ともかくようやく状況が一つわかった。キミたちは、何者かの固有結界の中にいる」
ただ、続く彼の言葉はこの世界に黒幕がいることを示していた――。
てなわけでプリヤ編じゃ。
実はわし、プリヤ? 百合じゃろとかで読んでなくてな、ドライからfateやんって読み始めた阿呆です。
なおアニメは背中で語る幼女から見始めた。
原作買わんとなぁ。金ないけど!
QPもない。スキル石もない。
7章を配布鯖縛り&倒れた鯖は使わない&小説でも脱落という企画をやるために育成したいのに出来ない悲しみ。
誰か種火、スキル石、QPください。