Fate/Last Master   作:三代目盲打ちテイク

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カルデアサマーメモリー ~癒やしのホワイトビーチ~ 5

「よし、水路は石にして、お風呂はローマ式にしよう」

 

 そろえた方が雰囲気でるしね。

 

「良い決断だトナカイ!」

「うんうん、本当、癪だけどお風呂に関したらローマは優れてるもんね」

 

 そういうわけで、みんなで早速作業に取り掛かる。

 

「任せてくれた手前、お風呂のデザインはこのダ・ヴィンチちゃんの最高傑作にしてみせよう。なに安心したまえよ、マスター、キミの願いは今夜叶うとも、期待は裏切らないとも」

 

 という非常に心配なお言葉をいただきながら設計はダ・ヴィンチちゃんに任せ、こちらは石材の採掘へと向かう。岩山の方まで遠出して、

 

「では、行きます。えっとぉ、弱めのカリバーン!」

 

 リリィのカリバーンやら、

 

「聖夜に沈め!」

 

 サンタさんのモルガンやら、

 

剣を摂れ(スイッチオン)!」

 

 ベディヴィエールのアガートラムやらでサクサクと採掘と加工を両立させて、金時のベアー号に台車をいろいろとくっつけてあとはモンスターエンジンに任せて運搬する。

 運ばれてきたそれを設計図に合わせて並べていき、スカサハ師匠のルーンで補強やらを行う。現場指揮は、オレ、ジキル博士、ジェロニモでそれぞれ採掘、運搬、建築を担当。

 

 過去最高の速度で水路と風呂が完成しつつあった。それもこれも女性陣の気合いの入り方がすごいからだ。やっぱりみんなお風呂に入りたかったのだろうと思う。

 あとダビデ。凄まじい気合でその神の加護より与えられた身体能力を発揮して石材を瞬く間に組み上げていった。

 

 時々、こっちを見てサムズアップしてくるのはきっといろいろ仕組んでいるからだろう。本来なら、注意するところだが、残念ながら、本当に残念ながら、建築の指揮で忙しくて注意する暇がなかった。

 本当に残念だ。

 

「先輩は、どうしてそこでそんなに悔しそうな顔をしてるのでしょう?」

「んえ!? な、なんでもないよマシュ」

「それよりも水路が出来たので水を流すとジェロニモさんから精霊通信がありました。流してもよろしいでしょうか?」

「うん、こっちもできたし、いいって伝えて?」

「わかりました」

 

 水門が開いて水が流れ込んでくる。それを一端溜めてからルーンを刻んだ特製の釜で熱して湯船に流す。

 

「おおー」

 

 水源は高地なので、勢いよく流れ込み、瞬く間の間にあふれてくる。そこらへんの調節のためにいくつかのため池と水門を作っているので、そこで調節して完成。

 

「よし、さっそく入ろうか!」

「んじゃ。オレらはまだ仕事があるから、マスター入ってろよ」

「ん? まだ何かあったっけ?」

 

 クー・フーリンたちはダビデを引きずっていきながらどこかへ向かって行く。そういえば、毎日男衆は結構どこかへ行っているような? 何してるんだろう?

 まあいいや、とりあえずお風呂だお風呂。脱衣所で脱いで湯船へ。久しぶりに浴びる熱い湯気を体全体に浴びる。もはやそれだけで気持ちがいいほど。

 

「まずは体を洗ってから――」

 

 湯船にさっさとつかりたい気分を抑えてさっさと体を洗って、湯船につかる。

 

「ふぁ……いい、湯だ」

 

 やっぱりいい。湯船につかってのお風呂はやっぱりいい。グランドオーダー中は野宿とかで水浴びだけとかそれも出来ないことが多いからなおさらだ。

 

「喜んでもらえて良かったよ提案した甲斐があった」

「うん、まあね――って、うわ、ブーディカさん!?」

「あはは、そんなに驚かなくてもいいじゃない?」

「なぜに!?」

 

 いや、うんわかってるけど、ここは驚いておいた方がいいかなと。湯船に感動しすぎて気が付かなかったけどいつの間にやらみんな入ってきている。

 エリちゃんは、オレがいることに驚いてすっころんでいた。痛そう、頭の上で星がぐるぐるしてるよ。そのおかげで隠すものが落ちてる。

 おおう、これは――。

 

「おいおい、大丈夫か。完全に目回してるな、仕方ない」

 

 式が拾い上げてエリちゃんを救護室にでも連れていくのだろう。それっぽいところが設計にあったので。

 

「うむ、こういうのも良いものよな」

 

 スカサハ師匠は隠す気ZEROだ。もうエロいとかそういうレベルじゃなくて男らしすぎる。でもガン見しちゃうのは仕方のないことだよね!

 

「うむ、良いものよ。蒸し風呂も良いが、この手のもやはり良い。温泉を思い出すわ」

 

 ノッブはどこから持ってきたのか徳利から酒をいれて髑髏型の杯にいれてあおっている。あれ、ノッブって下戸じゃなかったけ?

 

「おお、マスターも飲むか? 特別に酌をしてやろうぞ、ほうれほうれ」

「いや、でもお酒は」

「酒ではないわ、ただの水じゃ。わしそれほど強くないのでな」

「なるほど。それならまあ、っとと」

「それ一気にな」

 

 髑髏型の杯についでもらって、飲む。

 

「ん、おいしい」

「じゃろう?」

 

 そうやってまたちびちびと水を飲んで行っている。

 

「うわぁ、すごいですねーとても気持ちいいです」

「はい、そうですね」

 

 マシュもリリィも気持ちよさそうに両手を伸ばしている。うむ――。うむ……。

 そこにやってくるダ・ヴィンチちゃん。

 

「どうだい、愉しんでいるかい? 混浴なのはローマ式だからね、言ったろう? 期待は裏切らないと」

「ダ・ヴィンチちゃんは当たり前のように入ってるけど、オレと同じなのでは?」

「はは、気にするだけ野暮ってもんさ。しかし、ウチの男連中はアレだねぇ、気が利くねぇ」

 

 オレに気を利かせてくれたのもあるだろうけど、たぶん一番はいろいろと我慢するためじゃないかなと。英雄だけあって、その手の話は多いし。

 それを言うとなるほどとダ・ヴィンチちゃん。

 

「まあ、せいぜい味わいたまえ、この極楽、それほどできる体験じゃないからね」

 

 そう言って離れていくダ・ヴィンチちゃん、それだけ言いに来たのか。

 

「ブーディカさん的には、ダ・ヴィンチちゃんってアリなの」

「んー? どうかな。でもまあ、そういうこともあるじゃないってことで」

 

 どちらにせよ明言するのは難しいというもの。

 

「それにしても気持ちいいな」

「本当、ローマ式ってのがアレだけどね。本当……」

「それならなんで提案してくれたの?」

「……マスターに、しっかりと休んでもらいたい、からね」

「…………」

 

 ちょっと顔を朱くしてはにかみながらそういうのは卑怯だと思います。

 

「楽しんでいるかトナカイ」

「サンタさん、まあ、ね」

 

 色々と目に毒(目の保養)だけど、まあ、心のダビデが開き直れば楽さとか言ってきたおかげで、まあ何とか。あと湯気が濃いおかげでまともに見えないのもあって良い。

 

「ならばいい。貴様は、無茶ばかりだからな」

「サンタさんの無茶ぶりよりはマシだと思いたいんだけど」

「ははは。でも、うん、マスターは無茶しすぎだと思うなぁー。それで? マシュにはきちんと言えたのかな? その味覚のこととか」

「……やっぱり気が付いていたんですか」

「当然だ、トナカイ。貴様ほど隠し事が下手なマスターはいない」

 

 これでも十分隠しているつもりだったんですがね。

 

「まあ、言えました。今度からは、ちゃんと言います」

「そっか、ならお姉さんからいうことはないかな」

「フン――」

 

 で、それはいいんですが――なぜお二人はそんなにオレにくっついてきているのでしょうか。肩が触れ合ってるのですが。

 というか、そのいろいろと当たっているのですが――。

 

「ん、ご褒美かなー、いつも頑張ってるマスターに。ちょっと恥ずかしいから顔はあまり見ないでほしいけど。それと、旦那には内緒ね」

「フン、褒美だ。いつも働いているな」

「そうだ、背中流してあげるよ」

「ブーディカ様、是非、それは是非わたくしに! いいえ、お背中だけでなく、それはもういろんなところもわたくしが!」

 

 ――お、おう……。

 

 なんというか、良い気分だなぁ。

 

 とりあえずそう思うことにして、色々と話を聞きつけてきたみんなにされるがままになりながら、満喫した。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 その夜、もう一度、オレは入りに来ていた。

 

「おーう、マスターはもう一回か?」

 

 今度は男衆が入っている。

 

「まあね。やっぱり、裸の付き合いって大事だと思うわけで」

 

 そういうわけで男衆ともいろいろと話してみようということで。

 

「嬉しいこというじゃないかマスター。で、どうだったんだい? できれば情景描写を詳しく聞かせてほしいところだ」

「ダビデ、最高だったよ」

「ぐおお、ズルい! 僕だって行きたかった!」

「テメエは行ってあのキレイどころ相手に我慢できるのかよ」

「無理!」

「ならやめとけって」

 

 さすがにカルデア内でそんなことになって、今後に支障をきたすのは問題だ。

 

「なんだい、クー・フーリンはアレだろ、ヤってもいい相手がいるからいえるんだい」

「ちょ、その話いまするか!?」

「おう、何の話だ、オレっちにも混ぜろよ」

「体の大きなちびっこには早い話だよ。男と女のくんずほぐれつってやつ」

「…………」

 

 超速で離れていったぞ金時。それか何か思い出したのか。

 

「うむ、湯につかるというのはなかなか良いものだな」

「ジェロニモはあまりそういう文化ないんだっけ」

「うむ。しかし、虜になるというのもわかるものだな――」

 

 くつろぐジェロニモ。

 

「それは良かった。衛生的にも湯船につかることはいいことだからね。これによって多くの病が予防できるんだ。すごいよね、ローマ人はそれを知っていたってことになるんだから」

「でも、ローマ以降は結構お風呂すたれるんだっけ」

「はい。確か宗教がらみや疫病などで水を媒介に広まるというお話によって中世以降すたれていきました」

 

 時代が進んだのに文化が後退することもある。改めて、いろいろと考えてみると人類史っていうのはやっぱり面白いと思う。

 それだけに救わなければという気持ちも大きくなる。

 

「頑張らないとな」

 

 人類史を救って、マシュの問題も解決する。

 

「ま、大変だが、やりがいのある仕事だ」

 

 男衆でいろいろと女の子とやら生前のことなんかをゆったりと話した。新しい発見はなかったけれど、とても楽しい時間になったのは言うまでもない。

 それもこれもお風呂のおかげといえるのかもしれない。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

「ふぅ……いい湯だった」

 

 上がって拠点の食卓に用意されている食事を食べる。つられてきた魚に採取された果実。かまどを使った様々な料理が並んでいる。

 そして、なぜか並んでいる牛乳瓶。

 

「お風呂の後はこれだろう?」

 

 というダ・ヴィンチちゃんの計らいでドクターに送ってもらったらしい。

 

「ぷはー」

 

 腰に手を当てて一気に飲み干す。

 

「よ、大将、良い飲みっぷりだな、オレっちも――ぷはああ! ゴールデンだぜぇ」

 

 やっぱり風呂上りは牛乳に限る。

 

「まあ、皆さまったら。ささ、お食事の準備はできておりますので、冷めないうちにいただいてしまいましょう」

「いただきまーす」

 

 んー、美味しい。最近は治療のおかげか、ずいぶんと味が戻ってきて結構味がわかるようになった。このシチューはブーディカさんのかな?

 

「そうだよー。ちょっと味は濃いめなの。濃いめなら味がよりわかると思ってね」

 

 そういう気遣いが本当にありがたい。おいしく食べられる。

 

「うむ、そうじゃ、皆で食べながらじゃが次の開拓じゃがどうする?」

「小屋に、炊事場に井戸に、水路にお風呂。結構作りましたね」

「それならオレから提案いいか?」

 

 クー・フーリンの提案か。

 

「いいよ、なに?」

「畑を作るのはどうだ?」

「良いですね。お野菜を育てれば、さらにもっとおいしい料理が作れますし」

 

 食料はほとんど狩りや採集で賄っている。米とかは定期的にドクターが送ってくれているが、それ以外はほとんど狩りだ。

 確かにここらで定期的にとれる作物ができるのはいいかもしれない。休暇で無人島生活というのもアレだけど、いろいろとやるのはいい経験になるだろうし、何かレイシフト先出会った時の予行練習にもなる。

 

「なら畑を作ろうか。でも収穫まで時間がかからない?」

「そこはダ・ヴィンチちゃんの特性肥料と、ルーンでどうにかしてみせよう。なので、育てるものを決めてくれたたまえ」

 

 本当便利だなぁ、ダ・ヴィンチちゃんとスカサハ師匠。

 

「じゃあ、何を育てようか。とりあえず野菜と穀物がいいかな。慣れてからがいいかもしれないけど、そんなに長くこの島にいるわけじゃないし」

「だったら、オレからはキャベツだな」

 

 すごいクー・フーリンに似合うな、キャベツ育ててるのが。なんでだろう。

 

「ならば、私はトマトと、穀物ならトウモロコシをあげよう」

 

 ジェロニモはトマトとトウモロコシか、どちらもアメリカから伝わってきたものだっけ。

 

「子イヌ、子イヌ! やっぱりかぼちゃよ! 育てるならかぼちゃにしましょ!」

 

 エリちゃんはかぼちゃか。ハロウィンの時のかぼちゃ料理はキャットがつくってたからおいしかったなぁ。

 

「わしは米じゃ。やはり米よ! 戦に勝つには米。何事をおいても米じゃ!」

「いいえ、マスター、やはりここは麦を! 収穫の時期になるととてもきれいですよ」

 

 ノッブが米で、リリィが麦。

 

「先輩はどれがいいですか?」

「そうだな――」

 

 




コメント欄のローマ率よ……。

さて、水路は石、風呂はローマでした。
というわけで混浴と思ったか、マスターのハーレムじゃ。
そして、後半は男どもじゃ。

それから畑。
野菜畑が、キャベツ、トマト、かぼちゃ
穀物畑が米、麦、トウモロコシ。

新しいアンケート板を作るのでそれぞれそちらにコメントしてください。

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