Fate/Last Master   作:三代目盲打ちテイク

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カルデアサマーメモリー ~癒やしのホワイトビーチ~ 3

「それじゃあ、ポンプにしようか。衛生面はルーンでどうにかできるんでしょ?」

「任されよ」

「なんだ、ポンプにすんのか」

「式さん、ご提案されたのに乗り気じゃないのですか?」

 

 マシュも驚いているが、オレも驚いている。提案した本人があまり乗り気じゃないのはどういうことなのだろうか。

 

「そりゃな。そこのキャスターの師匠が言ったルーンでも刻んだ方が楽だろ。無理してオレの提案なんて採用しなくていいんだぜ」

 

 いや、どこまでいい人なんでしょうかこの人。

 

「なんで? だって式が提案してくれたんだよ? それなら頑張らないと」

 

 せっかくの式の提案なのだ。いつも世話になっている分、恩返しはしないと。本当、いつも世話になっているのだ。

 強敵との闘いだったりしたときは彼女の能力が本当に助けになっている。それだけじゃなくあの「両儀式」だってそう。

 

 だから、式の提案だったし、ちょうどよく中間の便利さということで、採用した。

 

「なんだそれ。オマエもアレか。ったく、あいつと似たようなこと言いやがって。まあ、オマエが決めたなら早速作るとするか。そういうわけだ。悪いな」

「いいえ、私としても確かに簡単すぎたと思っています。確かに手押しポンプというものの方が使いやすく楽でしょう。何よりレディたちも簡単に水が汲めるというのであれば是非もありません」

「まあ、さすがに何もかもルーンに頼るのはアレだな。うん。さすがに私も調子に乗りすぎていたようだ。ではダ・ヴィンチちゃんと協力して手押しポンプの方は製作するとしよう」

 

 井戸は手押しポンプ。ダ・ヴィンチちゃんとスカサハ師匠が共同で鉄を加工していく。本当、この二人がそろうと不可能はないんじゃないのだろうかとすら思うほどだ。

 あれよあれよという間に手押しポンプが出来上がっていくのはまるで魔術のよう。というか、魔術だったな。思えば、遠くに来てしまったものだと思うのも余裕ができたからだろうか。

 

 兎も角、ダ・ヴィンチちゃんが言っていた水源があるから井戸用の穴を掘らなければ。

 

「よーし、頑張って掘ろう」

「マスターは最初だ。全員で交代しながらだが結構深くなる。身体能力に自信のあるサーヴァントは後半が良いだろう」

「うん、わかったジェロニモ」

 

 ダ・ヴィンチちゃんが用意した容易にほれーるスコップ。塹壕戦においてこれ以上ない最強武装スコップを手に、しるしをつけられた部分を掘っていく。

 ダ・ヴィンチちゃん謹製のおかげかするすると掘れていく。

 

「そういえば掘った土はどうする?」

「ダ・ヴィンチちゃんが何かに再利用するって言っていたから、集めておいてほしいって」

 

 博士がそういうが、

 

「ダ・ヴィンチちゃんが何かに再利用……」

 

 何に使う気なのか甚だ怖いというかなんというか。ともかく集めるということは了解だ。

 

「じゃあ、その辺にもっておくか」

 

 場所だけあけてそこに置いておく係とか作って掘り進めていく。炎天下の作業だから、水着と言えど汗が出る。

 

「先輩、お水をどうぞ。こまめな水分補給と休息を」

「ありがとうマシュ」

 

 よく冷えた水が美味しい。

 

 ――ん?

 

 ふとそこで、美味しいと思えたことに気が付いた。とてつもなく薄い感覚であるが、味覚が戻ってきていることに今、気が付いた――。

 

 ――ありがたいな……また、味が感じられるのか……

 

「先輩? どうかなさいました? 何か変な味でも? ――っ! ダメです、先輩すぐに吐き出してください!」

「ああ、いや大丈夫大丈夫。疲れたみたいだから、交代してもらってもいいかな」

「はい、マシュ・キリエライト、先輩に代わり穴掘り任務を継続します!」

 

 誤魔化すために言ったのだが、よくよく考えるともう腕がパンパンだ。腰も痛いし、そろそろ交代の頃合いだった。これは、明日は筋肉痛かもしれない。

 割と運動とかトレーニングはしているけれど、こう作業となると使う筋肉が違って普段以上に筋力を使って筋肉痛になる。

 

 あとでマッサージの必要があるな。ジキル博士とかにしてもらうか。マシュのは気持ちいいんだけど、ちょっと大胆すぎるというか、なんというかまったく落ち着かないのだ。

 馬乗りはやめてほしい。正直嬉しいが、マッサージどころではなくなる。

 

「ふぅ……」

 

 休んでいると式がやってきた。

 

「そうだ式、聞いていい?」

「なんだ、藪から棒に」

「気になることがあってさ」

「まあ、好きにしろ。答えられることなら答えてやる」

「ありがとう。――式がさ、いつもいうアイツって誰なの?」

 

 彼女の提案で行くことを決めた時も言っていたし、時々式の口から出るアイツという言葉。誰なのか気になったので聞いてみようと思ったのだ。

 

「お前、すごいこと聞いてくるんだな。そういうのって、だいたい聞くようなことじゃないだろ」

「聞いちゃまずかった?」

「いや、そういうわけじゃない。ただ、まあ、よくそうずけずけと物を聞けるなって思ってな」

 

 おまえのコミュ力どうなってんだって呆れられた。そうだろうか? なんというか、もういろいろと必死でそんなにすごいことやってるとか全然わからない。

 みんなのことを知らないと死ぬかもしれないから必死になってコミュニケーションをする。敵だろうともどんな相手だろうとも、話さなければ戦いになる。

 

 それで誰かが死ぬのは嫌だから、頑張って話をして相手の内心を知って、目的を知って、行動を先読みする指針にする。

 そういうこともあるから結構必死なのだ。だから、あまり意識していなかったけど――。

 

 ――オレ、結構ヤバイことしてる?

 

 確かにオジマンディアスを仲間にしようとしたらり、いろいろとやっているよなぁ。今更ながら結構無茶苦茶だし式がこういうのも納得だ。

 

「ま、そいつがオマエのいいところなんだろうぜ。――で、なんだっけ、アイツの話か。あんま面白い話でもないんだが――」

 

 アイツ。式が言うあいつというのは黒桐幹也という男性らしい。

 

「アイツはまあ、オマエの同類だな」

「同類って」

「ああ、同類だぜ? 天然で、毒が無くて、明け透けにモノを言って、そのくせ芯が強い」

「式にとって大切な人なんだ」

 

 なんとなくわかる。そっけなくしてるつもりでもなんとなく、彼のことを大事に思っているのだなということがわかる。

 

「他人に説教するくせに、自分のことは棚上げとかな」

「…………」

 

 確かに、そりゃ同類と言われても仕方ないか。

 

「まあ、オマエはあいつほど鈍感でもないから、そこは違うな」

「へぇ」

「ま、アイツに関してはもう良いだろ」

「もう少し聞いてみたいけどね」

「ブーディカさん?」

 

 作業を交代してきたのだろう。汗で上気した頬は朱に染まっており、タオルで汗を拭っている。身体に流れる汗がなんというかすさまじいエロスを醸し出していてすごいヤバイ。

 

「なんだ、オマエも聞きたいのか?」

「だって、式とはあまり話す機会もないからねぇ。そういう好きな男の子の話とかしてみたいじゃない? たぶん、あんたの旦那なんでしょう?」

「……」

「沈黙は肯定。でも、良い旦那さんだってのはわかるかな」

「そりゃどうも。コクトーのやつも嬉しがるだろうぜ」

「そっか、式結婚してたんだっけ。それなら早く元の場所に戻りたいんじゃない?」

「そりゃ一刻も早く元の居場所に戻りたいけど、カルデアでの暮らしもちょっとだけ悪くない。なによりおまえ、放っておけないしな」

 

 つまり式が帰れないのはオレのせいと……?

 

「ごめん……」

「そういう意味で言ったんじゃない。今のオマエ見てると捨てられた猫みたいだぞ。そんなの見捨ててみろ目覚めが悪くてしょうがない」

「ふふ。そうだよね。マスターは本当、見捨てられないよね」

「ブーディカさんまで……オレそんなに頼りない?」

 

 確かに弱いし、迷惑ばっかかけてるけどさ。

 

「それもまた人徳ってやつじゃな」

「ノッブ」

 

 どうして裸マントなのに重要な部分は絶対に見えないんだ。

 

「頼りないから見捨てられないんじゃなくて、キミが頼りなくても前を向いて、頑張ってるから見捨てられないの」

「それに、袖擦り合うのも何とやらだ。おまえが元の生活に戻れる日まで、護衛役として付き合ってやるさ」

「頼りにしてるよ」

 

 その後井戸は完成し、手押しポンプによって安定的に水が供給されるようになった。

 昼食後は島を探検することにする。まだ浜辺付近しか見て回っていないし、何かしらお宝とかあるかもと期待している。

 スカサハ師匠もなんとなくあるらしいとか言っていたので行くことに。それに新しい食料などを見つけに行くのも並行して行えるということで探検に出る。

 

「それじゃあ行こうか」

 

 ついてきたメンツはマシュ、清姫、エリちゃん、護衛としてクー・フーリンだ。

 

「結構、森が深いですね、先輩」

「そうだね。日差しは暑いけど森の中も結構蒸し暑いな」

「そりゃな、こんだけ熱帯で植物が密集してると風も通りにくいからな」

 

 そう言いながらナタで邪魔な木々を切り払いながら先導するクー・フーリンは最高に頼れる男だと思う。この背中にならついて行ってもいい。そう思えるのはきっと男が男に惚れる瞬間という奴だろう。

 本当頼りになるよ。サバイバルの知識もあるし、オレとマシュ、清姫、エリちゃんなんかはサバイバルの知識はそれほど持っていないから何が食べられるのかわからない。

 

「マスター! きれいなキノコを見つけたわ、食べられるかしら!」

「どう見ても毒です捨ててきなさい」

 

 色鮮やかすぎて確実に毒があると言っているようなものだ。クー・フーリンに確認したら案の定であるし。

 

「すみません、先輩、わたしの方は何も見つけられず……。そこを散歩していたフォウさんくらいしか……」

「……。……。……? フォ、フォウ――!?」

 

 何かを悟ったように急に暴れ始めたけど、まあ、そんなことはないので安心してほしいフォウさん。

 

「あ、ち、ちがいますよフォウさん! フォウさんを連れて来たのは手慰みというか、賑やかしというか!」

 

 何か持っているという実感がほしかったのだろう。なにも見つけられなかったみたいだし。

 

「まあ、エリザベートの嬢ちゃんよりはましだろうぜ」

「また毒なのー!? なんでよー!?」

 

 なにせかごをいっぱいにして戻ってきたはいいが、ほとんど毒物だったのだ。食べられない植物、食べられないきのこ、食べられない動物の肉だったり。

 よくもまあ、そこまで毒物を集められるものだと感心する。

 

「だって、綺麗だったんだもの……」

「綺麗なのや色鮮やかなものは毒があるから気ぃつけろって言ったろうに」

「…………い、言ってたっけ……?」

 

 ――エリちゃん……

 

「清姫は?」

「わたくしはあまり。やはり植生が違うと何が食べられるかわかりません」

「ま、難しいよな。とりあえずもうちょい行けば川がある、そこで釣りでもしてみるか」

「道具は?」

「オレが用意してやるよ」

 

 ――キャー、クー・フーリンかっこいい!!

 

「イケメン死ね」

「なんだそりゃマスター。テメエも十分、男前だろうが。そんなこと言っている前に、女どもが驚くような釣果あげてやるって意気込んどきな」

 

 くそう、イケメンすぎて辛い。

 

 やってきたのは滝のある川だった。なんとも秘境という感じがして実にいい場所だ。川を覗けば魚が多い。中には見たこともないような大物もいて釣り甲斐がありそうだ。

 

「先輩は釣りの経験が?」

「んー、昔少しくらいはって感じかな」

 

 クー・フーリンが用意した竿の準備をしながらマシュにこたえる。餌はその辺にいたミミズとかにょろにょろしたものである。

 

「初心者には在ったほうがいいだろ」

「…………」

「自分でつけられる、マシュ?」

「……。い、いいえ、お気持ちはありがたいのですが! これぐらいはわたし一人でなんとかできますので。先輩の足は引っ張りません!」

「では、わたくしのはつけてくださいますかますたぁ」

「ん、いいよ――はい」

「ありがとうございます」

(アタシ)のもつけて!」

「はいはい。そんな怯えなくても大丈夫だから」

「…………」

「マシュ?」

「い、いえ!」

 

 慌ててにょろにょろと針に向き直り、餌をつけようと悪戦苦闘するマシュ。怪我をしないか心配だったが――

 

「……! できました! できました先輩!」

「えらいっ。なでてあげよう……」

 

 なでなでとマシュの頭を撫でてあげる。撫でたかったから撫でただけである。マシュの髪は気持ちがいい。ショートヘアだけどサラサラしているし。伸ばしたらどうなるのかとても気になる。

 

「…………」

「あ、あの、そのこれは、当たり前のことで……わたしが物知らずなだけだったので、その……」

「ますたぁ……その」

「撫でてほしい?」

「はい!」

「はいはい」

 

 うん、清姫の髪も気持ちいよね。撫でてあげる。これも夏だからということでひとつどうだろう。

 

「おや、マスターも釣りかい?」

「奇遇ですね」

 

 そんなことをしているとダビデとベディヴィエールがやってきた。

 

「探検ついでにね。二人も?」

「まあね、僕は羊飼いだけど、釣りもそれなりに好きさ。もっと好きなのは人妻をひっかけることだけど」

「私も旅は長かったもので。今日は単純にしたくなったから来たのですが、お邪魔でしたか?」

「まさか、みんなで釣り大会だ」

「なら、景品でも賭けるか。一番でかい魚を釣ったやつが、一番小さい奴に一つだけ命令できるとか」

「お、いいね。やろうやろう」

 

 景品とかある方が楽しい、というわけで釣り大会開始。みんなでゆっくりと糸を水面に垂らして、のんびりとした時間を過ごした。

 虫の鳴く声に川のせせらぎに耳を傾けてゆっくりとした時間を過ごしていった――。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 夕方になり、拠点に戻る。

 

「いやー、まさか嬢ちゃんが勝つとはね」

 

 釣り大会の優勝はマシュだった。

 

「いえ、あのまぐれですし、先輩が助けてくれたおかげですし」

 

 経験者が釣れないこともあれば、初心者が大物を釣り上げることもある。それが釣りの面白いところだろう。

 

「ま、そういうわけで、一番小さかったのはマスターだな」

「はは。今回は振るわなかったなぁ」

 

 ま、マシュの命令ならそんなひどいことにはならないだろうし、大丈夫だろう。

 

「じゃあ、マシュ何か考えておいて」

「は、はい。でもいいのでしょうか、わたし如きが、先輩に命令しても」

「いいのいいの、優勝したんだから」

 

 拠点に戻ると夕ご飯の準備中だった。

 

「あ、マスターお帰り。と大量だねー」

「主にクー・フーリンとベディヴィエールだけどね。一番大きいのはマシュが釣ったんだよ」

「おお、さすがだね、一番はマシュかすごいすごい」

「あ、ありがとうございますブーディカさん」

「それじゃあ、焼いちゃうけど。その前に提案していい?」

 

 ブーディカさんの提案。開拓案かな?

 

「そう。といっても簡単なものだけど、炊事場を作ろうと思うんだ。このままBBQを続けるだけでは飽きが来るからね」

「なるほど、確かに」

 

 今までの料理は全部焼き物だったけど、色々と食料を見つけてきた今としては焼くだけでは味気ないかもしれないか。

 

「ならばますたぁ、ここはやはりかまどを作るのがよろしいかと」

 

 圧倒的な使いやすさと汎用性もあり、米を炊くのにも適している。確かに清姫のいう通りかまどというのはありかもしれないな。

 日本人としては米を食べたいとも思うし。米はいくらかダ・ヴィンチちゃんが持ってきていたけれど、バーベキューセットしかなくて保存しっぱなしだし。

 

「米か、米は久しぶりに食いたいのう! 日本人じゃし、是非もないよネ!」

「おう大将、ごはんが炊けたらオレっちがゴールデンおにぎりを握ってやるぜ」

「盛り上がってるところ悪いけど、あたしは、大鍋がいいかな」

 

 ブーディカさんがそう提案して来たのは大鍋だった。

 

「みんないっぱい食べてくれるからには、いっぱい食べさせてあげたいから、いっぱい調理できる大鍋があったらいいなって」

「確かに大きいことはいいことだ」

 

 ダビデはなんか違うこと考えているだろ。

 

「私としても賛成だトナカイ。量は大事だ」

「はい、私も、そのサンタさんと同じで、やっぱり量が大事かと。ああ、でもおいしい食事も」

「我が王が大鍋を所望ならばこのベディヴィエール全力で大鍋を支持します」

「それでこそだ我が騎士」

「ありがとうございます、我が王」

 

 当初は倒れてたベディヴィエールもなんだかんだなじんだらしい。

 でも大鍋か。確かに、いっぱい食べる奴らも多いから量は大事だな。

 

「子イヌ子イヌ! (アタシ)はそんなのよりもなんかすごいのがいいわ!」

「なんか、すごいの?」

「そう、この(アタシ)の料理の腕をぞんぶんに発揮できるような、すっごいのいいわ!」

 

 だらだらと脂汗が出てきた。

 

「カルデアにあるようなすっごいのをつくりましょう! (アタシ)の料理をごちそうしてあげるわ!」

「それならシステムキッチンだね。なに、万能の私に任せたまえ、この無人島に唐突にシステムキッチンを作ってあげるとも」

 

 出来れば遠慮したいです。

 

「ともかく、決めるのはマスターだろ? オレらは何の文句も、まあ、言わねえからさくっと決めちまってくれ」

 




アンケートは式のパイプでした。なので、式との絡み。

後半は釣り。ちゃんと男性陣も楽しんでおります。

そして、今回のアンケートは炊事場ということで、

かまど、大鍋、なんかすごいのからお選びください。

なお、それぞれの担当者が出来上がったときに料理をやる予定です。

引き続きアンケート用の活動報告板にコメントください。

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