Fate/Last Master   作:三代目盲打ちテイク

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神聖円卓領域 キャメロット 32

 オジマンディアス王の神殿へと足を踏み入れる、その前にまずは当然の手順として使いを送る。突然の来訪にも応じてくれるかもしれないが、協力を要請するのならば当然の手順。

 なのだが――。

 

「さて、ダ・ヴィンチちゃん。伝令にはなんていったのかな?」

「それはもちろん――これから共同戦線の申し出に行くから首を洗って歓迎したまえ!――さ」

「馬鹿なの?」

「なにぉう、昨日までのママに甘える子供みたいなキミはどこへ行った! 素直な男の子が私は好きだゾ」

「いや、それとこれとは話が別でしょ。それは宣戦布告じゃん」

 

 まあ、それが一番なのはなんとなくわかるが。あのオジマンディアス王がへりくだったところで力を貸すはずもなく、何よりそれくらいの勇士でなければこちらの話には乗ってこない。

 

「――動いた!」

 

 大神殿の扉が開くと同時に守護獣が多数放出される。

 

「はあ。やっぱり話し合いにはならないよねぇ。ランスロット」

「ああ」

「今までいろいろとやってくれたよな」

「……それは、仕方ないとはいえ、私の落ち度」

「なら、それのそそぎ方は?」

「無論、この剣にて」

「ならば、行け。先陣の誉れをやろう」

「御意に――我が主と我が騎士王に勝利を捧げん」

 

 数多の騎士を従えた円卓の騎士が出陣する。ちょっと芝居がかったがまあ、そのくらいの方が良い。なにせ、あの守護獣の強さが嫌なほどわかってしまうし、まあ、なんというかちょっと気合いをいれたかったのだ。

 

「行くぞ。我らの力を示す時だ! 騎士の力は百の兵に匹敵すると証を彼の王に立てよ!!」」

 

 先陣を切り円卓の騎士が駆ける。これが最強の騎士の力であると蹂躙を開始する。それに続く兵もまた一騎当千の(つわもの)であった。

 何より、士気が違う。大義はこちらにあり。騎士王がこちらにいるのだから、ランスロット以下騎士たちの士気はもそれはもう高い。暑苦しいくらいに。

 

 単位にすると1スパルタくらい。レオニダスが100スパルタだけど、1スパルタは某炎の妖精くらいの暑苦しさだ。

 

「さっすが最強の騎士だ。なんというか彼一人でいいんじゃないかな。オジマンディアスの軍勢を一人で食い破ってるよあれ。まあ、こちらはこちらの勝負をしよう。軍隊の勝負はランスロット卿こっちは」

「サーヴァント同士の決戦だ」

 

 大神殿へ突撃する。ランスロット卿が巧いことこちらの道を開けてくれるのでさほど苦も無くオジマンディアス王のところへと行くことができた――。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 謁見の間にはオジマンディアスとニトクリスのみ。こちらを睥睨しながら何事もないかのように会話を繰り広げていた。

 

「フン――戻ってこい、とは言った。いずれ余と戦うことになるとも、確かに言った。だが、ここまで身の程知らずとはな。怒りを通り越して笑えてきたわ。であろう、ニトクリスよ? 手を貸してやった甲斐があるのではないか?」

「私はそんなつもりでは……申し訳ありません、ファラオ・オジマンディアス。二度までも、私の行いが御身の威光を汚すことになろうとは」

「よい。愉快であることは確かだ。失態とは数えぬ。……しかし、獅子王との対決の前に、余の星が陰るとはな。なまじ聖杯など手に入れたがゆえに、余の目もくらんでいたと見える」

 

 誰もかれもが聖杯を求めた。世界と未来の全てが焼却されようと知らされてなお。否。知らされたが故にだ。英霊、英雄とされながらも業が深き者の多いこと。

 そうならぬようにオジマンディアスは聖杯を封じてきた。だが、それが仇になったようだと言っている。

 

「封じたつもりが封じられておったわ。聖杯さえ手元に置いておけば、獅子王も軽率には動かぬだろうなどと、笑わせる」

「いいえ。ファラオ。それは違います。英霊とて欲深い者ですが、貴方は、すくなくとも貴方だけは違いましょう」

「……ふん。栄華を極めたところで欲は消えぬさ」

 

 それからニトクリスに聖杯を譲っても良いという。聖杯を使って真のホルスになるも一興だろうとオジマンディアスは軽く言っている。

 それをニトクリスは否定し、戦場へと赴く。

 

「……さて、余はどうするべきか」

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

「…………」

「三蔵ちゃん?」

「どうした三蔵よ。浮かない顔して。お主ならラクショーとはしゃぐところであろう」

 

 大神殿に突入したはいいが、三蔵ちゃんの表情が芳しくない。

 

「うん。弟子、ちょっと言いたくないこと言うけどいい?」

「なに?」

「ここ聖都と同じ空気がしてる。だから、ここもシェルターになる」

 

 それはつまり、オジマンディアスは獅子王と戦う必要はないのだということ。

 

「いいや、それはない」

「そうです。よくぞ言いました」

「ニトクリス――!」

「約束を違えなかったことまずはそれを褒めたたえましょう。ですが、それは試練と同義です。貴方たちは力を示す必要がある」

 

 唯一にして絶対たるファラオ・オジマンディアスには力なき言葉など届かぬのだ。ゆえに力を示せとニトクリスは己が権能を露わにする。

 

「……行くぞ、マシュ!」

「はい、先輩!」

「……それでこそ。勇者とはそうでなくてはいけません」

 

 現れる亡者。冥界の者ども。今一度冥界の神の化身たるファラオの声により現世に呼び戻されん。

 まずはこの亡者の群れを越えて見せろ。

 

「行くぞ!」

 

 ――早速使わせてもらう。

 

 ダ・ヴィンチちゃんの礼装を使う。確かに負荷は少なく、高い精度の演算が肩代わりされている。

 

「これならば、行けるか――金時!」

「おうよ、大将、行くぜ!!」

 

 黄金疾走――。

 猛る轟音に乗せて雷撃が奔る。

 

 坂田金時がライダーとしての力を振るう。彼のバイクが通ったあとにはもはや何も残りはしない。亡者だろうとなんだろうと全力でひきつぶして雷電が焼き尽くす。

 

「チッ、またこういう奴らかよ」

 

 式の目が煌いて――あとに残るは崩れた砂の山。亡者が切れれば冥界に帰り砂となる。それを為すは直視。バロールの魔眼とも言われし、死を視る魔眼。

 万物あらゆる全てのほつれを解き解し、死へといざなう。ナイフが翻ればそれだけで敵が崩れ去っていく。

 

 刀はまだ渡してはいない。渡すべき時はこの先。なぜならば、彼女ならば神ですら――。

 

「藤太!」

「さてさて、行くぞアーラシュ殿には及ばんが――」

 

 疾走する金時を阻む亡者。上空からも来る怨霊を打ち落とすは強弓一射。放たれる竜殺しの一射。山を砕くとはいかないが、それでも高い威力。

 三蔵ちゃんの有りがたい功徳と合わさって邪霊も何のその。

 

「――観自在菩薩。行深般若波羅蜜多時。照見五蘊皆空。度一切苦厄。舎利子。色不異空。空不異色。色即是空」

 

 唱えられた般若心経。正確には摩訶般若波羅蜜多心経の一部。柏手一つと、唱えることによって生じる御仏パワー、放たれる高僧パンチ、亡者は死ぬ!

 

「御仏パワー見せてあげるんだから!」

 

 ホワタァ! と掛け声一つ放たれる拳打拳打拳打。やる気に満ち溢れた三蔵ちゃんは強い。

 

「行くぞ、マスターの道をこの二振りにて切り開かん――」

 

 掛け声一発、ジェット機のような勢い出で吹っ飛ぶ鎧姿のサンタさん。魔力放出に物言わせた突撃。編み込まれた粛清騎士の鎧はそれだけで凄まじい威力になる上に、見えはしないがその両手で振るわれるどうやって手に入れたのか不明な二振りのエクスカリバーの威力はまた絶大の一言。

 ただ一人で亡者の群れを駆逐する勢い。

 

「がんばれがんばれー」

 

 ダビデは応援していた。

 

「ちゃんとやれ全裸!」

「だから全裸じゃないって! ――そもそも僕としては軍勢相手なんてやりたくないんだよね。うん。僕の宝具そういうの向きじゃないし」

「それでも少しは手伝わないと」

「博士もちまちま相手をしていてもねぇ」

「うむ、ならば我らはサポートをするとしよう――精霊よ、太陽よ。今ひととき、我に力を貸し与えたまえ! その大いなる悪戯を――大地を創りし者(ツァゴ・デジ・ナレヤ)!」

 

 アパッチ族に伝わる巨大なコヨーテが召喚される。

 

「ここは太陽王の神殿ゆえ陽光の一撃は期待できぬが」

 

 守護者であるコヨーテは味方側の力を増幅する。目に見えて殲滅する速度が上がっていく。

 

「さて、エリザベート、お膳立てはしたぞ」

「ふふん。いい感じよ。ちょうどチェイテもなんとかなったし。聞かせてあげるわサーヴァント界最大のヒットナンバーを!」

「はーい、みんな耳栓してー」

鮮血魔嬢(バートリ・エルジェーベト)!」

 

 放たれる最強の音波兵器。相手の固有振動でも見切ればほれこの通り――相手を崩壊にいざなうことも可能。さすがダ・ヴィンチちゃん製の眼鏡高性能だ。

 チェイテアンプの設定をすこーしいじってやればまさに地獄絵図。音の届く範囲全ての亡者が消え失せた。

 

「ふぅ、子イヌ水ちょうだい、水」

「はいはい」

「ん、ありがと。さあ、もう一本」

「いや、大丈夫。今、金時がたどり着いた」

 

 そしてそこまで削れば金時が肉薄する。鬼を殺した男の武技が炸裂する。ファラオニトクリスも善戦しているが。

 

「相性が悪い」

 

 いかにファラオと言えど魔術師のサーヴァントがあの坂田金時を相手にするとかどんな罰ゲームだというくらいだ。

 

「チェックメイトだよ」

 

 そして、引き付けてくれれば背後まで忍び寄った博士の眠り薬が炸裂する!

 

「戦闘終了。女王ニトクリス無力化に成功です」

「よし、ンじゃあ行こう」

「あとで恨まれそうですね」

「まあ、でも殺しちゃうのは目覚めが悪いからね」

 

 何度も助けてもらったのだ。それなのに命を奪っちゃったら恩を仇で返すことになる。それだけは絶対にしたくない。

 

「よーし、じゃあ、亀さん系の縛りにしてっと」

「ダビデやめとけ」

 

 絶対に怒られるからそれ。それは赦してくれないから。

 

「ともかく本丸にいこうじゃないか」

 

 ダ・ヴィンチちゃんのいう通り、遊んでいる暇はないのだから。次はファラオ・オジマンディアスの下へ。

 

「ニトクリスを下したか。良い。褒めて遣わす。して、何用だ異邦のマスターよ。余に首を預けに来たか、あるいは情けを乞いに来たか」

 

 謁見の間では変わらずオジマンディアスはそこにいた。

 

「既に目的は告げているはずだけど?」

「うん? 先ほどの報せだ……? たしか、余とともに戦えだという戯言だったが」

「本気ですが何か」

「なんと! あれは本気であったのか! はは。ははははははははははははははははは!!」

 

 そりゃ呵々の大笑いでしょうよ。

 

「余ともあろうものが真偽を見抜けぬとは! 腹を抱えて笑ったあげく焼き捨てたわ! だが許す、特に許す! これほど笑ったのはどれほどぶりか! 認めよう、異邦のマスターよ! おまえには才能がある」

「才能?」

「あまりにも現実離れした夢を見る才能がな! 空想を知らぬ余にはない才能だ、ふははははは!」

 

 それは良い才能なのか? それにあまり現実離れした夢なんて見ていないとは思うが。何やらよくわからない学園物っぽい夢を見たが、まさか、アレがその才能の片鱗だとでもいうのだろうか。

 いやいや。まさかまさか。

 

「ちょっとそれはシツレイじゃないかしらオジマンディアス王。馬鹿にするのも大概にしなさい。あたしはともかく、あたしの一番弟子は本気なんだから。それに愉快でもないのに笑うのはどうかと思うわ。あなたちっとも愉快だなんて思ってないじゃない」

「――玄奘三蔵か。余に何か意見があるようだな。よい。我が砂漠を横断した偉業に免じて、一度のみ質問を赦そう」

「ありがとうございます。……やっぱりみんなのいう通りのひとね」

「何?」

「あたし、大神殿には入らなかったけど多くのオアシス、多くの神殿にお世話になったわ。そこでこの国の人たちに話を聞きました。冷酷で尊大で、でも合理的に民を守る王の話を」

 

 獅子王とは違う王の在り方。国の人々の生活を一番に考えている。まさしく王としての務めを正しく全うしている。それは素晴らしいことだろう。

 だが――。

 

「あなたはその務めを放棄しようとしている。空想を知らない、といったわね? あなたは獅子王と戦えば共倒れになると読んだ。だから戦わなくなった。その結果、国を閉じる道を選んでしまった。自分からこんな砂漠を、この世界に呼んでおいて!」

 

 三蔵ちゃんははっきりとモノを言う。それは彼女の美徳だ。そして、彼女はこういう時間違えない。それは正しい。まさに正論なのだ。

 

「獅子王に勝てないから自分の国の民たちを神殿に閉じ込めようとしている!」

 

 ゆえに三蔵ちゃんは吼えるのだ。

 

「この矛盾を、いえ、この諦めを捨てる道が提示されたのに、なんで素直にいいよって言えないの!」

 

 ――はは。

 

 いや、あのオジマンディアスにこれだけのものを言えるのはあとにも先にもきっと彼女くらいだろう。痛烈すぎて笑いが来るほどだ。

 

「たわけ、勝算なき戯言に乗ってなんとする! 加えて、獅子王を倒したところで何があろう! 人理焼却により世界は燃え尽きる。であれば、獅子王一人を斃したところで無駄なこと」

 

 ゆえにファラオ・オジマンディアスは己の権限で己の民を救う。

 ほかの何がどうなろうと知ったことではない。

 

 そんなものいいをすれば三蔵ちゃんは。

 

「かっち――――ん! 頭に来たわ。怒髪天をつくのだわ! 獅子王もあなたも、いい加減にしなさい! あなた、なんだか悟空みたいにわがままだわ!」

「悟空――斉天大聖か! 猿ではないか!」

「そう、お猿さんよ! そういえば顔もそっくりだわあなたたち!」

「――――」

 

 おい、誰か三蔵ちゃんを止めろ。いかん笑えて腹がいたい。だが、三蔵ちゃんを止めようとするものは誰もいない。ただ言いたいことを言いたいまでに言い切った。

 それはおそらくオレたち全員が思っていたことだ。

 

「余の民を守るじゃなくて――世界を守る、ぐらい言ったらどうなのよ、ばかー!」

 

 太陽王すらも絶句している。

 なにせ怒れないのだ。何しろ、三蔵ちゃんが言っているのは子供の理屈なのだ。

 

 オジマンディアスはエジプト最強なんだからかっこいいところを見せてほしい。

 最強なんだから、自国の民だけじゃなくて世界も救ってほしい。

 

 そういう荒唐無稽な子供の絵空事の理論。ゆえに、オジマンディアスは怒れないのだ。子供に対して怒れる王などいない。

 所詮は子供の戯言。どれほど正論を衝いていたとしても、どれほど怒り心頭になろうとも子供に本気になって怒ってしまったら王の立場がないのだから。

 

 ゆえに、彼は笑った。

 

「――はは」

 

 大笑いだ。本気の本気の大笑い。

 

「世界を守れ、と来たか! 余に世界を! 浅ましき人の世を! 余が守るのは神々の法! その結果、臣民を庇護しているだけというのにな!」

 

 ゆえに、オジマンディアスは腰を上げた。

 ファラオ・オジマンディアスは優れた王であり暴君だ。ゆえにそれは世界の敵たる者である。それすらも三蔵ちゃんが偶然じゃない? とかいうものだから、もうまったくもって、もう。

 

「ならば、貴様らが世界を救うに足るか否か――その証明をしてもらおう」

 

 聖杯を取り出し、血を杯に注ぎ、それを飲み干した。

 

 現れるは、魔神アモンなる偽の神。その真なる名――アモン・ラー。

 

 魔神柱が、いや、大神がここに降臨した――。

 

 




さあ、大神戦だ。私これミスって令呪つかわされたんですよねぇ。
いやはやあの時は本当どうかしていたとしか。

ここからはもう一気ににいくゾ。ついてこれるか?

とまあ、それはいいとして、今現在最終決戦を書いている途中です。

なんというか最終決戦はいろいろとぶっとんでいる。
エクスカリバーとガラティーンのぶつかり合いだとかファイナル如来掌だとか、忙しい。
なおダビデは全軍指揮やってます。
あとどうせならとクレオパトラさんを登場させたりとか。

まあ、いろいろやっております。

あとアタランテとメイヴのエロ書いて投稿しました。

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