俺の青春ラブコメはこの世界で変わりはじめる。   作:clp

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前回までのあらすじ。

 八幡を伴ってららぽーとに来た雪ノ下は思いがけず姉と出会う。始終あちらのペースではあったが何とか退けて、雪ノ下は無事に買い物を終え、思いがけないお土産まで入手できたのであった。



20.まっすぐに彼らは各々の趣味を貫く。

 週が明けた月曜日。校内の雰囲気はすっかり元通りになって、2年F組の教室でも生徒達が楽しげに過ごしている。心配事のない穏やかな日はあっという間に過ぎ去るもので、気が付けば放課後を迎えていた。

 

 この日が誕生日である由比ヶ浜結衣は仲の良い2人と外で夕食をともにする予定で、部活を終えた後で再集合する手筈になっている。葉山隼人が率いる男子のトップカースト集団とは普段からよく遊びに行っているのだが、誕生日のことは彼らには告げていない。

 

 先週はまるまる部活が休みになったので、由比ヶ浜は比企谷八幡とも雪ノ下雪乃ともほとんど話せていなかった。自分から誕生日の話を持ち出すのは少し恥ずかしいが、もしも可能であればあの黒髪の少女にも、更には望み薄とは知りつつもかの男子生徒にも夕食会に参加してもらえたら良いのになと、金曜日までの由比ヶ浜はそう考えていた。

 

 しかし土曜日の東京わんにゃんショーで2人と会って、彼女は良いことと悪いことを1つずつ持ち帰った。良いことは彼との関係を元通りにできたことであり、悪いことは2人が付き合う可能性を思って嫉妬してしまったことである。

 

 先週の初めに八幡に突き放された由比ヶ浜は気分が落ち込みがちで、なかなか調子が戻らなかったが、それは八幡を心配する気持ちが強く彼女を束縛していたからである。自分の中で終わる話であれば、彼女はそれを表に出さず我慢することができたし、お陰で友人達は今日の彼女に何ら違和感を抱いていない。

 

 土日で気持ちを落ち着けられたし、たとえ当事者の2人の前であっても普段通りに振る舞えば大丈夫だと、その点に関しては自分を疑っていない由比ヶ浜だが、今夜2人を誘うべきかは答えが容易に出ない。もしも誘わなければ目の前の友人たちに悩みを気付かれてしまうかもしれない。だがもし2人が一緒に参加することになったら、そして自分達3人が話をしている近くで楽しそうに過ごす2人を見てしまったら、それでも自分は平静を保っていられるだろうか。

 

「いちおう部活で2人も誘ってみようと思ってるんだけど、大丈夫かな?」

 

「別に良いし。結衣の誕生日なんだから結衣が誘いたい奴を誘うし」

 

「うん。2人とも参加するならそれでも良いし、雪ノ下さんだけでも連れて来てくれたら嬉しいかも」

 

 少しだけ2人が断ってくれる事を期待して由比ヶ浜は口を開いたのだが、返って来たのは予想通りの解答だった。自分のことを気遣った返事をしてくれる友人達に対して申し訳ない気持ちを抱きながら、由比ヶ浜はなるようにしかならないと覚悟を決めた。既に運動部の面々は教室から去って久しく、なぜか長居を続けている件の男子生徒を含めクラスに残っている生徒は数えるほどしかいない。

 

「じゃあ……行ってきます!」

 

 努めて元気な声を出して、由比ヶ浜は鞄を持って立ち上がった。悩み事も確かにあるが、同時に久しぶりの部活を楽しみにしている気持ちも強い。無理なく笑顔を浮かべて、彼女はゆっくりと部室に向かうのであった。

 

 

***

 

 

 八幡はこの日も先週と同じように、休み時間のたびに教室を出て過ごしていた。とはいえ回復基調にあった先週の金曜日と比べてもこの日の彼の精神は安定感を増していて、当人は気付いていないが気持ちの悪い笑顔を浮かべることが多々あった。彼に関心を払う少数の生徒達はそんな彼の様子を見て苦笑いを浮かべ、それによって得た安心感に身を委ねながらそれぞれの行動へと復帰するのであった。

 

 

 放課後になって同じクラスの女子生徒が部活に向かったのを確認して、八幡は簡単なメッセージを送った。送信先は、友達の誕生日を祝ったことがないので何をどう言い出せば良いのか分からないと仰る部長様である。

 

 部室で待ち受けて扉が開くと同時にお祝いの言葉を伝えることを八幡は提案したが、性急すぎる気がするし、いつ来るか判らない相手を待ち受けるのはどうなのかと却下された。その際に、彼女が教室を出たら連絡をしろという指令を受けたのである。彼女に遅れること1分以内に部室に来いという仰せとともに。

 

「んじゃ、行きますかね」

 

 ゆっくりと立ち上がった八幡は少し早足で教室を出ていつものルートで部活に向かう。部室の前で深呼吸をしている由比ヶ浜を見付けて首を傾げる八幡だったが、意を決した彼女が開いた扉を閉める前に一緒に部室に滑り込んだ。なぜか普段以上に驚き恥ずかしがる彼女の反応を不思議に思いながら、彼は後ろ手でドアを閉めるのであった。

 

 

 部室ではいつもの通りに雪ノ下がマニュアル解読を行っていた。もはや解読というよりは演習という言葉が適切なのだが、彼女を筆頭に奉仕部3名のマニュアル解読は全校生徒と教師を含めても群を抜いた成果を出しているとゲームマスターが明言していた。実は自分も凄いのだという事実に慣れない八幡は、遙か前を進む雪ノ下との差を思いつつ、後ろとの差はどの程度なのだろうと考えながらいつもの席に着いた。その瞬間。

 

「頼もう!」

 

 特徴的な口調とともに、奉仕部の扉を叩く音が廊下から聞こえてきた。げんなりとした気分で雪ノ下に目だけで問いかけると、対処は任せたという意味の頷きが返ってくる。「ですよねー」と小声で呟きながら腰を上げて、彼は不審な男を部室に招き入れた。

 

「ハチえもーん。絶対に勝てるゲームを教えてよ!」

 

「ない。大人しく負けろ。お帰りはあちら」

 

 ふざけたノリの材木座義輝を軽くあしらう八幡を見て、由比ヶ浜は困ったような笑い顔を浮かべている。雪ノ下はと見てみると早々にマニュアル解読に復帰していた。この方針で良いのだなと確認できた八幡だが、彼が二の矢を継ぐ前に材木座が口を開くほうが早かった。

 

「ほむん。我は平塚女史から正式に許可を得ておるのだ。控えおろう!」

 

「は?何て言って偽装したんだ?」

 

「うむ。我の創作活動に異を唱え、我には才能が無いだの、やることをやってから言えだのと、事あるごとに我の足を引っ張ろうとする不逞の輩に勝負を申し込まれてな。だが相手は2名なのだ。だから勝負の助っ人を願いたいと申し出たら、熱い展開は大歓迎だとあっさり受理されたで御座候」

 

「あー。あの人、少年漫画的な展開が好きすぎだろ……」

 

 頭を押さえる八幡に代わって、一応は話を聞いていたらしい雪ノ下が質問を始める。

 

「では貴方の依頼は、勝負の助太刀と、自分に有利になるような勝負を考えて欲しいという事で良いのかしら?」

 

「うむ。それに相違ない」

 

「貴方が言う、不逞の輩とやらの詳細は?」

 

「遊戯部の1年2名である。貴奴らはリアルでも我をゲームで負かして見下した前科があるゆえに、さすがの我も3つある堪忍袋が切れたでござるよ」

 

「おい。3つの袋は結婚式の話だからな」

 

「げふうっ!」

 

 

 呆れたような口調でとりあえずツッコミを入れると、八幡は視線で雪ノ下に是非を問うた。彼の話が本当なら協力するのもやぶさかではないが、材木座のことだけに話を盛っているという懸念がある。だがそうした可能性は雪ノ下も重々承知のようで、彼女は尋問を続ける。今日は由比ヶ浜が静かだなと考えながら、八幡は依頼の話に意識を戻すのであった

 

「貴方の足を引っ張ろうとする後輩2名に、どういう話の流れで勝負を申し込まれたのかしら?」

 

「む。その、口だけだの、よく知らないのにゲームを語るなと言われ、かっとなってつい……」

 

「おい。お前の方から勝負を言い出したんじゃねーか。……どうする?」

 

「はあ。正直に言って、依頼の形になっていないわね。私闘に口を挟んで一方に肩入れするには、彼の説明だけでは難しいと思うのだけれど」

 

「というわけだ。悪いけど、他を当たってくれ」

 

「待て!……確かに勝負を言い出したのは我だ。だが我の創作活動に対し厳しい事を言われたのも事実なのだ。八幡……貴様は、貴様が大事に思う対象を貶されて、それで黙っていられるのか?それでも日本男児か!」

 

「はあ……。仕方ねーから、とりあえずその遊戯部とやらに会ってみるか。俺の個人的な行動ってことで、奉仕部とは関係なしで良いよな?」

 

 材木座の口調には苛立たされるが、八幡とて趣味を馬鹿にされて悔しい思いをした過去はいくらでもある。正確には最初から趣味そのものを馬鹿にされたわけではなく、友人がいないので趣味の話に飢えていた彼が堰を切ったように話を続けたせいで敬遠され馬鹿にされたのが真相である。

 

 だがもしそうだとしても、最終的には八幡の行動だけではなく、彼が好きだからという理由で趣味それ自体までもを見下されるのが常であった。俺が好きになったからあの作品が馬鹿にされるのかと、当時の八幡はやりきれない気持ちを抱えて過ごしたものだが、ゆえにこそ先程の材木座の挑発を流すことができなかったのである。

 

 

「待ちなさい。奉仕部として依頼を受けるか否かはさておいて、当事者に話を聞くのは適切な行動だと思うわ。一応は平塚先生の許可を受けてこの教室にやって来たわけだし、私たちも同行する義務があるわね」

 

「えっと、それって、依頼を受けちゃう可能性もあるってこと?……その、ヒッキーが言ってた次の依頼って、この中二の依頼になっちゃうの?」

 

 この日は妙に静かだった由比ヶ浜が疑問を口にしたことで、ようやく八幡は彼女が何を思い悩んでいたのかに気付いた。実は彼女はこのこと以上に思い悩む事柄を抱えているのだが、当事者たる2人はそれには全く気付いていない。ましてや材木座は何の話か見当もつかず、落ち着かない様子で窓の外を眺めるのみである。

 

「あ、えーと、どうなんだろな。てか、こいつのこの依頼で結果か……」

 

「とはいえ、約束は約束ね。土曜日にも言ったように無用の長物でも使いようはあるのだから、安心して討ち死になさい」

 

「だから下僕としての再就職を勧めるのはやめろ。ま、依頼にならないケースでごり押しするお前でもないだろうし、とりあえず情報収集に向かいますかね」

 

「ええ。では由比ヶ浜さんも支度をお願いできるかしら?」

 

「あ、うん。すぐに行けるけど……」

 

 2人のやり取りが以前と比べてはるかに親密なように思えて、複雑な表情を浮かべる由比ヶ浜であった。

 

 

***

 

 

 この高校に入学して早々に、秦野と相模は遊戯部を創設した。

 

 秦野は子供の頃からゲームが好きだったが、成長するにつれて彼の興味はいわゆるビデオゲームから離れ、より広い意味でのゲームを求めるようになった。もちろん家庭用ゲームやゲームセンターにあるアーケードゲームにも熱中することはあったが、そうしたコンピュータが関与するゲームだけでは彼の好奇心を完全に満たすことはできなかった。

 

 だが彼の周囲の友人達はありきたりのゲームで満足していた。彼が紹介してくれるゲームは珍しいものが多く、実際に遊んでみると楽しくもあるのだが、遊び始めるまでのハードルが高い。家にあるゲーム機で気軽に遊べればそれで満足だという大多数の意見に彼は必死に抗い、世の中には他にも多くのゲームがあることを伝えようとしたのだが、その結果は芳しくなかった。

 

 彼は痩せ型で目が悪く、子供の頃から眼鏡をかけていたが、運動が苦手なわけではなかった。むしろ長距離走に限れば、学年でも上位に入れるほどの実力であった。だが彼の外見を目にして、さらに趣味がゲームだという話を聞いた多くの大人は、彼が運動を苦手とし屋内で遊ぶことを好む陰気な性格の持ち主だと受け取ることが多かった。

 

 ゲームが趣味だというだけで運動ができないとか性格が暗いとか、どうしてそんなレッテルを貼られなくてはならないのか。彼は理不尽な評価に憤慨して、一時はゲームをやめようと決意もした。しかし彼のゲームへの思いは、容易く断念できるものではなかった。一度は離れようとしたことで、彼はゲームにかける自分の思いの強さを身に滲みて理解して、周囲の意見に流される愚を二度と繰り返すまいと誓った。その結果、彼は次第に孤立を深めて行った。

 

 

 相模は取り立てて説明するまでもない普通の子供だった。普通に友達と遊び普通にゲームをして普通に勉強する。そんな普通が似合う彼の毎日を変えたのは、同姓の1つ上の女の子が原因だった。

 

 小中と同じ学校に通っていたせいで、彼は血縁関係にないその女の子との仲をからかわれて過ごした。女の子にとっても迷惑な話だったと思うが、彼にとってその扱いは最悪だった。

 

 思春期を迎える前から異性に絡んだ面倒な話題を投げかけられ続けた彼は、ネタにされるたびに激高して過剰な反応を示したのだが、そうした彼の行動は火に油を注ぐ結果にしかならなかった。彼をからかっていた連中からすれば、からかいがいのある反応を返す相手なら誰でも良かったのだが、彼はそのことに長く気付けなかった。

 

 不登校になることこそなかったものの、彼は休みの日には家を出ないで過ごすようになり、ひとりでゲームに多くの時間を費やすようになった。平日も家と学校を往復するだけで、彼の毎日は淡々と過ぎていった。秦野と知り合ったのは、そうした頃のことだった。

 

 

 最初のうちは他に遊ぶ相手がいない者同士、ありきたりなゲームをして一緒に遊ぶ程度だった。だが共に周囲の無理解に苛立っていた2人だけに、ある日お互いが不満に思っていたことをぶつけ合って以来、彼らは仲の良い友人になった。

 

 ゲームの腕や知識は秦野に一日の長があったが、他にやりたいことを見出せず友人が楽しいと思うものをより詳しく知りたいと願う相模の成長も著しく、やがて彼らはゲームの腕では同学年の誰にも負けないと自信を持てるほどの域に至った。

 

 

 そんな頃、たまたま地元のゲームセンターに遊びに行って、彼らは奇妙な高校生と出会う。一目見ただけで関わりたくないと思えるほどに気持ちの悪い、オタクを体現したような高校生だったが、彼は周囲から何を言われようとも平気な様子で己を貫いているように思われた。

 

 わざとらしい口調で偉そうに話し、大袈裟にマントを翻し、大真面目に指ぬきグローブを装着しているその高校生に苛立ちを覚えた2人は、格闘ゲームでこてんぱんにした上で彼を見下し、彼がいかに痛い行動を取っているかをこんこんと説明したのだが、残念ながら暖簾に腕押しだった。彼はその後も行動を変えず、恥じる事なくそのゲームセンターに通い続けていた。

 

 

 高校受験が近付いて来て、彼らは仮想世界への参加を決めている高校に限定して志望校を絞り込み、最終的には総武高校を受験することにした。彼らがゲームに傾けていた情熱をそのまま勉強に費やしてみると、成績は面白いほどに上がった。ならば地域で一番の進学校を目指せば良いと彼らは考えたのである。

 

 もっとも、相模にとっては1つだけ問題があった。長年にわたって仲をからかわれ続けた、しかし実際にはほとんど話したことのない同姓の女の子が、彼に1年先んじて総武高校に入学していたのである。彼の悩みを知っていた秦野は一緒に志望校を下げることを提案したが、自分のことで友人を巻き込むのは気が進まなかった。心の中で件の女の子に頭を下げながら、相模は志望校を変更しないと決意したのであった。

 

 

 だが彼らが総武高校に入学したその日、小中に続けて高校まで自分の後をついてきた相模に、同姓の女の子はついに怒りを爆発させた。とはいえ彼女が何かをしたわけではない。彼女の話を聞いて、周囲の人間が勝手に「酷い話」として噂を流しただけである。彼女の怒りは対象こそ間違えていたものの正当なものではある。だがだからこそ噂は説得力を持ち、彼女の希望を無視する形で広く校内に伝わってしまった。

 

 誰がつけたのか、相模・ゲーム部・男という3つの言葉から「サゲオ」なる蔑称まで登場して、彼は高校入学早々に悔しい思いをした。その屈辱に比べれば、この世界に巻き込まれた事など彼には些細な事である。むしろここまで完成度の高いバーチャルな世界で過ごせることは、既に秦野に負けないほどゲームに情熱を捧げるようになった彼には喜ばしいことでさえあった。

 

 とはいえ鬱屈とした気持ちは簡単には解消できない。高校の外へと出歩けるようになって、彼らは馴染みのゲームセンターに向かった。そしてそこで件の痛い高校生と再会したのである。

 

 久しぶりに会った彼は処女作だという原稿を抱えていた。彼らに見下された過去など忘れたかのように「読んでみて欲しい」と渡されたそれは、お世辞にも質の良いものではなかった。だが得体の知れない情熱だけは感じ取る事ができて、彼ら2人はそれを不思議に思った。

 

 彼には明らかに文筆の才能を感じないし、そもそも基本的な素養が欠けていた。だが古今東西のゲームを知ろうと日夜それに時間を費やし、ゲームの内容だけではなく完成までの経緯や逸話にまで知識を広げようと努めている自分達と比べて、稚拙でも実力が足りなくても実際に創作活動を行っている彼はいったい何が違うのだろうか。

 

 彼らの指摘にいちいちショックを受けつつも、逞しく復活して前向きな姿勢を決して手放さない奇妙な先輩に、彼らはいつしか淡い尊敬の念を抱くようになっていた。次は彼が手掛ける小説という分野ではなく、彼らが得意なゲームという分野で勝負をしようと約束して、3人はゲームセンターを後にしたのであった。

 

 

***

 

 

 特別棟の4階から2階へと移動して、奉仕部の3名と材木座は遊戯部の部室を目指していた。材木座の話にはどうも要領を得ない部分があるのだが、それも当事者に尋ねてみれば分かることだ。そう考えながら八幡は集団を先導する。目指す部室の場所は部長様が教えてくれたのだが、口頭での情報は信頼できても彼女の道案内を信頼することはできない。

 

 4人パーティーを率いる八幡の背中を眺めながら、由比ヶ浜は頑張って気持ちを奮い立たせようとしていた。先の懸念はさておいて、まずは彼が奉仕部に居続けてくれないことには話にならない。雪ノ下との繋がりを危ぶむ以前に、自分との繋がりが無くなってしまっては論外である。彼には()()()()()依頼を解決してもらう必要があるのだ。

 

 雪ノ下は今回の依頼について何か考えを巡らせているのか、集団の中で大人しくしていた。彼女が何をどこまで知っているのか、外部からは容易に窺い知ることはできない。だが彼女の性格からして、部員のためにならない事は決して考えてはいないのだろう。

 

 材木座はそんな3人を集団の最後尾から眺めながら、来るべき勝負に向けて気持ちを盛り上げるのであった。

 




次回は明日更新する予定です。
ご意見、ご感想、ご指摘などをお待ちしています。

追記。
文章の流れが悪い部分の順番を入れ替えて、細かな表現を修正しました。大筋に変更はありません。(2/23,3/2,4/7)

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