Re:ゼロから寄り添う異世界生活   作:ウィキッド

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残り5,6話です


霧の脅威

「――息があるものは声を上げよ!」

 

 クルシュの悲鳴にも、懇願にも似た叫びにスバルの意識は再度覚醒する。

 

「やべぇ、意識が飛んでた……ッ!」

「スバルくん! 気が付いたんですね!」

 

 レムの喜び交じりの声を受けながら、状況の変化を確認する。

 白鯨は金切り声を体全体から発しながら、同時に無数の口が『霧』を吐き散らしている。街道の広範囲にわたり、空から降り積もる霧の浸食が世界を侵し、その視界を徐々に徐々に白みがかったものへ塗り替えていくのだ。

 『霧』の魔獣の本領発揮だ。

 街道に霧が満ち、視界が覆われて個々の連携が噛み合わなくなる。なにより、その白い体は見上げるほどの巨躯でありながら、霧が生む白い海の中に溶け込むように消えていくのだ。

 

「――本当ならもう少し速度を落としたいんですけど、すみません」

 

 衝撃の隠業に喉を震わせるスバルの前で、身を前に傾けるレムが叫ぶ。スバルはそれに対する答えとして、前に座る彼女の腰に深々と身を沈めて抱き着いた。

 地竜がレムの素早い手綱さばきに従って身を回し、地を削りながら疾走を開始。先ほどまで隣にいたフェリスも同様に、鋭いターンを経て霧の内側へ地竜の頭を向ける。白鯨が戦闘状態に入ったとなれば反撃は必至。当然、負傷者が出ることは避けられない。そうなれば、そこにこそ『青』の名で呼ばれる彼の見せ場があり――、

 直後、

 

「――総員、退避!!!」

 

 霧の向こう側から怒号が響き、白い闇に飛び込もうとしていたこちらを牽制する。聞こえた声は聞き間違いようのないクルシュの声だ。なにを、とスバルが顔を上げようとするより早く、

 

「うお!?」

 

 一瞬の判断で地竜の進行方向を変え、遠心力に振り回される身が左へ移動。前方、同じように急旋回するフェリスの地竜は右へ。左右に別れた形になるスバルたちの進行、そのど真ん中を――濃密な質量を伴う霧が一気に吹き抜ける。

 押し寄せる霧の範囲は視界を覆うほどで、回避が一瞬でも遅れれば地竜もろともにスバルたちを呑み込んでいたことは間違いない。

 たかが霧を避けるのになにを大げさな、と目の前でそれを見ていなければ笑い飛ばせたかもしれないが、実際にその異質さを目にすれば軽口を発することも不可能だ。

 霧は撫でた平原の地面を溶かすように抉り、その進路上のものを根こそぎ腹に収めて文字通りに霧散している。

 もしもアレを浴びていれば、この世のどこでもないところへ消されていただろう。

 

「これがマジもんの『霧』……ッ」

 

 白鯨の恐ろしさについて、事前に討伐隊のブリーフィングで知らされた幾つかの内容。そのひとつが、この破壊を伴う『霧』の威力だ。

 白鯨の口腔より放出される霧は二種類あり、ひとつは純粋に視界を覆い、自身の行動範囲を拡大させるための拡散型の霧。そしてもうひとつが、たった今、目の前でごっそりと大地を消失させた消滅型の霧だ。

 攻撃手段として白鯨が利用するのが後者であり、その霧の恐ろしさは防ぎようのない威力と被害はもちろんだが、真の脅威は別のところにある。それは、

 

「――――せぇい!!」

 

 気合い一閃、勇ましい声が霧の彼方から届き、次の瞬間に視界を覆っていた霧が唐突に打ち払われる。

 見れば晴れた視界の向こう、地竜の背に立つクルシュが腕を振り切った姿勢だ。おそらくは見えない刃の応用で、充満した霧を切り裂いて視界を確保したのだ。

 彼女は汗の張り付いた額を乱暴に拭い、走る地竜の背に腰を落とすと周囲を見回す。その彼女を目印としたように、散り散りになっていた討伐隊が集まってくると、その先頭を走る面々にクルシュが口を開き、

 

「――何人がやられた?」

「我が隊の隊員数は十二名――三人、足りませぬ」

「……誰がやられた」

 

 クルシュの問いかけに年嵩の小隊長が応じ、続く問いかけに首を振る。そしてそれに続くように各隊の隊長からも同じように、悲惨な報告が続いていく。

 

「こちらは十四名、一名が脱落」

「我が隊は二名。同じく不明」

「三名……申し訳ありません!」

 

 同様の報告が次々と上がり、いずれの小隊長も消えた仲間の名前が出てこない。

 悔し涙を流しながらも続いていく報告は端から見れば意味の分からないものだ。隊を纏める長が、消失した事実は認識していながらも誰がいなくなったのかを把握していないのだから。

 その異常事態こそが、白鯨の操る『霧』の本当に恐ろしい部分になる。つまり、

 

「消滅の霧……!!」

 

 『霧』を浴びて消失した存在は、その存在ごと世界から消える。誰かが消えた、では誰が? の答えが返ってこない。それがこの恐るべき霧の能力。

  対策としてクルシュが討伐隊の各小隊を、ぴったり十五名ずつに揃えた真意はそこにある。『霧』を浴びて小隊が欠員した場合、誰がやられたのかすらもはやわからないのだ。その欠けた事実だけは認識するために、小隊の数は揃えられている。

 以前の世界でスバルが白鯨と遭遇したとき、奇妙な現象が起きたことがあった。

 それは――

 

「やっぱり、俺だけが、覚えてる……」

 

 呆然と、スバルはその疑いようのない現実を口にする。

 消えた行商人を、スバルを逃がすために犠牲になったレム、シャオンを、スバルがあのループの回に忘れなかったように、スバルだけは覚えている。

 クルシュの周囲に集まる各小隊の隊長を務める老兵たち――その十五人の顔ぶれがすでに二つ、違うものにすげ変わっている。

 『霧』を浴びて元々の小隊長が消失し、代わりの次席が小隊長であったという現実に認識がすり替わっているのだ。故にその突然の配置転換に誰も気付かない。

 その異常な事態に改めて、スバルはあの霧の魔獣が『魔女』と強い接点を持つ存在であることを意識する。

 そして、以前推測した通り、死に戻りを確実に認識で来ているシャオンも同様に霧の効果を無効化はできているはずだ。

 

「霧にもぐられた以上、どこからまた消しにかかられるかはわからない。密集しているのも下策だ。――散開し、霧払いの結晶石を使うぞ」

 

 集合する討伐隊の面々を見回し、クルシュが手短に話し合いを区切る。全員がそれに首肯するのを見届けながら、スバルはその場にヴィルヘルムやリカード、ミミ、アリシアの姿がないことに気付いて目を見張った。

 ――まさか、と嫌な予感が脳裏に走った瞬間。

 

「戻ったか、ヴィルヘルム」

 

 が、そんなスバルの内心の戦慄は、霧の向こうから姿を現した影に否定される。

 濃霧の奥からゆっくりと影を払うのは、地竜の背で血に濡れる剣を振るうヴィルヘルムだ。全身に返り血を浴びた壮絶な姿の彼は、顔に散るそれを袖で拭いながらこちらに合流し、

 

「先走り過ぎました。――被害の程は」

「合わせて二十一名……小隊約ひとつが消滅した形だ。倒れたものたちの名誉すら、もはや正しく守ることは叶わない」

 

 消失は文字通り、存在の抹消だ。

 ノートに書かれた文字を消しゴムで消すのと同じような簡単さで、それは発生する。

 誰の記憶にも残らないその人々が、そこにいたのだろうという空白だけが取り残される。

 そこにそれまであったはずの絆や想い、愛はどこへ消えるのだろうか。

 見れば、ヴィルヘルムの背後からライガーの群れが姿を見せ、その中には大型のライガーに乗るリカードや副団長の二人の姿もある。そしてライガーとは違った一つの影、地竜の上にはボロボロではあるが確かにそこにいるアリシアのその姿があった。

 どうやらヴィルヘルムと同様、白鯨に取りつくように戦っていた一団はかえって被害が少ないようだ。

 

「厄介な霧が出てしもたな。退魔石は希少品、数は心もとない。……使いどころ、間違ぅたら終わりやぞ」

「もう一度、同じだけの集中攻撃が通れば地に落ちるはずだ。姿を見失っている以上、奇襲を避ける意味でもここが使いどころだ。異論は」

 

 クルシュの言葉に全員が賛同し、彼女の視線がフェリスが率いる支援へ向く。

 

「フェリス。退魔石を打ち上げろ。二回分しかない。扱いは慎重に、だ」

「いつでも、ご命令とあらば」

 

 静かに胸を叩くフェリスにクルシュが顎を引いて応じ、彼女は改めて戦端が開かれる前に全員の顔を見渡すと、

 

「ここからが正念場だ! 白鯨に我らの攻撃が通じるのは卿らの手の中に残る手応えが証明している! 確かに奴は強大だ。得体が知れぬ。我らの死は最悪、誰の記憶にも残らぬかもしれぬ。だが!」

 

 無手の斬撃を放つ彼女には無用の長物であろう腰の剣――カルステン家の宝剣を抜き、空にかざすクルシュが声を高らかに、

 

「墓標に名を残せなかった死者のためにも、この先の世界で霧の脅威にさらされるだろう弱者のためにも、我らは犠牲を払おうとも奴を討つ――ついてこい!!」

「――――おお!!」

 

 各々が武器を空に掲げて、一斉に快哉を叫ぶ。

 すさまじい士気の高まりが霧を震わせ、沈みかけた戦意に着火して猛らせる。

 

「退魔石――打ち上げぇ!!」

 

 クルシュの号令に従って、フェリスの指揮下の面子が一斉に砲筒を上へ――直後、爆音とともに霧の向こうへ結晶石が打ち上がり、

 

「霧が、晴れる――!!」

 天上で砕け散った魔石の輝きが、視界を覆い尽くした霧を一気に掻き消す。もっとも、平原の四方を満たしていた霧全てを払うことができたわけではない。

 全体を薄れさせ、視界確保すら難儀にした状態を解消したに過ぎない。が、それだけでも十分な効果といえる。

 ――白鯨の放つ『霧』は、白鯨の持つマナが変異したものだ。

 可視化されたマナの散布が『霧』であり、それが白鯨によって指向性をもたらせているのだ。

 これに対して対応ができるのは、霧払いの結晶石――退魔石である。

 本来の効果は、周囲のマナを強制的に無色のマナという特殊な害のないものへと還元し、無効化する――いわば所持することで、魔法攻撃に対する防御アイテムのようなものだ。その魔石を複数、一斉に砕くことで今回のような効果を発揮する。それはこちらの魔法攻撃の威力すら減衰させる危険な賭けだが。残留する霧を見ている限りではその心配は杞憂に過ぎない様だ。

 

「霧全部を消すには足りない、か」

「代わりに、こちらの魔法にも影響はありません。レムも万全です」

 

 小さく頷くレムが、額の上にある角を光らせてそう答える。

 スバルの周囲に渦巻くマナの気配はレムが再び魔力を練り上げているということの証拠だ。

 

「――っしゃぁ! ビビってられねぇ。ここまでなんの役にも立ってねぇんだ。そろそろ俺らの出番といこうじゃねぇか!」

「はい! 行きます!」

 

 レムは地竜の手綱を巧みに操り、嘶きに合わせてスバルの体が弾む。

 走り出す地竜の背中でレムの腰に掴まり、霧の薄れた頭上に白鯨の姿を探し求める。

 クルシュが率いた先頭の討伐隊も、それぞれ散開しながら巨躯を探す。

 いつ再度、戦端が切られるかわからない緊張に喉の渇きを感じる。

 白鯨の出現は、見られない。それは戦いが始まる前の、深淵の闇の中で白鯨の出現を待ち構えていたときの感覚にも似ていて、

 

「――霧」

 

 ふいに、嫌な予感がスバルの脳裏を走った。

 特にこれと言った根拠があったわけではない。退魔石の効果や、その渦の中での魔法の運用。作戦前の話し合いの数々を思い出し、その不安は不意に降って湧いたのだ。

 

――大気に残留するのは、一体、なんだ?

 

 領域を拡大し、視界をかく乱する霧の魔獣。

 それが事前にスバルが知ることが出来た情報だ、だがそれの脅威は本当に視界撹乱、活動範囲の拡大のためだけなのだろうか?

 だが、その疑問が形となる前に、霧の薄まったリーファウス街道に、甲高い鳴き声が響き渡る方が早かった。

 

「――――ッ!!!」

「な、なんだなんだなんだ!?」

 

 軋るような嬌声は女の悲鳴にも似ていて、思わず耳をふさぎたくなるほどに深い。

 咆哮や、獰猛な鳴き声とは別次元のおぞましさは、平原中を霧を通して伝染させていく。

 

「あぁぁぁぁあああ――!?」

 

 最初に異変が生じたのは、隣を並走していた小隊だ。

 正気の人間が挙げる声とは思わない、その甲高い咆哮は小隊の人間が発していた。

 その奇声に肩を跳ねさせながらも振り向けば、次々と騎兵たちが地竜から振り落とされていく姿が目に入る。

 

「おい! どうした!?」

 

 スバルの叫びを聞き、異変に気付いたレムが地竜をUターンさせてそちらへ。騎手を失い、右往左往する地竜の中を抜けて、スバルは転落した男たちのところへ向かい、声をかけた。

 

「大丈夫か!? 落馬するとただのケガじゃ済まねぇって……」

 

 その負傷を心配したスバルは、思わず途中で声を途切れさせる。落ちた彼らの状態が、負傷の深度をうかがうといった次元になかったからだ。

 

「あー?うー?」

 

 泡を吹き、白目を剥いて痙攣している男がいる。呻き声を上げて涎を垂らし、必死に自分の腕を掻き毟って血を流す男がいる。痛みに耐えるように奥歯が砕けるまで食い縛り、頭を地面に打ち付ける男がいる。

 症状は一貫していないが、はっきりとわかることがある。

 

「これは……」

「さっきの声で、霧が、精神に、直接……マナ酔いに似ていますけど、ひどい……!」

「マナ酔い……?まさか、この霧の効果か……!?」

 

 レムの苦しげな声に、スバルは頭の中のピースがはまる感覚を覚えた。

 拡散型の霧が、獲物を囲み、その範囲内の存在に、回避不能の状態異常をもたらす罠。――絶大な威力は、目の前の光景を見れば一目瞭然だ。

 霧の被害を受けたのがスバルたちの周り数名であるとは思えない。事実、視界に届く限りを見渡せば、あちこちの一団も同じように足を止めており、味方の異常に対処するのが見えていた。

 

「この霧に耐性のある奴とない奴がいるのか……。俺はなにも感じねぇってのに」

「レムは、少し、落ち着きます」

 

 深呼吸をし始めるレムをしばし置き、スバルは地竜から降りると霧の影響下にある彼らの下へ。せめて、自傷行為だけでも止めさせようとするが、

 

「おい! それ以上はやめろ! 傷が……うお!」

「あああ! あひひひああああ! 寄るなよるなぁぁあぁあぁ!」

 

 混乱した男に手を払われ、二の腕あたりを手加減なしに引っ掻かれる。肉が浅く抉られる痛みに呻き、スバルはとっさに飛び退いて距離を取る。と、男はそれ以上追わずに再び自傷を始める。血が散り、すすり泣くような声が連鎖する。

 その顔面は血まみれになるほどに掻き毟られ、狂気を露わにしていた。

 

「……これはかなりヤバいんじゃねぇのか? 下手すると死ぬまで止まらねぇぞ!」

「スバルくん! 傷は!?」

「痛いけど大したことない! それより、これをどうにかしないとみんな自滅しちまう! どうにかならないか?」

 

 気を落ち着けたレムに聞き返すも、彼女は狂乱する騎士たちを見ると難しい顔で首を横に振り、

 

「残念ですが、レムの治療魔法では効果はどこまであるか……。肉体ではなく、ゲートを通して直接内側に、オドに干渉しています。ここまで強力なマナ汚染は、フェリックス様ぐらいじゃ……」

「そもそも、この精神汚染ってどれぐらいレジストできてんだ? こっちは俺とレム以外はほぼ全滅だぞ!?」

 

 スバルたちと同じ方向に向かっていた一隊はほぼ壊滅――無事な数名だけがスバルたちと同じように自傷する仲間を止めようと躍起になっている。

 

「肝心のフェリスが汚染食らってたら完全に詰みだぞ、どうする……」

 

 スバルに見える範囲だけでこれなのだから、他の小隊も同じ状態にあるとすれば絶望的でしかない。クルシュやヴィルヘルム、リカードやアリシアといった主力、フェリスのような支援の要が落ちてしまえばそれまで、敗戦まで秒読みとなる。

 

「動けるものは負傷者を大樹の根に! 多少の実力行使はやむを得ん!」

 

 だが、霧の向こうからまたしてもクルシュの声が聞こえ、応じる声も立て続けに連鎖して聞こえた。どうやら彼女は汚染の影響を受けていないらしいが、それでも事態を収めるのに懸命になっているのがわかる。

 ――全体攻撃の指示の直後の方針転換だ。彼女の歯がゆい感情が声ににじみ出ているのが伝わり、悪辣な白鯨のやり口にスバルも怒りを覚える。

 

「殺すよりケガ人出す方が戦力的にきついって聞いたことあるが……それを怪物がやるか……!?」

「フェリックス様は無事のようです。あの方の治療が全体に回れば、少なくとも汚染の効果は剥がせるはずですが……」

 

 口ごもるレムの言いたいことがスバルにもわかる。

 重要なのはそれでフェリスの手が塞がってしまうことと、負傷者を回収するために手が割かれること。そしてなにより――、

 

「時間が足りない。フェリスの治療が全員に回るまでの間、ずっと無防備じゃいられない」

「最悪、白鯨は集まったこちらを丸ごと霧で呑み込むかもしれません。そこまで知能があるとは思いたくありませんが……この状況を作ってきた以上、楽観は」

「本能でやらかしてきてる可能性もあるが……いや、どっちにしろ、野生の狩りのやり方は舐めてかかれねぇ」

 

目の前の怪物の狡賢い人間の手によって作られたものと思ってしまうほどにあくどい。

 危険覚悟でクルシュは討伐隊をまとめ、フェリスに治させる覚悟だろう。

 当然、負傷者にあの鯨を近づけないために、時間稼ぎを行う必要がある――量より質な餌を用意して。

 

「――ふぅ」

 

 息を深く吐き、肺の中を空っぽにする。

 限界まで酸素を体から取り除くと、自然と窮屈になる胸の中――心臓の鼓動がゆっくりと、確かなリズムを刻んでいるのが自分でわかった。

 意外なほど、落ち着いてる自分いスバルは思わに苦笑する。

 いつだって状況に流されるままで、目の前の事態翻弄されては、この心臓はスバルの心情を反映するかのように暴走を繰り返していたものだ。

 それがどうして今、決断を前にこれほど落ち着けているのか。

 

「……借り物でも、勇気は勇気ってことか」

 

 胸を叩き、スバルは大きく息を吸い込む。一度止めて、目をつむり、それから息を吐きだして目を開く。前を向く。正面、地竜に乗るレムがスバルを見下ろしている。

 スバルがなにを言うのか、なにを望むのか、ゆっくりと待ってくれている。

 

「レム、一番危ないところに付き合ってくれ」

「はい。――どこまででも」

 

 スバルの頼みにレムは躊躇なく、微笑みすら浮かべて受け入れる。

 それを受けてスバルは地竜に駆け寄り、その背に飛ぶようにまたがると、地に残って暴れる仲間たちを制する騎士たちへ、

 

「俺とレムが白鯨を引きつける。その間にあんたらはフェリスの治療を受けてくれ。大丈夫そうな奴らはフェリスに預けたあと、クルシュさんに合流してくれ!」

「引きつける!? いったい、どうやって……」

「こうやるんだよ」

 

 疑惑の声を上げる老兵に笑いかけ、スバルは息を吸い込んで喉を開け、スバルの全力の声が霧の平原に響き渡る。

 

「――聞こえる奴らは耳を塞げ!! それどころじゃない奴らはそのままで!!」

 

 そのスバルの怒号をレムは心地よさげに聞き、名残惜しそうに、両耳に手を当てる。近くにいた騎士たちも慌てて耳を塞ぎ、おそらくは声が届くところにいた討伐隊もそうしたはずだ。

 作戦前のブリーフィングで、スバルが頼み込んだ通りに。

 そして――、

 

「俺は『死に戻り』して――」

 

 それを口にする瞬間、湧き上がる恐怖がスバルの心胆を絡め取る。

 目論見が外れて、あの黒い魔手が周囲の仲間に、レムに手を伸ばすようなことがあれば。

 ――それは許さねぇ、俺の心臓ならくれてやるから、手ぇ貸せよ!!

 恐怖をねじ伏せて、どこかにいるだろう魔女に聞こえるように声を上げた。

 目を見開き、心中で叫ぶスバル――直後、それは訪れた。

 

『愛してる』

 

 それは耳元で囁きかけられるような、弱々しい小さなか細い声。

 しかし、そこに込められた胸を震わせるような、熱のこもった情はなんだ。

 愛おしさが全身を埋め尽くす圧倒的な熱の中、意識は真っ白に燃え上がり――、

 

「……戻った」

 

 刹那の邂逅で、スバルの意識は現実世界へ覚醒する。

 寸前までスバルの意識を支配していた感覚が遠ざかり、そこでどんな感慨を得ていたのかも思い出せなくなる。ただ、覚悟していたはずの激痛が訪れなかったような、そんな不可思議な感覚だけが残る。それでも、

 

「レム、どうだ。俺から魔女の臭いは……」

「はい、臭いです!」

「言い方ぁ!? でも、狙い通り!」

 

 レムの釈然としないお墨付きを受けて、目的は達したことを確認。

 魔女の正気を身に纏い、スバルは拳を固めて周りを見渡し、騎士達へと声を上げた。

 

「俺たちはすぐにここを離れる! なるべく大樹の近くには寄らないようにするから、クルシュさんたちとうまく落ち合ってくれ!」

「わ、わかった! 武運を祈る!」

「互いにな!」

 

 騎士たちに送り出され、スバルが肩を叩くとレムがそれを合図に地竜を走らせる。

 現状、スバルの体からは新鮮な魔女の残り香――字面で見ると矛盾に満ちた臭いが漂っているはずだ。問題はこれがどれほど白鯨に効果を持つか、だが。

 

「ウルガルムのときを思い出すと、森全体をカバーくらいの効果があったけど今回はどうだ……正直、未知数なんだが」

 

 前回の世界で白鯨と遭遇したとき、オットーの竜車に移ったスバルを白鯨は執拗に狙ってきた。あの時点でスバルが魔女関連の発言をしていないことを鑑みると、あのときより強い臭いを放つスバルは白鯨にとって格好の餌のはずだが――、

 と、思った直後だ。

 

「――!?」

 

 前進していた地竜がなにかに気付いたように鋭く首をもたげ、そのまま自身の判断で一気に旋回――遠心力に吹っ飛ばされそうになるスバルが「うげぇ!」と悲鳴を上げ、慌てて目の前のレムを縋るようにかき抱きしめる。

 

「何が……っ」

「白鯨です!!」

 

 密着するレムが叫ぶ真横を、ふいに霧を突き破り、巨大な大顎が姿を現した。間一髪、進路上から外れていたスバルたちを避け、わずかに左を滑るように白鯨の大口が大地を咀嚼し、途上にあった草原を丸呑みにしていく。

 岩肌のような頑健な外皮をかすめるように駆け抜け、魔獣の顎が地面をかみ砕く音をすぐそばで感じる。白鯨は口内に血肉の味がないことを気づくと、その巨体を翻すと、全力で遠ざかるスバルたちの方へとその首を向け、咆哮が追いかけてきた。

 

「うおおおおおお――!?」

 

 背後から迫ってくる圧倒的な質量によるプレッシャー。

 押し潰されそうな圧迫感に背を追われながら、叫ぶスバルを乗せた地竜が懸命に大地を蹴る。しかし、追い縋る白鯨の速度は尋常ではない。

 山のような巨体で空を泳がせ、風を追い越すような勢いで距離が一気に詰まる。

 ぐんぐんと、世界を呑み下す勢いで白鯨が近づく。

 その鼻面がすぐ間近に、息遣いが背中にまで届くような距離まできて、

 

「レム!!」

「ウル・ヒューマ!!」

 

 レムの詠唱に呼応して、三本の氷の槍が大地から一斉に突き出してくる。

 それは狙い違わず、スバルたちを追っていた白鯨を真下から穿ち、その下腹を串刺しにして動きを止めようとする。

 だが、

 

「止まらねぇ――――!!」

 

 槍百本を束ねたような太さの氷槍が根元からへし折られ、甲高い音を立てて結晶が砕け散る音が鳴り響く。破壊された氷槍はマナへと還元され、傷を塞ぐものを失った白鯨の傷口から血が噴出するが、その動きに影響はない。

 あれほど負傷し、血を流し、それでも精彩を欠かない耐久力の果てはどこにあるというのか。改めて、白鯨を落とすという難事のハードルの高さに戦慄する。

 そして、科の白鯨は赤い鮮血と共に、同じ色を舌小さな魚群を生み出し、スバル達の先方へと飛ばし始める。

 このままではぶつかることになる、だが、速度を緩めては背後の鯨に追いつかれることになる。

 絶体絶命の状況、しかし、

 

「あんときと違って、こっちゃタイマンじゃねぇんだよ!!」

「――――ッ!!」

 

 中指を立てて距離の開いた白鯨を挑発するスバル。その仕草の意味がわからずとも、白鯨は怒りを感じているかのように口を開いて咆哮を上げる。

 その巨体を横合いから、

 

「おらおらっ!」 

 

 飛びかかるアリシアの打撃が白鯨を襲う。白い岩がへこみ、そして一拍おくれた後にその頭が弾き飛ばされる。

 だが、それだけで攻撃は終わらず、アリシアは大きく息を吸い込み、再度拳と共に連撃が勢いよく吐き出された。

 

「オラオラオラオラオラオラぁッ!」

 

 怒涛の猛攻の対象は白鯨だけでなく進路を邪魔する赤い魚にも適応される。

 元々の大きさが小さい魚は即座に消滅、白鯨自体も思わず身をくねらせ、スキを突いて彼女の攻撃から逃げようとする。

 だが、それを彼女は許さない。

 

「ヴィルヘルムさん! いまっす!」

「りぁぁぁぁぁ――ッ!!」

 

 アリシアの背中を踏み台にして跳躍し、白鯨の横腹に刃を突き立て、ヴィルヘルムの斬撃が白鯨を縦に割った。

 立てられた刃が深々と肉を穿ち、開いた傷口から噴き出す鮮血が血霧を生むが、それすら気にせず駆け抜ける。

 そして、その血に濡れる白鯨の背の上を目指す二頭のライガー。その背に乗るのは子猫の姉弟だ。二人は顔を合わせ、

 

「お姉ちゃん、合わせて!」

「いっくぞぉー、ヘータロー!!」

 

 左右から交差するように背に上がったライガー、その背からミミとヘータローの二人が飛び下り、互いに手を取るとヴィルヘルムが作った傷口の上へ。そして、二人は顔を見合わせて同時に口を開くと、

 

「わ――!」「は――!!」

 

 二人の声が重なり、波状的に広がる音波が白鯨を襲う。

 全身の傷という傷から再度出血し、その巨体を激しく震わせて高度を一気に落とす。

 苦しげに悶え、痛みに堪えるような声を上げ、かろうじて墜落を逃れる白鯨。その背からライガーにまたがる双子が飛び下り、息を切らしながら、

 

「切り札シューリョー!」「団長、お願いします!!」

「おうおう、任せぃ! チビ共が頑張ったんなら、ワイもやらなあかんわなぁ!!」

 

 着地する双子と交代し、大型のライガーが尾の方から白鯨の体によじ登る。

 大鉈を振上げ、リカードは霧を生む無数の口を叩いて回った。ヴィルヘルムも同じように、邪魔な口へ斬撃をたたき込み、次から次へと黙らせていく。

 速度自体はかわせないほど速くはないが、なにより口の数だけ弾幕が開かれる。苦心するようにリカードのライガーが身をよじり、ヴィルヘルムも素早い身のこなしで霧を避け、大ナタの一撃と剣の斬撃が白鯨の背の上で踊り続ける。

 歪な哄笑を上げる口を縦の斬撃が切り潰し、大ナタが口腔の中を蹂躙して機能を叩き潰す。ライガーの爪も微力ながら攻撃を牽制しており、なにより追いついてきた獣人傭兵団の砲筒が、全身に再び魔鉱石による爆撃の攻勢をかけ始めた。

 討伐隊の攻撃力に再び押され始める白鯨。その巨体をよじり、口腔が霧を吐くための準備を始めたと見れば、

 

「レム!!」

 

 スバルの呼びかけよりも早く地竜を巡らせたレムにより、魔女の臭いを漂わせるスバルが白鯨の鼻先を駆け回る。と、それに集中力を乱された白鯨が反射的にスバルたちの方へと首を向け――斬撃に、その目論見を阻まれる

 

「――――ッ!!」

「余所見など、つれないことをしてくれるな。私は十四年前からついぞ、貴様に首ったけだというのに」

 

 刺突が白鯨の額に突き刺さり、固い部分にめり込む刃にヴィルヘルムの動きが止まる。が、彼は即に三本目の剣を見限ると、手放した剣の柄を思い切りに蹴りつけてさらに深々と刃を突き立て、抜き放った五本目の剣を右に持ち、両手の刃で白鯨の頭部を滅多切りにしながら背に向かう。

 途上にある口も次々と刃で文字通りに黙らせ、鬼の力で同じように潰しまわっているアリシアと合流。返り血で濡れながらも笑顔を浮かべたまま、笑顔を浮かべる。

 

「なんっすか、意外といけてる感じっす?」

「いや……少々、手応えがなさすぎる」

「……気になることでもあるっすか?」

 

 快哉を上げるアリシアに低く応じ、軽いステップを踏みながら背を刻み続けるヴィルヘルムが唇を噛む。

 血で濡れた髪をかき上げるアリシアが、渋い顔を浮かべるヴィルヘルムに訊ねる。 

 

「この程度の魔獣に妻が……剣聖が遅れを取ったとは考え難い。機先を制せたことや、最初の時点の霧で分断されなかったことを考慮しても……」

 

 ヴィルヘルムが刃を振りながら考察する最中、ふいに白鯨が大きく動く。

 それまで背に取りつくヴィルヘルムたちを引き剥がそうと、身悶えしていた動きが突如として変化。白鯨はその頭を上へ向けると、一気に高度を上げて空へ向かう。

 急激に傾く足場の中、ヴィルヘルムは、

 

「降りる前に、もうひとつ貰うぞ――!」

 

 身を回し、軽快な動きで老剣士が巨体の上を跳躍する。

 上へ昇る白鯨の体を、下へ飛び込むヴィルヘルムが逆さまに登っていくのだ。体重移動と、刃を突き立てる強引な姿勢制御。長年の経験の蓄積による体さばきで白鯨の体を駆け下り、ヴィルヘルムの斬撃が到達点で大きく縦に振られ――巨躯の終端で背びれの1つを根元から叩ききる。

 

「――――ッ!!」

 

 白鯨の絶叫を聞きながら、ヴィルヘルムが折れた背鰭をを蹴って地に向かう。

 超高高度からの落下は普通に考えれば落命必死の場面だが、地面に落ちる寸前で懐からなにかを抜いたヴィルヘルムが真下へそれを投擲――魔鉱石の小規模な爆風が真下から風を生み、ゆるやかな遅滞を得たヴィルヘルムを横から地竜がさらう。

 

「ヴィルヘルムさん!!」

「――――」

 

 無事を確認しようと声を上げるスバル。しかしヴィルヘルムはそれに取り合わず、彼の視線は首を真上に傾けて頭上へと向けられている。

 つられて上を見るスバルは、そのはるか上空を泳ぐ白鯨の尾を視界に捉える。

 切り取られた背びれの部分から滴る血が、暴力的な勢いを受けて雨のように降り注ぎ、平原の草を朱色に染める傍ら、無言のヴィルヘルムから戦意は衰えない。

 まさかスバルも、このまま白鯨が逃亡するものとは思わないが、上空へ向かった白鯨の狙いは今のところ不明だ。

 獣人傭兵団も各々が集まり出し、大樹の根元に集まる負傷者勢の状況が危ぶまれるところだが――。

 

「くる」

 

 小さく、空を見上げるヴィルヘルムが呟く。

 目を細めて、両手の剣を持ち直す老剣士の姿に全員の警戒心が一気に最大まで引き上げられた。そして、固唾を呑んで動きを待ち――後悔する。

 頭上に浮かぶ白鯨の行動など待たず、即座に散開すべきだったのだと。

 

「――霧が落ちてきやがるぞぉ!!」

 

 声の限りに叫び、もはや無言でレムが地竜を一気に反転させ、戦線を離脱する。

 周囲の地竜やライガーも同じように駆け出すが、もはや他のものの無事を確認するために顔を上げている余裕すらない。

 

 ――空を一面、覆うような勢いで膨れ上がる『消失の霧』が、こちらを目掛けて落ちてきている。

 

 雲そのものが落ちてくるような長大なそれは、回避するには範囲から逃れる以外にない。岩や木々を盾にしようと、それごと呑み込む破壊の前に抵抗は無力だ。

 駆け出し、間に合えと祈りながら走るしかない。

 頭上を見上げることすら恐ろしく、音のない終焉が真上から迫る圧迫感だけがある。

 懸命に地竜の背にしがみつき、姿勢を低くして限界まで駆け抜け――

 

「抜けたか!?」

 

 黒雲の下を抜けたような明るさが差し込み、背後に首を向けるスバルは見た。

 霧に押し潰される大地の上、間に合わずに呑まれる複数の影がある。

 懸命に、その形相に恐怖と怒りを刻み込んだ人間が、頭から霧に呑まれて消える。

 地竜ごと消失し、地面に落ちて霧散する後にはなにも残らない。誰の記憶にも、名前すらも残らない。ただ、スバルだけがその死を覚えているだけで。

 

「ぅ……あ」

 

 小さく呻き声を漏らすスバルの正面、霧で散り散りにばらけた面々が遠い。

 その数も明らかに、先の攻勢のときより数をずいぶん減らしてしまっている。討伐隊の面々はもちろん、獣人傭兵団も無傷とはいかない。

 せめて主力だけは、とスバルは視線を巡らせ、

 

「ヴィル……」

 

 かろうじて地竜の背に片手を引っかけ、霧の範囲から逃れていたヴィルヘルムを発見。その姿に声をかけようとして――気付いた。

 ――濃霧の向こう側から、大口を開いた魔獣がヴィルヘルムに迫るのを。

 

「逃げろ――!!」

「――」

 

 スバルの叫び、ヴィルヘルムの回避。それらはすべて間に合わない。

 目の前に映るのは黄色い魚。その魚群がヴィルヘルムの体を抉るその光景だ。

 あの黄色い魚に噛まれた場合、何かが奪われるのだ。そして、今奪ったのは聴覚か、あるいは足の感覚か。

 いずれにしろ、回避は不可能。接近した白鯨の口腔が、大地ごとヴィルヘルムとその地竜を呑み込む。

 地を削り、五メートル四方の地面が丸ごと抉られ、全て白鯨の口の中だ。

 

「あ……」

 

 その衝撃的な光景を前に、スバルだけでなくレムすらも驚きに声を失う。

 彼の老人の実力を、妻への想いと執念を知っていたが故に、その喪失感は尋常ではない。そして彼の喪失により状況は悪化の一途を辿り、

 

「ばかっ!!」

 

 と、今度はすぐ傍らで別の人物の声が上がった。

 その声に反応するより早く、スバルたちの地竜が横合いから猛烈な勢いでぶつかってきた地竜によって吹き飛ばされる。

 

「うおお!?」

 

 よろめく地竜から転落し、あちこち打ちつけて痛みに顔をしかめる。突然の暴挙の下手人は恐らくアリシアだが、その真意を問う前に、

 

「――――ぁ」

 

 バッと、目の前で赤い華が散るのをスバルは見た。

 

「え?」

 

 

 千切れ飛び、肉片を飛び散らせる地竜の無残な死骸が平原に転がる。そしてその上にまたがっていたはずの少女は、大量の鮮血を残して姿が消えた。

 そのアリシアの血を浴びる尾を機嫌よく振り、白鯨が巨体を揺らして低空を泳いでる。

 庇われた、であるとか、アリシアはどうなったか、とか色々な疑問が脳に浮かんだが、それよりも無視できない事実がスバルに訴えかける。

 目の前を泳ぐ、アリシアを尾で薙ぎ払った白鯨。そして、

 

「は……?」

 

 振り返り、ヴィルヘルムを地ごと呑み込んだ白鯨が咀嚼を始めているのが見える。

 正面と、背後――見上げた上空にはいまだ、空を陰らせる魚影があり、

 ――三体の白鯨がその全身の口を震わせ、哄笑を上げて絶望を掻き立てる。

 

 「分裂とか、ありかよ……!」

 

じわじわと、じわじわと悪夢が再び希望を塗りつぶすのをスバルは確実に感じていた。


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